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カテゴリー: 社会

日本維新の会の「政治とカネ」

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 上脇 博之 、 出版 日本機関紙出版センター
 これまで日本にもたくさんの政党が生まれては消えていきましたが、維新の会ほど厚顔無恥というコトバがぴったりくる政党は珍しいと私は思います。大阪万博とカジノ(IR)誘致です。夢洲(ゆめしま)で来年盛大に開催されるはずの万博は工事が遅れに遅れ、パビリオン建設が具体化している国はいくつもない有り様です。維新の会は税金を全然使わないと公言していたのに、工事費は当初の1.9倍にふくれあがり莫大な税金が投入されつつあります。今からでも中止したほうが、よほど安上がりになるというのが衆目の一致するところです。
 カジノ(IR)のほうもデタラメです。誰がいったいカジノをするのか、それでもうかるのは誰なのか…。カジノなんて有害あって一利なしです。
 この本は「身を切る改革」と言っている維新の会が、実は、自分の身は切らないどころか、税金をうまく私物化していることを鋭く暴いています。読みすすめるほどに、維新の会のえげつなさに呆(あき)れかえってしまいます。
 維新の会は政党助成金を平気で受けとっています。それも27億円近い税金(2015年)を受けとっているのです。しかも、政党助成金を受けとって「使い果たす」ためなら、トンネル・ペーパー団体まででっち上げてしまいます。
 政党助成金が維新の会の財政(収入)に占めるのは80%をこえています。
 政党交付金は、年度末に残金があれば、国庫に返還することになっています。ところが、年度末に残金が出そうだというとき、維新の会は「基金」をつくって貯めこみ、国庫に返還していません。「身を切る改革」は、自分自身については実行しないのです。
 国会議員に交付される「文書返信交通費滞在費」についても、維新は残ったお金を身内に寄付して国庫へ返還していません。
 維新の会も自民党と同じく、政治資金パーティーを開催します。維新の会は総額1億円ほどの収入を計上しています。1口2万円のパーティー券(会費)を企業が何十口も購入するのです。パーティーに参加しなくてもよいのです。つまりは隠れた企業献金です。維新の会は、これの改革は言いません。自分を告発してしまうからです。
 なんとひどい、えげつない政党でしょうか…。腹の立つ本です。でも、目をそらしてはいけません。
(2023年7月刊。1300円+税)

原発は大丈夫と言う人々

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 樋口 英明 、 出版 旬報社
 南海トラフ巨大地震が来たら原発(原子力発電所)が大丈夫なわけはありません。
 著者は、原発が他の一般的な技術施設とはまったく異なることを繰り返し強調しています。
一般の施設なら、何かトラブルが起きたとしたら、そこで運転を止めてしまえば、いずれ安全な方向に向かって落ち着いてしまう。しかし、原発では絶対に放っておいてはいけない。常に人が原発を管理して、水と電気を送り続けなければならない。停電してもメルトダウン、配管が切れて断水してもメルトダウンになってしまう。メルトダウンになったら、莫大な放射能が拡散し、やがて日本に住むところがなくなってしまいます。もはや手の打ちようがありません。
原発の技術は、根本的に他の技術とは異なっている。3.11福島原発事故のとき、1号機から3号機までで、広島型原爆の170倍もの「死の圧」が大気中にまき散らされた。
原発を推進している勢力は、「硬い岩盤の上に原発は建っている」と主張し、大々的に宣伝している。しかし、これは明らかなウソ。日本全国にある50基以上の原子炉のうち半分の原発はたしかに岩盤の上に建っている。ところが、残る半数は岩盤の上には建っていない。つまり、弱い地盤の上に原発はあるのです。
四国にある伊方(いがた)原発について、四国電力は「南海トラフ地震が発生したとしても、そのとき181ガルをこえる地震は来ないから安心して下さい」と強調している。
ところが、伊方原発の基準値振動である650ガルをこえる振動を記録した地震は30回以上も起きているのが現実。
日本の原発は、そもそも耐震性がきわめて低い。その原発が老朽化したら、さらに危険性が増してしまう。
日本は日本海の沿岸に50基以上の原発を並べている。たとえ原子炉に敵弾が命中しなくても、配電や配管がやられたら、手の打ちようがない。日本の防衛省は、テロリストが日本の原発を攻撃することはないと考えているようだが、客観的にみて、ありえないストーリー展開になっている。日本は、戦争開始を宣言したら、その時点で原発をやられてしまい、日本の敗戦は確定してしまう。
著者は元裁判官。熊本地裁玉名支部にいたこともあります。福井地裁の裁判長のとき、原発の安全性に疑問を抱き、操業差止の決定を下しました。
165頁という手頃な本ですから、ぜひ一度、あなたも手にとって読んでみてください。
(2023年9月刊。1300円+税)

北岳・山小屋物語

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  樋口 明雄 、 出版  ヤマケイ文庫
 残念なことに私は本格的な登山をしたことがありません。日本アルプスを縦走したという話を聞くと、大変だったろうなと同情をこめて感嘆の声をあげるばかりです。
 本州の山と言えば、奥鬼怒(きぬ)の三斗小屋温泉に登り、そこで4泊5日、煙草屋旅館で合宿したことは今も忘れることができません。私の大学生活の最大のハイライトです。そして翌年の6月に尾瀬沼を歩きました。それ以来、尾瀬沼に行ったことはありません。最近、三斗小屋温泉から登山した人(60代)が強風のため低体温症になって死亡したというニュースに接しました。山は怖いですよね。
 九州では、阿蘇を縦走しましたが、完走したのかは定かではありません。
 南アルプスの北岳(きただけ)には、いくつも山小屋があるようです。著者はそれらの山小屋の管理人を訪ね、山小屋事情を明らかにしています。
 まずは、白根御池(しらねおいけ)小屋です。管理人は吾妻潤一郎。この山小屋がオープンしているのは、6月から11月まで。山小屋で働くアルバイトの確保が難しくなっている。応募する若者が少ない。面接したとき「通り一遍な答え」しかしない(できない)若者は現場では、まず使えない。
 ありふれたフォーマットの言葉でしか自分を表現できない若者は、仕事でもフォーマット通りにしか働かない。つまり、応用が利かない。
 応募してくる若者とは電話で話すだけで、その口調と話しぶりで、だいたいのスキルが分かる。多くの若者はプロ意識をもとうとしない。遊び感覚の延長線上にあるから、率先して働いたり、手伝ったりしない。働くことから何かを学んだり、経験として自分の血肉にしようという意識がなく、ただそこで時間を過ごすという意識だけ…。
 料理がちゃんと出来る若者は、だいたい何をやらせても上手。他で器用な子も、すぐに料理を覚える。料理は、視覚、嗅覚、味覚、触覚、聴覚という五感のすべてを駆使して行われる。材料を選別し、何をどう組み合わせ、どうやって作るかという想像力を働かせ、さらに包丁を使って切ったり、混ぜあわせたり、こねたりなど、手先と指先の細やかな働きを必要とし、火を使って茹(ゆ)でる、炒(いた)める、そして盛りつけるというプロセスにおいて、脳は休むことなくフル稼働する。
 私は残念ながら料理できません。ひたすら食べる側です。
山小屋で働き始めた若者は、最初のころは基本を守るし、行動も慎重なので、あまり失敗ではない。ところが、慣れてきたことにミスが目立つようになる。
 予約しているのに来ない客は個人に多い。団体客は旅行会社を通しているから、キャンセルが少ない。
 山小屋の仕事でも体力の温存は重要。むやみに夜更かしすると体調を崩して風邪をひいたりする。ひとりでもスタッフが抜けると、山小屋にとっては貴重な力を喪って、痛い。
 山小屋のスタッフで一番に起きは午前3時半。朝食の炊飯を担当する人が地下のプロパンを開けて、スイッチを入れる。食堂を開けるのは午前4時半ころ。早寝早起きが登山の基本。お昼の弁当を予約している人は、朝食時にフロントで受け取り、次々に出発していく。午前5時半には客の全員が出発し、山小屋ではスタッフが掃除を始める。
 いやはや、すごいんですね…。そして、山小屋の管理人は遭難事故の連絡が入ったら、救助に向かう義務があるのです。これは大変ですよね。
 山小屋のスタッフにとって、眠ることも仕事のうち。睡眠不足は自分に不利になるばかり。そして、入浴時間は、きっかり30分。まあ、私も風呂を毎日に欠かせませんが、30分で出ています…。
遭難救出に行くときは最低2名が必要で、できたらもう1名の連絡係を連れていく。
山では水分補給が足りず、脱水症になる人が多い。体重1キロにつき、1時間で5ミリリットルの水分が必要。体重60キロなら、1時間に300ミリリットルの水分を補給する必要がある。
山小屋のトイレの屎尿(しにょう)はバキュームポンプを差し込んで吸い出し、タンクに密閉してヘリコプターでふもとまで搬送して処理する。うむむ、これは大変な仕事ですね…。
山梨県警の管内では、2022年の1年間に遭難事故として155件の発生があり、19人が死亡した。いやあ、これって多いですよね…。
 登山客が増えると、いい人もいるけれど、悪い人も目立ってくる。万引きする人だっている。トイレを汚して平気で出発する人もいる。まあ、登山客が全員、善人ということは、やはりありえないことでしょうね。
 そして、山小屋は世代交代の時期を迎えている。まあ、そうでしょうね。下界でも、みんな後継者の確保に苦労しているんですからね。
 スマホに頼りきりの登山者が、バッテリー切れでスマホが使えなくなって遭難寸前ということも起きているとのこと。スマホに頼れないときのバックアップが山でも必要だということです。
 山小屋で働く人々の苦労が少し分かった気がしました。
(2023年8月刊。1210円+税)

ギャンブル依存

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  染谷 一 、 出版  平凡社新書
維新の党を支持する人が少なくないのに私は驚いています。「身を切る改革」というのは、自分の身は安全にしておいて他人の身を切るものでしかありません。その象徴が最近発覚した市会議員でありながら国会議員秘書を1年半も兼職していたことです。2000万円もの税金を手にしていたようです。許せません。さらに、大阪万博と夢州のIR(カジノ)です。万博を発案し企画を推進したのは橋下・松井の二人でしたよね。今では、どの国もパビリオンをまともにつくらず、建設工事はうなぎのぼりに増えるばかりです。吉村知事は大阪万博でなく、日本万博に名前を変え、国が税金で負担してやるべきだと言い出しました。うまくいったら維新の手柄、失敗したら国の責任。あまりにも無責任だし、卑怯です。IRカジノのほうはアメリカの業者に逃げられたのに、まだしがみついています。スロットマシーンを大量に並べて日本人の庶民から大金を巻き上げようというのです。
でも、すでに日本はギャンブル大国です。そしてギャンブル依存症で困窮した家庭は無数であるのです。それを加速させようとしているのが維新なのです。やめてください。
ギャンブル依存は、アメリカ精神医学会がアルコールや薬物などによる「物質関連障害および嗜癖(しへき)性障害群」と同様に分類している症病。
ギャンブルを続けることで過剰な刺激を受けた脳内の神経路である「報酬系」に異常が生じている病気だ。アルコール依存症は109万人。インターネット依存は421万人。これに対してギャンブル依存は536万人(2014年)。
2018年10月、ギャンブル等依存症対策基本法が施行された。日本国内のギャンブル依存の原因はパチンコ、パチスロが大半を占める。
日本は世界一のギャンブル依存大国。
ギャンブル依存(障害)の有病者の割合は、アメリカ0.42%、イギリス0.5%、マカオ1.8%に対して、日本は3.6%と突出して多い。さらに、ゲーム機の設置台数はアメリカ86万台、イギリス45万台、ドイツ27万台に対して、日本は457万台と桁違いに多い。
今はやっているのがオンラインカジノ。日本では店舗型は違法なので、無店舗型、そして主催者は海外業者。すると、日本の刑法には触れないことになる。
 日本ではパチンコ店が駅近くか郊外にあるのはあたりまえなので、人々が慣らされている。これが日本人にギャンブル依存症の人が多い最大の理由。罪の意識がなく堂々と出入りできる場所に通ううちに病気になってしまう。これを維新が莫大な税金を投入して大々的にやろうとしているのです。そんなこと、あなたは許せますか…。私は絶対に許せません。
橋下徹は政治家をやめて今や無責任に論議するばかり。議論家になりました。本当にひどい男です。大阪万博も夢州IR(カジノ)も今すぐ中止すべきだと思います。
(2023年7月刊。920円+税)

すてきな地球の果て

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 田辺 優貴子 、 出版 ポプラ社
 夏は北極、冬は南極、そして春と秋は東京で生活するという植物生理生態学者のレポートです。写真もたっぷりあって、うらやましい限りです。植物の生理生態を研究するには野外調査が必要だというのは分かりますが、北極にも南極にも行ったなんて、すごすぎます。
 南極には、2007年、2009年、2011年と3回も行ったのです。著者は、身内が遺伝性の難病をかかえていることから、「好きなことをして生きていく」と決断し、実行しています。
自分の足で、見たこともない場所に行って、匂い、音、温度、湿度、色、風の流れ、季節の移り変わり、その全部を自分の身体で知りたい、体得したいということです。旅するって、そういうことですよね。
 私は、離婚して傷心の依頼者に対して、遠くへ旅行することをいつも勧めています。北海道、それも利尻島なんていいですよね。私もまだ行っていませんので、ぜひ行ってみたいです。
 青森出身の著者は大学を京都で過ごし、ペルーに出かけた。そして、大学を休学してアラスカに出かけた。アラスカでオーロラを体験。
 そして、大学院のとき、京都を出発し、自転車で青森に向かった。ときは5月。2004年5月のこと。京都を出発して15日目、ついに秋田と青森の県境に至った。その日は、海岸沿いで寝ることにした。コンロを出し、スーパーで買ったウィンナーをコッヘルで焼き、おにぎりと一緒に食べた。
目の前の日本海が荒々しく並の音をとどろかせている。海からの強い風が顔にまっすぐ吹きつける。空には雲ひとつない。太陽が水平線にどんどん近づいていき、波で削られたゴツゴツの奇岩群が真っ赤に染まっていた。その赤い大きな岩々になんども荒波がぶつかっては、砕けたしぶきを水平線に沈む夕陽がオレンジ色に染め上げた。それを見て、なんだか涙がこみ上げ、あふれそうになった。
 バックパッカーとして世界を旅した女性のこまやかな観察が文章によくあらわれていると思いました。うらやましいというか、自分には、とてもこんな勇気はないなと思いつつ、ひたすら没入しました。
(2013年8月刊。1500円+税)

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