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カテゴリー: 社会

ゴールデンカムイ、絵から学ぶアイヌ文化

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 中川 裕 、 出版 集英社新書
 マンガそして実写版の映画にもなった「ゴールデンカムイ」のアイヌ語の監修者によるアイヌ文化を紹介する新書です。新書といっても550頁もあります。マンガで紹介するところは字が小さすぎて、よく読めませんでした。
 それにしても監修者によると、「ゴールデンカムイ」はアイヌ文化を十分に踏まえたマンガになっているそうですから、たいしたものです。
 「ゴールデンカムイ」は2014年に連載を開始し、2022年4月に完結するまで、8年間、連載され、コミックスの最終巻は31巻という大長編です。すごいですね。累計で14万部を突破したとのこと。
 主人公が日露戦争の帰還兵ということは、明治時代から大正期にかけてのことでしょう。
 伝統的なアイヌの世界観では、世界のあらゆるものにはラマッ「魂、霊魂」があると考えられている。そのなかでも精神、意志をもって何らかの活動をしていると感じられるものを、とくにカムイと呼ぶ。狩猟というのは、人間が獲るのではなくて、カムイのほうから弓矢に当たりに来るものと考えられている。
北海道アイヌにとって、ただカムイとだけ言えば熊を指す。それほど熊はカムイ中のカムイというべき存在だった。
 アイヌにとって、鮭は主食といえるもの。シマフクロウは、とりわけ格の高い、えらいカムイ。
 著者は、熊の顔の肉と脳みそを生で叩きあわせて、塩とネギで味付けしたものを食べたことがあるそうです。本当においしかったとのこと。でも、私はちょっと…。と言いつつ、私も仔牛の脳みそは食べたことがあります。もちろん生(ナマ)ではありません。軽くソテーしたものです。ちょうど豆腐を食べている感じでした。
 アイヌ語で、金(きん)はコンカニ、銀はシロカニという。日本語の「こがね」「しろがね」からの借用。そして、銀のほうが金よりは格上の扱い。
 アイヌの人々は入れ墨をしているが、これはアイヌの専売特許ではなく、東南アジアから南太平洋にかけて広く広がっている。
アイヌの人々が久しぶりに再会したときは、正面を向きあいながら、お互いの髪をなでおろし、背中をさすったり、手をさすりあったりして、再会を喜びあう。
アイヌの女性は、成人男性の前では、被り物をとるのが慣習。
人が座っているところを通るときは、その人の後ろを通ってはいけない。座っている人の前を通るのがアイヌの作法。
 アイヌの伝統的な食器や調理用具のほとんどは木製品。囲炉裏で煮炊きし、鉄鍋による料理を食生活の基本としてきた。鍋物(オハウ)こそがアイヌの日常的なメインディッシュだった。
ムックリは、北海道アイヌにおいて唯一と言ってよい楽器。ネマガリダケでつくる。
アイヌは汚れた水を流さないようにするため、川で洗濯することはなかった。では、いったい、どこで洗濯していたのでしょうか…。
 ギョウジャニンニクは、アイヌの食生活において、なくてはならない山菜。
かつてのアイヌには苗字がなかった。明治になってから苗字をつけることが強制された。
 「ゴールデンカムイ」に登場するアイヌ語の人物の名前の多くは、著者が候補を上げ、そのなかからマンガを描いた人が選んだ。
 小説の中の登場人物のネーミングは実は難しいのです。ありきたりの名前では印象が薄く、読者に覚えてもらえません。そこで、一般的には電話帳をめくったりして、書き出します。今だとスマホの画面になるのでしょうね…。
 大変勉強になりました。ちょっぴりアイヌの人々の生活の一端をのぞいた気がしました。
(2024年2月刊。1500円+税)

学校に行かない子どもが見ている世界

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 西野 博之 、 出版 KADOKAWA
 マンガとともに不登校の子どもたちの声、そしてその対応策がとても分かりやすく紹介されています。改めて大変勉強になりました。私自身は弁護士として子どもたちの不登校問題に関わったことはありませんが、青年から中年までの引きこもりの人は今も関わっていますので、とても身近な問題です。
 不登校の子どもが全国に30万人いるそうです。
 文科省は、「不登校児童生徒が悪いという根強い偏見を払拭(ふっしょく)」すべきだという通知を全国の都道府県教育長あてに出している(2016年)。文科省は、不登校は「誰にでも起こりうる」もので、「不登校を問題行動と判断してはならない」としている。
不登校の子どもたちは、心の中ではとても苦しんでいて、みんなが当たり前にできる「ふつう」のことが出来ないと自分を追い詰めている。
 日本では、15~39歳までの死因のトップは自死。これって、やはり異常ですよね。将来ある子どもたちを自死に追いやってはいけませんよね。日本の将来がなくなってしまいます。
 義務教育の9年間でいじめが一番多い学年は小学2年生。その次に小学3年生、小学1年生と続く。小学校低学年にいじめが多いって、大変ですね…、知りませんでした。
 学校に行けない子の多くは、自分でも理由が分かっていない。だから、原因探しはほどほどにして、まずは子どもをゆっくり休ませること。ふむふむ、そうなんですか…。
子どもが昼夜逆転の生活をしていても、過剰なまでに心配しないでいい。心を守るため、朝起きられない体を作っている。
 子どもが一日中ゲームをしているからといって、唯一の楽しみを奪ったり、無用に制限すると、家庭内暴力に走ったり、親と一切会話をしなくなったというのは、よくあること。
鈍感な子どもは、「ふつうに」学校に行ける。なので、「ふつう」とか「あたりまえ」のほうを疑ってみたほうがいい。
親が唯一してあげられることは、居心地のいい家をつくること。家が子どもにとって安心、安全で、居心地のよい居場所になれば、子どもの回復は早まる。
 子どもの動き出しの合図の一つは、「ひまだー」というコトバ。
世間体を気にしているうちは、子どもは動かない。関心を世間ではなく、子どもに向ける。
 日常の、子どもとの意味もないような、どうということのない会話が実は大切。
 「生きていれば十分」。心の底からそう思えたら、ゆっくりと何かが変わり始める。
親にストレスがたまれば、それだけで子どもに負荷がかかる。親がいきいき生きている姿を見ると、子どもは、自分は自分のままでいいんだと安心して、自己肯定感が養われる。
学校には無理して行く必要がない。それが常識になる社会にしたいものですね。そして、それは会社も同じこと。カローシ(過労死)するまで働く必要はまったくないのです。嫌なら、さっさと会社を辞めて、転身して生きのびましょう。
(2024年10月刊。1500円+税)

西南諸島を自衛隊ミサイル基地化

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 土岐 直彦 、 出版 かもがわ出版
 沖縄と西南諸島の島々で自衛隊によるミサイル基地化が急速に進んでいます。
 台湾有事になれば、米軍基地が集中する沖縄やミサイル要塞の島々は真っ先に標的になる。「ミサイル戦争」下、島の住民が逃げ惑う惨状がやってくる。
有事の際には米軍と自衛隊とが「統合軍」を形成する。もちろん自衛隊は、米軍の指揮下に置かれる、「目下の軍隊」である。いま、日米の司令部統合体制は事実上、できあがっている。
 自衛隊は平時から米艦を防護するし、基地は共同で使用し、訓練に使う。物品・役務も提供させられる。
理不尽のきわみは米兵器を「爆買い」させられること。それも米海兵隊が買わなくなった古い型の水陸両用車(1両8億円)を52両も買うなど、米軍にとって不要になった兵器をアメリカの軍需産業を救済するために買わされる。これが日本の「軍事力強化」の内情というのですから、思わず涙が出てくるほど情けない話です。
 馬毛島(まげしま)の基地建設にあたって、反対派の行動を監視するため、漁師を4時間5万円で雇っている。これは、月に100万円もの収入になる。こうやって札束で反対派を黙らせてしまうのです。ひどいものです。
 宮古島駐屯地の造成工事が始まったのは2017年10月30日。住民への説明会は11月19日に開かれ、翌日が起工式。説明会の開催は単なるアリバイづくりのため。そして、「保管庫」ということだったのに、実は「弾薬庫」で、中距離多目的ミサイルや追撃砲、弾薬を置いておく弾薬庫だった。この弾薬庫は、民家から、250メートルしか離れていない。また、この弾薬庫にはまったく逃げ場がない。
 西南諸島の住民を台湾有事の際には九州へ避難させる計画だそうです。冗談なんか言ってほしくありません。いったい九州のどこに島の住民10万人以上を受け入れる場所があるのですか。
 また、船や飛行機で運ぶそうですが、ミサイル攻撃を受けているなかで、そんなことしたら、まさに対馬丸の悲劇の再現ではありませんか。
 軍事には軍事で対抗する、なんて古い発想をきっぱり止めましょう。平和は軍事力では決して得られないものなんです。目を覚ましましょう。
(2022年4月刊。1600円+税)

「帰れ」ではなく「ともに」

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 師岡 康子 ・ 崔 江以子 ・ 神原元 ほか 、 出版 大月書店
 川崎市は、人口155万人の大都市です。京浜工業地帯の工場群のすぐ近くに「桜本(さくらもと)」があります。東日本有数の在日コリアン集住地区になっています。
大学に入ってすぐ、高校の先輩に誘われて私は川崎セツルメントというサークルに入りました。そして、セツルメントなるものが何なのか、何をするのかまったく知らない状況で、現地に出向きました。そこが桜本だったのです。
桜本で川崎セツルは子ども会活動を展開していました。そして、そこに学生が下宿していたのです。いかにも安そうな古びた木造アパートの2階に先輩セツラーの部屋があり、学生が5人ほど膝を詰めて話を聞きました。なにしろセツルメントに入ったばかりで、桜本という下町そのものの町並みも珍しくて、今もって忘れようがありません。
今、桜本の子どもたちが通う市立さくら小学校では、毎年1回、キムチ漬けの体験教室が開かれる。6年生になると参加できる。お楽しみの授業。6年生70人分の白菜を3日前から塩漬けにして、キムチを生徒たちがハルモニたちと一緒につくっていく。
 近くに、1988年に開設された川崎市立の「川崎ふれあい館」がある。崔さんは「ふれあい館」で職員として働いている。
 そこにヘイトデモが押しかけてきた。2013年5月のこと。レイシスト(差別者)たちが「日本浄化」などを叫んで襲いかかった。
 当初、川崎市はヘイトデモに慎重な姿勢を示し、重い腰を上げることはなかった。そこで国会議員に桜本へ視察に来てもらい、実情を訴え、見てもらった。そして、ついにヘイトスピーチ解消法が成立した。2016年6月のこと。
 川崎市長は、「自治体でやれることをして、ヘイトスピーチがおこなわれないようにすると答弁し、実行した。また、法務局はレイシストに対して、ヘイトスピーチ解消法を踏まえ、人格権を侵害する不法行為だと認定して勧告した。
 ところが、インターネット上のヘイトスピーチはエスカレートしていった。インターネットなんか見なければいい、気にしすぎだというのは、あまりに現実を知らなさすぎる空論だ。なにより仕方がないとして、やり過ごすのは、差別を放置することになる。
 インターネットこそ、ヘイトスピーチの震源地であり、拡声器だ。
そこで、裁判を起こし勝訴したのです。一審は人格権を侵害していることを認め、レイシストに対して91万円を支払えと判決した。さらに二審の東京高裁は賠償額を40万円も積み増しを認めました。すごいです。拍手します。
 ヘイトスピーチとは、差別的言動のこと、言動による差別。悪質・異質な人々と決めつけ、人間の尊厳を攻撃している。ところが、ヘイトスピーチがネット上で展開すると、たちまち236万件もの閲覧数となる。いやですよね…。
 ヘイトスピーチには、「排除類型」「害悪告知類型」「侮辱類型」の4つに分類されている。
 ヘイトスピーチそのものが違法である。在日朝鮮人・韓国人に対しての「帰れ」発言は、理不尽だ。彼らの大半は望んで日本にやって来たわけではない。
 在日朝鮮人の多くは、現在、特別永住者の在留資格をもつ。「帰れ」発言は、「日本に住まわせてあげている」という意識に裏づけられている。しかし、自分たちの力でなんとか生活してきた在日朝鮮人の歴史を踏まえると、それは「倒錯的な主人意識」というよりほかにない。
 誤った右翼へのヘイトスピーチを真実だと思い込んで行動している日本人の若者が少なくないのが、本当に残念です。でも、ヘイトスピーチを許さない社会づくりは着実に前進しています。本書は、その歩みを具体的に紹介し、読み手を励ましてくれます。
(2024年10月刊。1800円+税)

檻を壊すライオン(改訂版)

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 楾 大樹 、 出版 かもがわ出版
 「おりライ」とも呼ばれている「檻(おり)の中のライオン」講演会は全部の都道府県で累計1000回をこえて開催しているそうです。すさまじいばかりの著者のエネルギーには圧倒されます。
 久留米でも近く(11月24日の午後2時から、筑後弁護士会館にて)2回目の講演会が予定されています。
 国家権力をライオン、憲法を檻にたとえた憲法解説書「檻の中のライオン、憲法がわかる46のおはなし」が刊行されたのは2016年のこと。それから8年たち、その続編になります。
この改訂版は岸田政権が退場し、石破政権に交代した瞬間に刊行されました。見事な早技(はやわざ)です。
 選挙で深く考えることもなく自民党に投票する人が少なくありません。裏金議員を公認してはばからない(公認しない候補者に2千万円も政党助成金、つまり税金を支出したことがバクロされました。ひどいものです)のが自民党ですが、天賦人権説も攻撃しています。人権なんて、国が与えたもので、もともと個人が持っているなんて、間違った考えだというのです。国民は国の言うとおりに従っていればよい、生きるも死ぬも国が決めたことに文句を言わずに従え。それが自民党の考え。どうして、こんな考えに共鳴する人がいるのか、私には不思議でなりません。
 そして、自民党は、国民に知る権利なんてないとも言うのです。昔の知らしむべからず、由らしむべしを今も貫いているのが自民党です。あまりにも古臭くて、カビがはえすぎているのが自民党です。
 「アベノマスク」のムダづかいはひどいものでした。少なくとも543億円もの税金がムダにつかわれました。安倍の息のかかった企業や公明党関連の企業が丸もうけしたと小さく報道されました。上脇博之教授が裁判を起こしたら、国側はこのアベノマスクはすべて口頭契約で実行されたもので、書面はないと開き直って、裁判官を唖然とさせたと報じられました。許せません。
 自民党は憲法改正が必要な理由として、大災害のとき国会議員の選挙ができないときは国会議員の任期を延長できるようにしないと、法執行の行政がやれずに国民が困るというのを理由としています。だけど、正月の福井大地震では、今なお復旧工事が十分ではありません。そして、国会で十分に救済策が審議されないうちに投票日を迎えることになりました。
 「大災害が起きたときに困るから」という口実の化けの皮がはがれたのです。大災害がおきたのに、国会で十分な審議もせず、国会を解散してしまうなんて、とんでもないことです。
 石破政権は「日本を守る」と称して、大軍拡予算を執行中です。5年間で43兆円。その財源は明らかにされていません。財政法4条で、防衛費のための国債は、発行できないとしています。ところが、「建設国債」でまかなうことにしました。これまた、とんでもないことです。戦前の「帝国ニッポン」に逆戻りしてしまったのです。
 石破内閣が誕生したことで、何が問題なのかを改めて総おさらいした感のある本書は、なんと318頁もの分厚いものになっています。でもでも、本当に分かりやすいうえに、読みごたえがあります。さすがは、「憲法講師、分筆業」を自称する著者だけのことはあります。ご一読を強くおすすめします。
(2024年10月刊。1800円+税)

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