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源氏物語(上)

著者 瀬戸内 寂聴、 出版 講談社
 少年少女古典文学館として、現代語訳された古典です。古文として断片的には読んだことはもちろんありますが、読みとおしたことがなかったように思いますので(円地文子訳を読んだかな?)、上下2巻にまとまった、少年少女向けの現代語訳で源氏物語を久しぶりに読んでみようと思い立ったのです。
 いづれの御時(おほむとき)にか、女御(にょうご)更衣(かうい)あまたさぶらひたまひけるなかに、いとやむごとなき際(きわ)にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。
 この書き出しはさすがに覚えていました。私は歴史ものに続いて、高校時代、古文も得意としていたのです。古典文学体系で、原典を一度読んでおくと、全体像がつかめて、断片的に切り出されて問いかけられる設問に対しても余裕を持って回答することができました。この点は、法律の勉強と同じです。やはり、全体のなかの位置づけが欠かせません。
 現代語訳だけでなく、欄外に言葉の解説もあり、写真や図もありますので、大いに理解を助けてくれます。いわば、字引つきの古典ですから、なるほどなるほどと思いながら軽く読み進めていくことができます。
 それにしても源氏の君はもて過ぎです。どうして、こんなに簡単に女性にもてるのか、いつのまにか中年さえ過ぎてしまった男の私としては嫉妬にかられるばかりです。
 紫式部は1014年ごろ、40歳ほどで亡くなったようです。ということは、今からちょうど1000年前ころ、宮中で権力を握っていた藤原道長(直接にはその娘・彰子、しょうし)に仕えて活動していたのです。
 今から1000年前の日本に住んでいた人々の気持ちが、生活様式こそ違っていても、現代日本とあまり変わらないことに気がついて、不思議な気持ちに包まれてしまいました。日本人って、変わらないところは、案外、変わっていないのですね。
 
(1997年6月刊。1650円+税)

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