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2004年6月 の投稿

アメリカ時代の終わり

カテゴリー:未分類

著:F・チャールズ・カプチャン、出版社:NHKブックス
 アメリカ人はインターネットによって情報をふるいにかけ、興味をもつ電子ニューズレターだけを入手し、関心のあるホームページにのみアクセスしている。人々がインターネットを利用する時間が増えるにつれ、旧来のメディアに費やす時間は少なくなる。広範な意見や事実に触れる機会が少なくなることで、より分極化し、よく考えもしない有権者を産み出すことになる危険がある。インターネットによる政治もまた、フェイス・トゥ・フェイスの接触を減少させ、政治の分裂と霧状化を深刻にする。
  Eメールは意見の交換にはなるだろうが、そこには政治対話に活力を与える感情や手振り身振りが欠けている。実際の顔をつきあわせた接触をなくすことで、インターネットは、孤独と社会的孤立を促進し、身体の近接によって培われる新しい関係を欠いた仮想現実ネットワークを拡大させている。
  事態はどんどん悪くなっているようだ。アメリカ人の若い世代は、ほかの世代と比べてより多くの時間をテレビとインターネットに費やしている。こうした個人が成長して、上の世代が亡くなると、市民参加の総量はさらに衰退しそうだ。
  インターネットによって、これまでになく市民は大量の情報を知ることができるようになったという神話がみちあふれています。本当にそうでしょうか。インターネットにのっている情報はテレビで流される娯楽番組と同じで、世論操作の道具にすぎないというと言い過ぎでしょうか?
  私は、もっと生ま身の人間同士のドロドロとしたふれあいがないと、結局、人間として大成しないように思います。小学6年生の女の子がチャットの悪口に怒ってカッターナイフで同級生の女の子の首を切って殺した事件は、このインターネットの仮想現実世界の恐ろしさを象徴しているような気がしてなりませんでした。

イラク便り

カテゴリー:未分類

著者:奥克彦、出版社:産経新聞社
 殺された奥参事官(死後、大使)が外務省のホームページに「イラク便り」を連載していたというのを私は知りませんでした。イラクへの人道的な復興支援が大切なこと、そして日本をふくめてNGOの役目がとても大きいことがきちんと紹介されています。国連の機関とともにボランティアが活躍しているし、大きな役割を果たしていることが、現地ではよく見えたようです。
  真面目な人柄が伝わってくる「便り」です。まったく惜しい人が大いなる「誤解」から殺されてしまったものです。残念です。でも、イラクの人々からすると、アメリカ軍の片棒をかついでいる日本は、まさに占領軍の一員であり、敵でしかないのだと思います。自衛隊を派遣している日本の私たち日本人は、イラクの人々からみると加害者以外の何者でもない。私たちは、今、そのことを大いに自覚しなければいけないのではないでしょうか。
  ところで、奥「大使」たちを殺したのはアメリカ軍ではないかという疑惑が依然としてくすぶっています。アメリカ軍も日本政府も、きちんと疑惑を解明しようとしてはいません。たとえば、奥「大使」たちの乗っていた車の銃撃角度です。果たして現地の「テロリスト」によるものなのか。本当はアメリカ軍がやったのではないのか、という点です。
  アメリカ軍は「テロリスト」の犯行と決めつけていますが、必ずしも信用できる説明にはなっていません。そもそも「テロリスト」が犯行というのにも疑問があります。アメリカ軍に反抗している地元勢力を「テロリスト」と呼んでいいものなのでしょうか。
  奥「大使」のメッセージが素直に読めるだけに、イラクの人々の置かれている現実の複雑さを考えさせられます。

在日、激動の百年

カテゴリー:未分類

著者:金賛汀、出版社:朝日新聞社
 日本と韓国・朝鮮との関わりは実に深いし、微妙なものだということを、この本を読んで痛感させられました。
  日本が朝鮮半島の主権を侵して併合し、植民地としたことから、加害者であることは言うまでもありません。強制的に朝鮮人を連行して日本各地で働かせた事実もあります。実は、私の父も三井の労務係として、その徴用に手を貸した事実があります。ところが、日本政府は、一時期、朝鮮半島から日本へ流入するのを禁止したこともあるというのです。日本にやってきて食えない朝鮮人を面倒みきれないということで、しめ出そうとしたのです。しかし、戦争末期の人手不足のとき、またもや徴用を再開しました。
  終戦後、朝鮮半島へ多くの人が帰っていきました。しかし、その一部がまた日本へ環流してきました。食えなかったからです。さらに、北朝鮮への帰還問題があります。「天国」ではないようだということが知れわたって、帰還者は激減した。しかし、家族が「人質」のようになった人々は、北朝鮮を批判できなかった。そういうことが書かれています。
  左翼陣営そして反共陣営のそれぞれの内部矛盾も紹介されています。本当に難しい事態に直面し、それぞれの戦後があって今日を迎えているわけです。よくよく勉強になりました。

炭鉱町に咲いた原貢野球

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著者:澤宮優、出版社:現代書館
 1965年8月。私の高校2年生の夏のことでした。甲子園に初出場した三池工業高校ナインが、あれよあれよというみるまに勝ちすすんで、決勝戦へ進出し、なんと優勝してしまったのです。当時の人口21万人を上まわる35万人が三池工ナインを歓迎すべく大牟田の街道を埋め尽くしました。
  実は、わが生家は、その三池工業高校のすぐ前にあり、小売酒屋を営んでいたのです。8月25日は、黒山の人だかりのため、まったく身動きとれない状況だったことしか記憶に残っていません。
  その優勝に至る試合の経過が刻明に再現されています。当時の選手たちにもインタビューして、何が起きたのか複眼的に後追いすることができます。ところどころに三池争議のことなども紹介されていて、大牟田市民にとっての意義も語られていますから、さらに認識が深まります。それにしても、圧倒的な熱気でした。あのような感動を味わうことはもはやできないことでしょう。

ベネズエラ革命

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ウーゴチャベス演説集、出版社:現代書館
 いまラテンアメリカは大きく変わりつつあることを実感します。コスタリカは軍隊をもたない国として有名です。ブラジルもアルゼンチンも、アメリカべったりの腐敗政権が倒されました。ベネズエラも、いまではキューバと親交を結ぶ国です。
  そのベネズエラで、軍部のクーデターによって倒されかかったチャベス大統領が、国民の自然発生的な大デモンストレーションによって見事によみがえり、政権を確保しなおしました。その当の本人による感動的な演説をまとめた本です。演説集ですから、本としてはくり返しがあります。それでも、聴衆とのかけあいがあるため、かえって人々の息吹にふれられる利点もあります。
  子どもに、本、知識、自由という望ましい武器を与えれば、ファシストのメッセージが子どもに浸透するのは一層困難になる。自覚、組織、動員は大衆の3つの基本的要素だ。
  大多数のメディア、とくに民間テレビ放送が民主主義の認める表現の自由の権利を乱暴に歪めてきた。虚報を流し続け、メディアを心理テロの道具に変えた。
  反動的なクーデター勢力の最大の拠りどころは、民間テレビ放映などのメディアだったという点は、日本人としても大いに自覚すべきところだと私は思いました。日本のメディアの現状は本当にひどいものがあると思います。視聴率競争のもとで、国民が真面目に考えないようにするための空疎で馬鹿げた番組ばかりだと言って過言ではないでしょう。マスコミ、とくにテレビは、もっと社会の現実を直視すべきことを国民に伝えてもいいと私は思います。アメリカ合衆国からの相対的自立を大切にしようとするベネズエラの動きに、日本は大いに学ぶべきだと痛感しました。

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