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2009年2月 の投稿

内部告発、潰れる会社、活きる会社

カテゴリー:司法

著者:諏訪園 貞明・杉山 浩一 発行:辰巳出版
行政に対する内部告発が日本全国で年間5000件をこえているというのを知り、驚きました。しかも、8割について何らかの措置が講じられています。公益通報者保護法は実効的に機能しているのですね。いいことだと思います。
内部告発があったとき、その会社がシラを切って否定し続けていると、内部告発者は、さらに詳しい情報をもってメディアや行政に提供する。メディアや行政は、これによってさらに追及する。このパターンがあまりにも多い。
内部告発する人の大半は、普通の人。内部告発する前は、みんな不安にかられている。反社会的な人間はいないし、会社を混乱させるためだけに内部告発する人もいない。本人も悩んでいて、結局、告発したあと会社を辞める人は多い。内部告発の内容に誇張があったり、推測もあったりはするが、決定的なところにウソはない。自分の告発をある行政機関が取り上げてくれないと、別の行政機関なりメディアを次々に探そうとする。いったん内部告発を決意した人は、簡単にはあきらめないわけです。
内部告発する人は、程度の差はあれ、会社の倫理に乗って、違反行為に直接または間接的に関与していたことが多い。したがって、罪の意識を押さえて違反行為の論理に乗っかっていたので、何かのきっかけで押さえが外れると、その分バネがきいて思い切った行動に出やすい。否定されると、二重否定されたとして火に油を注ぐ結果を招く。だから、むしろ会社の役員が、従業員によって不正告発がなされたことを知ったとき、「ありがとう」と述べたら、その後、社内の違反行為は激減するだろう。
行政は内部告発を握りつぶすことができなくなっている。
企業内で不祥事が起きていることが発覚したときには、会社が自ら記者会見を開いて事実を公表し、かつ、内部への処分も決め、対外的にも公表しておく。そうすると、メディアとしても、それ以上の掘り下げはできない。
一に言い訳をしないこと。二に、今後の対応を話の中心にすえること。三に、真摯に対応すること。
会社が面白くないと、不祥事は繰り返される。
内部告発をバカにしてはいけないこと、きちんと対応することの大切さが実例とともに簡潔に良くまとめられた本です。
 やはり、失敗を繰り返してはいけないのですね。
 還暦を迎えたお祝いに、同僚の弁護士たちと夫婦同伴で会食しました。そして、例の赤い帽子と半纏を着せられ、赤い座布団に座ったところを写真を撮られてしまいました。せっかくの好意を拒むわけにはいきませんでしたが、内心では、お前も60歳になったんだぞ、よく自覚しろ、と迫られているみたいで、還暦すなわち老人視されることに、まだまだ大いなる違和感があります。まあ、これも仕方のないことです。健康に留意して、これからも、生まれ変わったつもりで(なにしろ、暦を巻き戻して0歳になるのでしょうから)ボチボチとマイペースでやっていきます。どうぞよろしくお願いします。
(2008年10月刊。1400円+税)

昆虫、4億年の旅

カテゴリー:生物

著者:今森 光彦、 発行:新潮社
 うひゃあ、すごい、すごーい。昆虫って、こんなにきれいだったのか、えーっ、こんな不気味な色と形をしていたの・・・。身近な昆虫たちを間近で見ると、まったく驚きと発見にみちみちています。くっきり鮮明なカラー写真が200点もあって3600円とは、なんと安いこと。写真を撮る苦労を考えたら、本当に申し訳ない気持ちになります。
 虫にとりつかれた子どもたちのことを、昆虫少年という。昆虫少年という言葉があるのは、おそらく世界中探しても日本だけではないだろうか。かけ事ではない、カブトムシを喧嘩させて遊ぶ純粋な子どもたち。こんな国は、世界広しと言え、いちども見たことがない。「ファーブル昆虫記」のファンの数も日本が世界一だというのも十分納得できる。日本の子どもたちは、美意識と科学心にあふれる好奇な目で、昆虫たちを見ている
 頁をめくって一番始めに登場するのが南米(ブラジル)に棲むヨツコブツノゼミの顔です。頭の上のほう(オプションには胸部とあります)に、たしかに4つのコブがついているのです。その奇妙さといったら、思わず噴き出してしまいそうです。そして、このヨツコブツノゼミから、「おまえ、今、なんか笑ったか?」と重々しい声で問いを投げかけられたら、あわてて口に手をあてて、「いえ、別に・・・」と返事して、ごまかすことでしょう。世にも珍妙なるセミです。ぜひ、実物を写真でご覧ください。
 インドネシアに、ホタルのとまる木があるというのは聞いていました。幾万とも知れないホタルが高さ20メートルの木に集まり、集団発光するのです。いやあ、一度ぜひ見てみたいですね。こればっかりは、写真では実感できません。我が家から歩いて5分のところにも初夏(梅雨前)になるとホタルが飛びかう小川があります。最近、そのすぐ近くで道路工事をしていますので、今年もホタルがちゃんと見れるのか、今から心配しています。
 著者は、プロの写真家になる夢を捨てず、大学を卒業してコマーシャルスタジオに2年間勤め、ファッションや料理など、あらゆるコマーシャル撮影の技術を習得した。そして、著者は29歳のときから、毎年3ヶ月間、のべ2年4ヶ月の歳月をエジプトでのスカラベ撮影に費やした。2年目から昆虫学者(佐藤宏明)がアシスタントとして同行し、著者が写真をとり、助手は生態に関する論文を執筆した。いやあ、すごい執念です。大したものです。
 取材ノートが公開されていますが、手書きの絵もまた実に精妙です。細かいところまでよく観察していることが実感できます。
 虫の卵というのが、こんなに個性的なものであって、虫によって色も形もまるで異なるものだということも知りました。まるでケーキ屋さんの店頭にたくさんの新作ケーキが並べられている感じです。いかにも美味しそうな色をして輝いています。これって、きっとケーキ職人の新作づくりの参考になるんじゃないかと思います。
 昆虫ではありませんが、オーストリアにいるメリディオナリスシロアリのつくった塚が大平原に立ち並んでいる写真は不気味です。西洋の墓地、今でいうと、イラクで戦死したアメリカ兵の墓地を連想させます。
 よくぞ、これだけの写真を撮って公開していただきました。感謝感激です。ありがとうございました。これからも身の危険には十分用心して、頑張っていい写真を撮って公表してくださいね。
 久しぶりに湯布院の温泉につかってきました。初日は小雨模様のなか、夕方、金鱗湖あたりを歩いたのですが、観光客の中にハングルや中国語を話している人の多さに驚きました。
 2日目は雨も上がって、青空の見えるなかを歩きました。小さな美術館がいくつもあるのは湯布院の良さですね。依然として変に俗化していないので、とてもいい雰囲気です。お昼を金鱗湖に面したレストランで、湖の先の山々を見ながら、美味しくいただきました。由布岳の頂上は、白く霧氷で覆われていて、浩然の気を大いに養うことができました。
(2008年7月刊。3600円+税)

獣の奏者、王獣編

カテゴリー:社会

著者:上橋 菜穂子、 発行:講談社
 いやあ、とても面白いです。ワクワクドキドキする痛快ファンタジーです。『ハリーポッター』の第一作を読んだときと同じように興奮してしまいました。いえ、別に変な意味ではありませんので誤解しないようにお願いします。
 ファンタジーですので、物語の紹介はいたしません。ただ、オビに書かれているキャッチコピーは次のようなものです。
 王国の陰謀に勇敢に立ち向かう少女、エリン。獣を操る技を身につけた彼女が選んだ未来とは?
ふむふむ。でも、それだけでは分かりませんよね。王獣(おうじゅう)とは何か、闘蛇(とうだ)とは何か、王獣と闘蛇が戦ったらどうなるのか。ともかく手にとって読んでみる価値はあります。ちょっと疲れたな。気分転換したいな。そう思ったときには最適ですね。そして、あとがきを読んで、私は驚きました。なんと、著者は『ミツバチ、飼育・生産の実際と蜜源植物』という本を読んでヒントを得たというのです。そして、養蜂に関わる場面については、実際に養蜂している専門家に教えを乞い、ゲラもみてもらったというのです。
すごいですよ。ミツバチから、これだけのファンタジーを着想したというのですから。やっぱり、世の中にはすごい人がいるものです。
 テレビのアニメになって放映されているようですね。
(2006年11月刊。1600円+税)

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