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2005年2月 の投稿

これが働きたい会社だ

カテゴリー:未分類

著者:渡辺正裕、出版社:幻冬舎
 会社勤めの経験のない私には、社風というものが、率直にいってよくイメージがつかめません。それでも、この本を読むとなんとなくイメージがわきます。
 労働組合が弱いというのでキャノンが紹介され、逆に強いというのは全日空とNTTドコモです。社員の生活を守るうえで強い労働組合が果たしている役割は大きいようで、会社を辞める人はほとんどいないそうです。私は、とてもいいことだと思います。
 NTTドコモでは、有休は全部消化するということです。いまの日本では強い労働組合は少なくなってしまいました。貴重な存在です。
 日本生命は目下、20時消灯に向け努力中です。東京海上は20時半に消灯するので、あとは自分の蛍光灯をもちこんで仕事をしています。JTBは「死ぬ」ほどの忙しさです。離職率が5年で3割というのも当然です。
 三菱商事は入社10年目で年収1200万円。5時間をこえるフライトはビジネスクラスを使います。三井物産では海外勤務は給与が2倍、休みも5倍となっています。1人あたり1億円稼ぐのが目標の目安というのですから、それも当然なんでしょう。
 松下電器は昼休みか朝に全員で綱領と7精神を唱和し、毎日1人ずつ3分間スピーチをします。いまどき、そんなことをしているのか・・・と驚きます。まるで宗教団体です。
 同じように富士通でも毎朝8時40分に出社すると、朝礼で全員が毎日1人1分スピーチをします。ここでは、出世は上司に尽くしてきた時間のトータルで決まります。移籍すると出世できない仕掛けです。
 うーん、会社人間というのは昔から大変なんですね・・・。

警察組織迷走の構図

カテゴリー:未分類

著者:来栖三郎、出版社:実業之日本社
 いま日本の重要凶悪事件について警察の検挙率は48%。半分以上が検挙されていない。
 迷宮入りの大事件がこんなにも多いことに改めて驚かされる。世田谷一家四人殺害事件、警察庁長官狙撃事件、朝日新聞阪神支局襲撃事件、綾瀬マンション母子強殺事件。そして、八王子スーパー射殺事件、さらに、グリコ・森永事件、古くは三億円現金輸送車強奪事件(私が大学2年生のときの事件です。学園紛争のため授業がない日が続いていた12月10日に起きました。当時の3億円という金額は腰を抜かすほどの巨額でした。今なら24億円にあたるそうです)が本書で取り上げられ、警察の初動捜査のミスなどが厳しく指摘されている。著者は警視正までのぼりつめた元警察幹部だけあって、第一線の実情もふまえて分析している。
 それにしても、指紋鑑定で、6ヶ所の特徴点が一致するので犯人だと断定したという埼玉県警鑑識課のお粗末さにはあいた口がふさがらない。日本の警察がいくら優秀だと自慢しても私はとても信じられない。トップの警察庁長官が狙撃されたというのに、その犯人さえ検挙できないのではお話にもならないと思う。
 警察幹部の次の2つの講話に、私は眼を疑った。
 「凶悪重要事件の検挙率を向上させるため、これからは自転車盗難や万引き、単なる暴行などの軽微事件の取り扱いを抑制して、重要事件の捜査に力を注ぐように指導されたい」
 「軽微事件の抑制・取扱い拒否から発展した警察不祥事が続発しているので、今後は、たとえ軽微事件や小さい事件であっても、被害者が解決を望んでいるものならば、親身になって取り扱うようにされたい」
 こんな姿勢で、本当に日本の治安は回復されるのか、ついつい不安にかられてしまう。

市民と武装

カテゴリー:未分類

著者:小熊英二、出版社:慶應義塾大学出版会
 現在、アメリカ全土に2億2千万挺の銃があり、最低25ドルで購入できる。10代の死亡原因の4分の1は銃によるもの。高校生の4分の1近くが学校に銃を持ちこんでいる。1990年におきた2万3千件の殺人事件のうち6割で銃が使われた。どうして、こうなったのか?
 先住民や自然の脅威にさらされていた植民者たちの開拓共同体にとって、構成員の武装は権利というよりも、共同体の防衛に不可欠な義務だった。そのため、独立以前のヴァージニアでは家長の武装を要求しており、貧しくて銃が買えないときには政府が供給することにしていた。武装の有無のチェックの場は教会であり、毎日曜の礼拝には銃を持参しなければならなかった。同じころ、マサチューセッツでは、非武装の市民には課税していた。防衛で貢献できないのなら、税を支払って貢献すべしというわけだ。1792年、連邦議会は軍務年齢の市民に全員武装を要求した。
 アメリカの独立戦争のとき、独立革命軍に参加した開拓民たちは対先住民戦の経験者たちだった。植民者は、先住民を文明の圏外とみなし、だまし打ち、非戦闘員の殺害、略奪、焦土戦術など、あらゆる手段を用いた。先住民たちの多くの部族はアメリカ植民者と戦うためイギリス軍と同盟したので、アメリカ軍は焦土戦術で対抗した。
 イギリス側が黒人奴隷に対して、武器をとって国王の軍隊に参加するなら自由を与えると宣言したため、大量の黒人奴隷がイギリス側に逃亡し、アメリカ側は大きな衝撃を受けた。独立派は黒人を兵士に徴募しなかった。武装する権利は自由な市民のものであり、黒人は奴隷はもちろん自由黒人であっても、その権利はなかった。
 イギリス軍には黒人や浮浪者などが含まれ、王政の方が、均質な市民の共同体よりも、多様性に寛容であるという皮肉な事態が出現していた。
 独立軍の方も次第に黒人の参加を認めるようになっていき、最終的には5000人の黒人が参加した。黒人解放運動にとって、武装の獲得と防衛への参加が大きな目標の一つとなっていた。
 アメリカで銃規制がすすまない歴史的経過を知ることができた。

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