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カテゴリー: 社会

新・学歴社会がはじまる

カテゴリー:社会

著者:尾木直樹、出版社:青灯社
 「格差が出るのは悪いこととは思っていない。能力のある者が努力すれば報われる社会良しとする者は多い」
 「どの時代にも成功する人としない人がいる。貧困層を少なくする対策と同時に、成功者をねたむ風潮、能力ある者の足を引っぱる風潮を慎んでいかないと社会の発展はない」
 これらは小泉前首相の国会答弁(2006年2月1日)です。
 「国際化の中で、能力や才能、努力によって生まれる格差は、むしろ称賛すべきことだ」
 これは日本経団連の御手洗会長(キャノン会長)の発言です。
 これらの言葉は、果たして本当だろうかと著者は疑問を投げかけます。
 公立幼稚園では年に24万円弱ですむのに、私立幼稚園は51万円ほどかかる。公立中学が47万円なのに対して私立中学だと127万円。公立高校は52万円なのに私立高校だと103万円。いずれも2倍以上の格差がある。これは親の経済力による。
 最近、東京に行くたびに超高級ホテルがふえています。それらのホテルは中クラスの部屋で1泊10万円だといいます。高級旅館で1泊2食付き4万円というのは聞きますが、素泊まりで10万円する部屋が、そこでは中クラスというのです。1泊40万円とか50万円の部屋に泊まる人が増えているということです。日本でもスーパーリッチ層が増大しているわけです。
 その一方で、就学援助を受ける人が急増しています。1995年度に77万人、   2000年度には98万人だったのが、2004年度はなんと134万人近くにまで増えた。そのうち生活保護世帯に準ずる世帯が121万人ほど。大阪の受給率は28%、東京でも25%に近い。貧困層の増大はすごいものです。
 トヨタ自動車など中部財界がつくった中・高一貫全寮制男子校は年間の学費と寮費で 330万円かかる。6年間だから総額1800万円にもなる。そんな私立校に国の手厚い補助がなされている。
 公立で中高一貫校がふえている。全国に公立120校もある。私立50校、国立3校あるので、合計173校あって、さらに首都圏では17校の開校が予定されている。
 果たして中高一貫校はそれほど良いものなのでしょうか。思春期に親と離れて生活して将来、本当に心優しい人間になるのでしょうか。私は心配です。
 著者は、教える量を多くし、難解にすればするほど学力が向上するという考えは根拠のない錯覚だと主張しています。その証拠としてあげられているのが、日本人が大人になってから学力が身についていないことが国際比較で判明したというのです。
 受験戦争による暗記型、トレーニング中心の「学校知」をどれだけ詰めこんでも、生きる力としての学力につながっていない。大人になると学力が世界最下位に落ちこんでいる。
 学力は競争させるほど向上する。授業時間数を増やせば学力が上がる。いずれも単なる錯覚である。
 「フリーターとかニートとか、私に言わせりゃごくつぶしだ、こんなものは」
 こんな偉そうなことを臆面もなく言ってのけたのは、あの石原東京都知事です(2006年3月 14日、都議会)。いったい自分を何様だと思っているのでしょうね。
 経済格差、学力格差、学歴格差、学校内のコース格差、学校間格差、出自格差、文化格差、親の学歴格差、習熟度別格差、教員格差。これらが地域間格差、情報格差、男女格差、企業間格差などとからみながら、複雑に進展し、子どもたちの学力にも反映されている。格差は多様ではあるが、大切なことは、どの格差も人為的所作のなせる業であり、けっして自然現象というものではない。
 そうなんですよね。私の出身高校はそれなりの昔から伝統のある「名門高校」でしたが、いつのまにか低いランクに落とされていました。学区が事実上撤廃されたため、生徒たちが1時間以上かけても有名高校に通うようになったためです。私は自転車で15分ほどの通学時間でしたが、通学時間に1時間以上もかけるなんて、ムダだと思います。いかがでしょうか。
 格差というと、先日の週刊誌に日本の社長のトップは年収80億円とかいう記事がありました。これって間違ってませんか。その会社のヒラ社員は年収1億円とかもらっているでしょうか。上にばっかり厚いというのは、きっとどこかで破綻すると思います。
(2006年11月刊。1800円+税)

男はつらいらしい

カテゴリー:社会

著者:奥田祥子、出版社:新潮新書
 しんどいのは女や若者だけじゃない。働き盛りの男たちこそ、誰にもグチを言えないまま、仕事に家庭に恋愛に、心身の不調に悩んでいるのだ・・・。
 40歳の独身女性記者(『読売ウィークリー』)が、自分を棚上げして聞き出した、哀しくも愛しい男たちのホンネが紹介されています。読むと、独身ではない私も身につまされます。ホント、男って案外つらいものなんですよ。
 30歳代前半の男性2人に1人、女性の3人に1人が結婚していない。50歳時点で一度も結婚したことのない生涯未婚率をみると、男性は16.0%で女性の7.3%を大きく上回る。これは10年前から倍増しており、男性の非婚化が著しい。
 うむむ、なぜか。どうして、そうなったのか?
 男性に共通しているのは、自分から女性にアプローチできず、自分が傷つくのが怖いということ。服装や髪型を変えるだけでも、ある程度、見た目を良くすることはできる。しかし、次のステップに進もうとすると、コミュニケーションが苦手か、傷つくのが怖いという。それが障害になる。さらに、女性の男性選びの基準が厳しくなっていることも影響している。
 離婚した男性でも、結婚できる人は、何度でも結婚できるし、結婚できない男性は一生できない。うーん、大変鋭い指摘です。
 男性は、年齢が上がれば上がるほど、理屈っぽくなり、結婚できるように変わるのが難しい。なるほど、なーるほど、という感じがします。
 男にも更年期がある。男性ホルモンも20歳代をピークとして、加齢とともに徐々に低下し、50歳あたりを境に、幅広くみると40歳代半ばから60歳代前半ころまで、男性にも女性と同じような不定愁訴などの更年期の症状があらわれる。男性の更年期の症状とは、おもに精神症状(つまり抑うつや不安、イライラ、疲労感など)、身体症状(発汗、ほてり、不眠、骨・関節・筋肉関連症状、記憶・集中力の低下)、性機能症状(性欲低下や勃起障害、射精感の減退など)の三つに大別される。
 私は幸いにして、ここにあげられている症状をあまり感じませんでした。ただ、40代のころ、夜中、急に胸の動悸がして目の覚めたことが何回かありました。そのうちおさまりました。
 団塊世代は、若いころから自分らしさや個性を好みながらも、結局はみんなと一緒の仕事人間に終わってしまい、自分らしさも実現にはもう遅い、という後悔の念を抱いている人が少なくない。その反動として、わが子には自分の好きな人生を目ざしてほしい、そのためには親元にパラサイトして定職につかなくてもしようがないという考えがあるようだ。
 私にはそんな気はありません。ただ、結婚相手を見つけるのが難しくなっているな、とは感じます。だって、昔のようにお見合いの席をもうけるのが、きわめて難しいのですから・・・。
(2007年8月刊。680円+税)

美味しい食事の罠

カテゴリー:社会

著者:幕内秀夫、出版社:宝島社新書
 砂糖と油脂に殺されようとしている日本人。マック、ケンタそしてホカ弁、コンビニの前を通るたびに、日本人って可哀相だなと思います。もっと、食事を大切にしようよと、叫びかけたくなります。
 食費にあまりお金をかけていない人ほど、油脂をたくさん食べている傾向がある。油脂には、素材の悪さをごまかす便利な働きがある。多少、味の落ちる素材でも、油脂まみれにしてしまえば、なんとなく油脂自体のコクや美味しさで食べられてしまう。素材の味が分からずに美味しく食べられる。
 ファーストフードは、輸入小麦と砂糖と油脂の塊だ。油脂と砂糖は満腹感ももたらしてくれる。人間は、油脂の味や、甘い味を、本能的に求めるようにできている。脳にとって、油脂や砂糖の甘さは快楽である。
 人間の二大欲求は食欲と性欲。性欲のほうがお粗末なため、日本人を過剰なまでに食欲に走らせ、一億総砂糖漬けを招いている。未婚女性の4割に男性の友人がいない。そのフラストレーションのはけ口として、食の快楽に走っている。
 長寿の島だった沖縄で男性の寿命が短くなるという異変がおきている。それは、沖縄男性の半分が肥満になったこと、ハンバーガーショップの普及率が日本一と関連がある。ギトギトと油脂まみれの総菜が沖縄で売れている。
 全国のサラリーマンが夕食にしているのは、甘い缶コーヒーだ。缶コーヒーの危険性に多くの男性が無自覚である。缶コーヒーは糖分のほか、クリームなどの脂肪分がたっぷり。これは砂糖の点滴と同じ。糖尿病への特急切符である。
 乳ガンにかかった女性の多くが朝食にパンを食べている。砂糖と油脂入りのパンに、マーガリンとジャムを塗りたくり、わずかな生野菜にマヨネーズやドレッシングで油脂まみれにして食べ、糖分たっぷりの甘いヨーグルトを食べている。いわば食事をとらずにお菓子を食べているのと同じ。これは大変です。みんなに知ってほしいですよね。
 ハンバーガーは食事ではない。ふむふむ、なるほど、そうなんですね。
 いやあ、考えさせられました。私はいま典型的なメタボになってしまいました。そこで、ダイエットを宣言し、実行しています。ともかく食べる量を減らすのです。ガマンガマン、これを合言葉に、いつもお腹が空いている状況に耐えています。さすがに年齢(とし)をとって、空腹には耐えられるようになりました。美味しいものを少しだけ、ということが実践できるようになったのです。うれしいやら悲しいやら、です。だって、来年には還暦を迎えようとするのですから、健康第一ですよね。
(2007年9月刊。700円+税)

糖質制限食、夏のレシピ

カテゴリー:社会

著者:江部康二、出版社:東洋経済新報社
 大変です。胴まわりが2センチも増えてしまいました。まさか、の油断です。まったくメタボリック症候群になってしまいました。ズボンがきつくなっています。毎年、夏になると、いつも太るのですが、今年は秋になっても減りません。深刻に反省しています。
 そんなとき、宮崎へ出かけて、夜のスナックで隣にすわった衛藤彰弁護士から耳寄りの話を聞きました。糖尿病も肥満も、たちまち解決する食事療法があるというのです。しかも、ごはんとメン類を抜かすだけでよく、肉も野菜も食べていい。日本酒やビールはダメだけど、焼酎なら飲んでいいというのです。いやあ、それなら私もやれそうです。さっそく私はこの本を買って、少しずつ実践しています。とりあえず、食べる量をぐーんと減らしました。ごはんは、もともとあまり食べていませんでしたが、意識的に減らしました。大好物のスパゲッティも、当分やめることにしました。博多駅の地下に行きつけの美味しいパスタの店があるのですが、しばらく遠ざかることにしました。
 しっかり食べてダイエット。これがいいですね。
 それでなぜ、ダイエットできるのか。
 精製された炭水化物、つまり白パン、白米、うどん、パスタ、白砂糖、お菓子、これらの過剰摂取が肥満や生活習慣病の根本原因である。
 血糖値を上げるのは糖質。糖質は摂取したら100%血糖に変わる。しかし、たんぱく質が糖に変化するのは50%。脂質なら10%未満。腸から消化吸収されて血糖値を上昇させる時間は、食べ物を口にしてから糖質はわずか15分、たんぱく質や脂質は3〜4時間かかる。糖質を摂取したら、まず血糖値が上昇する。そして、体内にインスリンが分泌され、筋肉などの体組織に血糖をとりこませて血糖値を下げようとする。次に、取りこみきれなかった余剰の血糖は、インスリンにより中性脂肪に変えられ体内に蓄積される。
 糖質を制限すると、肥満ホルモンたるインスリンが分泌されない。尿中にカロリーとともにケトン体が排泄される。体内脂肪が常に燃えているから、やせる。
 糖質制限食10ヶ条を紹介します。
1、たんぱく質も脂質もOK。
  肉も魚貝も、豆腐、納豆、チーズも、みんなOK。
2、白米、白パン、パスタ、お菓子、砂糖は、みんなダメ。
3、玄米ごはん、全粒粉パン、十割そばならOK。
4、牛乳も果汁もダメ。成分無調整豆乳はOK。
5、野菜、海草、きのこはOK。糖質をふくむ果物は少しだけならOK。
6、オリーブ油と魚油はOK。リノール酸は減らす。
7、マヨネーズ、バターはOK。
8、日本酒、ビールはダメ。焼酎、ウイスキーはOK。
9、間食やおつまみにチーズとナッツはOK。ドライフルーツはダメ。
10、化学合成添加物はダメ。
 私は始めて1週間で体重が1キロ減りました。これは、食べる量をぐっと減らしたので当然です。これくらいなら、すぐリバウンドします。でも、がんばってみるつもりです。みなさん、ぜひ応援してください。
(2007年5月刊。1500円+税)

新自由主義の犯罪

カテゴリー:社会

著者:大門実紀史、出版社:新日本出版社
 またまた私の知らない言葉がありました。オンコール労働者です。みなさん、知っていましたか?
 オンコール労働者とは、企業が必要なときに呼び出し、必要なだけはたらかせる労働者のこと。呼び出しは、企業の都合によっておこなわれ、労働者は前日の呼び出しでも応じないと、次の仕事が得られないという、強制的かつ不安定な状態におかれる。就労日数も、一日から数週間と、企業の需要に合わせて決められる。
 これはアメリカの労働者についての言葉です。日本では、ワンコール労働者というのがあります。私は、これも知りませんでした。ワンコール労働者とは、電話一本で呼び出される労働者のこと。アメリカのオンコール労働者とほぼ同じで、一日単位の仕事について電話で派遣会社に仕事情報を照会し、直接、派遣先に出向いて就労する派遣労働者のこと。日雇派遣とかスポット派遣とも呼ばれる。
 ワンコール労働者に登録している労働者は、グッドウィルで270万人。同じ派遣大手のフルキャストで175万人もいる。日給は5000〜8000円だが、毎日仕事があるわけではないので、月収は10〜13万円程度。アメリカのオンコール労働者と同じく、低賃金で雇用保険も社会保険も適用されない。
 いやあ、これってひどいですよね。だって、昇給も昇進もまったくないのですよ。これでは人生設計なんて、まるで出来できませんよ。
 偽装請負とは、実態は派遣労働なのに、契約上は業務請負と偽装し、本来は派遣先企業が負うべき労働者の使用にともなうさまざまな責任を免れようとするもので、職業安定法や労働者派遣法に違反している。
 偽装請負では、請負会社は求められた人数の労働者をメーカーに派遣するだけで、指揮命令するのはメーカーだ。誰が仕事の指揮命令をするのかは、いざというときの使用者責任を問い、労働者の権利を守るうえで重要な分かれ目になる。
 この本に完済の大手電機メーカーN社というのが登場します。あくまで人件費が安上がりですむクリスタルとの取引を継続しようという勢力と、自社グループ内で技能社員を養成していこうという勢力との争いがあったというのです。長い目で見たら、技能社員を大切にして養成していくべきことは明らかだと思うのですが、目先の利益を追うと、そんなことを考えるゆとるはなくなるのでしょうね。
 この本には病院ファンドについても紹介されています。今、全国の病院、とりわけ自治体病院の経営が苦しい状況です。そこにつけこんでもうかろうという企業グループがあるというのです。とんでもない連中です。
 新たな投資分野なので、銀行や商社、不動産会社などが次々にファンドを立ち上げている。このファンドは私的病院だけでなく公的病院もターゲットとしている。現在、自治体病院600のうちの9割以上が赤字で、そのほかの公的病院も6割赤字経営。ここに公的病院の民営化がすすみ、ファンドのもうけの場となっている。
 いやですね、人間(ひと)の生命・身体を、もろに金もうけの道具にするなんて・・・。
 クレジット・サラ金による被害者救済を充実させるため全国を飛びまわっている福岡の椛島敏雅弁護士のすすめで読みました。勉強になりました。ありがとうございました。
 日曜日に、仏検(準一級)を受けました。晴れた青空の下、室内にいるのがもったいないような気がしましたが、2時間半ほどのテストが終わったときには花王石鹸のマークのような半月が空高く輝いていました。今回も事前に十分な予習できなかったのですが、前日と当日午前中、フランス語の勘を取り戻そうと、必死に辞書をめくって単語を復習しました。自己採点で78点です(120点満点)。まあ、なんとかパスしたかなと思い、秋風の寒さを身にしみながら帰路につきました。
(2007年10月刊。1700円+税)

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