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高瀬川女船歌

著者:澤田ふじ子、出版社:幻冬舎文庫
 いやあ、うまいですね。すごく読ませます。まさしくストーリーテラーの極致です。しっぽりとした江戸情緒にみるみる引きこまれていきます。なんとなく幸せな気分になります。とかくもめごとの絶えない憂き世ではありますが、それでも案外、捨てたものではないのですよね、この世の中は・・・。
 京都の町なかを流れる幅4間の高瀬川。岸は柳の並木となり、平底の高瀬船が往来します。高瀬川は角倉了以が幕府の許可を得て7万5千両の私費を投じて開削し、年間1万両もの収入を得ていた。その代わりに、毎年銀2百枚の運上銀を上納していた。
 その高瀬川の船溜りにある旅籠(はたご)「柏屋」に働く人々が章ごとに人を変えて主人公として登場します。それぞれに重い過去を引きずっているのです。1章1章が完結しているようで、また、全体として見事な綾を織りなしています。その人情豊かな話が、春の川面に吹きわたる風のように、いくらか冷やっとしつつ、また、あたたか味も感じさせながら、読み手の心の中を吹き抜けていきます。そんな情緒にみちた時代小説です。すべてがハッピーエンドではありません。それでも、生きてて良かったよね、そんな、ほっとした思いにしてくれるのも間違いないのです。
 ちょっと落ちこんだとき、気分転換にもってこいの本としておすすめします。

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