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2005年5月 の投稿

ネアンデルタール人の正体

カテゴリー:未分類

著者:赤澤 威、出版社:朝日新聞社
 「彼らの悩みに迫る」というサブ・タイトルがついています。その生活だけでなく、思考にまで迫ってみようという意欲的な本です。そのあらわれのひとつが、復元写真と図解です。石器をつくり、火を燃やし、動物を家族で解体し、骨髄をしゃぶっているカラー口絵が紹介されています。
 毛皮を口にくわえ、歯でなめしていた状況や、死者を埋葬するとき、花をとって投げ入れていた様子も描かれています。あっと驚いたのは、ネアンデルタール人に背広を着せると、もちろんヒゲもそっていますが、まるで現代人と同じ格好になるということです。
 しかし、ネアンデルタール人はわれわれ現代人の祖先ではありません。ネアンデルタール人はヨーロッパ周辺の寒冷地にいてアジアには住んでいませんでしたが、絶滅してしまいました。クロマニヨン人との混血説は否定されています。
 人類がアフリカ起源であることはよく知られています。しかし、アフリカ起源は600万年前と20万年前と、2回あったそうです。改めて認識しました。いずれにせよ、現代人がアフリカ人を共通の祖先とすることは間違いない事実なのです。白人だから優秀だとか、黄色人種だから偉いとかいっても、何の根拠もないことがよく分かります。
 縄文時代の日本の人口は20万人くらいだったことが紹介されています。へー、そんなに少なかったのか、と驚いてしまいました。
 化石骨の分析から、何を食べていたのかまで分かる。そんな指摘があるのにもビックリです。タンパク質コラーゲンの同位体を分析すると、タンパク質がどのような植物に由来するか復元できるというのです。ネアンデルタール人は食肉中心の食生活であり、クロマニヨン人は動物の肉だけでなく、淡水魚も食べていました。
 ネアンデルタール人は、数万年間、毎日毎日同じことを繰り返していたと推定されています。現代人の私たちからすると、何の変化もなく、退屈でおもしろくない生活だったことでしょう。そこにどんな悩みがあったか、こたえはもちろん出ていません。

星野道夫と見た風景

カテゴリー:未分類

著者:星野道子、出版社:新潮社
 写真家・星野道夫がカムチャッカ半島でヒグマに襲われて8年もたったそうです。奥さんが事故の真相を明らかにしています。彼はテレビ番組の取材に同行していたのです。このとき、心ない人物がヒグマを確実に撮影するために、ヒグマをおびき寄せようと考えて人間の食料を与えたらしいのです。ロッジを離れて、ひとりテント生活を送っていた彼を、お腹を空かしたヒグマが襲いかかりました・・・。
 キャンプ生活のときには、身のまわりに置かない、食後はすぐに食器を洗って片づける。そんなアドバイスを、奥さんは彼から受けていたと書かれています。彼が大変用心深かったことがよく分かります。惜しまれてなりません。
 それにしても新鮮なカットの写真集です。どれも生命の躍動を感じさせます。クマの親子が寄り添っている風景は、全身で信頼していることがよく伝わってきます。そして、アザラシの赤ちゃんの可愛いことといったら、ありません。白いぬいぐるみなんてものではありませんね、これは・・・。オッパイ飲んで満ち足りてスヤスヤ眠っている赤ちゃんの黒くぬれた鼻は生命力にみちあふれています。夕日にかがやく一群のカリブーたちの写真も傑作写真です。
 手にとって頁をめくるだけでも、ひととき心をなごませてくれる、いい写真集でした。

国家の罠

カテゴリー:未分類

著者:佐藤 優、出版社:新潮社
 鈴木宗男代議士の腰巾着とも、外務省のラスプーチンとも呼ばれていて、今や刑事被告人となった男性による弁明・反論の書物です。
 著者は鈴木代議士を今も高く評価しています。鈴木氏は学校の成績とは別の、本質的な頭の良さ、類い希な「地(じ)アタマ」をもった政治家だった。鈴木には嫉妬心が希薄だ。そうなのかなー、そうなのかもしれないな。でも、同世代の私にはあのエゲツなさ(もちろん会ったことはないのですが・・・)には、辟易します。旧来の典型的な政治屋としか思えないのですが・・・。
 次のような構図が描かれています。外務省は田中真紀子外相によって組織が弱体化したことから、これまで潜在化していた省内対立を顕在化させ、機能不全を起こして組織全体が危機的な状況へと陥った。そこで、危機の元凶となった田中女史を放逐するために鈴木宗男の政治的影響力を最大限に活用した。そして田中女史が放逐されたあとは、「用ずみ」となった鈴木宗男を整理した。その過程で鈴木宗男と親しかった著者も整理された・・・。
 田中真紀子女史が外相のとき、アメリカのアーミテージ国務副長官との会談をドタキャンした話は有名です。このとき、田中女史は、公務に従事していたわけでもなく、実は大臣就任祝いにもらった胡蝶蘭への礼状を書いていたという話が紹介されています。驚くべき馬鹿げた話です。アメリカの言いなりにはならないぞという決意を示したまでという裏話でもあれば救われる気がしますが・・・。
 ところで、外務省幹部の日本人観は次のようなものだそうです。日本人の実質識字率は5%でしかないから、新聞は影響力をもたない。物事は、ワイドショーと週刊誌の中吊り広告で動いていく。
 イスラエルの人口600万人のうちアラブ系100万人を除くと、旧ソ連諸国から移住した100万人はユダヤ人の2割を占めることになる。それほどロシア系の人々はイスラエルに力をもっている。したがって、ロシア内部のことはイスラエルにいてもよく分かる関係にある。このように著者は説明しています。はじめて両者の関係を知りました。日本の東郷茂徳元外相の妻(エディ夫人)はユダヤ系だそうです。これまた初めて知りました。
 著者が逮捕されてからついた弁護人は、いずれもヤメ検だったようです。その弁護人が著者に何とすすめたか、興味深いところです。土日は弁護士面会がないので、週末に検察官は徹底的に落とそうと攻勢をかけてくる。だんだん検察官が味方に見え、弁護人が敵に見えてくるようになる。その策略に気をつけるべきだ。国家が本気になれば、何だってできる。ロシアでも日本でも、それは同じこと。国策捜査の対象になったら絶対に勝てない。自分は何もやっていないのに不当逮捕されたから黙秘するというのもひとつの選択だが、公判の現状では黙秘は不利だ。とくに特捜事案では黙秘しない方がよい。事実関係をきちんと話して否認することだ。
 うーん、黙秘はすすめないのかなー・・・。不当逮捕(デッチ上げ)事件で完全黙秘をすすめたことのある私は、いささか疑問に思いました。実は、取調べにあたった検察官も次のように言ったそうです。
 中村喜四郎(元建設相)は、過激派みたいに本当に黙秘するもんだから、こっち(検察)だって徹底的にやっちまえという気持ちになった。うーん、そうなのかー・・・。
 山本譲司元代議士(一審の実刑判決に控訴せず服役しました。その刑務所体験記を本にして、最近、テレビドラマになりましたね・・・)については、内部告発があったので、検察庁としても手をつけざるをえなくなった。まさか実刑になるとは思っていなかった。世論が税金の使い方に厳しくなったことに裁判所が敏感に反応したのだ。裁判所というところは結構、世論に敏感だから・・・。
 この事件は、鈴木宗男を狙った国策捜査なんだ・・・。横領だと個人犯罪だけど、背任にしたら組織を巻きこむことができる・・・。検察官の言葉だそうです。
 著者は2000年までに日露平和条約を締結するという国策の実現のために必死に動いてきただけだ。このようにしきりに強調しています。しかし、著者が国策、国策というのを強調するのに、かなり違和感を感じて仕方がありませんでした。それは日本の外交官全体に対する私の徹底した不信感から来るものかもしれません。いったい、これまでの戦後日本の外交にアメリカを離れた独自の視点と行動があったのでしょうか。もしあったというのなら、それを国民の目の前に分かりやすく形で示してほしいものです。小さな私的利益が大きな国策というオブラートに包まれているだけなのではないのか・・・。アメリカでライス国務長官から町村外相が常任理事国入りを焦っていることをたしなめられたという記事を読んで、改めてそのように痛感しました。
 それにしても、密室で取調べにあたった検事の言動がここまで具体的に明らかにされると、検察官の言動は一層慎重になることを期待してもよさそうですが、どんなものでしょうか・・・。

フード・ポリティクス

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著者:マリオン・ネスル、出版社:新曜社
 食品会社はタバコ 会社と同じである。いつだって国民の健康よりも株主のニーズを優先させる。テレビの視聴時間は、太りすぎを予測する最良の指標のひとつである。太りすぎの率は1970年代公判から1990年代前半にかけて倍増し、6歳から11歳までの子どもで8%が14%に、12歳以上の子どもは6%が12%となった。同じく、太りすぎの大人は25%だったのが35%になった。
 アメリカ人の食事の半分近くが家の外であり、その4分の1はファーストフードである。
 食品の広告の70%はファーストフードである。塩は加工食品の業界にとって必要不可欠。塩は水を結合させ、非常に低コストで食品の重さを増し、加工食品の味を良くし、のどを乾かす。塩は、「もっと食べよう」を促進する。
 牛乳は、人間の赤ちゃんが消化吸収するには濃すぎる栄養分を含んでいる。粉ミルクは母乳の特性のほとんどをもっているが、すべてではない。もっとも重要な違いは、赤ちゃんが病原体から身を守るための免疫物質が欠けていることである。母乳だけでなく粉ミルクを与えたときの方がエイズの感染率は高い。母親がエイズに感染していない場合、粉ミルクで育てられた子どもは、母乳で育てられた子どもに比べて下痢で死亡する率が6倍にのぼる。
 子どもたちに、高コレステロール、高血圧の子が増え、「成人型」糖尿病の発生率がどんどん低年齢化している。肥満児の率が、白人23%、メキシコ系29%、黒人31%となっている。子どもが標的となり、テレビコマーシャルは学校現場にまで入りこんでいる。学校にソフトドリンクを押しつけるドリンク販売権まである。会社は学校にお金を支払うかわりに、その学区内のすべての学校で自社のソフトドリンクを販売できるのである。ソフトドリンクとは、カロリーが高くて、栄養価が低い食品だ。
 アメリカの食生活がいかに貧しいか、そして子どもたちが狙われていることがよく分かる本です。それにしても465頁という大部な本を読みとおすのには骨が折れました。

安曇野の白い庭

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著者:丸山健二、出版社:新潮文庫
 「荒野の庭」という写真集(求龍堂)を見て、すごい庭だと感嘆しましたが、この本は、その庭がつくられる過程がリアルに再現されています。私の自慢の庭も50坪ほどの広さがありますが、安曇野の山のふもとに350坪もあるというのです。すごいものです。
 芽吹きの季節、よく晴れた日の、風のない、宵口に、自分で造った庭に佇むときの気分といったらない。これこそが至福ではないかと思えた。著者の言葉に私も共感します。
 今まさに芽吹きの季節です。五月のゴールデンウィークはどこにも出かけず、庭づくりに精を出しました。よく晴れた日の、風のない宵口にたたずんで遠くの山を眺め、夕暮れにかかっていく空を見上げます。庭にいると、鳥たちが何してるのと、すぐそばまで寄ってきます。鳩が豆鉄砲を喰らったときの目という表現がありますが、キジバトの目は、いつもそんな感じです。秋から冬にかけて毎年やってくるジョウビタキは、わずか1メートルほどの距離まで近づいて来て、尻尾をチョンチョンと上下させて挨拶してくれます。四季折々のたくさんの花、そして鳥たちと一緒にいると、まさに至福のときです。
 いろんな木を植えた話が出てきます。長野県の山のふもとですから、九州とはかなり様子が違います。私も、たくさんの木を植えては、素人の悲しさで枯らしてしまいました。ピンクのハナミズキは2年ほど見事に咲いてくれたのに、いつのまにか枯れさせてしまいました。柿やイチジク、サンショウなどは大きくなる前に姿を消してしまいました。キウイのオスは今、3代目です。人間と同じで、オスの木は弱いのです。2代続けて枯れてしまいました。メスの木はとても強くて勢いが良すぎたので、大胆にカットしてやりました。早くオスの木が大きくなって、キウイの実がなることを願っています。
 いま、花はクレマチスとナデシコが咲いています。クレマチスは、古くはテッセンとも呼ばれていたそうです。花の色もいろいろあります。赤紫色から濃い青紫色まで。純白のクレマチスの平たい花びらが雨にうたれている風情には、なにかしら源氏物語絵巻をしのばせる気品を感じます。
 あっ、そうそう。ジャーマンアイリスも咲いています。いつのまにか青紫色一色になってしまったので、少し色の種類を増やしました。チョコレート色など、色も形もいかにも華麗で派手な花です。純白のジャーマンアイリスも咲きました。見事なホワイトです。ところが、このジャーマンアイリスは人の手がかかるのを嫌うのです。放っておけばいい。いえ、それどころか、いじめにあうと、ますます美しく咲くのです。ですから、ときどき植えかえるのが美しく花を咲かせるコツなのです。それも、コチコチの地面のところを浅く掘って、そこに放置する感じで植えつけ、あとは水やりなど世話は一切しないのです。この本で庭づくりの奥の深さを改めて感じました。

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