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2005年10月 の投稿

プリズン・ガール

カテゴリー:未分類

著者:有村朋美、出版社:ポプラ社
 24歳の日本人女性が日本脱出。ニューヨークで知りあったのがロシアン・マフィア。恋人としてつきあっていたら、ドラッグ密売組織に関係したとして懲役2年の実刑。そして連邦刑務所で22ヶ月すごしたという恐ろしい体験記です。
 フワフワした日本人の若い女の子が、カッコいい白人男性にうまく騙されてしまったという、よくある定番の話なんですが、22ヶ月の連邦刑務所の体験記が明るくサラッと描かれていますので、最後までさっと苦もなく読み通すことができます。そして、連邦刑務所の「自由な」生活ぶりに、日本の刑務所とのあまりの違いに驚かされます。
 彼女が入れられた連邦刑務所の人種構成はラテン系50%、アフリカ系40%、残る10%が白人とアジアパーク系。白人は少ない。アメリカの女子刑務所は、レズビアン社会でもある。
 刑務所内には電子レンジが2台あり、朝から晩まで常にフル稼働している。みんな電子レンジで料理をつくっている。食材は売店で買えるもののほか、キッチンから裏ルートで持ち出され、隠れて肉や魚が売り買いされている。ステーキ、バーベキュー、魚のグリル、中華料理など、すべて電子レンジでつくることができる。
 連邦刑務所は組織犯罪がらみの囚人が多い。それは麻薬ビジネスがほとんどだから。組織的な麻薬ビジネスに対する量刑はきわめて重い。殺人や強盗などの暴力系犯罪は、ほとんど州刑務所に入る。だから、州刑務所より連邦刑務所の方が、はるかに所内の雰囲気がまともであり、穏やかだ。
 連邦刑務所の食事は、下手なニューヨークのレストランより、よほど美味しい。朝はパン3枚、ゆで卵2個、コーンフレーク取り放題。飲み物はドリンクバーで、飲み放題。
 昼は、スープバーとサラダバーがある。毎日、一品が日替わり。
 夕食も、ハンバーグやスパゲティなど毎日一品が日替わり。日曜日はローストビーフ。食堂以外でも、電子レンジをつかって美味しいものが食べられる。
 刑務所から外へ電話をかけることもできる。2つの刑務所から同時に外部に電話して、別々の刑務所にいる囚人同士が電話で話すという芸当もありうる。しかし、これは見つかったら処罰される。さらに国際電話もOKだ。1回の通話は15分まで話せる。ただし、有料だし、当局から傍受されている。
 著者は、刑務所のなかで日本語を教え、ピアノも教えていました。芸は身を助けます。
 フワフワした軽い女の子が、アメリカの刑務所のなかで、最後まで希望を失わずに生きのび、こうやって日本に戻って体験記を書いてくれました。これによってアメリカの一面を多くの人に知らせることができたのですから、彼女もしっかり日本人の役に立っています。私はそう思いました。

自民党迂回献金システムの闇

カテゴリー:未分類

著者:東京新聞取材班、出版社:角川書店
 例の橋本元首相が料亭で1億円の小切手を受けとった事件を東京新聞が連載記事で追跡していったのを本にまとめたものです。歯科医にはぜひ読んでもらいたいと思いました。
まるでデタラメな世界ですね。歯科医師会というのは・・・。あまりの腐臭に鼻をつまみたくなりました。
 歯科医師会の会長選挙は、かつての日弁連会長選挙と同じで、代議員による間接選挙です。会長候補は全国141人の代議員を買収してまわるのです。高級スカーフなどの手みやげと10万円から30万円の現金を配って行脚します。このほか、学閥(有力なのが6つあるそうです)の同窓会長には多額のお金が動きます。このような会長選での代議員の買収は今にはじまったことではなく、長らくの慣例になっていました。逮捕された臼田前会長は、代議員の買収資金だけで8000万円つかったそうです。しかも、それは自腹を切ったのではありません。自分が会長をしていた日大歯学部同窓会の資金を横領していたというのです。ひどいものです。呆れてモノが言えません。歯科医師の意識って、そんなに低いのでしょうか。なんだか信じられません・・・。
 歯科医師会は政治連盟(日歯連)をつくって歯科医師に都合のよい政策を実現するため、自民党議員に多額の政治献金をそそぎこみました。たった1人のペーペーの議員にも、役に立つと思ったら1億円以上も貢いだというのですから、半端じゃありません。
 公明党の坂口厚生大臣(当時)にも2000万円を政治献金しようとして、400万円手渡しましたが、8ヶ月後に戻され、事件にはなりませんでした。同じように、橋本元首相の1億円についても立件されず、村岡元官房長官1人が在宅起訴されて終わりました。おかしなことです。トップはいつも安泰なのです。
 日歯連は年間18億円の予算を動かし、自民党の最大のスポンサーになっています。臼田元会長が3000万円を横領しても発覚しないシステムが確立していたのです。驚くべき伏魔殿としか言いようがありません。
 日歯連は自民党へ3年間に15億円も献金していました。いえ、もちろんストレートではありません。国政協という迂回献金システムがあるのです。国政協とは国民政治協会という自民党の政治資金団体です。総務省に登録されています。政策をカネで買うというのを日歯連は文字どおり実践していたのです。自分の会長選も横領したお金で代議員を買収して勝ちとったくらいですから、他人のお金をつかって政策を買収するのに、何のためらいもなかったのでしょう。
 お金を日歯連からもらっていた議員が実名で何人か登場しています。石原伸晃(慎太郎の息子のひとりです)、鴻池祥肇、そして福岡の古賀誠と山崎拓議員です。でも、みんな団体から政治献金をもらって何が悪いの、と開き直っています。
 やはり、政治献金は個人からに限るべきです。企業も団体も政治献金はできないと立法で定める必要があります。ところが、小泉首相は、自民党に迂回献金はないと絶叫しながら、迂回献金を禁止する法改正に反対して、つぶしてしまいました。
 日歯連が毎年、政界にばらまいてきたお金は7億円にもなるそうです。すごいものです。だから、元首相にポンと1億円を献金したりするわけです。全国の歯科医が会費として拠出したのがこうやって自民党に流れていって裏金になっているのです。それが、どれだけ日本の政治をダメにしているのか、歯科医師のみなさんには大いに反省してほしいものだと心の底から思いました。
 その意味で私は、歯科医師会とその政治連盟を相手に裁判し、自動的に日歯連の会費を徴収するのをやめさせた勇気ある歯科医師の方々には大いなる敬意を表明します。

50歳からの旅行医学

カテゴリー:未分類

著者:篠塚 規、出版社:講談社α新書
 50代も半ばを過ぎている私たち団塊の世代には大変役に立つ実用書で、旅行にもっていくべき薬の名前が具体的に書かれていたり、参考になるところがたくさんありました。
 著者も団塊世代のお医者さんです。日本旅行医学会の専務理事という肩書きがあります。
 旅は毎年、定期的に行くほうが健康効果が高い。旅への準備期間が長くとれ、健康面でも周到に準備できる。ふだんの生活にも励みとハリが生まれる。
 私は、40歳になってから、少なくとも年に1回は海外旅行に出かけるようにしています。といっても、全世界をまわるつもりはありません。なるべく言葉の通じるところがいいからです。これまで行ったことのある国は、多い順にいうとアメリカ、(日本はアメリカの何年か後を追いかけていっている社会ですから、弁護士会の視察先としては、どうしても多くなります)、中国、フランス、韓国(以上が、複数回、行きました)、マレーシア、タイ、ニューカレドニア、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、オーストリアです。アフリカにも行ってはみたいのですが・・・。
 まず荷物は少なくする。1グラムでも軽くすることが原則。無駄なものは持っていかない。私は大賛成ですし、実践しています。この点、観光立国スイスはたいしたものです。フライ・バゲージという便利なシステムがあります。外国で重いスーツケースをかかえてウロウロする必要がないというのは大変に助かります。
 健康のために梅干しをもっていることはあっても、日本食などは絶対にもっていきません。ミネラルウォーターをスーツケースに何本も入れている人がいたのを見たときには、驚きのあまり言葉を喪ってしまいました。着替えも最小限です。ホテルで洗濯しますし、わが家にある古い下着をもっていって、旅先で捨ててきます。紙製ブリーフなども愛用します。
 今回のフランスに携帯湯わかしを持っていかなかったのは失敗でした。どのホテルにもポットがありませんでした。中国のホテルだと、毎日、お茶の入ったポットを持ってきてくれるのですが・・・。やっぱり、熱い日本茶を飲みたいときがありますから、そんなとき、海外旅行用の携帯湯わかしは必需品だと思います。
 靴はウォーキングシューズを2足もっていきます。この本の著者は1足で足りるとしていますが、やはり2足あった方がいいように私は思います。
 下痢しないためには氷にも気をつける。私はマレーシアでかき氷が出されたので困ってしまったことがあります。日本でも、大人になってからはほとんど食べないので、写真をとるふりをしてカメラをかまえて席を立ってごまかしました。
 下痢したときには、すぐ下痢止めの薬を飲んではいけない。悪い菌を体外に出してしまったあとに薬は飲むべきで、2日ほどがまんした方がよい。知りませんでした。そして、水分と塩分をとる。アルコールや、お茶、コーヒーは下痢を悪化させるので、絶対に避けるべきだ。うーん、なるほど、そうなんですか・・・。
 海外旅行で下痢や便秘を防ぐには、毎朝、ヨーグルトを食べるといい。牛乳だとおなかがゴロゴロするが、それは乳糖のせい。ヨーグルトは、その乳糖を分解し、整腸作用があるから、おすすめ。
 朝食はいつもより軽目にし、ディナー夕食の予定があるときには昼もサラダなどで軽くすませた方がいい。まったくそのとおりだと思います。昼は、2人で1本のサンドイッチを分けてすましたりしました。フランスでは、サラダといっても日本と違ってたっぷりのボリュームがあります。
 ひとつの都市に最低2泊、できれば3泊以上するのが、おすすめ。まったくそのとおりだと思います。3泊すると、あいだの2日間を、ゆっくり過ごすことができます。とても心が落ち着きます。もう50代になっているのですから、あわただしく動きまわすのは似合いません。ゆっくり、じっくり自分の足で動きまわるのがいいように思います。
 ふむ、ふむ、なるほど、かなり既に実践しているところがあるぞ、うん。でも、知らないこともたくさんあって、とても役に立ちました。今度はどこへ行こうかな。やっぱり久しぶりに南フランスに行ってみようかな・・・。

美姫血戦

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著者:富樫倫太郎、出版社:実業之日本社
 幕末の箱館(今の函館)、五稜郭をめぐる維新政府と幕府軍との最後の戦争を舞台とした小説です。といっても、主人公は松前で日本初のパン屋を開業した和菓子職人なのがユニークです。そうなのか、日本で初めてパンをつくるために、職人はパン種(だね)を手に入れるのに苦労したのか・・・、よく分かりました。
 新選組の土方歳三も箱館にまで流れてきていました。ここで、戦死したのです。
 松前藩の内部での勤王派と佐幕派との内紛も背景となっています。維新政府軍は、新式の大砲や小銃ももっていましたが、烏合の衆のために統制がとれず、初戦ではなかなか苦戦したようです。それでも援軍を次々とくり出して幕府軍を追いつめていきました。小説ではありますが、箱館戦争の様子がよく分かりました。
 そして、パンづくりです。最大の問題はパン種をどうするかということでした。当時、箱館にはロシアの領事館があり、パンをつくっていました。でも、パン種は厳重な秘密になっていたのです。大金をつかって教えてもらうか、弟子入りして作り方を盗むしかないという状況でした。それを、日本人の助手から玄米からでもつくれるということを教わり、試行錯誤のうえ、なんとか成功したのです。味噌をつかって味のいいパンをつくることができたということも描かれています。
 主人公が慕う姫君は結核にかかっていました。結核は当時はまったく不治の病でした。父の仇をとろうとして、治療も放棄して銃をとって戦おうとする、いじらしい姫君がいとおしく思われてきます。幕末の函館の姿を知ることのできる小説です。

素数ゼミの謎

カテゴリー:未分類

著者:吉村 仁、出版社:文芸春秋
 アメリカには、17年ごとに地上にはい出てきて鳴くセミがいます。地域ごとに、仲間の群れが何十もあって、それぞれの地域で13年あるいは17年ごとに出てくるのです。
 氷河時代を生きのびたセミたちは、温かくなって身体が大きく育つまで、ひたすら天敵の来ない地下で生活します。それも17年という気の遠くなりそうな期間です。すごいものです。偶数だと、地上に出たとき別の種のセミしかいなくて、同種のセミに会えずに終わる危険があります。いろんな種類のセミが混ざりあってしまわないためには、素数しかないのです。大自然の巧まらざる偉大な工夫のひとつです。
 それにしても、13年とか17年に1度だけ、何億匹も大量発生し、あたり一帯では話もできないほどうるさいというのは驚くべきことです。そして、地上に出て鳴くのは、わずか2週間だけなのです。これは日本と同じです。17年セミの大きさは日本のセミより小ぶりだそうです。
 写真と図解によって、この素数ゼミについて解明されています。大変分かりやすい本です。セミが恐竜時代からの生き物であることも、この本で知りました。たかがセミ、されどセミなのです・・・。

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