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2005年10月 の投稿

全核兵器消滅計画

カテゴリー:未分類

著者:中嶋 彰、出版社:講談社
 地球上のすべての核兵器をニュートリノをつかって消すことができる。うーん、すごい・・・。これはSF(サイエンス・フィクション)ではない。本のオビのそう書かれています。
 核軍拡競争の結果、今や地球上には2万発もの核兵器が存在します。それも、次第に小型化していますので、いつアルカイダの自爆テロの武器にならないとも限りません。恐ろしいことです。
 原爆に大爆発を起こさせる条件は、核物質の十分な合体とイニシエーターによる中性子の大量供給。プルトニウム240は、この2つの条件をことごとく台無しにしてしまう。だから、プルトニウム240の割合を減らして、プルトニウム239の比率を大幅に高めないと原爆は完成しない。
 ニュートリノは、身近な存在だ。太陽で発生したニュートリノは、地球にも降りそそいでいる。その数は、1平方センチあたり毎秒600億個にのぼる。ただし、ニュートリノは幽霊のような素粒子で、頭の上にやってきたニュートリノは、気がつかないうちに身体のなかを通過し、地球を貫通してどこかへ去っていく。電気的には中性で、検出するのは非常に難しい。そのニュートリノにも質量があると考えられている。予想によれば、ニュートリノの質量は電子の100万分の1。
 「超高エネルギーのニュートリノビームを利用した核爆弾の破壊」という論文を菅原寛孝が発表した。粒子加速器(ミュー粒子蓄積リング)で超高エネルギーのニュートリノを発生させ、ニュートリノを地球の裏側にある核爆弾に向かって発射する。そして、このニュートリノは、直径が1万3000キロメートルある地球の内部を光に匹敵する速さで通過して核爆弾に達する。すると、核爆弾は未熟爆発を起こし、バラバラに分解されてしまう。
 これに必要なニュートリノを発生させるには、瞬間的とはいえ、原子力発電所50基分が必要となる。つまり日本の発電設備の4分の1を投入しなければならないわけである。
 それでも、地球上の全核兵器を不能兵器に化してしまえるんだったら安いものだ。
 まさに、すごい発想の本です。でも、この本を読んでいると、なるほど、これもありうるんじゃないの、そんな気がしてきました。地道に核兵器の廃絶をめざす運動に取り組むのは、もちろん必要なことです。いずれにせよ、科学者には科学者の責任があるということも改めて考えさせられる本でした。

国際離婚

カテゴリー:未分類

著者:松尾寿子、出版社:集英社新書
 外国人の伴侶を見つけて国際結婚をしたいと願うのは、圧倒的に日本人女性の方が多い。彼女らは、決して小額とは言えない費用を支払って国際結婚紹介所に登録する。彼女らは、映画やテレビで見た世界から連想するようなアッパークラスの生活を夢見る。しかし、上流クラスの人たちと結婚することが、どれだけタフな神経を要求されることなのか、彼女たちは肝心なことが分かっていない。言語を操れるのは当たり前。それよりも話す内容が重視される。料理ができるかなんて、そんなのは問題じゃない。とてつもない錯誤がある。しかし、その錯誤によって、国際結婚紹介ビジネスは成りたっている。
 私の住む小都市にも、国際結婚紹介業を営む40歳代の男性がいます。近所にできた大手スーパーにおされて家業が倒産したあと、ショーパブで働く外人タレント向けの宝石販売業をしていましたが、もっともうかるビジネスに転身したのです。成約すれば、かなりの一時金が入ってくるそうです。では、そのあとで破綻したら、どうするのかと訊いたら、それなりのフォローはするけれど、もちろん責任をとることはないということでした。
 国際結婚は年間3万件。国際離婚は年1万5千件。日本人夫と外国人妻の離婚が1万2千件。日本人妻と外国人夫のそれは3千件。
 イギリスでは、離婚に合意しているときの別居期間が2年間、合意がなくても5年間の別居を証明できれば離婚できる。ドイツでは、それが1年と3年と短く定められている。
 日本と海外とでは、このように離婚に関する手続が異なっている。海外では専業主婦は不利に扱われることが多い。
 イスラム社会では、マフルという日本の結納金にあたる慣習がある。夫が離婚したいと行っても、このマフルを全額支払わない限り、夫側に離婚の権利はない。
 アメリカは、経済力が高い配偶者が親権を主張すれば、それが認められる国。もし母親が無職なら、働いている父親に親権がいくことはめずらしくない。
 結婚が破綻したとき、これからどういう人生を送っていきたいかと問いかけて答えられない日本人女性が少なくない。自分の人生すべてを国際結婚にかけ、結婚にあわせた人生設計をしてきたからではないか。それは時代に逆行している。
 離婚して子どもを連れて日本に帰ってきても住みにくい国。これが日本なのに、ちっとも分かっていない・・・。
 私の娘も海外に2年ほど住んでいました。それこそ国際結婚でもするのかと心配していましたが、なんとか独身のまま帰国してきました。生活習慣の違いなどを乗りこえるのがいかに大変なことか、この本を読むと改めてよく分かります。
 関東地方に育った私の配偶者は、いまでも豚骨スープの博多ラーメンは性にあわないといって食べようとしません。ラーメンは、やっぱりしょう油味がいいというのです。逆に私には、あんな水っぽいラーメンなんて本物のラーメンじゃないとしか思えないのですが・・・。

日本海海戦から100年

カテゴリー:未分類

著者:マヌエル・ドメック・ガルシア、出版社:鷹書房弓プレス
 対馬沖でロシアのバルチック艦隊と東郷平八郎元帥の率いる日本海軍がたたかったのは今から100年前の1905年5月27日でした。この対馬沖海戦をアルゼンチン海軍の大佐が日本軍の戦艦に乗って観戦していたというのです。初めて知りました。ほかにはイギリスの武官も乗っていたそうです。この本は、そのアルゼンチン武官による日本海海戦の戦闘状況と教訓についての報告です。
 なぜアルゼンチンかというと、イタリアの造船所でアルゼンチンのために巡洋艦2隻が建造中だったけれど、アルゼンチンと競争相手にあったチリとの間で和解協定が調印されて、アルゼンチンは購入できなくなったことから売りに出されたのです。ロシアと日本とが競って購入しようとしましたが、タッチの差で日本が購入できました。当時の日本円で 1500万円(153万ポンド)です。そのころの海軍省の予算が年に2900万円、日本の国家財政規模が2億6000万円というのですから、いかにも破格の値段です。日本は言い値のまま即金で購入しました。この二隻が日本海海戦に間にあい、大きな働きをしました。日進と春日です。
 この本を読むと、日露戦争に備えて、日本政府が10年の歳月をかけて着々と準備をすすめていたことがよく分かります。大国ロシアの方は、東洋の遅れた小国の日本なんかひとひねりだと見くびり、何の準備もしていなかったのです。
 著者は、日本とロシアの戦力を対比させて、兵器そのものの優劣というより兵員の教育・用兵上の戦術の違いだということを再三再四、強調しています。ロシア艦隊は、ただひとりロジェストウィンスキー提督によってすべてが統制されており、他の指揮官には自主的な権限は何も与えられていなかった。ところが、日本艦隊の方は東郷長官は細かいことにかかわりあわず、大局的な指揮にあたるのみで、戦闘の細部は各艦隊の指揮官に一任していた。
 日本海軍の水兵たちの士気は高く、その射撃は常に平然と順序だてて実施され、射撃の効果と弾着はよく観察されていた。ロシア側も活発に射撃はしていたが、照準は不正確で発射弾数の割に日本軍への損傷を与えることが少なかった。なるほど集団行動に順応しやすい日本人ですから、そうかもしれませんね。
 日本海海戦で日本艦隊の戦死者は88人、負傷者は611人だったのに比べて、ロシア側の戦死者は6000人に達した。ロシアのバルチック艦隊には1万5000人の将兵が乗り組んでいて、6400人が日本海軍の捕虜となり、1700人が中立湾に逃れ、900人がロシア領土にたどり着いた。
 日本海海戦の実情を知る一つの資料だと思いました。

戦争民営化

カテゴリー:未分類

著者:松本利秋、出版社:祥伝社新書
 2005年5月、1人の日本人兵士が戦死した。そのことで、にわかにクローズアップされた戦争代行業、民間軍事会社。世界に300社あり、総年商は10兆円を超す。売春とともに人類最古の職業である傭兵産業の実態に迫る。
 このようにオビに書かれています。
 戦争によって利益を得る連中が確かに存在するのです。この本は住友商事、NEC、三菱重工がイラクの戦後復興事業に参入して利益を得ようとしていることを明らかにしています。このところ、日本のマスコミの怠慢から、この種の報道がありませんでした。
 2003年11月2日、住友商事とNECはイラク国内での携帯電話事業につかう通信設備の一部を65万ドル(7,150万円)で受注した。次いで、2004年3月27日、イラク南部のバスラにあるハルサ発電所の修復プロジェクトを三菱重工が600万ドル(6億3000万円)で受注した。これには日本政府の援助金が充てられる。
 うーん、そうなんです。日本のODAのかなりの部分がこのパターンです。日本政府の援助金(もちろん私たちの支払った税金です)が、現地に進出した日本の企業に支払われ、日本国内に環流してくるのです。このとき、日本の政治家に莫大なリベートが支払われます。それは「決まったこと」なのです。知らぬが仏は、私たち日本国民だけです。
 軍事請負会社の最大手であるアメリカのMPRI社は、ペンタゴンと深く密接な関係をもち、アメリカ軍の訓練まで担当している。年間売上は1兆円にのぼる。
 イラクに駐留するアメリカ軍は13万人だが、それをサポートする民間軍事会社の社員は2万人もいる。アメリカ政府がイラク復興事業のために用意していた180億ドル(2兆1600億円)の25%、5400億円が開戦以来、今日までに民間軍事会社に支払われた。
 アメリカ軍の兵士がもらうのは年平均で4万〜5万ドル(450万〜560万円)。ところが、民間の傭兵になると、年収は1800万円から5600万円にもなる。そのほとんどが30代後半から40歳代の男盛りのベテラン戦闘員。
 すでにイラクでは何万人もの市民がアメリカ軍に殺されたと報道されています。その裏に、こうやって戦争を金もうけのタネにしている元将兵たちがいるのです。もちろん、彼らの上にはさらに自らは手を汚さず、ぬれ手にアワで金もうけしているチェイニーなどのアメリカ政府トップたちがぬくぬくとしています。本当に許せないことです。
 現在のイラクでは、バグダットの中心街から空港までの往復1時間ほどの警護を頼んだら、それだけで2000〜3000ドルを警備会社に支払わなくてはなりません。まさにイラクはどこでも戦場なのです。
 この本は、傭兵の歴史が古いこと、史上有名な撤退戦のなかでも、古代ギリシアのペルシアからの大撤退(紀元前401年)ほど困難なものはなかったとしています。へーん、そんな大撤退があったのか、ちっとも知りませんでした。
 ギリシアの傭兵軍がペルシアと戦いを優勢にすすめていたところ、総大将のキュロスが戦死してしまったので、大逆転して、それから6000キロもの大逃走をしたというのです。もっと詳しく知りたいものだと思いました。

俺たちのマグロ

カテゴリー:未分類

著者:斎藤健次、出版社:小学館
 マグロ漁船で7年間コック長をしていた体験談を語った「まぐろ土佐船」(小学館文庫)を読んでいましたので、今度も期待して読みました。いま、著者は千葉の習志野台でマグロ料理を中心とした居酒屋を営んでいます。東京からちょっと遠いのが難点ですが、ぜひ一度は行ってみたいと思っています。
 マグロは世界で202万トンとれ、日本が31万トンとり、ほかに36万トンを輸入している。つまり、世界のマグロの3分の1を日本は消費している。
 養殖マグロ。見た目には立派な魚体だ。その頭に包丁を入れると、まるで豆腐を崩すように包丁が入っていく。天然のマグロだったら、それこそ鋸でさえはね返すほどの堅さがあるのに・・・。これが本当にマグロと言えるのか。
 日本に名高い青森県大間(おおま)のホンマグロ。残念ながら、私は一度もお目にかかったことも、食べたこともありません。2000年の初セリで200キロのマグロ1本になんと2020万円という超高値がついて大騒動になりました。普通でも1本200万円から300万円します。このときは1キロ10万円もの値段がついたのです。シーズン中に、100隻あまりの漁船が出て、1日でたった4本のマグロしかとれないこともあたりまえの世界のようです。いったい、どんな味がしてるのでしょうね・・・。
 津軽海峡はエサが豊富で、そのエサを追う漁群もある。太平洋からきたマグロと、日本海から上ってきたマグロがぶつかる。脂の乗ったサンマ、イワシ、イカなどをたっぷり食べ尽くし、北の冷たい海が身を締める。それが大間のマグロだ。
 300キロ近いマグロになると、牛肉と同じで、数日間寝かせていたほうが深い味になるとのことです。
 やせたマグロとか色の出ないマグロを安く買って、赤身をよくたたき、食用の植物性油脂を混ぜる。よく練りあわせると、大トロでも中トロでも思いのままに仕上がる。これがスーパーや回転寿司で見かけるピンク色のネギトロ。ホンマグロ入りのネギトロというのは、本当は20%以上、ホンマグロが入っていないとダメなのに、実際にはホンマグロのネギトロとして売られている。
 台湾のマグロ船にスカウトされた日本人のベテラン船員の給与条件は次のようなもの。月給40万円。水揚2億円以上のときには、月4万円の手当がつくうえ、水揚げ高の
1.2%の歩合もつく。1航海14ヶ月で4億円の水揚げなら、トータルで1000万円。税金がないので、全額が自分の所得になる。
 いま冷凍マグロは、荷をまるごと売買する一船買取引きに変わり、築地市場に水揚げすることはない。商社が毎日、相場を身ながらマグロをセリにかける。これは1976年に卸売市場法改正でセリを通さない相対取引が認められたから。大手の商社はマイナス60度の巨大な冷凍庫をもち、莫大な資金力で、マグロ船一隻分すべて買い上げる。大手スーパーなどの量販店は、市場を通さず、直接に商社へ注文して、大量に買い付ける。これで商店街から魚屋が消えていく。築地の仲卸も代々受けつがれてきたノレンをおろして閉店するところが出始めた。
 日本のマグロ・ブームの内情と問題点をかなりつっこんで知ることができます。私はこの本を午前中に読みましたので、昼食は寿司屋に入ってネギトロ丼を食べました。ああ、大間のホンマグロのトロをぜひ一度食べてみたい・・・。

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