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2003年11月 の投稿

窒息するオフィス

カテゴリー:未分類

著者:ジル・A・フレイン、出版社:岩波書店
 アメリカの企業はうまくいっているのか、ホワイトカラーをはじめ労働者はゆとりある生活をエンジョイしているのか。日本はひどいけど、アメリカはバラ色?いえいえ、決してそんなことはありません。
 1990年代にアメリカのホワイトカラーの職場は雇用が減らされ、仕事がきつくなり、給料や手当が下がり、休暇が減ってしまいました。休日出勤や在宅残業が増え、長期の休暇旅行は激減し、短い週末旅行が主流になっている。ホワイトカラーは、IT化によって夜も週末も休暇旅行中も、年中無休で週7日、24時間の待機(オンコール)状態にある。 オフィスの仕事もすべて入力操作が特別なソフトで監視され、家庭にもち帰らざるをえないほどの仕事量の多さになりつつあるプレッシャーと、いつ解雇されるか、いつ派遣と置きかえられるか分からない不安のなかで強いストレスをかかえ、過労死に至るような健康障害をもつホワイトカラーも少なくない。
 アメリカの企業は、人件費の抑制のため、非正規雇用の比率を高め、今では10%ほどになっている。えっ、そうなの・・・?その詳しい内容は、本書を読んでいただくしかありません。

親指はなぜ太いのか

カテゴリー:未分類

著者:島泰三、出版社:中公新書
 「直立二足歩行の起源に迫る」というサブタイトルがついています。「スリリングな知の冒険が始まる」とあるとおり、私は「へー、そうなんだ」と何度も知的刺激を受けてしまいました。
 手のひらを見つめてみましょう。親指だけ少し離れて、向きが違います。短くて太い点はニホンザルやチンパンジー、ゴリラと同じです。なぜヒトの親指はこうなっているのか。著者はアフリカのジャングルそしてマダガスカルへ出かけ、その謎を実地に探ります。結論は?
 ヒトは、サバンナに無数にある骨を食べることで生きのびた。骨髄は脂肪の塊である。しかし、これを食べるためには叩き割る必要がある。そのために石を握って骨を砕く。太い親指は、石を握るためのものだった。
 マダガスカルにしかいないアイアイは、手の中指が異常に細くなっています。なぜか?それは、堅い種子の中味をかき出すためのものなのです。アンワンティボやポットーというアフリカの熱帯雨林に住むサルの手は、人差し指も中指も非常に短く、単なる突起でしかありません。これはケムシを常食とするため、ケムシの毛をこそぎとるのに適したように指が変化したのです。
 すべて生き物は主食を食べるのにあわせて手と指が変化しているということを明らかにしたこの本は、これまでと違った角度から、サルとヒトとの共通性をも明らかにしています。

静かなる戦争

カテゴリー:未分類

著者:デービット・ハルバースタム、出版社:PHP
 レーガン・ブッシュ・クリントン政権の内幕を情景描写、人物評をまじえて具体的に明らかにした本。
 レーガンは、複雑で鋭敏な思考、瑣末な情報や逸話の正確な記憶力をほとんどもっていなかった。レーガンの知っていたのはほんのわずかだった。しかし、彼の強みは、そのわずかなことに完全に忠実で、その正しさを微塵も疑わなかった。「小さな政府がよい」「政府は、できる限り個人の問題に干渉すべきでない」「政府の干渉がなければ、アメリカは再び偉大な国になれる」と固く信じていた。暗い時代だったから、自信にみちあふれたレーガンが歓迎された。
 ブッシュは湾岸戦争を数日間で圧倒的に勝ち90%の支持率を得たが、経済政策で国民の支持を失った。「謙虚」なブッシュは、スピーチ・ライターのつくった演説原稿に「私」という一人称単数を使うことを嫌がった。レーガンのまねをしてレーガンとはりあおうものなら、最悪の事態になりかねないことを十分承知していた。あくまでも自分らしくふるまおうとした。
 クリントンは速読が得意で、口頭の報告よりも、自分で書類に目を通そうとする。
 その育った家庭はアルコール中毒の義父のために崩壊寸前だったため、クリントンは争いのない「崩壊家庭」の緊張を和らげる方法を学んでいた。だから、同じような状況にあった民主党内のゴタゴタをまとめるのも容易だった。
 クリントンは、不倫問題などでマスコミに大いに叩かれたが、打たれ強かった。ただし、泣き言ばかりいう人間ではあった。ヒラリーも朝食のとき、マスコミの批判にことごとく反応してクリントンをいらだたせた。
 アメリカのマスコミはニュースキャスターがスターとなり、年俸800万ドルという、とんでもない高給とりになった。そして、ボスニアとかソマリアとか、国外のことはあまり取りあげず、娯楽と「内向き志向」になってしまった。
 アメリカの支配層の実像が容赦なく暴かれていくところは小気味がいい。日本には類書がないように思う。それにしても、こんなアメリカに日本がいつまでも言いなりになっていていいとは、とても思えない・・・。

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