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2004年12月 の投稿

越境する作家チェーホフ

カテゴリー:未分類

著者:牧原純、出版社:東洋書店
 チェーホフが死んで100年がたちました。『桜の園』とか『三人姉妹』『かもめ』など、題名だけは知っていますが、読んだことも劇を見たこともないような気がします。でも、この本を読むとチェーホフを読んで見ようかなと思わせます。
 チェーホフは、シベリア・サハリンの流刑地へ出かけて、面接カード一万枚をつくりあげます。囚人の実態を自ら探ったのです。たいしたものです。そこで、日本の領事館員とピクニックもしたそうです。
 44歳で若死にするまでのチェーホフの人生が、そのときどきの写真つきで解説されていて、人柄をしのぶことができます。

虎の城

カテゴリー:未分類

著者:火坂雅志、出版社:祥伝社
 藤堂虎高というと、一般にはあまり評判は良くない。戦国時代末期、徳川時代まで、激流のなかをうまく泳ぎ切ったことから、その変わり身のはやさに、風見鶏とか裏切り者と呼ばれた。同時に、江戸城をはじめとする多くの名城を手がけた築城家でもあった。乱世をくぐり抜けた武士というより、算術(経済)を兵站にたけた武士だったのだろう。
 人を信じることが、ほかの何にもまして肝容。上に立つ者が下を疑うなら、下も上を疑う。すると、上下の心は離反し、その隙に姦人が讒言する。結果として、有能な人材は失われ、やがて乱れてしまう。なかなかするどい指摘だ。
 フィクションというけれど、事実をふまえてストーリーが展開していくので、歴史書としても十分に読める。

D・DAY、史上最大の作戦の記録

カテゴリー:未分類

著者:ウィル・ファウラー、出版社:原書房
 今から60年前、1944年6月5日夜10時に200万の連合軍がフランスをめざしてイギリスを出発、6月6日になったとたんDデーは始まった。
 映画『史上最大の作戦』を見たのは、高校生のときだったと思う。この本は、Dデーの動きを図解しながら解説してくれるので、連合軍の行動の全体像をつかむことができる。連合軍のアイゼンハワー司令官は54歳。ヒトラーは55歳だった。今の私とほとんど同じ年齢だ。そんな年頃の男が片や大虐殺の張本人、片や200万人の軍隊の総司令官。
 ドイツ軍の沿岸防御施設の建設状況について、連合軍は駐ベルリンの日本大使館の日本本国への報告無線によって知っていた。日本の暗号は解読ずみだった。その意味で、日本はドイツ軍の敗戦を促進したわけだ。
 映画に、海面を艦船が埋め尽くすシーンがあった。ドイツ兵が砲台からその光景を見て息を呑む情景だ。実際、この日、軍艦1213隻、揚陸艦と上陸用船艇4126隻、補助艦艇736隻、商船864隻が参加した。7000隻もの船で海上はあふれていたことになる。そして空には1万機以上の飛行機と3500機のグライダーが出動した。空もまた、連合軍によって覆われた。
 最近のアメリカ映画『プライベート・ライアン』は、このノルマンディー上陸作戦の悲惨な実情をよく描いて評判だった。従軍司祭の次のような言葉が紹介されている。
 瀕死の兵士のところに行って、あなたはもうすぐ死ぬのですと告げる。すると相手は軽くうなずく。相手がローマ・カトリック教徒なら、塗油を施す。以上全部を機械的に1人2秒のペースでやった・・・。うーん、戦争とは、こんなにむごいものなんだ・・・。

荊の城

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著者:サラ・ウォーターズ、出版社:創元推理文庫
 19世紀、ヴィクトリア朝時代のロンドン。公開絞首刑に見物人が3万人も集まっていた。借金を返せないときには債務者監獄に入れられた。ただ、犯罪者のはいる監獄とは異なり、家族ぐるみで住める規則の厳しい公営住宅のような施設ではある。
 ロンドンの下町、そして郊外の城館が舞台だ。下町風俗そして城館のなかの情景がよく描かれている。
 ミステリー小説なので、ストーリーの紹介は控える。あっというようなドンデン返しが何度もあり、次の展開を知りたくて、次々に頁をめくり、時のたつのを忘れた。

ポルポト革命史

カテゴリー:未分類

著者:山田寛、出版社:講談社選書メチエ
 人口800万人の小国において、数年間のうちに150万人もの国民を死なせたカンボジア。その支配者(ナンバーワン)であったポルポトは病死(実は、暗殺された?)したが、ナンバーツーのヌオン・チェアは今も生存し、自由の身である。ヌオン・チェアは投降したあと、家族に面会したとき土下座して謝罪した。しかし、同時に自分たち最高指導者は虐殺を知らなかったなどとヌケヌケと嘘をついた。
 悪名高いツールスレン監獄の所長ドッチは20年間行方不明だったが、実は洗礼を受けてクリスチャンになっていて、国連の難民救援活動に従事していたという。
 ポルポトは裕福な農家に生まれ、フランスに留学し、カンボジアで教員をしていた。しかし、ポルポト派はその出自でもある知識人を根こそぎ虐殺してしまった。そして、そのポルポト派をタイと中国が武器を送るなどして直接支援し、アメリカも間接的に支援していた。アメリカの「人道支援」は、いつも自国に都合よく解釈される。

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