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2005年2月 の投稿

伊藤博文と韓国併合

カテゴリー:未分類

著者:海野福寿、出版社:青木書店
 この本で面白く、目新しいところは、死せる伊藤博文を登場させて同時代の人々と対話させているところです。100年後のダイアローグと銘うっています。それが、なるほど今生きているのなら伊藤博文が本当に言いそうなセリフになっていて、感心します。凶弾に倒れた伊藤博文も、若いころは実はテロリストでした。イギリス公使館の焼き打ちに加わり、塙保己一の息子を斬殺もしています。
 この本を読んで驚いたのは、伊藤博文を殺したのは安重根だとばかり思っていましたが、ケネディ暗殺事件と同様に、真の暗殺犯人は別にいるという話があるということです。同行していた貴族院議員(室田義文)は、駅の2階の食堂からカービン銃(フランス製の騎兵銃)で3発の弾丸が上から下へ伊藤の身体にあたった。安重根が下の方から狙って撃った弾丸ではない、と一貫して主張していたというのです。
 では、真犯人は誰なのか。それは、伊藤を邪魔ものと考えていた日本政府内の反対派、対韓侵略積極派の明石元二郎少将ないし後藤新平あたりだ。そんな説があるというのです。うーん、そうだったのか・・・。伊藤博文の遺体から摘出されたはずの弾丸が裁判の証拠になっていないというのは、たしかに不可解です。伊藤博文は韓国併合に反対ではありませんでしたが、国際協調も大切にすべきだと考えていました。そこを不満だと考えた反対派がいたわけです。
 朝鮮人はえらい。この国の歴史を見てもその進歩は日本よりはるか上にあった時代がある。才能においてお互いに劣ることはない。人民が悪いのではなく、政治が悪かった。
 国さえ治まれば、人民は質量ともに不足はない。韓国と合併すべきだという議論があるが、合併の必要はない。
 伊藤博文暗殺の背景について、もっと知りたくなりました。

カブトムシと進化論

カテゴリー:未分類

著者:河野和男、出版社:新思索社
 ダーウィン進化論に異議ありという理論は、正直なところさっぱり分かりませんでした。でも、世界中のカブトムシやクワガタムシのコレクションの写真は実に素晴らしく、何回見ても見飽きることがありません。
 カブトムシが犬くらいの大きさであったとしたら、この世でもっとも迫力のある生きものであることは間違いない。そんなダーウィンの言葉が紹介されています。なるほど体調10センチほどのコーカサスカブトムシのツノの見事さにはほれぼれするばかりです。ツノが5本あるカブトムシ(ゴホンツノカブトムシ)がいることも初めて知りました。カブトムシは温帯よりも熱帯地方にたくさんの種類がいます。それこそ大小さまざまで、ツノも長かったり短かったり、いろいろです。
 個体発生は系統発生を繰り返すという説は定説になっているものと思っていましたが、なんと、今では荒唐無稽な説として否定されているそうです。でも、本当にそうなのかしらん・・・?
 いま地球は第6回目の大絶滅のまっただなかにあるのではないか、という著者の指摘に接して、ドキッとしました。これまでの5回の大絶滅は地球環境の変化や天然災害が原因だったとしても、今回の第6回目は、人間が原因をつくっているのではないのか。しかも、その絶滅のスピードが早すぎる。そう指摘されています。うーん、そうなんですよね・・・。たとえば、熱帯雨林は、地球上の全陸地の1.4%を占めるにすぎないけれど、全植物種の44%、動物種の33%をかかえている。その熱帯雨林が消滅しつつある。そうなったら、これらの動植物種も絶滅してしまうだろう。生物分類群は、一度失われてしまえば、たとえ何千何万年、何億年かけても、それと同じものが再び地球上に進化してくる可能性はない。進化にセカンドチャンスはない。
 いろんなカブトムシを眺めることができるのは、人間がいろいろいてもいいということを意味しています。カブトムシの種類が少なくなったら、人間だって多様性の保障はありません。私たちは目先の利害にばかりにとらわれすぎているとしか思えません。いかがでしょうか・・・。

若杉裁判長

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著者:菊池 寛、出版社:文芸春秋新社
 図書館から菊池寛文学全集を借りて読みました。かなり古い小説です。なぜ今ごろ読んだかというと、先ごろ夏樹静子さんの講演を聴く機会があったのですが、そのなかで紹介されたからです。
 夏樹さんは『量刑』という推理小説を書いています。裁判長の家庭生活にもふれたストーリーです。裁判長の娘が誘拐され、判決について脅迫されるという舞台設定なのです。裁判官や弁護士に取材した苦労話が語られました。そのなかで、大勢のベテラン裁判官の前で、「裁判官の世間知らず」を問題とされました。多くのベテラン裁判官は「世間知らず」という言葉にひどく反撥します。たくさんの事件を扱うなかで、世の中を表も裏からも自分たちほど知っているものはいないという強い自負があります。むしろ、弁護士の方こそ世間知らずじゃないかと口角泡をとばす勢いで反論の弁を滔々と述べたてるのが常です。たしかに、弁護士がどれだけ世間を知っていると言えるのか。いつのまにか弁護士生活30年を過ぎた私も、世間のことは本当にまだまだよく分かっていないな。そう思うことがしばしばです。でも、裁判官は、自分たちが思っているほどには世間を知らないのではないか。私はつくづくそう思います。
 ところで、若杉裁判長は執行猶予をよくつけるというので名裁判長という評判が高い裁判官でした。しかし、ある晩、自宅に泥棒に入られて、すっかり考えが変わりました。法廷に立たされた被告人は、どれもかしこまった、ペコペコ頭を下げ、神妙に縮みあがっている男ばかりだった。ところが、目の前の泥棒は、そんなおとなしい人間ではなく、見つけたからには居直ってやろうという肚をありありと見せている。赤裸々な人間同志の力づくの関係しかそこにはなかった。若杉裁判長は全身を押し詰まされるような名状しがたい不快な圧迫を感じた。若杉裁判長は、それからは世間が当然に執行猶予がつくと思っていた事件でも、実刑判決を下すようになった。
 うーん、なんだか、まさに絵にかいたようなドラスチックな展開です。
 私は、このごろ、若い裁判官に対する不満よりも、高裁レベルのベテラン裁判官に対して強い不満を抱いています。いかにもことなかれ、現状(行政)追従・追認のやる気のない審理態度と判決が多すぎる気がしてなりません。若い裁判官が重箱の隅をつつくような質問をするのは、まだ許せます。やる気が感じられるからです。でも、無気力な現状追認と自己保身しか考えていないような裁判官にはどんどんやめてもらいたいのです。
 このところ年間に6人ほどの裁判官が10年目の再任を拒否されていますが、私はとても良いことだと考えています。裁判官の評価アンケートを弁護士会で実施しています。福岡では会員の4分の1ほどの回答がありますが、C(悪い)評価の裁判官も少なくはありません。そんな人は裁判官に向かないのです。さっさと国民のために辞めてもらいたいものです。

母に歌う子守唄

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著者:落合恵子、出版社:朝日新聞社
 私の母は大正2年生まれですから、90歳をこえています。家のなかを歩いていて骨折して入院したのです。それが、やはり良くありませんでした。痴呆というわけではありませんが、娘や息子をきちんと認識しているのか、かなり怪しいところがあります。それでも、声をかけると返事してくれますし、変に固まった身体を無理に動かそうとするとにらまれてしまいます。そんな母をつきっきりで介護してくれる姉夫婦には頭が下がります。まったく感謝するばかりです。
 この本には、自分の母親の介護をする女性の苦労がにじみ出ています。年をとって介護を受ける身になってから、その体験をもとに介護について発言できたら世の中は劇的に変わることでしょう。しかし、それはありえません。ということは、介護する人が介護される人の気持ちをおもんぱかるしかないのです。
 信頼していたヘルパーさんに裏切られた話も出てきます。できるはずのない床ずれが母親にできてしまったのです。なぜか。ヘルパーさんは家族の見えないところで手を抜いていたわけです。うーん、困りますよね・・・。
 いつかみんな介護される側にまわるはずなのに、なぜか年々冷たくなっていく世の中です。これって、おかしいですよね?

松下政経塾とは何か

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著者:出井康博、出版社:新潮新書
 松下幸之助が自民党に変わる新党結成を夢見て70億円を投資してつくった「現代の松下村塾」は、一見すると華々しい成果をあげているように見える。なにしろ200人をこす卒塾生のなかから、29人の国会議員、26人の地方議会議員、5人の首長を輩出しているのだから・・・。しかし、彼らは本当に日本のために役に立つ政治家と言えるのだろうか・・・。私はかなり疑問を感じている。街頭でラグビーのユニフォームを着たり、自転車で走ったりのパフォーマンスで、どうやったらテレビの話題づくりがうまくいくのか、そればっかりなのではないか。果たして、国民の生活の実態をふまえて日本の政治がどうあるべきかを真剣に議論しているのか。「負け組」を自己責任だとして突き放した議論をしていないのか。
 松下幸之助は、欲望は力であり、人間の活力だと考えると高言していた。同時に、欲望は力だから、悪にも善にもなるとも言った。
 現実に、政界のなかでの塾出身者の評判はいいどころか、悪い。政治家として何をするかではなく、政治家になること自体が目的となっている。塾出身者は人をだますことはできても、人の心までつかむことはできない。政経塾は、権力を持たない者が成り上がるための装置にすぎない。
 塾生の研修資金は1年目で月に20万円、2年目からは月25万円。加えて年間100〜150万円の活動資金が支給される。寮費は月4500円でしかない。
 塾出身者が民主党に多いのは、自民党から出たくても、すでに選挙区が埋まっているから。小選挙区で自民党候補の空きが出ても、公認されるのは2世か関係者のみで、前職と縁のない新人が出馬できる可能性は限りなく低い。だから、官僚出身者も民主党へ流れている。自民党も民主党もベースに違いはないからだ。
 高校のときの同級生が、いま県知事をしています。大学生のときに同じクラスにいた人物が自民党の代議士になっています。どちらも政界を渡り歩いてきました。ブームに乗って、新自由クラブとか新党なんとかです。当選しなければタダの人とは言うものの、国民不在、政策なしにただ権力と金力を握りたいという自己の欲望のみを優先させて考えているようで、2人とも私はどうにも好きになれません。

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