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豊かさの条件

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著者:暉峻淑子、出版社:岩波新書
 『豊かさとは何か』(岩波新書)の著者による続編みたいなものです。前の本がドイツ語では『貧しい日本』という題で出版されたことを知って、ええーっと驚き、ついうなずいてしまいました。エンゲル係数で有名なエンゲルの言葉が紹介されています。各国の経済力は物的生産量などで比較するのは無意味で、経済力を表す真の指標は、それぞれの国民の生活水準、つまり福祉の測定としての生計費である。これを、著者は、民主主義や人権の基礎が生活の福祉水準にあること、経済の活力もまた、自由と安全を基盤にした人間の活力なしにはありえないことを示したと解説しています。
 さらに、エンゲルは、ごく少しずつなだらかな暮らしの向上が、人々の生活と行動を堅実で着実な発展に導く、急激に成金になったり、逆に落ちこんだりする中では生活の荒れと退廃を免れない、安心の支えなしに人間社会は成り立たないということも言っているそうです。私も、まったく同感です。
 70代の著者が内戦で荒廃したユーゴスラビアに何度も出かけ、日本の子どもとホームステイの交流を実現するなど、そのたくましさには感嘆させられます。つい朝寝坊してしまう日本の若者も、いざとなれば立派にやるべきことをきちんとやれることも紹介され、安心します。でも、日本の家庭に詩集がほとんどなく、最後まで本を読み終えるのは困難という子どもが日本は世界で一番多いという点は、日本の将来に不安も覚えます。モノにあふれた日本ですが、心は貧しい日本人が多いように思われてなりません。

変わる家族、変わる食卓

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著者:岩村暢子、出版社:勁草書房
 ショッキングな本です。日本民族の食習慣がダメになりつつあることが実感させられます。これでは日本女性の長寿世界一の座も、いつまで維持できるか不安です。
 食費はやりくり次第なので、節約してお金は他のことに使いたいという主婦が一般的。
 食べることに関心なし。料理に手間暇かける気分になるような時間はない。同じ食卓を囲みながら、他の家族の食べているものに、子どもも親も無関心になっている。妻が家庭でつくった夕食メニューが何であろうと、「その日、自分が食べたいもの」をコンビニで買って帰り、自分は食べたいものを食べる夫が増えている。
 食は文化です。フランスのブリア・サヴァランの有名な言葉、「どんなものを食べているか言ってごらん。あなたがどんな人物か言ってみせよう」。
 どんなものを、どこで、どのようにして食べているかは、人間としての存在そのものに深く関わっているものです。私は、マックもケンタも、そしてコンビニもホカ弁も無縁の生活を送ってきました。本当に日本人の食生活はこれでいいのか、深く考えさせられる本です。一度、ぜひ手にとって読んでみて下さい。

蝶を育てるアリ

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出版社:文春新書
 自然界は不思議なことだらけ。私は昆虫の話も大好き。この本は昆虫のさまざまな生き残り作戦を紹介している。
 事務所の前の街路樹でセミがうるさく鳴いている。木の根元にはセミが地中からはい出てきた穴がボコボコあいている。7年間も地中にいて、地上の生活はわずか1週間足らずというのがセミの一生。彼らの寿命の短かさにはかなさを感じる。ところが、この本によると、むしろ寿命が短かいことがメリットになることもあるという。人間の1世代を30年とすると、100万年の間に3万世代となるが、年1化の昆虫なら100万世代に達する。つまり、計算上は30倍のスピードで世代が変わるので、環境の変化にうまく適応できるから、生き残る確率が高くなる。
 このほか、小鳥が昆虫をどれくらい食べるのかという数字に驚きました。シジュウカラは一羽で1年間に昆虫を12万5千匹食べる。つまり、1ヶ月に1万匹、1日平均300匹以上を食べないと生きていけないのだ。道理で、小鳥は、いつもせわしく飛びまわっているわけだ。

オウム

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出版社:トランスビュー
 オウム真理教を擁護した宗教学者として世間から指弾された島田裕巳・元日本女子大教授が反省をこめてオウム真理教について分析した本。540頁もの大作で、私は上京する飛行機のなかで、睡魔とたたかいながら、なんとか読破した。
 オウム真理教は今も相当数の現役信者をかかえている。元信者たちの多くもオウムとのかかわりを完全に断ち切ったとは言えない状況にある。なぜなのか?
 坂本弁護士一家がオウムに殺害されたのは1989年11月3日深夜。この本によると、当時、「サンデー毎日」がオウムの糾弾キャンペーンをはじめ、信者が大いに動揺している状況で、坂本弁護士一家の殺害が企画されたという。それにしても、なんとむごいことを「宗教家」が考えることか・・・。
 島田元教授は、ヤマギシ会の信者だった。自分の体験を通して、オウムなどのカルト教団から元信者が完全に脱却することの難しさを訴えている。

アメリカの国家犯罪全書

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著者:ウィリアム・ブルム、出版社:作品社
 7月30日の西日本新聞にショッキングな記事がのっていた。アメリカで131万人もの子どもが行方不明になっているという。家出63万人、誘拐3万3千人、離婚した親に連れ去られて不明となった子どもが12万人、誘拐によって死傷した子どもは20万人にのぼるという。いずれも途方もなく多い人数で、とてもそのまま信じられないほどだ。日本でも、渋谷の小学生誘拐事件が起きて世間を心配させたが、アメリカのスケールはケタが違う。誘拐・監禁の多くは性的暴力やレイプと結びついているとみられている。防止策の1つとして、半年に1回は子どもの顔写真をとっておくこととされているのにも驚かされる。
 この本は、拉致・テロ・暗殺・拷問・毒ガス・・・、イラクや北朝鮮どころではないアメリカの国家犯罪をあますところなく網羅しており、まさに全書と呼ぶにふさわしい。
 これからアメリカに留学しようという子どもを持つ親にとっては必読の書だと思う。同時に、もういいかげんにしてくれと、目をふさぎたくなる本でもある。
 かつてガンジーはこう述べたという。あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである。

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