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2003年12月 の投稿

さらば外交官

カテゴリー:未分類

著者:天木直人、出版社:講談社
 団塊世代のキャリア外交官が、日本の対米追従外交を痛烈に批判した本。私には、一部に同意できないところもあったが、多くに共感を覚えた。とくに同じ団塊世代のキャリア官僚のなかに、これだけ気骨のある人物がいたことに深い感銘を覚えた。著者は、国連決議なしの対イラク攻撃は何があっても阻止すべきだという意見具申を外務大臣あてに公電で打った。日本の外交史上の汚点として残る小泉外交の誤りは、国際社会を無視して一方的にイラク攻撃に踏み切った米国を、胸を張って真っ先に支持したことである。
 外務省の米国崇拝、盲従の外交が果たして、長い目で見て本当に国益にかなうものなのかどうか。再考を迫られている時期にきているのは間違いない。にもかかわらず外務省の現実は、もはや「追従」を通り越して、米国は絶対視、神聖視される対象にさえなりつつある。
 著者のこの指摘に私はまったく同感だ。ところが、先日、私がきいた話では、駐フランスの日本大使は訪仏した日本の国会議員に対して次のように発言したという。「フランスは外交の素人なので困る。外交の玄人だったら、アメリカに最後までは反対しないものだ。はじめのうち反対するそぶりを見せても、結局は賛成するのが外交のプロなんだ」。これに対して、国会議員が「そうはいっても、フランスの国民の大半は政府を支持しているじゃないの?」と反問したところ、その大使は「素人は素人を支持するものだ」と言い放ったという。
 本当にいつまで日本はアメリカの言いなりになっているのだろうか・・・?

蝶と鉄骨と

カテゴリー:未分類

著者:五十嵐遇、出版社:東海大学出版局
 テングアゲハの写真が口絵に紹介されている。オスよりメスが断然大きく、たくましい。胴が太々としていて、まるで蛾だ。濃緑の胴と羽の中心部に黄色いふちどりが珍しい蝶であることを一見して分からせる。北インドの高地、タイガーヒルに棲む蝶だ。この蝶を大成建設の現場所長をつとめる中年の男がネットをふるって追う。
 男は少年のころから昆虫少年だった。勉強より、三度の飯より、昆虫図鑑が何より好き。じっと昆虫を観察し、写生する。それでも、食べるために大手の建築会社(ゼネコン)に入社する。そしてイラクに企業戦士として派遣され、見事に大失敗必至の事業を建て直し、大赤字ではあってもやりとげた。その自分へのごほうびに北インドへ飛び、珍蝶テングアゲハの生育歴について調べあげた。
 子どものころの夢を追い続けることの大切さをしみじみ味わうことができるいい本だ。著者は55歳で大成建設の取締役までのぼりつめ、定年で退社する。それでも日本蝶類学会の会長をつとめているのだから偉い。
 わが庭にもアゲハチョウが飛んでくる。地上をはう気味悪い芋虫が変態して優雅に空を飛ぶ蝶になるなんて、誰がどうやって仕組んだのだろうか。これも生物進化の大きな謎のひとつだ。それにしても蝶は人間(ヒト)をとりこにする魅力をもっている。

死刑囚、最後の晩餐

カテゴリー:未分類

著者:タイ・トレッドウェル、出版社:筑摩書房
 アメリカには死刑執行の3時間前に何でも食べたいものをリクエストできる制度があるそうです。そこで、実際に死刑囚がいったい何を注文したかを明らかにした本です。悪い奴を死刑執行するのは当然だというトーンで貫かれていますから、読んでいて少々いやになりますが、アメリカの死刑制度の現実の一端を知ることはできます。
 ちなみに、日本にはそんな制度はありません。リクエストどころか、死刑はある日突然、何時間か前に知らされ、まもなく執行されるのです。正月の3ヶ日を除くことになっていますので、死刑囚の気の休まるのは正月3ヶ日しかありません。これが平均で死刑執行まで10年ほど続くのです。アメリカには、現在、死刑囚が3000人以上いて(女性は49人)、この27年間に500人以上が処刑されました。うちテキサス州がもっとも多く144人にのぼります。もっとも死刑執行を認めているのは38州で、全部の州ではありません。電気椅子のところも5州ありますが、大半は薬物注射による執行です。そこで、何をリクエストしたかですが、たとえばテキサス州では4分の1がハンバーガーを、次いで、ステーキを注文したといいます。やはり、日頃食べ慣れたものを食べたいということでしょう。ステーキのほか、目玉焼き6個、ベーコン16枚、ハッシュウブラウン、イチゴシャーベット、ドクターペッパーコーラ、セブンアップ、コーヒーそして胃薬を注文した死刑囚もいたということです。
 アメリカでは刑務所も危険なところです。ところが、死刑囚監房は24時間の監視体制があるため、アメリカで一番安全な場所だというのです。いろいろ考えされられる本ではありました。

植物のこころ

カテゴリー:未分類

著者:塚谷裕一、出版社:岩波書店
 この夏にわが家の庭にはランタナという可憐な花を咲かせる低木を買って植えました。花の色が薄いクリーム色から濃い紅色に変わっていく、アジサイの花を小さくしたような花です。なぜ花の色が変わっていくのか。それは虫をたくさん呼び集めたいので、古い花も看板として残しておくけれど、ぜひ虫に来てほしい花は虫が近づいたときに区別できるようにはしておくために、咲きすすむにつれて花の色を変えるというのです。なーるほど、すごいなと感心しました。植物には心も感情もありません。だから、音楽を聴かせたり、手で触っても分かるはずはない。しかし、植物は明らかに生きているし、進化している。それをこの本は解き明かしています。
 私も日曜日ごとに花を眺め、土いじりをしていますが、なんとなく「植物のこころ」が分かりかけてきました。

乱交の生物学

カテゴリー:未分類

著者:ティム・バークヘッド、出版社:新思索社
 本の題名にギョッとするヒトは多いかもしれませんが、中味はすごく真面目な本です。もちろん人間を含めた動物の性を扱っていますが、生殖について深く考えさせられる具体的な実例が豊富にあげられていて、認識をあらたにさせられます。
 鳥類は、社会的には一雄一雌ですが、性的にも一雄一雌というわけではないことが今では明らかになっています。有名なオシドリもそうです。ただハクチョウは貞節を貫くようです。カマキリのオスは交尾しながらメスに食べられるという有名な話について、オスは自分が食べられないように全力をあげていることが明らかにされています。
 平均的な男性は1日に1億2500万個の精子をつくり出し、一生涯で2兆個になるそうです。七面鳥は1回に16億個、ブタは1000億個だというのです。なぜ、こんなにも多くの精子が1個ないし数個の卵子を受精させるために必要なのでしょうか?
 精子には欠陥が多く生じるし、精子競争に勝ち残れるもののみが子孫を残せるようにしたということのようです。それにしても数が多すぎますよね・・・。

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