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神様の墜落

著者:江波戸哲夫、出版社:新潮社
 昔、フランク永井の『有楽町で逢いましょう』という歌が流行った。私がまだ上京する前のことだ。どんなにか東京の有楽町に憧れたことか・・・。残念なことに、大学生になって上京してからも、有楽町にはとんと縁がなかった。理由は簡単で、有楽町でデートの約束を取りつけるような彼女を見つけることができなかったからだ。といっても、仮に見つけたとしても九州からポット出の田舎者では、デートがうまくいったはずもない。なにしろ九州弁まる出しだから、気後れして、ろくにデートのとき話もできなかっただろう・・・。それもこれも、遠い昔の話とはなってしまった。
 有楽町駅前に『そごう』があった。変なデパートだと思った。なにしろ狭い。ところが、この『そごう』、あれよあれよと見るまに全国に展開し、北九州の駅前にも出店した。そのうち海外にまで出店していった。すごいもんだなー、と感心した。ところが、この本によると、それは単なる放漫経営でしかなかった。
 百貨店というのは、規模と立地とタイミングさえよければ、どれほど低次元のプランニングでも、それなりの成果を生み出す不思議な産業なのである。『そごう』の元社長・水島廣雄は、店の成功は人材によるのではなく、もっぱら店舗そのものの条件と見ていた。経理を公開せず、取締役会すら開かずに、すべて水島社長の直観と政治力に頼って展開していった。もちろん、それを支える銀行(興銀)があった。
 それにしても、経営者の企業私物化のすさまじさには驚きかつ呆れる。怒りすら覚えた。このような低レベルのモラルしかもたない経営者が、市民に対しては「心のノート」などを使った道徳教育の必要性をぶちあげるのだから、日本の将来は大丈夫なのか、本気で心配になってくる。

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