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2004年12月 の投稿

アメリカ人のみた日本の検察制度

カテゴリー:未分類

著者:デイビッド・T・ジョンソン、出版社:シュプリンガーフェアラーク東京
 どうせアメリカ人が日本の検察制度をまた賞賛している本だろう・・・、なんて、ちっとも期待せずに読みはじめたのですが、意外に面白くて、あちこちに赤エンピツでアンダーラインを引きまくってしまいました。日本で検察「修習」もしたうえで、アメリカの検察庁に出かけて日米を比較していますので、なかなか興味深いものがあります。
 取調べ過程をビデオテープに全部収録すべきだと提案しています。それは全員にとってプラスになり、時間とお金が節約できるというのです。まったく同感です。アメリカでもビデオ録画をはじめていて、後悔している警察はただの1ヶ所もないとのことです。
 日本の若手検察官が被疑者に取調べのときひどい暴行を加えたことも紹介されています。自白を引き出して自分の手柄にしてエリートコースに乗ろうとしての暴行のようです。マスコミでは実名報道されましたが、この本では仮名になっています。やはり将来ある身だから、単行本にするときには仮名にしてほしいという「圧力」がかかったそうです。それにしても、この事件を報道したマスコミの臆病ぶりが痛烈に批判されています。
 日本の中心的マスコミは番犬だというよりは、いいなりの子犬のような行動をした。日本では批判的な調査記事を書くことは報道関係者の習慣にはない。もし、そこにふみこんだら、情報をもらえなくなり、飯が食えなくるなから、思い切った批判などはしない。我々はお互いにある種の取引をしている。皆この取引を了解している。検察官は立場が上で、我々は彼らにいろいろお願いする立場だ。我々は低姿勢でもって、彼らのルールに従って動かなければならない。
 この点は、検察官がパソコンで作成されている調書を部分的に差し換えることが現になされていることについても同じで、マスコミではほとんど問題にならないのです。
 この本には、刑事法廷において、アメリカでは直ちに「弁護人の支援無効」として「審理無効」となるような、みっともない国選弁護人の行状がいくつも紹介されています。読んでいる方が顔から火が吹き出すような恥ずかしさを感じます。恐らく真実の姿だと思います。日本では、国選弁護人は多くの弁護活動をするものの、その大半は刑事弁護とはいえない。ここまで言われています。元検事の70歳以上の弁護士に多いように書かれていますが、実際には、生粋の弁護士の若手にもありうるのではないでしょうか・・・(私にとっても、決して他人事ではありません)。
 検察には「敵」のリストがあって、1番に弁護士会、2番に社会主義者と共産主義者、3番と4番がなくて、5番が新聞だ。弁護士会の主要委員会は「左派リベラル」に偏っていて、弁護士会全体としての決定は、「平均的な」弁護士の感覚より革新的になっている。
 これもそう言われるとそうかもしれないと思います。
 日本の検察官は、一般に言われるほど多忙ではない。詳細な調書をつくりあげられるのは、制度的に能力の余裕があるからだ。
 原稿は英語ですから横書き本となっていて、400頁もありますが、私はいつものように2時間もかけず、ざあっと読みとばしました。今後の刑事司法のあり方を考えている人には、一読をおすすめします。

運命

カテゴリー:未分類

著者:蒲島郁夫、出版社:三笠書房
 東大法学部で政治学を学生に教えている教授が、意外なことに高校生のころは見事な落ちこぼれだった。なんとか農協にもぐりこむようにして就職したものの、まともに仕事もできなかったという・・・。著者は私と同じ団塊の世代。この本を読んで、人間、やればできるものなんだね、改めてそう思った。アメリカに渡り、農業実習そして牧場での農奴のような厳しい生活。それに著者は耐え抜いた。
 不平や不満をいっているうちは、まだ気持ちに余裕がある。まだまだ目一杯働いていない証拠だ。
 いったん日本に戻って、再びアメリカへ。ネブラスカ大学を受験して不合格になったものの、知りあいの教授がかけあい、ようやく仮入学できた。そのチャンスを生かして授業をテープ録音しながら猛勉強する。試験で90点をとるには、120%の準備が必要だ。それを著者はやり切った。その結果、オールAの成績。そして特待生となって、奨学金がもらえるようになった。やがて日本から彼女を呼んで結婚し、子どもも生まれる。そして、ついにハーバード大学の政治学に合格。
 人生には、やるべきときに、やらなければならないことがある。
 著者の必死の努力を読んだあと、この言葉に接すると、すごい重みを感じる。著者は、無事にアメリカの大学を卒業して日本に戻り、「奇妙な」学歴のまま筑波大学に入ることができた。そして17年間つとめたあと、東大法学部に招かれて現在に至っている。熊本の片田舎で農協職員だった人が、今や天下の東大法学部教授とは・・・!
 それぞれの舞台で、人々の期待を裏切らない。運のいい人と出会った人は、その人にも運が向いてくるものだ。読んで、まだ自分にもやらねばならないことがある。まだ大丈夫だ。そんな気にさせる元気の出る本。

戦国鉄砲・傭兵隊

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著者:鈴木眞哉、出版社;平凡社新書
 織田信長と戦った紀州(和歌山)の雑賀(「さいか」と濁らずに読むそうです)衆の話です。早くから大量の鉄砲を使いこなす集団として有名ですが、雑賀衆も内部は決して一枚岩ではなかったということが明らかにされています。
 鉄砲は、一般には攻撃向きの武器と考えられているが、実際には防御に適した武器であった。鉄砲うちの熟達者は蛍、子雀、下針、鶴頭、発中、但中、無二というあだ名をもっていた。雑賀衆が本願寺側に参戦したため、織田信長は石山合戦で容易に勝てず、11年も足をとられてしまった。天下取りのプランがすっかり狂わされた。雑賀衆がいなかったら、信長は、とっくに「日本全国の王」になれただろう。
 著者は雑賀衆の子孫のようです。なにかと常識の誤りを指摘する著者ですが、根拠が十分なので、なるほどそうなのかー・・・、といつも感心させられます。

歌舞伎町シノギの人々

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著者:家田荘子、出版社:主婦と生活社
 東京・新宿・歌舞伎町。3656軒の飲食店と3950店の風俗店があり、100組以上の暴力団が200以上の事務所を構えている。
 一晩に職務質問されるのは200〜300人、新宿署に留置される人が80〜100人。歌舞伎町関係で逮捕された暴力団員は400人。1年間に新宿で検挙した家出人は270人。一晩に歌舞伎町関係で受ける110番は20件以上。
 暴力団に支払われるみかじめ料(ケツ持ち料)は、カジノ50〜200万円、ゲーム屋20〜30万円、ぼったくりバー10〜20万円、ヘルス10万円、キャバクラ10〜20万円、エステ5〜10万円、クラブ1〜3万円、路上の店は3〜5万円。
 歌舞伎町には「会員制のヤクザ専門喫茶店」まであるという。
 暴力団組長や覚せい剤の密売人をいわば肯定的な存在と思わせるような描き方にはひっかかりますが、新宿歌舞伎町の一断面をレポートする本ではあるように思います。

アフリカの瞳

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著者:帚木逢生、出版社:講談社
 アフリカの国民10人に1人がHIVに感染している。毎年200人の赤ん坊がHIVに感染して生まれてくる。そんなアフリカで、日本人医師ががんばっている。
 欧米の製薬会社は、エイズ治療薬の開発に必死だ。あたれば、大変なもうけが確実だからだ。だから、人体実験をひそかにすすめている。そのカラクリを暴こうとする者には死の脅しが迫る。モデルがいるのか知らないが、最後まで読ませた。
 ウガンダとセネガルでは、セックスするときにはコンドームの使用を当然とするセーフ・セックスの文化を育てあげ、HIV感染率を大幅に下げた。ウガンダは15%を9%に、セネガルでは感染率はわずか2%にすぎない。
 欧米の製薬会社の売るエイズ治療薬は開発費の8倍ももうけるほどのもの。だから、今の薬価を1000分の1に値下げしてもいいはずだ・・・。
 うーん、そうだったのか・・・。もう騙されないぞ!。

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