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消えた娘を追って

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(霧山昴)
著者  ベルナルド・クシンスキー 、 出版  花伝社
   
 ブラジル軍事政権のとき、政権にタテついた若者たちが次々に拉致され消されていきました。消されるというのは、裁判もなく殺害され、その遺体は跡形もなく処分されて、何の記憶も残らないということです。著者の消された娘は大学で教えていました。写真がありますが、いかにも知的な美人です。
 ブラジル軍政下で逮捕されていた人たちが、今ではブラジルの大統領になっています。ルラ大統領とルセフ大統領です。著者の娘は残念ながら直ちに殺害されたのですが、今では都会の通りの名前になっています。忘れられないための措置です。
 そして、訳者によると、日系人も数多く消されたとのことです。
 日本人移民には、子どもには最良の教育を与えようと思い、子どもたちにも都会志向があり、日系人の大学進学率は飛び抜けて高かったのでした。ですからサンパウロ大学に日系人学生が多かったのも当然です。そして、1960年後半に起こった世界的な学生運動の高まりのなかで、ブラジルではサンパウロ大学が一番中心的な存在でした。ですから、日系人学生の多くが独裁政権に抗して立ちあがったのです。
 サンパウロ市が建立した記念碑には、軍政時代の犠牲差463人の名前が彫り込まれている。人々は跡形もなく消えてしまった。あのナチスだって、犠牲者たちを焼却炉で灰にはしたが、少なくとも記録は残した。
 拉致して拷問し、殺害した加害者232人のリスト。何十年かたって公表されたが、誰も罪に問われることはなかった。
 拷問には必ず医師が立ち会っていた。医師の役割は、拷問執行人が訊き出したいことを話す前に囚人が死んでしまうことを防ぐこと。
 学生たちを捕まえたら、八つ裂きにして、ばらばらの遺体を一つも残らないように消してしまう。部屋には、大きなテーブルがあり、その上に肉屋が使うのと同じ包丁や、のこぎりや金槌がある。そして、人間のバラバラにされた身体が・・・切られた腕が・・・脚が・・・そして、血・・・ものすごい量の血が・・・。
 これはドアに開いた穴からのぞいた人が見た光景です。なんとおぞましいことでしょう・・・・。
 軍事独裁政権のやったことは、どこでも同じですね。
 日本だって、放っておくと戦前のように軍人の天下になりかねません。アベ政権の目指している道そのものです。今ならまだ遅くありません。嫌なものは嫌だといえる平和な日本を守るために声をあげましょう。
(2015年10月刊。1700円+税)

「北支」占領、その実相の断片

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(霧山昴)
著者  田宮 昌子 、 出版  社会評論社
 三重県出身の3人の兵士の日記・手紙と写真によって、日中戦争の断片を新幹線内でガソリンをかぶって焼身自殺した71歳の男性がいました。51歳の女性がそのあおりをくらって亡くなられました。本当に痛ましい話です。
 私は安倍内閣が強引に成立させようとする安保法制法案が成立したら、日本国内の至るところで、自爆テロの危険があるようになることを今から心配しています。
 イギリスでもフランスでも地下鉄や新聞社などで自爆テロが発生しました。
 アメリカと一緒になってイラクやアフガニスタンへ日本の自衛隊が出かけていったとき、その報復として日本が自爆テロ攻撃の対象とされないなんて考えるのは甘すぎるでしょう。身内が理不尽に殺されたら、仕返しをしたくなるのが人情というものです。
 政治は、そんなことを防ぐためにあるはずなのですが、自民・公明の安倍内閣は戦争してこそ平和が得られるというのです。まるで間違っています。
 この本は、アルジェリアでイスラム原理主義勢力がはびこるのを嫌って、イギリスへ渡った男性が無意味な殺し合いをやめさせるためにフランス、そしてイギリスの諜報機関のスパイになったという実話を紹介しています。このアルジェリア人の男性は何回も殺されかかっていますが、テレビで顔を出していますから、今も生きているのが不思議なほどです。
 モスクでは、ビデオを見せられる。激しい戦闘の様子や、イスラム戦闘員の遺体が写っている。
 「こうやって殉職者になって天国に行くんだ。きみたちも、欧米の不信心者と戦えば、天国が拘束されている」
 「きみたちの今ある生命は本当の命ではない。ジハードで死んだあとに、きみたちの本当の命が息を吹き返し、そこから人生が始まるのだ」
 「殺せ、不信心者を殺せ。アルジェリア兵を殺せ。アフリカ人を殺せ。殺せば、おまえたちは天国に行ける」
 メッセージは明確だ。生き方に迷っている若いイスラム教徒にとって、「おまえの進むべき道はこっちだ」とはっきり指示してくれる人間が必要だった。言い切ってくれることで、迷いが吹き飛ぶ。
 モスクは、ありあまるエネルギーに火をつけてくれる刺激的な場所だ。イスラム信仰心にあつい者は酒も麻薬にも手を出さない。恋人をつくったり、酒に酔って夜のパーティーに出かけることもしない。ひたすらコーランを読んで、それを実践しようと心がける。
酒に酔って、パーティーに明け暮れる西洋文明は、腐り切った汚れた社会だ。
 ビデオを見て、洗脳されて若者の心を「戦って天国に行け」という訴えが射貫いた。若者は、やがて自分も欧米人を相手に実践に参加して、殉職者になることを夢見るのだ。
 これは、戦前の日本の軍国少年育成と同じ話ですね・・・。
 宗教を盲信してしまうことによる恐ろしさ、殺し合いが日常化してしまったときの怖さが、じわじわと身に迫ってきました。そんな世の中にならないように、日本はもっと恒久平和主義を世界にアピールすべきなのです。
 安倍政権の積極的「戦争」主義は根本的に間違いです。この本を読んで、ますます私は確信しました。
(2015年5月刊。1800円+税)

藤原清衝

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著者  入間田 宣夫 、 出版  集英社
 平泉の中尊寺には行ったことがあります。黄金色に輝く金堂の見事さには息を呑むばかりでした。奥州に花咲かせた平泉藤原氏三代の初代・藤原清衡(きよひら)の果たした偉業をしっかり認識させられた本です。
 大治元年(1126年)春3月24日、中尊寺鎮護国家大伽藍(がらん)の造営を祝う盛大な儀礼・落慶供養(らっけいくよう)の法要が開催された。ときに清衡は71歳。
 大伽藍の中心には、三間四面の檜皮葺(ひわだぶき)の本堂(金堂)には、丈六(じょうろく)皆金色(かいこんじき)釈迦三尊像が安置され、その左右には50体の脇士侍者(わきしじしゃ)がそれぞれ立ち並んでいる。このモデルは、御堂関白・藤原道長の創建した京都の法成寺(ほうじょうじ)であった。
 中尊寺の仏像群は京都から招かれた著名な仏師の手になるものであり、建物も京都方面から招かれた最高水準の大工によって建立された。
 二階瓦葺の経蔵(きょうぞう)には、金銀泥の一切経、5400巻が収納されている。
 経巻は金泥の文字が1行、次に銀泥の文字が1行、そしてまた金泥の文字が1行というように金文字と銀文字とを交互に用いている。さらに、経巻の料紙には、紺色を、経巻の軸には玉を用いた。法華経10巻も1000部セットが用意された。
 二階の鐘楼には、20釣の洪鐘が懸けられ、その鐘の音は千界のかなた、宇宙の果てまで及ぶかのように、大きく鳴り響く。そして、この日は、実に1500人もの僧衆を招いての大法要であった。
 千僧供養(せんぞうくよう)は、天皇・上皇あるいは摂政・関白などが主催し、朝廷や法勝寺・延暦寺・興福寺ほかの諸大寺でしかおこなえないものであった。遠く離れたみちのくにおいて、しかも一介の地方豪族にすぎない。清衡の主催で本来なら出来るはずのない興業だった。
大伽藍の造営に寄せる願文は、当時きっての大学者(文章博士(もんじょうはかせ)、大学頭(だいがくのかみ))、右京丈夫(だいぶ)藤原敦光朝臣(あそん)の起草であった。
 そして、この大伽藍には、「御願寺」という金看板がかけられた。「禅定法皇」(白河上皇)の発願(ほつがん)によって建立された国家的な寺院としての金看板である。
 清衡の願いは、前九年合戦そしてあと三年合戦によって戦い死んだ敵味方の人々を等しく救済し、極楽浄土に導くことであった。藤原清衡は、自らを「東夷の遠酋(とういのおんしゅう)」と呼んだ。東辺の蝦夷集団を束ねるべき、遠い昔から酋長の家柄に属するもとのということである。
 また、「俘囚の上頭(ふしゅうのじょうとう)」とも自称した。朝廷に服属する蝦夷集団の棟梁ということである。同時に清衡は、「弟子(ていし)」という一人称も付している。弟子とは仏弟子のこと。天皇や道長が自らの名前の上につけた言葉である。
 藤原清衡の前半生は凄まじいものがあった。幼少にして、父親(経清)が斬首された。母親は敵将の息子に再嫁させられた。義理の兄に反旗を翻し、父親違いの弟によって、妻子・眷族(けんぞく)を殺害された、自らの命も狙われた。さらには、その弟を攻め滅ぼし、そのうち取られた首と対面した。そして、清衡は自ら予告したとおり、金色堂内において、本尊阿弥陀仏の御前に坐して合掌し、念仏を唱えながら眠るがごとく目を閉じた。清衡73歳。大治3年(1128年)秋7月16日のことだった。
 奥州三代の初代・清衡が、これほどの人だったということを初めて知りました。平泉の中尊寺・金色堂の最良のガイドブックです。
(2014年9月刊。1750円+税)

FBI式、人の心を操る技術

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著者 ジャニーン・ドライヴァー、  出版 メディアファクトリー新書
 人間の何気ない仕草に、実はその人の心の動きがあらわれている。なるほど、そうなのかなあと思う指摘がいくつもありました。
嘘の得意な人間は、たいてい相手の目を見続けることも得意だ。嘘つきは目を見ないというのは誤解だ。そうなんですね。まったく油断も隙もありません。
 それより大事なことは、相手がいつもとは違った動きをした瞬間を見逃さないこと。
恐怖に飲み込まれそうなときでも、自分のホンネ以上の自信をかもし出す訓練をする。これが利益をもたらす。本物の自信が身につくまでは、自信のあるふりをしている。これが大切だ。なるほど、そういうことですか・・・。
 友好関係を築くのにもっとも大切な感情は、共感だ。求められるのは、他者の言葉に真摯に耳を傾け、その価値観を理解し同じ感情を持つことのできる能力。これがあると、やがて相手も自分を尊敬するようになり、さらに大切な信頼関係が生まれる。うむむ、これって大切な指摘ですよね。私もそうだと思います。
 会って最初の7秒で第一印象は決まる。自己紹介は必ず強く。名前を皆に覚えてもらえるように、はっきり言う。それも1回だけでなく。
 相づちを打つのは、ほどよく、心を込めて。へその向きが、その人物の意志を読みとくときの最も重要な要素である。
人は不快感や不安を感じたとき、本能的に局部を隠す「イチジクの葉」のポーズをとる。身体のどこかとどこかを触れあわせる行為は精神的なストレスが高い場面で自分を落ち着かせようとして、無意識に行っているケースがほとんどだ。自分を触る仕草は、緊張、自信の欠如、あるいは退屈を示すシグナルだ。自分自身をなだめたり、落ち着かせるためにとる行動なのだ。 自分を触る仕草をしないように心がけること、それだけでも集中力が高まり、鋭敏になる。
相手が度を超した怒りを見せ始めたとき、言葉や肉体による暴力を受ける危険を感じたら、目をそらすこと。腹部やノドや局部を隠し、体を小さく見せる。自分からは話しかけない。そして、ゆっくりと出口へ向かう。どうしてそこまで怒り狂っているのかを尋ねてはいけない。怒るのは間違ったことだと理路整然と諭してもいけない。その時点で、相手は理性的に考えるのが不可能な状態にあるのだから。
他人の理不尽な怒りに出会ったら、何より自分の安全を優先しなくてはいけない。
ふむふむ、なるほどなるほど。いろいろ参考になる指摘がありました。FBIというんだから、うさん臭い。そう思わないで読んでみました。とても実践的で大切な指摘が満載の本でした。
(2010年7月刊。740円+税)

生命にぎわう青い星

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 カッコウ類は、産卵期の宿主の巣に卵を産みこむ。
 カッコウ類のメスが産卵に費やす時間は、とても短い。宿主の巣に取りついてから、産卵して巣を離れるまでの時間は、わずか数秒から10秒前後だ。それは、托卵される側の小鳥は、カッコウ類が巣に近づいてくると攻撃するから。カッコウ類は産卵に費やす時間を短くし、宿主の攻撃を長引かせないようにしている。
 カッコウ類のメスは、産卵するとき、自分の卵を産みこむ前に、宿主の卵を1個あるいは2個くわえとる。自分の卵を産み終わってから抜き取るのではない。卵の色も形もよく似ているので、間違って自分の産んだ卵を抜き取らないようにしている。
 カッコウ類は無差別に托卵しているわけではない。自分と食性が基本的に同じで、個体数が多く、自分より身体がずっと小さい小鳥に排卵している。
 カッコウ類は昆虫食なので、托卵相手には広い意味での昆虫食の鳥を選んでいる。個体数が多い鳥というのはスが見つけやすくなるから。小さい鳥の方が、大きい鳥よりも一般に高密度で生息している。孵化したひなが巣を独占しようとするとき、宿主のひながずっと小さい方が有利になる。というのも、カッコウ類のひなは、孵化したあと巣内にある宿主の卵やひなを巣外に放り出す。そのためには小さい方がしやすい。
 カッコウ類の托卵する相手は種によって違えている。同じ種を選んでしまうと、過度の托卵によって個体数が減ってしまいかねない。
 ホトトギスは主としてウグイスに、カッコウはホオジロなどに托卵するというように分かれている。カッコウ類が産む卵は、宿主の卵に酷似している。それは、たとえばウグイスは違った色の卵が産みこまれた巣はすぐに放棄してしまう。
 カッコウ類のひなは、宿主のひなより1~3日早く孵化する。かえったひなは、数時間ほどたつと、巣の中にある宿主の卵やひなをすべて巣外に放り出し、巣を独占する。巣を独占したひなは、宿主の小鳥、仮親が持って来る食べ物を文字通り独り占めする。
 カッコウのひなは口を大きく明け、仮親に餌ねだりする。口の中はあざやかな赤やオレンジ色をしている。仮親は、このあざやかな口の中を見せられると、もってきた食物をそこに思わず入れてしまう。
 カッコウの一羽のひなは、仮親の一巣・数羽分のひなの声を同時に出している。それによって、仮親の給餌をより多く誘い出し、たくさんの食物をもらっている。
 カッコウ類の托卵システムの巧妙さには驚きますね。降りこめ詐欺に負けじ劣らじの悪賢さです。
 現在、地球上に知られている生物の種は141万3000種ほど。しかし、生物の全種類は1000~3000万種以上と考えられている。同じ種の個体は、そこにふくまれる個体としか遺伝子を自由に交換しない。種とは、繁殖上ほかから隔離されている、遺伝的に閉鎖された系である。
 生物の種の大切さを考えさせてくれる大切な本です。
(2010年1月刊。1600円+税)
 フランス映画、『モリエール、恋こそ喜劇』を見ました。久しぶりに喜劇をしっかり堪能することができました。喜劇とは単に笑わせるだけでなく、充実した人生とは何かを深く考えさせるものでもあるのですね。モリエールを読みなおしたいという気になっています。
 梅雨がようやく明けて青空が広がっています。日曜日の朝、抜けるような青空を眺めながら、何か欠けていると思いました。そうです。蝉の鳴き声です。夏に、あのうるさいほどの蝉の鳴き声を聞かないと真夏ではありません。午前8時半ごろ、ようやく鳴き出しました。地中に何年もいて、梅雨明けをいまかいまかと待ちわびていたのでしょう。ちょっとタイミングがずれたので、今朝は鳴き始めるのが遅かったのでした。

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