著者:マリーズ・コンデ、出版社:青土社
カリブ海のグアドループで生まれ育ち、パリに渡った少女の回想記です。フランス語しか話そうとしない現地上流階級の娘として育ちますが、白人ではありません。次第に世の中の様々な矛盾にぶつかっていきます。いかにも生き生きと少女時代が語られ、すっとその時代に溶けこんでいく気がします。
親友について、「きれいではありません。頭も良くありません」という書き出しで作文を書きました。それは友情を語ろうとしたのであって悪気はありませんでした。
母についても、そのさまざまな側面を韻律のない自由詩で物語り、母の誕生日に45分にもわたって延々と1人語り続けました。それを黙って最後まで聞いた母は、涙を流し、ただ「おまえは、そんなふうに私のことを見ていたの?」と言っただけだった。
真実を言ってはいけないのだ、絶対に。自分が愛する人には絶対に。愛する人は輝かしい光で彩らなければ、褒めそやさなければ、実際の姿とは違った存在であると思いこまさなければいけない。そのことを私は学んだ。
これは10歳の少女がしたことなのです。圧倒されてしまいます。目下、NHKラジオのフランス語講座の応用編でマルチニック人が登場し、この本から抜き出したところがテキストとして使われています。それで私もこの本を買って読んだというわけです。フランス語を勉強して世界がまた少し広がりました。メルシー・ボークー。
2004年1月1日


