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ブーヘンヴァルトの日曜日

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著者:ホルヘ・センプルン、出版社:紀伊國屋書店
 ナチスのブーヘンヴァルト強制収容所に入れられていたスペイン人の青年の回想記。ブーヘンヴァルト収容所での抵抗活動を描いた本としては『裸で狼の群のなかで』に深く心を打たれたことをすぐに思い出す。21歳だった著者も地下の武装行動
隊の一人だったようだ。この本は、いかにも哲学者の書いた韻文学的な表現が多くて、フランスで23万部も売れたベストセラーというのが信じられない。
 強制収容所のあまりにも過酷な事実を、何も知らない一般市民に対してどうやって知らせるかの議論があった。ある人は、「事態をありのままに、技巧なしに語るべきだ」と言う。しかし、著者は、「うまく語るとは、聞いてもらえるようにという意味だろう。少しは技巧がなければうまくいかないだろう」と反論した。「信じられないような真実をどう語り、想像不能なものへの想像力をどうかきたてるのか。だから、少しは技巧がいるんだ」というのである。私も、これにまったく同感です。
 事実が重たければ重いほど、そのまま伝えようとしても、誰も耳を貸してくれないでしょう。やはり、そこには聞き手の耳に入りやすい工夫もいるのではないでしょうか。
 このところ、なぜかナチスの強制収容所の話を続けて読んでいます。

中高年自殺

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著者:高橋祥友、出版社:ちくま新書
 自殺者は日本では年間3万人台、世界では100万人にのぼっている。日本の自殺率はアメリカより高く、ドイツやフランスよりも高い。都道府県別でみると、宮崎が全国のなかでもズバ抜けて高い(トップは秋田)。大分、鹿児島、沖縄も高い。こう見ると、自己破産の申立が人口比で高いところは自殺率も高いということになりますが、両者に関係があるのかしらん。世界中、女性よりも男性の方が自殺者は多い。女性の方がストレスに柔軟に対応できるから。それにしても、インターネットに「自殺サイト」があるというのは不気味な現象ですよね。
 「死ぬ、死ぬ」と言う人は死なないと広く信じられているが、これは大きな誤解。自殺した人の大多数は、行動を決行する前に自殺の意図を誰かに打ち明けている。これを的確にとらえられるかどうかが、自殺予防の重要な第一歩となる。
 夫が自殺した女性に対して、「いつまでもくよくよしていないで、早く忘れなさい」という言葉は残酷すぎる。たとえ善意であっても、言われた人の心の傷をさらに深くしてしまう。「あなたに何と言葉をかけたらよいか分からない」と言って、黙って手を握った方がどれほどいいか・・・。
 なかなか難しい問題です。この4月以来、私は毎月のように自殺した人の事件や後始末などを担当してきました。この社会の奥底にひそむ闇の深さを感じます。

いい加減よい加減

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著者:野村万之丞、出版社:アクセス・パブリッシング
 学習院高等科で浩宮と同級生だった著者は暴走族に走り、酒、タバコ、女、シンナーまでやっていたという。それは、狂言師をやらなければいけないという「宿命的カルマ」から逃れる唯一の手っとり早い逃避方法だった。浩宮から「キミとボクは同じ運命なんだね」とも言われた。親の家業が子どもにプレッシャーになるというのは、私自身も体験しました。しかし、こればかりは子どもに親を選択する権利がない以上、仕方がないことで、子どもはそれを乗り越えるしかないのです。
 「おはようございます」という言葉は歌舞伎の言葉で、能や狂言では決して言わない。「おつかれさま」は落語家の世界の言葉。狂言の世界では「御首尾(おんしゅび)よお」という。ただし、これは先輩が後輩に言う言葉。
 「ごちそうさま」というのは、タダで料理をいただいたときの返礼の挨拶言葉。だから、レストランで食事のあと支払いをして「ごちそうさま」とマスターや店員に言うのは間違い。「うまかったよ」とか「また来るよ」と言えばいい。おごってくれた人に対してのみ「ごちそうさま」と言うべき。
 狂言師の著者は、ほとよい加減の大切さを強調しています。

周五郎流

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著者:高橋敏夫、出版社:NHK出版
 山本周五郎に読み耽ったのは、司法修習生のころでした。しっとり胸にじーんと沁み入るような江戸の人情話に息をこらして読み耽りました。
 山本周五郎の時代小説のユニークさのひとつに、「死」を言祝(ことほ)がないことがある。リストラから「戦争」体制の整備にいたるまで、「人間」を無視し、「死」を言祝ぐ社会的な力はいま、ますます強くなっている。山本周五郎は、それにあらがった。
 人生は教訓に満ちている。しかし、万人にあてはまる教訓は一つもない。殺すな、盗むなという原則でさえ、絶対ではない(赤ひげ診療譚)。
 30年ぶりに山本周五郎を読み返してみようかな。今、そう考えています。

心の仕組み

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著者:スティーブン・ピンカー、出版社:NHKブックス
 なぜ卵子は大きく、精子は小さいのか。同じ大きさであってはいけないのか?
 仮りに同等の生殖細胞が2つ融合して細胞ができると、やっかいなことになる。それぞれの細胞にあったミトコンドリアが激しく戦い、殺し合う。それではエネルギー不足になってしまう。仲間うちの戦いを防止するため、一方は代謝機構をもたないDNAだけの細胞を用意する。生殖は、DNAの半分と必要な機構をすべて備えた大きな細胞と、DNAの半分だけであとは何もない小さな細胞の融合によっておこなわれることにする。この大きな細胞が卵子、小さな細胞が精子である。精子は小さくて安あがりなので、たくさんつくられる。卵子は大きくて貴重なものだから、養分をつめこんで保護カバーをかける。
 鳥類のメスが不倫するのは、適応度のもっとも高いオスの遺伝子と、子育てにもっとも熱心なオスの投資を両方ともとろうとするから。人間にもあてはまるような気がします。
 あるデート斡旋業者によると、女性は男性のプロフィールにきちんと目をとおすが、男性は女性の写真しか見ない。男性の裕福さを推測する一番いい手がかりは妻の容姿だ。女性の容姿を推測する一番いい手がかりは夫の裕福さだ。これは本当にそう言えそうですね。いろんなことを考えさせられた本でした。

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