法律相談センター検索 弁護士検索
2006年5月 の投稿

世界史のなかの満州帝国

カテゴリー:未分類

著者:宮脇淳子、出版社:PHP新書
 満州という言葉は清の太祖ヌルハチの「マンジュ・グルン」から来ている。グルンは国のこと。この「マンジュ」を文殊菩薩の原語のマンジュシュリからきているというのは誤りである。なるほど、そうだったのですか・・・。
 満州と書くと満人の地という意味になるが、この言葉に土地の意味はなく、種族の名前であった。満州は、もともとは清朝を建てた女直人(女真とよばれることもある)のこと、つまり民族名であって、地名ではなかった。
 中国人とは、漢字を学んだ人々のこと。日常の話しことばがどんなにかけ離れていてもいい。漢字を知っている一握りのエリートが読書人と呼ばれて、本当の中国人。漢字を知らない労働者階級は実際には「夷狄」扱いを受けてきた。中国人とは、都市に住む人々のこと。城内に住んだのは、役人と兵士と商工業者。これらの人々が中国人であった。
 随も唐も、帝室の祖先は、もともと大興安嶺出身の鮮卑族である。倭国と軍事同盟を結んでいた朝鮮半島にあった百済には倭人の住民も多かった。日本列島のほうも同じような状況で、倭人の聚落と秦(はた)人、漢(あや)人、高句麗(こま)人、百済(くだら)人、新羅(しらぎ)人、加羅(から)人など、雑多な系統の移民の聚落が散在する地帯だった。
 当時の日本列島に倭国という国家があって、それを治めるものが倭王だったわけではなく、倭王が先にあって、その支配下にある土地と人民を倭国といった。
 共通の日本語をつくり、新しい国語を創造したのは、漢字を使える渡来人だった。彼らは漢字でつづった中国語の文語を下敷きにして、一語一語を倭人の土語で置き換えて、日本語をつくり出した。
 文化的に朝鮮人が日本人の兄だというのは誤りで、朝鮮=韓国人と日本人は、このようにしてほとんど同時に中国から独立して民族形成をはじめた、双子のような関係である。
 著者のこの指摘に、私はとても新鮮な衝撃を受けました。まったく新しい角度からの鋭い問題提起だと思います。
 1392年、高麗国王の位に就いた李成桂は、元末に咸鏡南道で高麗軍に降伏した女直人の息子だった。明の洪武帝が国号をどうするのかとたずねてきたので、高麗王朝は「朝鮮」と「和寧」の2つを候補としてあげて洪武帝に選んでもらった。洪武帝は、むかし前漢の武帝にほろぼされた王国の名前である「朝鮮」を選んだ。こうして朝鮮王国が誕生した。そうなんですか・・・。ちっとも知りませんでした。
 日露戦争の前、ロシアは日本の軍事力をまったくみくびっていた。たとえば、日露開戦まで4年間、駐日陸軍武官だったブノフスキー陸軍大佐は、日本陸軍がヨーロッパにおける最弱の軍隊の水準に達するのに100年は必要だろうと本国に報告した。
 また、ロシアの巡洋艦の艦長は、日本海軍は外国から艦艇を購入し、物質的装備だけは整えたが、海軍軍人としての精神はとうてい我々には及ばない。軍艦の操縦や運用はきわめて幼稚であると語った。さらに、開戦8ヶ月前に来日して陸軍戸山学校を視察したクロパトキン大将は、日本兵3人にロシア兵は1人でまにあう。来るべき戦争は、単に軍事的散歩にすぎない、こう述べた。これって、なんだか第二次大戦のときに、日本軍がアメリカ兵をどう見ていたを思い出させる言葉ですよね。
 終戦当時、満州在住の日本人は155万人。そのうち17万6千人が死亡した。101万人が1946年10月末までほとんど民間の力で内地へ引き揚げた。
 日本と満州の関係を古代から現代まで論じた本です。いくつもの鋭い指摘があり、私の目は大きく見開かされました。

女性のからだの不思議

カテゴリー:未分類

著者:ナタリー・アンジェ、出版社:集英社
 東京都知事の石原慎太郎は生理のとまった女性は役に立たないババアだと口汚くののしりました。まるで自分には母親がいないかのような下品な口調で、顰蹙を買いました。ところが、金持ちマダムには石原慎太郎のファンが多いのです。あーら、そんなことは私のことではないざます。それは、きっとしもじものうらぶれたおばさんたちを悪く言っただけでございますわ・・・。とても信じられない発想です。きっと人種が違うのでしょう。
 閉経後の50代の女性には体調が大変よい人が多い。閉経後の女性たちは一番の働き者であることが多い。オランウータンに閉経はない。死ぬ前に生殖能力のプログラムが停止するのは、人間の女性だけ。
 年をとった女性は、頭がやわらかくて戦略的で、援助する相手を自分の子どもや孫に限定しない。一族のなかで助けが必要な子どもの誰にでも手を差しのべる。人間の女性をほかの霊長類と区別するものは閉経ではなく、丈夫で長持ちな閉経後の寿命だ。
 最初の役割分担は、男と女ではなく、子を産む女と閉経後の女にあった。母親が産み、祖母が世話をする。この盟約があれば、生殖力と移動性に限界はない。
 肉体の壮健さが最大に発揮されるのは女性。男性は女性ほど長生きせず、寿命の男女差はどこの国にもある。たぶん、男はそれほど長生きする必要がないし、長生きしたがらないのだろう。
 そうなんですか、男は長生きする必要がないので、長生きできないんですか・・・。いやあ、これは私にとってかなりのショックでした。社会にいきるストレスが男の方に強いから長生きできないのだとばかり思っていました。
 世界は女を中心にまわっている。大多数の霊長類は社会集団をつくって暮らし、集団の核は雌である。雌は生まれた集団に生涯とどまり、雄は思春期に集団を離れて近親交配を防ぐ。外部の雄が集団に入れてもらうときには、仲間にするかどうかは雌が決める。雌は余計な雄がいるのを好まない。だいたいにおいて雄はあまり役に立たず、子どもの世話もせず、すぐに退屈してケンカを始めてしまう。そのうえ、雄はしばしば雌に嫌がらせをする。
 チンパンジーは明らかに雄が雌を支配している。ボノボの雌はグループをつくることによって雄よりも優位に立つ。ボノボは祖先の特徴をより多く備えた種で、チンパンジーとヒトはそこから派生したサルなのかもしれない。
 アメリカでは、貧困層の大半は母子家庭である。子どものいる夫婦が離婚すると、ふつう女性は貧しくなり、男性は逆に豊かになる。男と男社会の投資や庇護を失うようなふるまいは、いまも代償が高く、うっかりしたことはできない。
 人間の赤ん坊は顔を母親の背側に向けて膣から姿を現しはじめる。ほかの霊長類では仰向けで出てくる。赤ん坊を上向きにしてやろうとすると、背骨と首を痛めてしまう危険がある。ヘソの緒がからんでいても、ほどいてやることもできない。母親には助けが必要だ。
 赤ん坊は無力で、痛々しいほどぎこちなくしか動けないが、母親のお腹の上にのせると、においの手がかりだけで胸にまでにじり寄っていく。乳房の片方だけ洗うと、赤ん坊は洗っていない乳首を探しあてる。
 胎児は自分のサイン入りのにおいを尿に分泌し、それが羊水に混じる。羊水は循環して母親の尿として排出される。こうして母親は出産前に赤ん坊のにおいがわかり、近くにいる父親も胎児のにおいになじむのだろう。
 夫婦のどちらかが相手のにおいを嫌いだと、その結婚は破綻する。触覚、味覚、嗅覚。愛を求めるときには、あらゆる感覚が総動員される。
 うーむ、人間のなかで女性はやっぱり半分以上の地位を占めているのですね・・・。弁護士の仕事を通じて、日々、実感しています。
 庭に朱色のアマリリスの双花が咲いています。ジャーマンアイリスは終わりかけ、すっくと背の高いカキツバタの青い花が誇らしげです。シャクヤクは固いツボミのままです。昨年はとうとう花開くことができないままでした。何かが足りないようです。
 今朝、庭先に黒い小さなヘビを見つけました。じっと動かないので変だなと思ってよく見ると、お腹がふくれています。きっとカエルを飲みこんで、消化中なのでしょう。きのう庭を手入れしていると、カエルがたくさんとびはねていました。

みんなが殺人者ではなかった

カテゴリー:未分類

著者:ミヒャエル・デーゲン、出版社:影書房
 ドイツで著名なユダヤ人俳優である著者が、11歳のころ、ユダヤ人の母と一緒にベルリンで奇跡的に生きのびた実話です。たんたんと情景が描かれています。信じられない話のオンパレードです。
 ユダヤ人の母と子を助けたのは、もちろん一人ではありませんが、その真先に来るのは、なんとナチ親衛隊の若者でした。キリスト教徒の家庭に育った彼は、ユダヤ人迫害の真相を知ってナチ党を脱退し、後に、危険な東部前線に追いやられて戦死してしまいます。
 次に、亡命ロシア貴族の女性、そして売春宿の老婆、もと共産党員、などなどです。ユダヤ人母子であることを知りながら、誰もナチスに密告しませんでした。それどころか、母子を助けるためにナチ団体に入り、あとに命を落とした女性もいました。ええっ、そういうこともあったの・・・。とても信じられませんでした。
 訳者あとがきによると、ナチス・ドイツになって地下に潜ったユダヤ人は1万人以上いたそうです。そのうち半数はベルリン市内とその周辺に住んでいました。生き残ったユダヤ人は1500人。ベルリンにはユダヤ人救援組織もあったそうです。さまざまな方法でユダヤ人を助けた人々は2500人以上いたことが確認されています。みんな、見つかったら確実に即処刑される危険を冒していたのです。すごい勇気です。ですから、ナチス支配下のドイツであってもナチス賛美一色に塗りつぶすわけにはいきません。
 人は何事にも慣れるものだと言われている。しかし、ぼくにはどうしても慣れることが出来なかったのが、高射砲の甲高い発射音であり、爆弾の命中音であり、大型爆弾のピューピュー鳴る音だった。それから突然はじまる静寂。その静けさのなかに「空飛ぶ要塞」の爆音が聞こえてくる。そしてあらたに始まる対空射撃、極度のヒステリー状態にまで昇じていく爆発音。そう、こうしたものにぼくはどうしてもなじめなかった。
 私もこの状態を想像することができます。身体で恐怖心を感じ、震えがとまらなかったのではないでしょうか。
 いま、イラクの人々は、自爆攻撃そしてアメリカ軍による無差別ピンポイント攻撃によって恐怖におののきながら生活していると思います。アメリカの無法なイラク侵略戦争、そしえ日本の自衛隊がそれに荷担していることを、私は絶対に許すことができません

ジプシー・ミュージックの真実

カテゴリー:未分類

著者:関口義人、出版社:青土社
 インドの音楽には楽譜から音楽を再生する習慣はない。音楽は耳と身体で体得するもの。楽譜らしきものはあるが、それは記憶の一助になるにすぎない。楽譜を完全に習得しても、音楽を再現することはできない。あくまで口頭伝承によって受け継がれている。
 ジプシーではなくロマと呼ぶべきだという意見があるが、必ずしも彼らの総意ではない。 ジプシーは現在、世界におよそ1000〜1200万人は存在する。
 ロマの住む集落には、いろいろなタイプやサイズがある。20〜30人という、ごく小規模なものから、最大で5万人ほどにふくれあがった集落まで、さまざま。ロマの居住地は1万5000前後もある。定住せず、今も馬車などで移動し続けているロマは、全体からみて2〜3%にすぎない。漂流するジプシーというのは既に過去のものとなりつつある。 ヨーロッパのロマ人口は800万人。なかでもブルガリアは世界で3番目のロマ集積国。人口比で9.4%。スリヴェンはバルカン最大のロマの集中居住地。スリヴェンの人口15万人のうち、ロマは6万人、40%を占める。
 現在までの長い歴史のなかで、どの時期をとっても、ロマがもっとも多く居留したのはルーマニア。ルーマニアの南部にはロマ御殿が立ち並んでいる。インド以来、移動に適した資産として、ロマは金銀そして宝飾品を携える文化があった。
 人口200万人のマケドニアに居住するロマは25万人ほど。人口比率は12%に及ぶ。
 現在、ヨーロッパだけでも、電気も水もない場所で暮らすロマは200万人を下らない。そこに数ヶ月、いや10年以上も住む。
 ロマの少女は、14〜16歳で結婚してしまう。18歳の母親が3人の子どもを育てるというのは日常茶飯事。7、8人が狭い一部屋に暮らすのは珍しいことではない。したがって、家族の前で性関係が結ばれる。夫婦による性交渉が幼い子どもたちの眼前で行われ、子どもたちもほどなく同じことをくり返す。ロマたちは、平均3〜5人の子どもをもつ。ロマ社会では内婚制が現在もかなり守られている。
 本来、ロマは大変穏やかで、平和を好む人々である。しかし、集落における暮らしがストレスを生んでいる。
 ロマは、本来、宗教をもたないので、不信仰の輩と排斥された。
 暮から暮らしをするジプシー、政治・言論などで活躍するジプシーも多数いる。
 ジプシーの豊かな芸術的才能と生活の一端を知ることができました。日本人が、ここまでジプシーの生活に入りこんで体験的に調べること自体にも感心してしまいました。

近世の女旅日記事典

カテゴリー:未分類

著者:柴 桂子、出版社:東京堂出版
 江戸時代の女性が日本各地を旅行したときの日記が、こんなにたくさんあること自体に私は感動してしまいました。すごいものです。
 「入り鉄砲に出女」と呼ばれたように、江戸時代は、武器の江戸への流入と諸大名の妻女の江戸からの脱出を厳しく取調べたことは有名です。このイメージが強いものですから、女性が旅行するなんて考えられないことです。しかし、この本を読むと、とんでもない。江戸だけでなく、東北でも九州でも、たくさんの女性が日本各地を自由気ままに旅行していました。なかには一人旅を楽しむ女性すらいたのです。そうそう。そうなんです。日本の女性が昔から弱かったはずはありませんよ。長く弁護士をしていて、私はつくづくそう思います。
 たしかに、女手形があり、きびしい女改めはありました。しかし、同時に関所抜けも公然たるものでした。抜け道の案内賃として100文を払えばよかったのです。宿屋で案内人を斡旋してもらい、夜のうちに垣根や塀などの穴をくぐって関所抜けするのです。関所で手形をもたずに通れなかった女性は、茶屋の亭主に頼み、役人に50文の袖の下をつかって通過しています。
 昔は女人禁制の山が、あちこちにありました。富士山も通常は女人禁制。しかし、僧に導かれて頂上まで登った女性もいました。
 道中の食事はあまりおいしいものではなかったようです。でも、伊勢神宮のときには、桁はずれのご馳走でした。鯛も鮑もつき、酒と肴がふるまわれました。
 女性の一人旅も珍しいことではありませんでした。しかも、女盛りの41歳の女性一人旅です。各地の俳諧仲間を訪ねて歩いた山口県(長門)の女性(田上菊舎)がいます。
 旅の目的はさまざまです。人質、国替という公式のものから、吟行、湯治、観光、そして参詣、巡礼などの私的なものまで、いろいろあります。
 今も昔も、日本女性の旅行好きは変わらないことが、この本を読んで改めて実感することができます。うちのわがまま娘も、定職に就かないまま、気ままな世界旅行を夢見ています。これまでにも、さんざん海外旅行しているのに・・・。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.