著者:上田恵介、出版社:築地書館
さまざまな生き物が、だましあって生きていることに目を見開かされます。この本の表紙写真は、虫食の痕まで葉っぱそっくりのコノハムシです。ちょっとやそっとでは、とても見破れません。
別の種類のメスに擬態してオスを誘い、うまく近づいてきたらパクッとそのオス魚を食べてしまう魚が南アメリカ(ギアナ)にいるそうです。
擬態というのは、姿や形だけではありません。音声をまねする音響擬態まであるというのです。驚きました。托卵する小鳥がいますよね。たとえば、カッコウはヨシキリに托卵します。
ヨシキリのヒナは、親に食べ物をねだるとき、大きな口を開けて、「シッ」という1音を間をおいてくり返し鳴く。だから巣内のヒナ全員が鳴くと、途切れなく「シシシシ」と聞こえる。親鳥は、目の前の大口に刺激され、騒々しい声にも励まされ、すべてのヒナが口を閉じて静かになるまで、せっせと食べ物を運ぶ。
ところで、カッコウのヒナは宿主の卵を全部外に押し出してしまうから、巣内にたった一羽だけ残ることになる。大きな口をあけても、口は一つでしかない。しかし、カッコウのヒナのエサをねだる声は、一羽しかいないとはとても思えないほどのにぎやかさで、「シシシシ」と、まるでたくさんのヒナがそこにいるかのように鳴く。つまり、カッコウのヒナは、たった1羽でも十分に食べて成長できるように、そのねだり声をヨシキリの1巣分のヒナがいて、エサをねだっているかのように擬態させ、宿主の行動を操っているのです。
小鳥もモノマネが上手です。ヒヨドリは、近くの梢でツーピーツーピーと歌っていたシジュウカラが飛び去ったあと、同じ替え歌で鳴き返す。これは私も実際に体験しました。聞き慣れない小鳥のさえずり声が聞こえるのですが、そこにいるのは、いつも見慣れたヒヨドリでした。まさか、と思いました。この本を読んで謎がとけました。
モズは、もっとすごい。10から20種類前後の小鳥の鳴き真似をする。キビタキはツクツクホーシーと鳴くことができる。
生き物の世界って、本当に奥が深いんですね。
擬態
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