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2005年11月 の投稿

自立への苦闘

カテゴリー:未分類

著者:全国統一協会被害者家族の会、出版社:教文館
 今でもオウム真理教の信者が全国に何百人もいるといいます。まったく信じられません。統一協会の方もいぜんとして滅亡していないというのですから、驚くばかりです。例の集団結婚式によって韓国人男性と結婚し、韓国に住んでいる日本人女性が5000人はいるといいます。見ず知らずの人と結婚させられるなんて(結婚するなんて・・・)、どうなってるんでしょうか・・・。
 私も勝共連合の霊感商法で600万円もするツボを買わされた人の被害回復をめざしたことがあります(警官が出動するなどの騒動になりましたが、なんとか取り戻せました)。
 この本は、統一協会に入っていく過程を描いて、見事にその本質を暴いています。なるほど、そうだったのかー・・・。改めて、その巧妙さに感じいりました。
 統一協会に入会する信者は、決して特異な人格の人ではなく、むしろ、まじめな人たちだ。これまで親に反抗したことのないような人、向上心があって、人を疑うことのない、信じやすい人などが入会することが多い。
 伝道の入り口であるビデオ・センターで初めに見せられるのは、マザー・テレサや三浦綾子原作の映画「塩狩峠」など。献身的な犠牲精神が強調される。
 ビデオ・センターからツーデイズまでに半数が脱落するが、ツーデイズまで残ると、やめる率は激減する。暗い重い話を連続して聞かされ、強い絶望感が与えられる。イエスの処刑の場面がリアルに再現され、その悲惨と悲しみの激しさから、聞く人の頭の働きがとまったようになり、現実感が失われる。まるで、自分がその場にいるかのような感覚になり、物事の是非を判断する能力が著しく落ちてしまうのだ。その直後、メシアが今まさに、この世に存在するという希望にみちた話を聞かされる。この落差が聞く人の心をつかむ。
 照明が落とされた会場は号泣に包まれる。文鮮明がメシアであることについて、理論的とか合理的な説明はまったくない。感情をゆさぶって、受け入れさせてしまうのだ。
 ビデオ・センターに通った100人のうち、なんと5人が献身者になるといいます。大変な確率です。仕事を捨て、親を捨て、文鮮明の指示があれば道徳的・倫理的に間違ったことでさえ正しいことと信じて実践する人間になったのです。信じられない高率です。
 肉身生活はたかだか100年、霊界は永久。霊界における人生こそ本当の自分の人生。霊界での人生のために、現世の利益を捨て去ることは何でもない。どんなに親や夫やまわりの人たちから「おまえのやっていることは間違っている」と批判されても、霊界に行ったらみんな分かってくれる。霊界に行ったら感謝されると思うので、その批判は心をうたない。もともと、両親はけがれた性交によって自分を生んだ穢れた血統の存在である。サタンを長とするサタン側の編隊構造に両親は属している。
 こう思わせているのですから、親からの説得はよほど腹を決めてやらないと効き目がないわけです。信者を脱会させるには大変な苦労がともないます。文鮮明の指示に逆らうことは地獄に堕ちることと思い込まされているのですから大変です。そして、脱会したあとも、すぐに普通の人には戻れません。自主的に物事を考えることをしない(できない)生活を続けてきたため、自分の判断で考えられなくなっているからです。マインドコントロールは脱会後もなかなか脱することができません。どんなときにも希望を失わず、あわてず、あせらず、あきらめずにやっていくしかありません。愛情のみを頼りとして、心の扉を開いてもらい、心の残像を少しずつ取り除いていくしかないのです。
 統一協会の脱会に関する本ですが、オウム真理教をはじめとするカルト集団一般から脱出して自立するためにも役に立つ本だと思いました。

クジャクの雄はなぜ美しい?

カテゴリー:未分類

著者:長谷川眞理子、出版社:紀伊国屋書店
 10年前にも読みましたが、増補改訂版ということですので、また読んでみました。
 著者は人類学者ですが、最近では法曹の世界にも関わっています。裁判官を10年ごとに審査する機関が最近つくられましたが、そのメンバーの1人でもあります。このところ、裁判官が再任されないケースが増えているのですが、どこの世界にも思想・信条のレベルではなく、ふさわしくない人がいるものです。この分野における著者の積極的な関わりを大いに期待しています。
 なぜか知りませんが、JR久留米駅にもクジャクが飼われています。クジャクの雄が見事な羽をいっぱい広げている姿をたまに見かけますし、甲高い叫び声を聞くこともあります。ちょっとばかり、ぞっとする叫び声で、耳をふさぎたくなるのですが・・・。
 イギリスの学者がクジャクの行動をずっと観察していて、雌は配偶者を決めるまでに2羽から7羽、平均3羽の雄を訪ね歩く。配偶者として選ばれたのは常に雄のなかでもっとも目玉模様の数の多い雄だった。目玉模様は一羽の雄の尾羽に合計140個以上もある。どうやって目玉模様の一番多い雄を選び出せるのか・・・。
 ところが、日本の伊豆シャボテン公園にいるクジャクたちを10年かけて調べたところ、目玉模様の数は雄の繁殖成功度となんの関係もないことが分かったというのです。なんということでしょうか・・・。
 そして、日本でクジャクのあの「ケオーン」という甲高い鳴き声こそが、繁殖成功度と関連していることが判明しました。「ケオーン」という頻度の高い雄ほど、雄性ホルモンであるテストステロンの濃度も高かったのです。
 それにしても、ダーウィンが雌による配偶者選びを提唱したとき、当時の学者たちが声をそろえて、雌の好みが一定であるなどということは、人間の経験からして、まったく支持できないと反対したのだそうです。ふむふむ、なるほど、ですね。分かる気がします。
 オーストラリアのカエルは、雄の声の周波数を聞き比べ、ゆっくり時間をかけて自分の好みの周波数で鳴く雄を見つけて歩く。一晩のあいだに5、6匹の雄をめぐる。ここにも法則があることが分かりました。
 雌ガエルの体重は一匹ごとに少しずつ違う。でも、自分の体重の70%の雄とペアになっている。鳴き声の周波数は体重によって変わる。体格が小さいほど、高い周波数を出す。雌は、雄の声に耳を傾け、その周波数によって自分の体重の70%の体重の雄を見つけて選び出す。というのも、雌は雄を背中に乗せ、一粒ずつ卵を産み、それに雄が一粒ずつ精子をかけていく。だから、自分が背負える重さで、かつ、自分の卵に最大限受精してくれる雄を選ぶようにしているというわけだ。うむむ、すごーい。
 オオヨシキリという小鳥がいます。一夫多妻です。このオオヨシキリでは、雌は歌のレパートリーの豊富な雄を好み、そんな雄は多くの雌と繁殖し、生まれる子の数も多いということです。音痴の私は、オオヨシキリにうまれなくて良かったと思いました。
 ところで、鳥類の95%は一夫一妻です。しかし、学者が例のDNA鑑定で調べてみたところ、つがい以外の相手との交尾そして、つがいでない父の子がうまれるのは70%の確率ということが判明した。つまり、鳥の世界では「不倫」はあたりまえなのだ。これって人間と同じということですよね。でも、著者は、動物の行動のなかに人間の価値や道徳を見ようとしてはいけないと主張しています。うーむ、そうかもしれないけど・・・。
 この本によると、雄と雌との関係は、配偶相手の獲得をめぐる同性間の競争と配偶相手の選り好みと、雄と雌の葛藤と対立、という三つの軸で考えなければいけないとされています。ふむふむ、そうなのか、と思いました。
 選り好みという行動があるため、全員がハッピーになることは滅多にない。
 本当にそうなんですよね。だからヨン様に多くの女性があこがれるのですね、うん。

私のアフガニスタン

カテゴリー:未分類

著者:駒野欽一、出版社:明石書店
 駐アフガニスタン日本大使がアフガニスタンの復興のために活躍していることを知りました。やはり、日本は自衛隊を派兵するのではなく、もっと地道な国際貢献をすべきだと思います。そして、日本もフランスなどのように、もっとNPOの活動を支援すべきです。
 著者はDDRの運営委員会の委員長の要職にありました。DDRとは、武装解除、除隊、元兵士の市民社会復帰支援活動のことです。軍閥が群雄割拠するアフガニスタンで治安を回復して民生を安定させるために不可欠な活動です。国連の活動の一環ですから、私も DDRに声援を送りたいと思います。
 アフガニスタンは人口の3分の2が読み書きができず、人口の80%が交通不便な農村地帯です。そんな人口2500万人のアフガニスタンで大統領選挙のために1050万人が有権者登録をし、70%が投票したのです。すごいことです。国民はBBCとかVOAの現地語放送で、かなり外の出来事をつかんでいるといいます。
 DDRを前進させるために東京で開いた会議も役に立ったということです。
 アフガニスタンの指導者は、みな大変演説がうまい。なぜか。
 自分たちは、食べるものも武器・弾薬もままならないなかでの闘いを余儀なくされてきた。お腹をすかした部下に戦いを続けさせるのは大変なこと。彼らを説得するために、何を、どう言うか一生けん命考えた。教養があるわけでもない若い兵隊を納得させるには、こちらも必死に考えて話さなければならない。
 なーるほど、ですね。
 カブール市内には、日本から持ちこまれた中古自動車が氾濫していて、交通渋滞もあっているそうです。
 著者は現地の言葉であるタリー語を話せ、集会での挨拶をうまくこなしてきたとのこと。平和憲法をもっているからこそ、諸外国が日本を信頼している。このことを改めて思い知らされたことでした。日本もフランスにならって、もう少し自主的な外交努力をすべきではないでしょうか。いつもいつもアメリカに、下駄の雪のように、くっついているばかりでは情けなさ過ぎます。その意味で、私は日本の外交官の仕事はちっとも評価していないのですが・・・。

宇宙はなぜ美しいのか

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著者:キース・J・レイドラー、出版社:青土社
 この本には、いろんな数字が紹介されています。
 まずは、原子の大きさです。直径1ミリのボールベアリングがあったとする。これをどんどん大きくしていって、それを構成する原子1個が直径1ミリの大きさになったとしたときには、ベアリング自身は直径10キロメートルになっている。
 1リットルの水は3×1025 個の分子が含まれている。その数の水分子をつなぎあわせて一本の糸をつくったとする。その長さは、なんと10兆キロメートル。これは、1光年より少し長い。この糸は、地球と月とのあいだを1200万回も往復できる。
 原子と原子核の大きさの違い。原子を半径10メートルにまで拡大したとすると、その体積はバスの体積になる。ところが、そのとき原子核の半径は1ミリよりも小さい。今度は原子核を本の大きさにまで拡大したとすると、電子は1キロメートル以上も離れた先にある。
 金は、原子核の質量が大きいため、電子が光の速度に近い速さで動いている。これが金と銀が違って見える理由。うーん、これはなんだかよく分かりません。
 地球にもっとも近い恒星はプロキシマケンタウリ星で、4.3光年離れている。
 いまマッハ30(音速の30倍。毎秒10キロメートル)ですすむ宇宙船があるとする。光速の3万分の1。だから、1光年の距離を旅行すると、3万年かかる。それで、プロキシマケンタウリ星に到着するには13万年かかる。
 惑星をもつらしいもっとも近い恒星だと20光年先のところにあるから、そこに着くには60万年もかかる。惑星上でなければ生命は維持できない。しかし、それにしても60万年というのはあまりにも長い。
 人間の1個の細胞はブリタニカ大百科事典30巻の10倍の情報を蓄えることができる。ところが細菌の細胞はずっと容量が小さく、100万分の1ほどなので、新約聖書に含まれた情報くらいしか蓄えられない。
 ヒト細胞の核を100万倍に拡大してスーツケースの大きさにしたとする。すると、そこにある一本の染色体は長さ50キロメートル、太さ1ミリになる。つまり、スーツケースに太さ1ミリ、長さ50キロメートルのひもを46本詰めこんでいることになる。細胞はこれをやり、しかも46本の糸の上にあるコドン(塩基)のひとつひとつにアクセス可能なのである。1人の人間の全細胞の全DNAを引き伸ばせば、それは地球と月のあいだを8000回も(太陽となら250回)往復する。
 実際には、たった1本の染色体の長さが5センチであり、46本の染色体の全長は2メートル。それが小さな核のなかに詰めこまれていて、詰めこまれたあと相応の化学反応ができる。いやあ、すごい、すごい・・・。
 極大の世界と極小のそれとが似ているというのも、胸がワクワクするほどの面白さですよね。

小泉純一郎、血脈の王朝

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著者:佐野眞一、出版社:文芸春秋
 今の有権者は、スポーツ紙で政治を知り、ワイドショーでそれを確認している。
 この本に、このように書かれています。本当にそのとおりだと思います。そうでなければ、小泉・自民党が「大勝」できたはずはありません。この言葉は、小泉首相の秘書をつとめる飯島勲が記者にもらしたものです。このように、小泉首相はメディアにどう映るかを徹底して研究し、計算しているのです。
 小泉人気とは、突き放した見方をすれば、国民とメディアが総結託した構図のなかに、真紀子人気を光景として浮かびあがった蜃気楼にも似た現象だ。
 国民とメディアが結託したとは、私にはとても思えません。メディアの手のひらの上で国民は踊らされているだけでしょう。また、蜃気楼は間違いありませんが、意外なことに、残念なことに、かなり長続きするものではあります。
 小泉首相には心を開いて話せる盟友やブレーンは1人もいない。異常なほどの孤独癖がある。しかし、実姉の信子にだけは、どんな細かいことでも話をしているようだ。ところが、この信子は独身のまま小泉の世話をしてきたものの、マスコミとはまったく没交渉で、写真も今から40年前のものが1枚公表されているだけ。うーむ、なんという政界奥の院なのでしょう。今どき写真をとるなんて、マスコミがその気になったら、いとも簡単なことだと思うのですが・・・。
 小泉は周囲にほとんど誰も寄せつけず、肉親の信子を唯一心の拠り所として、その政権を長期化しようとしている。それほど一国の首相に近い存在でありながら、写真もないなんて、マスコミはだらしなさすぎます。
 小泉の祖父である小泉又次郎は普選運動の闘士として庶民の人気が高かった。逓信大臣を2度もつとめている。この又次郎は、鳶(とび)出身で、背中から二の腕、足首まで入れ墨を入れていた。なるほど、そんな人物がいたのですか・・・。
 小泉政権は、支持率、アメリカ、マスコミ、財務省の4つの要素で支えられている。唯一の支持基盤が国民的人気にあることが自分でも分かっているから、テレビカメラがまわっているときと、回っていないときとでは、別人のように小泉の態度が変わる。
 スイッチが入ってアドレナリンが出ているときは、すごくテンションが高い。ところが、アドレナリンが出ていないときは、声も聞きとれないくらい小さく、話もまったくつまらない。テレビカメラがまわっていないと、ものすごくお座なりな対応になる。その落差は日増しにひどくなっている。
 ふーん、なんとなく分かる対応です。それくらいの軽い男なんですね。こんな薄皮まんじゅうのようなペラペラ男に日本国民がいつまでも黙ってついていくとは思えませんし、思いたくないのですが・・・。
 この本には、田中真紀子がいかに人間としてつまらない、わがまま勝手をしてきたか、その実像が描かれています。でも、つい最近、新聞に、小泉首相を鋭く批判するコメントを寄せていました。若者はテレビなんか見るばかりで考えが足りなくなっている。もっと新聞や本を読んで自分の頭で考えようという訴えものっていました。その点はまったく同感です。田中真紀子の人間像には共感できませんが、たまにはいいこと言うと、つい手を叩いてしまいました。

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