著者:西村亨、出版社:大修館書店
源氏物語をベースにして平安朝の貴族の人々の恋愛や結婚などを取りあげた本です。でも、私がこの本を読んでもっとも驚いたのは、実は「おてもやん」でした。
おてもやん あんたこの頃 嫁入りしたではないかいな 嫁入りしたこたしたばってん 御亭どんが菊石平だるけん まあだ盃やせんだった 村役鳶役肝入りどん あん人たちのおらすけんで あとはどうなときゃあなろたい
もちろん、よく知ったセリフです。この菊石平(ぐじゃっぺ)とは、「あばた」を意味します。そして、「おてもやん」とは、つくね芋を意味する手芋のことだそうです。「春日南瓜(ぼうふら)どん」とか「げんぱく茄子(なすび)のいがいがどん」というのと同じように、野菜の世界を歌っているのです。なるほど、そうなのか、と手をうってしまいました。ヨバイは、好色な卑猥なものという理解があるが正しくないとも指摘されています。なんのやましさもないヨバイがあり、公然たる社会生活の一端だったのです。たとえば、飛騨の白川村では結婚を認められるのは長男だけ。どこの家でも、家の娘が生んだ子どもはいるが、息子たちの子は他家で育っていました。女ヨバイもあったといいます。
末摘花は大変な醜女だったので、光源氏は、興ざめして近寄らなくなった。でも、彼女が飢え死にする寸前、光源氏が再会して救ってやった。源氏物語に、そんなストーリーがあったことを改めて認識しました。
相見ての後の心に比ぶれば 昔はものを思はざりけり (拾遣集)
見ずもあらず 見もせぬ人の恋しくは あやなくけふや ながめ暮らさむ (在原業平)
王朝びとの恋
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