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2005年5月 の投稿

帝国の傲慢

カテゴリー:未分類

著者:マイケル・ショワー、出版社:日経BP社
 CIA幹部がビン・ラディンとのたたかいでアメリカの戦争が成果をあげていないことを暴露した本です。アメリカで50万部売れたベストセラー本だそうです。
 アメリカのイラクに対する侵略は、1846年のメキシコ戦争と同じく、差し迫った脅威を呈していない相手に対して経済的利益を狙いに、挑発もされないのに戦端を開いた強欲で計画的な侵略戦争だ。
 この戦争は子々孫々の代まで続くおそれがあり、主としてアメリカ本土が戦場となる可能性がある。アルカイダが再びアメリカ本土に攻撃を加えてくる可能性がますます高まっており、次の攻撃は9.11を上まわる被害をもたらすおそれがあり、しかも大量破壊兵器が使用される心配がある。
 ビン・ラディンの戦力の90%が生き延びている。アフガン人は一人としてビン・ラディンの情報を寄せなかった。現代において、ビン・ラディンこそが全能なるアッラーに自らを捧げた英雄である。ビン・ラディンは虐げられた人々の解放者である。人々はビン・ラディンを尊敬するだけでなく、愛している。ビン・ラディンのために働いて命を落とすなら本望だと人々は考えている。
 アメリカから見たら邪悪な自爆テロ実行犯は、イスラムから見たら殉教の英雄であり、予言者の指導に従ってその足跡をたどり、神の言葉に従う善男善女ということになる。
 ビン・ラディンは明瞭な言葉で語り、その言葉と行為が一致していることで評価されている。ビン・ラディンが聖戦に関する権威者の一人として、アメリカに対して大量破壊兵器の使用を必要と判断し、その使用は宗教的に法に適う行為だと確信していることは明白だ。だから、ビン・ラディンとアルカイダがアメリカ国内で大量破壊兵器を使用したとしても、驚くに値しない。
 アメリカでは、たしかに対テロ対策費は大幅に増額された。アルカイダなどの武装勢力に対抗するための技術と人材は劇的に増強された。テロ対策にたずさわる人間の数は急増した。ただし、大半は未経験者で、数少ないベテランから必要な知識を学ぶには何年もかかる。司法省は国内における保護対策に着手したというが、それは残念なことに国家安全保障の名のもとにアメリカ国民の自由を制限する対策である・・・。
 アメリカが戦っている敵は、優れた才能と不屈の気概を持ち、カリスマ性と断固たる決意を備え、その垂範と指導力によって一部の狂信的イスラム教徒のみならず大多数のイスラム教徒を統率してアメリカの安全保障を脅かしている。このような共通認識をもってあたるべきだ。著者は、このことを再三強調しています。
 アメリカが戦っている相手は世界規模のイスラム武装勢力であり、単なる犯罪者やテロリスとではない。アメリカの政策や対策は敵にはほんの小さな打撃を与えたにすぎない。世界13億人のイスラム教徒の大半がアメリカを憎悪している原因は、単に価値観の相違ではなく、アメリカの行為そのものにあることを認識すべきだ。
 さすがは、CIAでイスラム世界の対策に従事していた人の言葉だけはあるな。そう感心しました。アメリカは傲慢が原因で敗北しようとしているという指摘に、私も同感です。いかにアメリカが近代兵器を駆使しようとも、また、フセイン元大統領を捕まえ、その息子たちを虐殺することができたとはいえ、イラク国内でのテロ攻撃は止まりません。すでにアメリカの戦死者は1500人をこえました。
 アフガニスタンでは、オマル師もビン・ラディンもまったく消息不明のままです。力づくで押さえこみ、石油などの利権だけはアメリカが独占しようとする政策には明らかに限界があります。日本は、そんなアメリカに追随してはいけません。

古代エジプト文字を読む事典

カテゴリー:未分類

著者:秋山慎一、出版社:東京堂出版
 春うららかな日曜日の昼下がり、昼食をとりながら古代エジプトのヒエログリフに挑戦しました。ながら族は消化に良くないという説もあるようですが、そんなことはないと私は確信しています。ひとりで食べるときには、新聞を読んだり、本を読みながらでも一向にかまわないと思います。だって、私は30回は噛むようにしていますので、時間がかかりますし、頭のなかが楽しくなるようなら食欲もすすみ、消化に悪かろうはずはありません。
 この本は、古代エジプトのヒエログリフ、ほら、あのシャンポリオンがついに解読に成功した絵文字のことです、を文法をふくめて分かりやすく解説したものです。といっても、実は、その文法の点はさっぱり分かりませんでした。やっぱり、本を読むくらいでヒエログリフがモノになると考えるのは甘すぎます。それでも、絵文字がどんなことを書いているのか、そこにどんな法則があるのか、おぼろげながら分かった気がしてきました。
 ヒエログリフの文字体系は、日本語の漢字仮名まじり文と通じるところがある。表音でもあり、表意でもあるから。英語のような単なる表音文字ではないので、ヒエログリフは目で見て確認しないと読むこともできない。
 また、ヒエログリフはタテ書きも横書きもあります。この点も日本語と同じです。漢字をくずしてカタカナやひらがながつくられたような草書体まであります。神官文字と約されているヒエラティックですが、これは神官が用いたという意味ではないそうです。筆ですぐ書けるように考えだされた文字です。
 眺めているだけで4000年も前の古代エジプト王国の生活にたどりつけるのですから、こんな愉快なことはありません。

ツバメのくらし百科

カテゴリー:未分類

著者:大田眞也、出版社:弦書房
 今年も3月下旬からツバメの飛ぶのを見かけるようになりました。北海道では5月以降にならないと飛んでいないそうです。ツバメは、9月末には南方へ飛び去っていきます。日本のツバメはインドネシアやフィリピンからやって来るのです。繁殖が目的です。
 まず雄がやってきて雌を迎えます。雄はしきりに鳴いてプロポーズしますが、その決定権は雌にあります。そのポイントは尾羽の長さです。というのは、寄生虫(ダニ)がいたり病原体に感染していると、尾羽の成長が悪くなるので、尾羽が長いのは健康の証明だからです。ふーん、なるほどねー・・・。
 ツバメは、毎年だいたい同じ巣に戻ります。その子どもも近くに巣をつくります。そして、雄と雌の両方が生きていたら、ずっと同じ巣に戻ってきます。同じパートナーが5年も続いたという観察例があるそうです。しかし、雌はつがいの雄の目を盗んで浮気をすることがあります。そのとき、独身の雄より経験豊富で実績のある既婚の雄を受け入れる傾向が強いといいます。人間も同じでしょうか・・・。いや違うかな。女性は、やっぱり若いツバメを好むのかもしれませんね。
 ところで、次のような観察例が報告されています。まず雌がやって来た。雄は新顔だった。ところが、産卵寸前になって、昨年のパートナーがひょっこり姿を現した。さあ、大変。三角関係。雄同士でとっくみあいの激しい争いが始まった。雌は、そのときどうしたか。高見の見物を決めこんだか・・・。いえ、そうではなく、遅れて帰ってきた雄を激しく排撃したのは、実は雌の方だった。雌は、限られた繁殖期間を目前にして、生死不明で、再び巡りあえるかどうか分からない、かつてのパートナーを待つ余裕はない。いったん、新たに番いを形成したからには、一度諦めたかつての番いの相手と巡り会えても、もはや無縁の異性と見なして割り切らなければいけない。そうでなければ種族維持もできなくなる・・・。このような解説がなされています。うーん、人間社会だったら、どうなんでしょうね・・・。ツバメに学ばされました。
 ツバメの巣は、できるだけ人目につきやすいところにつくられます。それは人間によって、天敵から守ってもらおうという魂胆からのことです。巣の場所を最終的に決めるのも雌の方です。ヒナが生まれて、親ツバメがエサをやるときには、もっとも大きく開いたヒナの口にエサをつっこみます。もっとも大きく口を開けるのは、もっとも腹を空かしたヒナなのです。ヒナたちは、巣内での位置を絶えず入れ替わっていて、もっとも空腹のヒナが正面のもっとも良い場所に陣どる。この仕組みによって、ヒナたちは平等にエサを受けとり、一様に成長していく。ひゃあー、そうだったのかー・・。
 ヒナが巣立つ日は、親ツバメの態度が一変し、ヒナには巣の外からエサを見せびらかすだけで絶対に与えない。そこで、空腹に耐えかねたヒナが意を決して巣から飛びたって親元に向かう。親ツバメはヒナを安全なところまで誘導すると、そこではじめてエサを与えるというのです。親心なんですね・・・。
 ツバメの渡りのときのスピードは時速90キロくらいらしいのです。大変なスピードですよね。それにしても、はるばるインドネシアまで行くのに何日間かかるのでしょうか。
 ツバメのことがよく分かる本です。わが家にはツバメの巣はありませんが、スズメがいます。今度はスズメについて、その生態を紹介した本を読んでみたいと思っています。どなたか、いい本があったらぜひご紹介ください。

忠誠の代償

カテゴリー:未分類

著者:ロン・サスキンド、出版社:日本経済新聞社
 オニール前財務長官が語るブッシュ政権の正体とオビにあります。また、大統領を震撼させた衝撃の内幕本とも銘うっています。なるほど、ブッシュ政権の寒々しい内幕がよく分かります。
 ブッシュ大統領は団塊世代。マイケル・ムーア監督の映画「華氏911」を見た人は覚えているでしょう。9.11事件を知らされたときのボー然とした表情のブッシュの顔は、ノータリン男の間抜け面の典型でした。よくもこんな男でアメリカの大統領がつとまるものだと思ったことでした。嘘だと思ったら、ぜひ一度あの場面を見てください。まるで何も考えていないことがよく分かる表情をしています。
 オニール財務長官はブッシュ大統領と定期的に1対1で話すことのできる地位にありました。そのオニール長官がそのときのことをこう語っているのです。
 ブッシュは何も質問しなかった。表情を変えずにオニールを見つめ、肯定的なものも、否定的なものも、反応らしきものはまったく示さなかった。ブッシュは重要な資料を読むことはしないし、周囲から期待されてもいない。ブッシュは、しばしば私は直観でやると高言する。
 だから、ブッシュ政権には前途なんてない。もともと政策を評価し、効果的に検討して一貫した統制をとる組織なんて存在しないも同然だ。いや、ブッシュの側近で実権を握っている者はごく少数ながらいる。ローブ、ヒューズ、カードそしてライス。
 ブッシュは重要な権限を他人に委ねている。政権内部の大多数がそれを見抜いている。ブッシュは十分に考え抜かれたとはいえないような極度に観念論な意見に踊らされている。ブッシュが出席する重要な会議、たとえば、閣議や国家安全保障会議には綿密な台本が用意されている。大統領が報告書を読むなんて思ってはいけない。ホワイトハウス内のスタッフはこう言っているそうです。ブッシュは、耳が聞こえない人間ばかりの部屋にいる目が見えない人間のようなもの。お互いに何の疎通も見られない。このように表現されています。呆れてモノも言えません。
 オニールとパウエルとクリスティの3人は、ブッシュの隠れみのとして利用されただけ。 背筋がゾクゾク寒気を覚える本です。身近にいた人間がここまでブッシュの正体を暴いていいものかと心配になったほどです。そんなブッシュ大統領が2期目、再選されたなんて、今でも信じられない思いです。
 ところで、この本にはこんなエピソードが紹介されています。
 ブッシュ大統領の参加する内輪だけのパーティーのとき、子どものころお母さんにねだった好きな料理は何でしたか、そう質問されたブッシュは次のように答えました。
 とんでもない。母は一度も料理したことなんてありません。あの人は指に霜焼けをこしらえていましたよ。いつも冷凍庫から取り出すだけでしたから・・・。
 なんだか寒々とした情景ですね。ブッシュは父親もアメリカ大統領だったわけですが、親の愛情に恵まれず、不幸な家庭で育ったようですね。可哀想といえば、かわいそうです。

ドッグメン、第三軍犬小隊

カテゴリー:未分類

著者:ウィリアム・W・パトニー、出版社:星雲社
 今や観光地として名高いグアム島を日本軍が占領していたことがありました。そこへ、1944年7月、アメリカ軍が反撃して進攻し、1ヶ月もたたぬうちに制圧しました。このとき、アメリカ軍の死傷者は7000人、日本軍は1万8500人が生命を落として、8000人が降伏せずにジャングルに身を潜めました。横井さんとか小野田さんとか日本軍の生き残りがジャングルに隠れていた、あのグアム島です。
 反撃するとき、アメリカ軍の海兵隊は720頭の犬を率いていました。第三軍犬小隊は110人の兵士がいて、軍犬のハンドラーとして戦闘に従事したのです。これらの軍犬は戦後549頭がアメリカに戻りました。再訓練の効果は十分にあがり、民間の暮らしに戻れなかったのは、わずか4頭でした。そのような軍犬の訓練の様子とグアム戦での従軍経過を当事者が紹介した本です。
 軍犬は凶暴さより、むしろ家庭のペットと同じく、知性、従順さ、忠誠心、スタミナ、信頼性、鋭い聴覚と臭覚とが求められる。ある程度の攻撃性は必要だが、ハンドラーがそれを制御できる範囲内でなければならない。たとえば、恐怖から噛む犬は極端に臆病で、卑怯な振る舞いをする。犬は自分との関係を支配してくれる人間を好むものだ。
 軍犬は訓練によって戦場では声を出さないように教えこまれるそうです。なるほど、ですね。
 この本を読んでもっとも驚いたのは、日本軍が自殺的なバンザイ攻撃をする前夜の様子がアメリカ軍に察知されていたということです。この本には次のように紹介されています。
 テンホー山の山頂に日本軍兵士は大集団を成して酒を飲み酔っぱらっていた。日本兵の集団は遠く離れていたにもかかわらず、叫んだり怒鳴ったりする声がアメリカ軍にも聞こえていたし、目撃されていた。日本兵は、空いた酒瓶を宙に放り投げたり、銃剣や軍刀を振りまわしたりして、予定の攻撃に向けて、自らを熱狂に駆り立てていた。
 日本軍兵士の突撃はアメリカ軍の機関銃と小銃射撃によって撃退されたが、第一波、第二波、第三波と襲いかかり、波の切れ目がなくなっていった。日本兵は絶叫する暴徒の群れとなって、次から次へと押し寄せた。彼らは100人単位で命を落とした。
 なんだか、本当に哀れな状況です。バンザイ突撃を今でも聖戦視する見方があるようですが、こんな不条理な戦闘を最前線の兵士に強いた日本軍上層部の責任は糾弾するほかありません。第二次大戦においてアメリカ軍で軍犬が活躍していたことを初めて知ると同時に、日本軍によるバンザイ突撃の不条理さを改めて認識させられた本でした。

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