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みんな、同じ屋根の下

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著者:リチャード・B・ライト、 発行:行路社
 サンセット老人ホームの愉快な仲間たち、というサブタイトルのついた本ですが、この本を読むと、老人ホームでの生活はそれほど愉快なものではないことをしみじみ「実感」させられます。
 私もやがて還暦を迎えます。同世代には既に定年退職した人もたくさんいます。誰もが「老後の生活」を愉快に楽しんでいるとは思えません。とりわけ、最近スタートした後期高齢者医療制度のように、あからさまな老人切り捨て策が鳴り物入りで美名うるわしく実施されているのを見るにつけ、心穏やかではありません。
 それはともかくとして、この本は、カナダにある架空の老人ホームを舞台として、1990年に出版されました。訳者あとがきでも、愉快な物語であるとされています。ええっ、どこが・・・・・・、と私なんか思います。同時に、深刻なテーマも包含する。えっ、むしろ、深刻な話ばっかりじゃないの、とツッコミを入れたくなります。
 意地悪爺さん、被害妄想婆さんなどなどが老人ホームにおいて日夜、繰り広げる生存競争の物語。そうなんです。壮絶な戦いが展開されるのです。老人ホームに入所している高齢者の過去・現在・未来を、ユーモラスに、ときにペーソをにじませて描き出している。ここには、「人生の最期」という、内容の普遍性と今日性がある。
 そうなんです。私も、いずれ老人ホームにお世話になるのかもしれません。足腰が弱くなり、日常生活にとかくの不自由をきたし始めたら、身辺介護を受けなくてはいけないでしょう。そんなとき、隣の部屋にソリの合わない人が居て、毎日、いがみあっていたとしたら、どんなに不幸な老後でしょうか……。 いやあ、しみじみ考えさせられました。
(2008年6月刊。1800円+税)

誘拐

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著者:五十嵐貴久、出版社:双葉社
  スタートは会社のリストラから始まります。中高年でリストラされたら、いまの世の中、はっきり言って、お先まっ暗です。ですから、一家心中に結びついても何の不思議もありません。
 目先の利益しか追わない投資会社やら銀行がつぶれかかった企業に乗り込み、大胆なリストラを強要します。リストラは、する方にも大きな心の傷を残します。ましてや、リストラを言い渡した相手が一家心中でも図った日には、一体どういう心境になるでしょうか・・・。
 ここから話が始まります。そして、警視庁vs頭脳犯の対決が展開していきます。警視庁は捜査一課特殊捜査班が登場します。首相の孫娘が誘拐されてしまったというのですから、国家の一大事です。
 通常、誘拐事件の捜査は最低でも2000人体制で臨むことになっている。
 誘拐事件は、いわゆる犯罪事件の捜査とは違い、基本的にはただ犯人からの連絡を待つことがほとんどの時間を占める。当然、その間は常に強烈な緊張を強いられている。
 それは、学者の言う「強いストレスにさらされている状態」を意味する。
 人間の集中力には限界があり、通常、4時間までは保たれるが、強いストレスのある場合には半分の2時間で集中が途切れてしまう。
 そこで人海戦術が採られる。6人編成の犯を6チーム作り、2時間おきに交替させる。警視庁の誘拐捜査マニュアルによると、最低でも4チーム、3時間毎に交替することになっている。そして、睡眠は最低6時間とらなければならない。
 犯人が現金を要求したとき、お金を入れるバッグは特別仕様。72時間連続稼働するデジタル発信機と録音機が仕込まれている。お金の帯封には、ICチップを利用した、薄さ1ミリ、幅3ミリの発信機が貼り付けてある。
 推理小説ですから、ここで種明かしをするわけにはいきません。私も途中で、なんだかおかしいな、これってどうしてかな、と思ったところが、最後のどんでん返しの伏線になっていました。なかなか読ませる面白い警察小説でした。
(2008年7月刊・1500円+税)

最後の銃弾

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著者:サンドラ・ブラウン、出版社:集英社文庫
 アメリカ社会の奥深い闇をえぐり出す法廷ミステリー小説です。著者はなんと女優出身の作家です。日本にも、そんな作家がいましたね。私と同じ世代です。モデル、女優、テレビのレポーターをつとめたあと、小さいころからの夢だった作家に転じたというのです。まあ、私に負け惜しみを言わせてもらえば、私のモノ書き志向は決して小さいころからなんていうものではありません。ここでは弁護士になってから、ということにしておきます。
 タイトルの意味は、最後の最後になってようやく分かります。ということは、ミステリー小説の作家って、最後の結末を考えてから、書き出しを書きはじめるのでしょうね、きっと・・・。
 出だしは、まだるっこしい感じです。ええいっ、なんだかつまらないな。そう思わせますが、少しずつ光るものがあるので、ついページを繰ってしまいます。すると、そのうちに、なんだか思わぬ展開になっていくのです。いやあ、このあと、どうなるんだろう・・・と。
 そして、女性作家ながら、かなり過激な濡れ場シーンも出てきて、うむうむ、で、どうなるの?なんて思わせるのです。いやあ、実にうまいものです。文庫版で600頁を超える大作です。
 ミステリー小説ですので、ここでタネ明かしをするわけにはいきません。いくつものドンデンガエシがあります。そのなかで、アメリカ社会の腐敗と司法・警察の現実的意味を考えさせられます。
 それにしても、捜査にあたった警察官が被疑者の女性に本物の恋をしたらどうなるのか、なんて、日本のミステリーまたは警察小説にありましたっけ・・・?その着眼点も奇抜だと私は思いました。
 初めてこの著者の本を読みましたが、アメリカではかなり売れているそうです。フランスから帰国する途中の飛行機と車中のなかで一心に読みふけった本です。
 フランスでは、歩道に張り出したテラス部分にテーブルを並べ、そこで食事をします。室内にもテーブルがあるのですが、そこはいつもガラガラです。当然、通行人がすぐそばを通っていくわけですが、お互いにそんなことは気にしません。通行人を眺め、また眺められながら、多くのカップルが楽しく会話しています。もちろん、自動車の排ガスもかかることになりますが・・・。夜8時、9時になっても明るいので、夕食もテラスでとります。蚊やハエがいないのは、町が清潔なのと乾燥しているからなのでしょうね。日本でこんなことをしたら、蚊とり線香やハエ取り紙がたくさん必要になることでしょう、きっと。
(2007年12月刊。933円+税)

クモの糸の秘密

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著者:大?茂芳、出版社:岩波ジュニア新書
 クモは4億年もの進化の歴史をもっている。うひょーっ、す、すごいですね。そのクモの糸の秘密が少し解き明かされています。
 クモの糸を取り出す仕掛けが紹介されていますが、私には、出来そうにありません。
 クモの糸をクモから取り出すには、訓練はもちろん、クモの習性を理解することが大切であるとともに、取り出す人の精神的な安定性が必要である。採糸者の心が落ち着いていないと、クモから糸はうまく取れない。うむむ、すごく難しいですよね、これって・・・。
 著者はクモの糸を集めました。長さ100センチで、重さは0.9グラム。平均的なクモの糸は1本あたり直径が6ミクロン、密度が1平方センチあたり1.27グラム。だから、2万5000本のクモの糸を集めたことになる。すごーい。
 クモを飼うにしても、毎日、霧吹きをして水分を与えてクモを弱らせないようにし、糸を取るときにも疲れさせない工夫が必要だ。クモを地面に落として衝撃を与えてはいけない。クモから連続的に糸を取ると、クモは当然に疲れてくる。扱い方がまずくてクモに嫌気を起こさせると、クモは糸を出すのに協力的でなくなる。
 クモの糸は非常に細い。ジョロウグモの牽引糸では、3〜4ミクロンの直径。ノートの紙の厚さは50ミクロンなので、その10分の1以下である。
 クモは落ちてもすぐには死なないが、落ちた衝撃でかなり弱ってしまう。クモに糸を出させるためには、クモを安心させる必要がある。人間は外敵ではないとクモに思わせる必要があるのだ。
 クモの嫌いな採糸者には、クモに牽引糸を引き出させることは出来ない。時間に追われている人もダメ。心を落ち着けて、クモの心を知るように心がける必要がある。クモとの相性は大切だ。家庭の問題は引きずっているようなときもうまくいかない。
 一日中がんばって採糸しても、1人あたり50ミリグラムも糸が取れたら最高だ。
 クモから実際に糸を採ろうとすると、クモはしばしば糸を切るため、得られるのは、 30センチから50センチの長さの糸の集合体でしかない。このため、現実には、理論強度の何倍もの強度になるように糸を集めないと、糸は簡単に切れてしまう。糸束を少しねじるのも、そのための工夫の一つだ。
 クモは世界中に4万種いる。日本には1200種。すべてのクモは糸を出す点で共通している。そして、クモの腹の中には、7個の絹糸腺がある。7種類の絹糸腺からは、それぞれアミノ酸組成の異なるたんぱく質が分泌され、それぞれの目的にあった機能を果たしている。
 クモは昆虫ではない。昆虫の脚は6本なのに、クモの脚は8本だから。クモ類の祖先は水中で生活していた。クモは共食いするので、大量飼育はできない。
 クモの糸は軽くて柔軟性があり、防水性もあって強いことから、繊維としてさまざまな用途が考えられる。たとえば、医学分野での手術用の縫合糸。防弾チョッキやパラシュート用のひも、など、
 自分で集めたクモの糸をよって束にして、自分の体重を与えたという話には感動します。この本は決して子ども向きというものではありません。大人にとっても感動の本です。
(2008年5月刊。780円+税)

虚構のナチズム

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著者:池田浩士、出版社:人文書院
 1930年当時のドイツの人口は6300万人。そのうち、ユダヤ人は56万人ほど。つまり、全人口の1%にもみたなかった。いったい1%しかいないユダヤ人がどうして全ドイツの脅威として感じられたのか。また、ドイツにいたユダヤ人が56万人というのなら、アウシュヴィッツなどで殺された600万人ものユダヤ人はどこから来た(連行されて来た)のか。これをドイツの若者たちに考えさせたという教育実践が紹介されています。なるほど、と思いました。
 1936年にオリンピックがドイツで開催された。このときヒトラーは、ニュルンベルク法の精神に反する超法規的な譲歩を行ってまて、オリンピックを実現した。オリンピック期間中は、ドイツの町々から反ユダヤ人キャンペーンのポスターその他をすべて撤去した。外国の選手団にユダヤ人がふくまれていても妨害しないし、ドイツ代表団に2人のユダヤ人選手を加えることも決めた。うひょー、そ、そうだったのですか・・・。
 オリンピックの終わった3週間後にニュルンベルクで開会されたナチ党の第8回大会は、「名誉の党大会」という名称を掲げた。
 1937年7月、ミュンヘンでヒトラー頽廃芸術展と題する美術展を開いた。その4ヶ月半のあいだに200万人ものドイツ人が観賞した。終了後、オークションで売却され、国家は莫大な利益を得た。
 ナチズム体制とともに、ドイツ市民の映画をみる回数が増えていった。それはドイツにとって戦況が不利になっていった1943年になっても変わらなかった。
 窮屈な暮らしのなかで人々が映画に娯楽を求め、時代が悪くなればなるほど映画が遺されたわずかな楽しみとなっていた。
 1934年6月、ヒトラーはSA隊長のエルンスト・レームなど幹部たちを急襲し、裁判抜きで処刑した。当時の公式発表では死者77人とされていたが、実は1000人をこえることが大戦後わかった。
 SA隊員には「第二革命」を唱えるものが少なくなかった。ヒトラーの首相就任は「国民革命」の第一段階にすぎず、このあと、民族民衆自身が真に国家社会の主人公となるための「第二革命」が闘われるはずだというもの。これはヒトラーにとって容認しがたい過激主義だった。ヒトラーは、この事件のあと以後、千年間、ドイツにはもはや革命は起きないと宣言した。
 ナチス・ドイツの社会の実情を多面的に追跡した労作です。たくさんの知らないことが書かれていましたが、大半を省略してしまいました。
(2004年3月刊。3900円+税)

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