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2006年3月 の投稿

元アイドル

カテゴリー:未分類

著者:吉田 豪、出版社:ワンマガジン
 私はテレビを全然見ないし、芸能界にも歌謡曲にもまったく興味がないので、アイドルと言われてもちっともピンと来ない。でも、活字になると、好奇心から読んでみたくなる。この本を読むと、アイドルの世界、そしてその生活がいかに苛酷なものか、すこしばかり想像できる。
 元アイドルは人間不信に陥る人が少なくないし、自律神経失調症になる人が多い。芸能界にはイジメるのが好きな人がいる。わざわざ追いかけてきて嫌味を言ったり、ドラマでわざとセリフ変えてみたり、裏と表がすごい人だとか・・・。
 こいつら、いつか散弾銃でブッ殺してやりたいと思った。嫌な連中を全員一ヶ所に集めて爆弾で殺してしまったら、どんなに気持ちいいことだろう、なんて考えてしまう。
 それで、20歳のときに自律神経失調症で具合が悪くなってしまった。
 学校でいじめにあったアイドルが意外なほど多い。目立つ存在だったので、ねたまれたのだろう。オーデション受けているうちに分かってきたことは、どんなドラマでも主役って、最初から事前に決まっているということ。その裏には、お金がからんでいたり、プロダクションとテレビ局の関係とか、汚いものがいっぱいある。
 アイドルの睡眠時間が2時間というのはウソではない。恋愛する暇もない。撮影で8時間、完全徹夜ということもあった。4日目ぐらいから座るのも危険になる。寝ちゃうから。そうすると、顔どころか、精神的にもボロボロになる。
 人生で何を消したいかといったら、あの2〜3年間を消してしまいたい。
 仲間の集まりに顔を出さないと悪口を言われて無視されるって恐怖心から、何があっても電話ひとつですぐ飛んでいった。だから、遊んでいたのに、それがまたストレスになっている部分もあり、すべてが悪循環になっていた。
 芸能界って、取り替えのきかない世界だと思われているけれど、実は簡単に取り替えできるところ。あの人がいなくなったら無理だと思われるくらいの人が姿を消しても、結局は、何ごともなく芸能界はすすんでいく。
 タレント仲間も嫌い、スタッフも嫌い、ファンも嫌いっていう状態になる。もう人間が全部嫌になってしまう。
 23歳のとき、ジャックダニエルを泣きながら1本飲んでしまったら、翌日、お婆ちゃんみたいに肌がシワシワになっていた。病院に行ったら、内蔵がおかしくなっていて、それが全部顔に出てきていたことが分かった。
 元アイドルの人は、大体、自律神経をおかしくしたり、自殺を考えるくらい追いこまれたりしている。
 セスナに乗ってゲロを吐いたときも、カメラの前では元気に笑顔で手を振って、下向いて吐いてまた出てきて手を振る、そんな感じで仕事を続けた。
 給料は、せいぜい6万円とか10万円。脱いだら3倍というので脱いだら、なんと15万円に上がっただけ。
 衣装代は自腹で、寮費も給料から引かれてしまう。デビューして貧乏になっちゃった。
 服は自前で、同じ服を2度と着たらダメ。お金を払いながらアイドルやってる感じ。給料は7万円。服は母に買ってもらってた。全部で1000万円にはなる。芸能活動でペイなんかできない。
 すさまじい世界ですね・・・。

働く過剰

カテゴリー:未分類

著者:玄田有史、出版社:NTT出版
 かつての大学新卒の採用といえば、学生が特段の専門的な知識を身につけて卒業してくることを、採用する企業は長く求めてこなかった。むしろ、学卒者自身が知識で事前に武装するよりは、無地のキャンパスであることを望んだ。採用後に企業色に染めやすいことを求め、何らかの思考的な色づけを持った人物を回避するというのが、企業側の態度と言われてきた。
 即戦力志向とは、つまるところ、育成軽視の別表現にすぎない。即戦力偏重は競争力の低下につながる。アメリカの業績優良企業は、すべて即戦力重視といった素朴な先入観とは、あまりにかけ離れている。日本でも、不況下において成長している中小企業ほど、実は能力開発に積極的な場合が多い。
 偏った人間は何があっても、どこに出しても恥ずかしくないように、絶対に一人前にする。だから、将来そいつが独立したいとか、もっと別の世界で働きたいというのなら、気持ちよく送り出してやる。そんなやつがいる方が、後輩にこっても目標になっていい。
 30代男性ホワイトカラーの多くが、長時間働いていることの弊害として、職業能力の開発が困難となっている事実を指摘する。
 女性の活用が業績に結びつく。アメリカでは、女性の割合が高いほど、業績が高くなっている。日本でも女性の比率が高い会社ほど、高利益をあげている。
 非正社員に対する「使い捨て」意識が潜んでいる会社や経営者には、情報漏えいなどのきついしっぺ返しがくるだろう。そもそも正社員でも非正社員でも、社員が退職するときに、その会社や職場の責任者がどのように立ちふるまっているかは、人材の育成に限らず、むしろ職場の良好な雰囲気の育成にきわめて重要な意味をもつ。コンビニをみると、経営がうまくいっているお店ほど、店長がフリーターの育成に熱心に取りくんでいる。
 団塊世代は、日本の労働者史上、長期雇用とそのもとでの年功賃金の恩恵を一番に受けた世代であり、そして最後の世代になるだろう。正社員希望の傾向は、実のところ、若者のあいだできわめて強い。若者の正社員へのこだわりは、弱まるどころか、むしろ強まっているのが実際だ。雇われて働くのではなく、自らの力で独立して働こうという志向は若者のなかで急速に衰えつつある。独立というリスクのある働き方を多くの若者が希望しなくなるなかで、きわめて特異な存在であることが、若きIT長者への注目を集めている。
 ニートは、共通して人間関係に疲れている。ニートは、不透明で閉塞した状況のなか、働くことの意味を、むしろ過剰なほどかんがえこんでしまっていたりする。ニートが象徴するのは、個性や専門性が過剰に強調される時代に翻弄され、働く自分に希望がもてなくなり、立ち止まってしまった若者の姿だ。
 ニートが増えたのには、個性発揮や専門性重視を過度に求めすぎた時代背景がある。ナンバーワンになるのは難しいが、オンリーワンになるのだって簡単ではない。そんな現実のなかで、やりたいことがないので働けないと考え、自己実現の幻想の前に立ち止まってしまったニートを、時代の犠牲者と呼んでも言い過ぎではない。
 ひきこもる若者を引き出すには、生活のリズムをつかむこと。とにかく朝6時半に起きて、みんなで朝の散歩をする。それが、すべての始まりだ。身体を動かす。そして、それを継続する。仕事に一番大事なのは、なんといっても継続できる力だ。そして、たくさん失敗する体験を積むこと。小さいころから、負ける経験をたくさんすることが大切。親から期待されたという経験がない状態で育ってきたことが、積極的にやりたいことがない若者をうんでいる。
 いろいろ大いに勉強になる本でした。さすがは学者です。

お客さん、お会計すんでませんよね

カテゴリー:未分類

著者:井崎弘子、出版社:新風舎
 スーパーでの万引事件を国選弁護人として弁護することがコンスタントにあります。覚せい剤の使用事件と同じくらいに多いのではないでしょうか。
 財布に何万円か入っているのに、主婦が2千円足らずの食料品の万引をくり返すというケースは決して珍しくありません。たいていは妻を無視する無理解な夫へのあてつけのようです。いえ、万引する行為自体がスリルという快感を覚えているのだろうと思われるケースもあります。
 私が腰を抜かすほど驚いてしまったケースは、30代の既婚男性が女性下着のみを万引していたというものです。彼は捕まるまでに、なんと段ボール箱に20箱ほども貯めこんでいました。狭いアパートの室内に積み重ねていたのです。女性下着を見ながらマスターベーションしていたようですが、なぜ終わったらすぐに捨ててしまわなかったのか、不思議でした。警察は、女性下着を庁舎3階の大講堂の床一面に広げ、その写真を証拠として提出しましたが、それは壮観でした。
 万引しようともくろんでいる怪しい人物の目の動きは自然ではない。きょろきょろと周囲をうかがっている。商品をあまり吟味せずにカゴに入れる。カゴの中を見ずに周りを見る。もっているバッグの口は、きっちり閉まっていない。
 万引を見つけたときには、相手の話をよく聞く。説諭にマニュアルはない。もしマニュアルどおりにやると、自分の心からの言葉でないから、相手の心にひびかない。
 説諭には慣れというものはない。大事なのは、相手の話をよく聞くこと。そして、気持ちをこめて話すこと。本人が万引の理由を言いはじめたときには、言葉を止めてしまうような質問をはさまず、最後まで聞く。理由をしっかり話させることによって、相手の気持ちをほぐす効果があるし、心を開いてくれる。
 結構多いのが内部犯行。スーパーの店員の万引、そしてレジ係の横領。店員がペアになって万引することがある。
 レジ係の不正で多いのは、返品の利用。いかにもお客さんが返品に来たかのように自分で返品の操作をする。レジで架空の返品代をうち、たとえば3000円を、自分のポケットに入れてしまう。
 内部犯行だと思うときには、関係者全員に面接する。そのとき、店員の手の動きでかなり分かる。手がよく動く人はやましいところがない。疑われることを怒っている人は、自然と拳を握りしめているし、大げさにかぶりをふるったりする。反対に、怪しいと思う人は手を机の下に隠したままでしゃべる。怪しい人はあまり話さない。
 レジの犯罪は案外多く、ひとつのスーパーで年間10人はいる。
 私も、スーパーのレジ係の横領事件を担当しました。返品を利用したのですが、2年ほどで2000万円もの横領額になっていました。そのお金はパチンコ代に消え、さらに莫大な借金をかかえてしまったのです。弁護士の実務にも役立つ本でした。

不思議な数 πの伝記

カテゴリー:未分類

著者:アルフレッド・S・ポザマンティエ、出版社:日経BP社
 円周率π(アメリカ式にはパイ。ヨーロッパではピー)の話。2πrとかπr2 というのを思いだしますよね。なつかしく、また嫌な思い出として・・・。
 3.14159 ここまでは私も覚えています。この本には、なんと10万桁まで紹介されています。27頁もつかい、びっしり小さな数字で埋めつくされています。東大の金田康正教授が1兆2411億桁まで計算したのが世界最高だそうです。日立のSR8000というスーパーコンピューターをつかって計算しました。1秒に2兆回の計算ができるスパコンですが、600時間もかかったそうです。
 そんな計算に意味があるのか、という疑問を抱くでしょうが、コンピューター精度と計算手順を検証するために有効だということです。
 πの数字を暗唱した世界最高記録は日本人の原口證氏です。2005年7月に8万3,431桁を13時間かけて暗唱しました。気の遠くなる数字です。いろんな言語によるπの数字の覚え方も紹介されています。
 19世紀ドイツの大数学者ガウスもπの計算をしましたが、このときダーゼという暗算の名手を手伝わせました。まだコンピューターのない時代ですから、コンピューターがわりに人間が暗算したわけです。ダーゼは、頭の中で8桁どうしの掛け算を45秒でできた。40桁どうしを掛けるには40分かかり、100桁どうしの掛け算には8時間45分かかったそうです。映画「レインマン」のダスティン・ホフマンを思い出しました。
 5世紀中国、天文学者で数学者でもあった祖沖之もかなり詳しいπの計算をしています。さすがは中国ですね。西洋文明に負けてはいません。
 不思議な話があります。
 紙を一枚用意して、定規で全体に等間隔で平行な直線を引く。そして針を何度も紙の上に落とす。すると、針が定規で引いた線に触れる確率はπとほとんど同じだ。
 ちょっと信じられませんよね。いったい、この確率とπとにどんな関係があるというのでしょうか。単なる偶然の一致にすぎないのでしょうね・・・。
 アインシュタインは1879年3月14日生まれ。3月14日はπの日。3.141879はπの近似値だ。
 地球の赤道にそってロープを巻きつけたとする。それから、ロープの長さを1メートルだけ延ばす。そして同じく赤道にそってロープを巻きつける。地表面からロープはどれくらい離れるか。答えは16センチ。赤道の上を身長1.8メートルの人間が歩いたとして、頭は足よりどれだけ余計にすすむか。答えは11.3メートル余計にすすむ。
 赤道に巻きつけたロープを1メートルだけ長くして、一点をひっぱると、その一点は地表からどれだけ高くなるか。答えは、122メートル上空になる。ふーん、そうなんだー・・・。ちょっと浮世ばなれした不思議な話題が、いくつも紹介されている本でした。

金大中救出運動小史

カテゴリー:未分類

著者:鄭 在俊、出版社:現代人文社
 民団中央本部の団長を歴任した権逸氏について、著者は厳しく指摘しています。
 彼は日帝の傀儡満州国で検事をつとめ、祖国の独立・解放を目ざして活動する人々を捕まえて刑罰を加える、日帝の走狗だった。民族叛逆罪に該当する人物だ。解放後も日本官憲と親しく内通し、朴正煕 政権の忠実な下僕だった。
 民団中央本部のなかでは、外交官の大使よりKCIA(韓国中央情報部)から来た公使が実権をふるっていた。民団組織内では、KCIAから大使館に赴任してきた領事、参事、書記官という肩書きの情報部要員がやたらと権勢を誇り、彼らの言動が絶対的影響力を発揮していた。
 朴正煕 政権は、在日韓国商工人および資産家からさまざまな名目で金品をしぼりあげた。その金額は、韓国政府が民団に支出する10億円の数倍になるだろうと言われた。しかし、在日同胞の金をしぼりあげる役割はKCIA要員だけではなかった。同郷出身の与党国会議員らがさまざまな縁故で芋づる式に人脈をとどり、ときには民団中央本部の幹部が手先となって、在日一世の事大主義的思想と情緒を巧みに利用した。多くの在日資産家は、権力ににらまれたときの恐ろしい「不運」を予防する対策として、あるいはソウルで困ったことが生じたときに逆に利用する打算から支出に応じていた。
 金大中事件が発生したのは1973年(昭和48年)8月8日午後1時すぎ、東京九段のホテル・グランドパレス22階です。このころ、私は横浜で弁護士をしていました。白昼堂々、日本において、国際的にも有名な韓国人政治家を拉致するKCIAには驚き、かつ日本人として怒りを覚えました。
 著者は金大中救出運動を日本において全力をあげて取り組みました。そして、金大中が大統領に就任したとき、就任式にも招待されたのです。ところが、意外なことに金大中は著者をまったく無視し、冷遇します。なぜ、なのか・・・。
 金大中は671頁にも及ぶ長大な自伝を発刊していますが、そこに在日韓国人による救出運動について一言もふれていないとのこと。著者は、そのことに怒っています。私も、その怒りは理解できます。いったい、どういうことなのでしょうか・・・。
 金大中は大統領になって、自分の拉致事件の真相を知ることができたはずです。個人的には、その詳細を知ったことでしょうが、その真相を国民に広くオープンにすることはしませんでした。なぜなのでしょうか・・・。これも韓国現代史の謎のひとつだと私は思います。

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