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てっぺん野郎

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著者:佐野眞一、出版社:講談社
 石原慎太郎・東京都知事の半生を克明にたどり、慎太郎の本質を見事に解明した本です。
 慎太郎の父親は愛媛県に生まれ、宇和島中学を1年で中退し、山下汽船に店童(小僧)として採用され、叩き上げていった人物です。51歳で若死にしていますが、お酒の飲みすぎだったようです。慎太郎は、弟・裕次郎には絶対かなわないという根深いコンプレックスをずっと抱いてきました。裕次郎は慶応高校に失敗し、慶応農業高校に通いましたが、札つきの不良少年でした。その不良仲間の遊びを小説化したのが慎太郎の『太陽の季節』です。私は読んだことがありませんし、読む気もしません。芥川賞受賞に反対した佐藤春夫は、『太陽の季節』について、風俗小説としてもっとも低級であり、作者の美的節度の欠如しか感じられず、嫌悪を禁じえない、と言っています。これでは読む気がなくなります。保守反動派を自認する慎太郎も、名門の湘南高校時代には左翼的学生でした。一橋大学に入ってからも、破防法反対のデモに加わったことがあります。今の慎太郎からは、とても想像もできませんが・・・。慎太郎は選挙のとき霊友会の力を借りていますが、若いころには母親とともに世界救世教を信心していました。今、週に2日しか都庁に出勤しない慎太郎の代わりに都政を牛耳っている濱渦副知事は国際勝共連合と深い関わりをもっています。慎太郎には銀座の高級クラブでホステスをしていた女性に生ませた息子がいます。この子の認知のときには、妻と息子4人の全員が参加する家族会議で、今後は絶対に浮気はしないと約束させられたのだそうです。慎太郎の政治家としての信条を述べた言葉があります。「公約なんて、実現不可能なことは言わないものです。実現できなかったときに支持率が落ちるだけですからね。公約は、オッと思わせることが大事なんです」(週刊現代、2003年4月26日号)
 慎太郎は、とにかく飽きっぽい、ものは早見えするけれど、すぐに行き詰まる。そして行き詰まると、たちまち投げ出す。人々の耳目を集めることにプライオリティーの重きを置いた独特のポピュリズム的手法を得意をする。とかく問題になる乱暴な言葉づかいにしても不用意な発言ではなく、こういったらマスコミが取りあげてくれるな、という計算の上での発言だ。慎太郎は、「毒舌」「暴言」という形で、日本人の隠されたホンネを先取りしてあぶり出してきた。慎太郎は2度にわたって300万票という大量得票を実現しました。しかし、私にとっては、慎太郎は虫酸の走る男でしかありません。そんな唾棄すべき男に、なぜこんなにも多くの日本人が間違って魅かれてしまうのか。この本は、その理由を考えるうえで大いに役に立ちます。

さらば外交官

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著者:天木直人、出版社:講談社
 団塊世代のキャリア外交官が、日本の対米追従外交を痛烈に批判した本。私には、一部に同意できないところもあったが、多くに共感を覚えた。とくに同じ団塊世代のキャリア官僚のなかに、これだけ気骨のある人物がいたことに深い感銘を覚えた。著者は、国連決議なしの対イラク攻撃は何があっても阻止すべきだという意見具申を外務大臣あてに公電で打った。日本の外交史上の汚点として残る小泉外交の誤りは、国際社会を無視して一方的にイラク攻撃に踏み切った米国を、胸を張って真っ先に支持したことである。
 外務省の米国崇拝、盲従の外交が果たして、長い目で見て本当に国益にかなうものなのかどうか。再考を迫られている時期にきているのは間違いない。にもかかわらず外務省の現実は、もはや「追従」を通り越して、米国は絶対視、神聖視される対象にさえなりつつある。
 著者のこの指摘に私はまったく同感だ。ところが、先日、私がきいた話では、駐フランスの日本大使は訪仏した日本の国会議員に対して次のように発言したという。「フランスは外交の素人なので困る。外交の玄人だったら、アメリカに最後までは反対しないものだ。はじめのうち反対するそぶりを見せても、結局は賛成するのが外交のプロなんだ」。これに対して、国会議員が「そうはいっても、フランスの国民の大半は政府を支持しているじゃないの?」と反問したところ、その大使は「素人は素人を支持するものだ」と言い放ったという。
 本当にいつまで日本はアメリカの言いなりになっているのだろうか・・・?

蝶と鉄骨と

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著者:五十嵐遇、出版社:東海大学出版局
 テングアゲハの写真が口絵に紹介されている。オスよりメスが断然大きく、たくましい。胴が太々としていて、まるで蛾だ。濃緑の胴と羽の中心部に黄色いふちどりが珍しい蝶であることを一見して分からせる。北インドの高地、タイガーヒルに棲む蝶だ。この蝶を大成建設の現場所長をつとめる中年の男がネットをふるって追う。
 男は少年のころから昆虫少年だった。勉強より、三度の飯より、昆虫図鑑が何より好き。じっと昆虫を観察し、写生する。それでも、食べるために大手の建築会社(ゼネコン)に入社する。そしてイラクに企業戦士として派遣され、見事に大失敗必至の事業を建て直し、大赤字ではあってもやりとげた。その自分へのごほうびに北インドへ飛び、珍蝶テングアゲハの生育歴について調べあげた。
 子どものころの夢を追い続けることの大切さをしみじみ味わうことができるいい本だ。著者は55歳で大成建設の取締役までのぼりつめ、定年で退社する。それでも日本蝶類学会の会長をつとめているのだから偉い。
 わが庭にもアゲハチョウが飛んでくる。地上をはう気味悪い芋虫が変態して優雅に空を飛ぶ蝶になるなんて、誰がどうやって仕組んだのだろうか。これも生物進化の大きな謎のひとつだ。それにしても蝶は人間(ヒト)をとりこにする魅力をもっている。

死刑囚、最後の晩餐

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著者:タイ・トレッドウェル、出版社:筑摩書房
 アメリカには死刑執行の3時間前に何でも食べたいものをリクエストできる制度があるそうです。そこで、実際に死刑囚がいったい何を注文したかを明らかにした本です。悪い奴を死刑執行するのは当然だというトーンで貫かれていますから、読んでいて少々いやになりますが、アメリカの死刑制度の現実の一端を知ることはできます。
 ちなみに、日本にはそんな制度はありません。リクエストどころか、死刑はある日突然、何時間か前に知らされ、まもなく執行されるのです。正月の3ヶ日を除くことになっていますので、死刑囚の気の休まるのは正月3ヶ日しかありません。これが平均で死刑執行まで10年ほど続くのです。アメリカには、現在、死刑囚が3000人以上いて(女性は49人)、この27年間に500人以上が処刑されました。うちテキサス州がもっとも多く144人にのぼります。もっとも死刑執行を認めているのは38州で、全部の州ではありません。電気椅子のところも5州ありますが、大半は薬物注射による執行です。そこで、何をリクエストしたかですが、たとえばテキサス州では4分の1がハンバーガーを、次いで、ステーキを注文したといいます。やはり、日頃食べ慣れたものを食べたいということでしょう。ステーキのほか、目玉焼き6個、ベーコン16枚、ハッシュウブラウン、イチゴシャーベット、ドクターペッパーコーラ、セブンアップ、コーヒーそして胃薬を注文した死刑囚もいたということです。
 アメリカでは刑務所も危険なところです。ところが、死刑囚監房は24時間の監視体制があるため、アメリカで一番安全な場所だというのです。いろいろ考えされられる本ではありました。

植物のこころ

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著者:塚谷裕一、出版社:岩波書店
 この夏にわが家の庭にはランタナという可憐な花を咲かせる低木を買って植えました。花の色が薄いクリーム色から濃い紅色に変わっていく、アジサイの花を小さくしたような花です。なぜ花の色が変わっていくのか。それは虫をたくさん呼び集めたいので、古い花も看板として残しておくけれど、ぜひ虫に来てほしい花は虫が近づいたときに区別できるようにはしておくために、咲きすすむにつれて花の色を変えるというのです。なーるほど、すごいなと感心しました。植物には心も感情もありません。だから、音楽を聴かせたり、手で触っても分かるはずはない。しかし、植物は明らかに生きているし、進化している。それをこの本は解き明かしています。
 私も日曜日ごとに花を眺め、土いじりをしていますが、なんとなく「植物のこころ」が分かりかけてきました。

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