著者:横山秀夫、出版社:文芸春秋
面白い。これぞ小説の醍醐味だ。読みはじめるや否や、すぐ地方紙の社会部記者になったかのように、日航機墜落事故を追う重苦しい雰囲気に浸ることができた。
1985年8月。いったい、あのとき自分は何をしていたのか、今ではもう思い出せない。もちろん福岡で弁護士をしていて、ときどき飛行機で上京していた。だから、大阪行きの飛行機が落ちたことを知って、ヒヤッとしたことを覚えている。でも、相変わらず飛行機には乗っている・・・。
地方新聞の内部の葛藤が描かれ、スクープ合戦と販売部門との対立抗争が見事なまでに生々しく暴かれる。日航機事故という大惨事を売りものにしようとするジャーナリズムの限界を知り、苦悩する記者魂にぐいぐいひきこまれていく。記者の生き甲斐とは何なのか。
2003年11月1日