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2005年6月 の投稿

北京原人物語

カテゴリー:未分類

著者:ノエル・T・ボアズ、青土社
 北京原人の発掘された頭骨は第二次大戦中、日本軍が北京を占領していたときに行方不明となり、今も謎のままです。
 この本によると、北京協和医学院に保管されていた頭骨等を当時の院長がたいした価値はないと考えてぐずぐずしているうちにアメリカ海兵隊の手に渡り、そこでいいかげんに扱われ、そのうち中国人に竜骨という精力剤として粉々になっていったのだろうということです。真相は分かりませんが、残念なことです。たしかなことは、日本軍が北京を占領することがなかったら、行方不明になることもなかったということです。
 この本が面白いのは、その所在を探る前半部分よりも、北京原人とは何だったのか、どういう生活をしていたのかを検証している後半部分です。発掘風景の写真がたくさんあり、それをコンピューターで三次元復元しています。発掘当初はダイナマイト発破をかけたり乱暴な作業だったようですが、途中からは精密な発掘作業だったことが写真をみて、よく分かりました。
 北京原人は、洞窟にすみついていたハイエナから火をつかって獲物の肉を脅して横取りしていたとしています。北京原人は開けた場所に木の枝を組みあわせた小屋で生活していたというのです。それは洞窟のなかで常時、火をつかって人間が生活していた残存物がないことが根拠になっています。
 北京原人の頭骨が分厚いところから、男同士が争うような状況で生活していたのではないかという推測もなされています。それほど平和な生活環境ではなかったというのです。獲物をめぐってか、女性をめぐってか、激しい争いがあり、頭部を保護するために頭骨が厚くなっているのです。うーん、そういうことなのかなー・・・。ちょっと意外でした。
 北京原人は言葉を話せず、それほど手先が器用でもなかった。しかし、両面加工した石器をつくっていたし、火を使いこなしていた。なにより、氷河時代を何十万年も生き抜いてきた。そして、現生人類へ進化するうちに絶滅していった。
 著者は、このような仮説をたてています。

ゴリラ

カテゴリー:未分類

著者:山極寿一、出版社:東京大学出版会
 ゴリラには、ほかの動物にはない特徴がある。それは、ゴリラのなかに人類の由来と未来を見ることができるということ。挨拶するとき、人間は手のひらをあわせるが、ゴリラは手の甲で触れあう。
 ゴリラはストレスに大変弱い。ゴリラの孤児を収容して育てる施設がある。しかし、人間と違って、ゴリラは孤児にすらなれない。ゴリラの赤ん坊は、生まれて1年間は母親から手厚い保護を受け、その後はシルバーバックや年上の子どもたちの密接なつきあいを通して成長する。母親や世話をしてくれるシルバーバックから引き離されると、たとえ乳離れしていても、急速に衰弱して死んでしまうことが多い。
 ゴリラの保護は地元の理解なしにはありえない。ゴリラの密猟は、自然公園と公園に雇用された仲間に対する恨みからなされることがある。
 また、カメルーンでは、年間500頭以上のゴリラはブッシュミートとして、牛肉より1.6倍も高価な肉資源である。しかし、ゴリラは4年に1度しか出産せず、成熟するのに十数年かかる。だから、回復不能な打撃を受けることになる。
 今のところ、ゴリラはアフリカ大陸全体で11万頭ほど生育しているとみられている。しかし、いつ絶滅しないとも限らない。ゴリラの天敵は、ヒョウ。ヒョウを恐れる習性がゴリラの行動に影響し、メスはオスを保護者として頼ることになる。
 ゴリラ学者って大変だなとつくづく思ったのは、ゴリラの糞をじっくり調べるというのが基本となるということです。もちろん、臭いもあるのです。でも、ゴリラは菜食主義者ですから、それほど臭くはないのでしょう。といっても、大変やっかいな作業にはちがいありません。
 私は、ゴリラやチンパンジーの本はたくさん読みました。人間とは何かを知るうえで、ゴリラやチンパンジーなどとの違いを認識することは欠かせないことです。でも、知れば知るほど、人間との違いが分からなくなるというのも現実です。ゴリラの生態を紹介する写真がたくさんありますので、それを眺めるだけでも楽しい本です。

持続可能な都市

カテゴリー:未分類

著者:福川裕一、出版社:岩波書店
 東京に行くたびに超高層ビルが増えているなと思います。芝あたり、新橋あたり、続々と建ち並んでいます。モノレールの沿線もすごいものです。いえ、国会議事堂のすぐ近くにもすごいビルが建っていて驚きました。国政の中心たる国会議事堂を毎日、足元に見おろしながら仕事をしている人たちがいるのです。どんな気持ちなんでしょうか・・・。ただし、さすがに皇居を見おろす超高層ビルは少ないようです。
 この本では和歌山城の天守閣(67メートル)を見おろす20階建ビル(80メートル)がまず槍玉にあがっていますが、古都京都の駅ビルとタワーも問題だと私は思います。景観との調和が考えられたものとは、とても思えません。駅ビルのホテルに泊まりましたが、細長くて迷路のような通路でした。いかにもゴチャゴチャした超近代的ビルです。古都らしさを残すという発想がまったくないのに改めて呆れてしまいました。
 和歌山では、デベロッパーが中高層ビルでは経済的な採算がとれないと主張し、自治体が同調したということです。そんな超高層ビルに入りたがるのは、いったい誰なのか。
 仕上がりのよい超高層タワービルに入居したがっているのは、ひとフロアーだけ借りられたらよい小企業や3〜4フロアーを借りたい法律事務所である。彼らは大きなフロアーを要求しているのではなく、超高層ビルの提供する建物のイメージによって自社のイメージアップを狙っている。
 うーん、なるほど、もうかっている法律事務所は超高層ビルに入居したがるのですね。9.11で狙われたWTCにも法律事務所がたくさん入っていました。そうなんです。超高層ビルは、偉ぶったり、優位性の誇示だったり、単なる虚栄心をみたす存在なのです。
 東京の都区部だけで、20階以上の超高層のマンションやビルが5年間で200棟ほど建つといいます。大変なラッシュです。私はこの本を読んで驚きました。規制緩和のかけ声のなかで、超高層ビルを建てるについて環境影響評価(アセスメント)手続が必要ないとされたというのです。
 イギリスでは、反対に、公共住宅について超高層ビルを建てるのをやめてしまったそうです。子どもの健全な心身の成長に悪い影響があるからです。そのことは既に実証ずみのところなのです。同じ面積の土地に75戸を建てるより、低層型かそれとも中層型とオフィス・商店を混在させた町づくりの方がよほど住みやすいものになるという研究成果があります。私もそうだろうと思います。人が居住するには、せいぜい5階建てくらいがいいということです。車が入ってこれない、歩いて動きまわれるのが真のコミュニティです。その意味では、ショッピングセンターは、コミュニティではありません。営利目的の企業が人々の購買意欲をかきたてる。人工的に人々を自然のサイクルから引き離し、時間を忘れさせ、天候の変化にも気づかせない。人並みにお金を使うことのできない人は排除される。ショッピングモールが与えるのは自分の住む土地そして隣人への愛着ではなく、煩わしさのない匿名性でしかない。
 なるほど、と思いました。わが町にもデパートがなくなり、銀座通り商店街はシャッター通りとなって閑古鳥が鳴いています。ただひとつのショッピングモールのみ人が集まっていますが、町全体はさびれていく一方です。

スパイのためのハンドブック

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著者:ウォルフガング・ロッツ、出版社:ハヤカワ文庫
 イスラエルにモサドというアメリカのCIAをしのぐ秘密諜報部があるというのは有名です。そのエジプト駐在員として大活躍し、エジプト政府に逮捕され、第三次中東戦争のときに5000人のエジプト人捕虜と交換に釈放されたという大物スパイが自分の体験をふまえて、スパイになる方法を一般人に向けて書いた本です。面白い内容ですが、私には、とてもスパイはつとまりそうにもないと実感しました。
 嘘に熟達していなければ、スパイとして決して成功しない。
 著者は捕まるまで5年間もちこたえたが、一般に現地工作員の平均稼働年数は3年間。ゾルゲは日本にどれくらいいたんだったっけ・・・。
 二重スパイに転向する工作員の大部分は、短期間に大金をつくるつもりでそうするが、その富を楽しむほど長生きした者はほとんどいない。
 スパイになりたいと思う人は多いが、いくじなし、ひっこみ思案の人、あるいは決断力のない人がこの業界に入る余地はない。規則は破るしかない。この仕事につく者はおのれの才覚だけをたよりに生き、そして生き続けるしかない。
 著者は元ナチス軍にいたドイツ人ビジネスマンを装いました。そこで、ロンメル・アフリカ軍団にいたことにするため、ことこまかいことまで記憶するよう100回も書いて努力したそうです。
 人生の盛りを情報部で過ごし、たびたび不愉快な目にあい、毎日のように自由や生命を失うような危険に直面した。その代償としてもらうわずかな手当では、いざというときのための貯金さえできない。しかし、そのいざという日は、情報部を退職するときに必ずやってくる。
 捕まったときは、相手がどの程度知っているか探りだそうとせよ。黙りこくってはいけない。相手と議論し、論争し、弁明せよ。英雄的沈黙を守ろうとしてはいけない。話し続けよ。もっとも大切なことは、相手に話し続けさせること。黙秘権の行使ではダメなんですね・・・。
 相手に悪口雑言をぶつけて怒らせよ。腹をたてた人は、自分のいうことに注意しなくなる。相手が具体的な証拠をつきつけてくるときは、十分な予備知識がある。ともかく殴ってくるときは、彼らの知っていることは少ない。全部知っていることはまずない。
 大きな嘘に小さな真実を混ぜる。ほんの少し真実を提供して相手に確かめさせ、それを手のこんだ嘘で飾りたてて違った方向に導くのだ。
 なるほど、なるほどと思いました。スパイになるのは大変ですし、スパイを続けるのはいかにも非人間的な大変な苦労をともなうようです。

スウェーデンの中学校

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著者:宇野幹雄、出版社:新評論
 コペンハーゲンには一度だけ行ったことがあります。落ち着いたすごくいい町でした。
 団塊世代の日本人男性が日本で大学を卒業したあとスウェーデンの大学に入り、卒業後、公立中学校の教員になります。その20年以上の体験をふまえてスウェーデンの教育状況が紹介されていますが、日本との違いも分かって面白い本です。
 中学校の生徒会は国会と呼ばれ、イジメをなくす委員会、快適委員会、授業委員会の3つから成っている。ということは、スウェーデンでも生徒のイジメはあるということ。
 スウェーデンの学校には、何らかの理由で学校の生徒名簿に名前がのらない生徒がいる。
 スウェーデンの高校・大学に入学するときには入学試験はない。たとえば中学3年の春学期の成績による内申書のみで、学力試験はない。だから受験塾もない。
 中学校には、中間テストとか期末テストとか、まったくない。しかも、一週間に同一クラスで2科目以上の試験をしてはならないという不文律がある。
 スウェーデンの中学校には、3年間のうちに合計5週間の労働実習がカリキュラムのなかに組みこまれている。生徒に給料は出ないけれど、何かプレゼントすることはある。
 日本では、わずか1週間の実習をする県が2つ(兵庫県と富山県)あるけれど、まだまだ。スウェーデンに学ぶところは大きいと思いました。

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