法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 生物

オスは生きているムダなのか

カテゴリー:生物

 著者 池田 清彦、 角川選書 出版 
 
 なんとも刺激的なタイトルです。オスである私としては、生きているムダだなんて言われると釈然としません・・・・。
 メスだけが繁殖する脊椎動物がいる。オスは繁殖のために必ず存在しなければならないわけではない。ほかの生物を見ても、メスしかいない生物はたくさん存在する。メスしかいない生物はいても、オスしかいない生物はいない。これは子どもを産む性をメスと定義するから、当然のことではある。
 北海道の奥尻島の溜池にいるフナは、ほとんどがクローンである。その99%はメス。ところが、0.4%のメスだけが、0.4%のオスの精子をつかって有性生殖をしている。なぜ、ごくわずかのフナが有性生殖しているのか。それは種のセキュリティを担保するため。クローンのフナは、何か環境が変わったときには絶滅する危険がある。
生物のすむ環境はDNAの損傷がたまるような環境だ。紫外線、放射線、薬物など、遺伝子を損傷させる物質にさらされて生きている。DNAの損傷をどう修復するかは重要だ。性の基本的な機能は、DNAが減数分裂してリシャッフルされるときに若返ることにある。性があることによって遺伝子が修復され、また多様性が担保される。
 日本の山野のあちこちに見かけるヒガンバナは、中国から輸入されて1000年あまりしかたっていないクローンだ。単為生殖をしているから、あと数万年(!)もしたら、滅びてしまうだろう。竹も基本的にクローンで生きている。100年前後の寿命が尽きるころになると、一斉に花をつけて死ぬ。日本にある竹林の一部をアメリカに植えても、同じ時期に花をつけて死ぬ。
高等動物の寿命は、神経細胞の寿命と一致している。神経をつくる幹細胞が分裂して神経細胞になると、その後はもう分裂しない。分裂しなければ、リニューアルできない。ただひたすら老化していく一方だ。それが人間の場合は120年くらいだと分かっている。
 1986年当時、100歳以上の人は日本に2000人いた。ところが、いまはなんと4万人いる。ただし、男性は数千人でしかない。うむむ、女性は強し・・・・、です。
 一般に生物の世界では、オスは種付け以外には役に立たない。すべてのオスは消耗品みたいなものだ。ああ、無情です。ひどいものです。オスを消耗品と決めつけるなんて・・・・。
 ネオテニー(幼形成熟)が進むと寿命が延びる。体が幼いまま成熟するから、時間がどんどん引き延ばされる。体が早く大人になると、それだけ早く寿命が尽きる。幼い時間をなるべく長くすると、寿命が延びるのだ。
今から28億年前、地球に磁場が出来た。磁場ができると、宇宙線をブロックすることができる。宇宙線はDNAを破壊するから、それまでは生物が海の表面に浮いてくるとDNAが壊れて、たいてい死んでしまった。ところが、地球に磁場ができたので、海の表面や地表に生物がたくさん出てくることができるようになった。うへーっ、そういうことだったんですか・・・・。
 非分裂細胞はガンにならない。心臓はめったにガンにならないし、神経細胞もガンにはならない。再生、つまり分裂を何回も繰り返すと、ガンになりやすくなる。
 人間の場合、生まれたばかりの子どもは男が多い。その後、男は成長するまでに死亡する割合が女より高く、繁殖期を迎えるころに、男女比は1対1となる。
「男は現象、女は実体」(多田富雄)「女は実体、男は情報」(池田清彦)
人間がチンパンジーに比べて頭が良くなったのは、ゆっくり成長して、子どもの形質をもったまま大きくなったことが原因の一つだ。それは人間の寿命が延びたこととも関係している。人の言語は、男と女の騙しあいの結果、発達したという説がある。私も、この説にかなり傾きます。
とても面白く最後まで一気に読みとおしました
 
(2010年9月刊。1400円+税)

土の科学

カテゴリー:生物

 著者 久馬 一剛、 PHPサイエンス・ワールド新書 出版 
 
 世界の土が紹介されています。動物や鳥が土をなめたり、食べたりするのはテレビで見て知ってはいましたが、人間も土を食べるところがあるのですね。私にとって、日曜日の午後からの庭づくりは土に触れあう貴重な機会です。昔の子どものころの泥んこ遊びを思い出して気分転換に絶大なる効果があります。不耕起農法というものがあり、とても良いということですが、私はせっせと庭を耕し、EM菌を混ぜた生ゴミ処理の産物を庭に投入し、またコンポストで落ち葉や枯れ草を肥料にしたものを混ぜ込んでいます。おかげで庭の土は黒々、ふかふかしています。そのためミミズは繁盛し、モグラが縦横に地下に道を掘り、ヘビが庭を徘徊しています。ヘビとの共存は困難な課題です。
 日本の水田面積は、昭和40年ころには300万ヘクタールをこえ、国土の総面積の9%を占めていた。ところが、今では、イネの作付面積は200万ヘクタールにまで減少している。日本の米消費量は減少し、100年前に1人1年間に130キログラムになっている。
 稲作技術は進歩して、単位面積当たりのイネ収量は2倍をこえた。
 イネを畑で連作すると、やはり障害が起きる。しかし、水田は、水を張る湛水時と水を落として畑の状態にするというように交替でつかうため、連作障害の原因となる病原性生物がはびこるのを妨げている。そのため水田の稲作に連作障害は起きない。
 うへーっ、そういうことだったんですね。今、わが家のすぐ下の田んぼは作り手が老齢のために耕作が放棄されてしまい、水を入れて水田になることはなくなって残念です。夏の蛙の大合唱が開かれなくなりました。うるさくて閉口してはいたのですけど、蛙がいなくなってしまうと寂しいものです・・・・。
 畑も畠も、いずれも日本でつくられた国家であり、中国の漢字にはなかった。
 アフリカのタンザニアでは、妊婦が土を食べている。日本でも昔、同じように妊婦が土を食べていた。タンザニアの市場で売られている土は白色と茶色の二つあるようです。写真が紹介されています。 
 たまには、土を知ってみるのもいいかと思って読んでみました。面白かったですよ。
(2010年7月刊。800円+税)

クラゲさん

カテゴリー:生物

 著者 片柳 沙織・コーピス、 ピエ・ブックス 出版 
 
 ふんわり海中を漂うクラゲたちの見事なまでに華麗な姿を捉えた写真集です。
 「くらげに悩みありません」と書かれていますが、この写真集を手に取って眺めていると、その夢幻の世界に吸い込まれていく、今かかえている悩みなど忘れ去ってしまうこと必定です。
 クラゲは魚でも植物でもなく、イソギンチャクやサンゴの親戚でもある動物である。
クラゲには脳も臓も、特別な呼吸器官もない。そして、前後左右の区別もなく、骨もない。しかし、かさの縁などに平衡胞(へいこうほう)という平衡感覚を司る器官があり、これでクラゲ自身が自分の傾きを感知し、修正する。
 クラゲに脳はなくても、嫌いなエサは食べない。いちど取り込んでも吐き出してしまう。だから、味覚も嗅覚もある。
クラゲの寿命は1年のものもあれば、1ヶ月、1週間いや数時間しか生きていないのもいる。ところが、弱って水底に沈み、バラバラに溶けたあと、そこからもう一度ポリプがつくられ、クラゲを再生するベニクラゲがいる。これは若返るクラゲ、不老不死のクラゲと言える。
クラゲは、10億年前から存在しており、その形は現在とほとんど変わらない。
 世界に3000種のクラゲがいて、日本では300種が確認されている。大きさは1ミリにみたないものから、2メートル、重さ150キログラムというものまでいる。
クラゲのふわふわとした動きには、体全体に栄養を行きわたらせる働きがある。体の比重が海水より少し大きいので、じっとしていると沈んでしまう。流れに乗ることで、エサをとらえたり、栄養を身体中に送ることができる。
 ノーベル賞の研究材料となったオワンクラゲの写真ももちろんあります。
 カラフルで、さまざまな形のクラゲをじっと眺めていると、たしかに彼らには悩みなんてないんだろうなと思えてきます。それにしても、なんという奇妙奇天烈な形でしょうか。このデッサンには脱帽です。 
(2010年8月刊。1800円+税)

貧乏人が犬を飼っていいのか?

カテゴリー:生物

 著者 吉澤 英生、  三五館 出版 
 
 私は犬派です。猫派ではありません。これは、幼いころから我が家にずっと犬がいたからだと思います。猫は飼ったことがありません。子どもたちが小さいころ、柴犬を飼っていました。申し訳ないことに、管理が悪くてジステンバーで死なせてしまいました。罪滅ぼしに、今も納骨堂に愛犬マックスの遺骨を納めて、たまにお参りします。夫婦二人きりになった今は、あちこち旅行をしたいから、犬を飼うのは我慢しています。
 この本を読んで、犬を飼うとはどういうことなのか改めて認識させられました。もっと早くに読んでおくべきだったと反省しました。
 日本で飼われている犬は1232万頭(2009年)。1994年は907万頭だったから、1.35倍も増えている。保健所が殺処分している犬は1970年代には100万頭をこえていたが、今は8万頭にまで減った。私の子どものころは、犬捕りの車が街中をまわっていました。ゴミ収集車のように犬を集めていたのです。もちろん、殺処分するのです。なんだか野犬って可哀想だなあと見ていました。
 小学一年生のとき、同じ市内で引っ越しをしたとき、家財道具を積んだトラックのうしろを走ってきた愛犬がいつのまにかはぐれてしまって、大泣きした覚えがあります。茶色の大型犬でした。写真が残っていますが、長い毛の優しい目つきの犬でした。
「癒されたいから、犬を飼いたいんですけど・・・・」
 経験上、犬を癒しの道具のように思っている人に限って、用がなくなると、犬を捨ててしまう人が多い。癒しとは、一緒につくりあげていくものなんだから、初めから犬に「癒されたい」なんて要求するのは間違っている。そんなワガママに犬をつきあわせないでほしい。うむむ、そうなんですか・・・・まいりました。
 犬に服を着せる必要なんかない。ましてや、靴下なんて、最悪。典型的な「ニセモノの犬好き」でしかない。犬の足元を覆うと、滑ってしまって、うまく立てなかったり、すべったりする怖れがある。
犬は本来、プライドの高い動物なのである。プライドのない犬は、いじけている。あるいは、空威張りしている。プライドの高い犬は褒められ慣れている。だから、犬をきれいに保って、「あなたは可愛いねえ」と誉めながら育てることが大切だ。
 犬のプライドを保つのに何より重要なのは、飼い主の気持ちである。プライドのない人が犬を飼っていて、犬にだけプライドを求めるのは無茶というほかない。犬は、飼い主が世界で一番えらくて、二番目は自分だと思っている。自分の飼い主は誇り高い人物で、その人に飼われているからこそ、自分もまた誇りを子って生きられる。これが、犬にとっての理想の生き方である。
 犬は飼い主が朝、家を出ていくと、再び会えるとは思っていない。だから、夕方、飼い主が帰ってくると、うれしくて、うれしくて、飛び跳ねて喜ぶ。生き別れて数十年も連絡の途絶えていた家族が帰ってきたときの感情に近い。
反面、犬は非常にしたたかである。「ごめんなさい」「かわいそう」という気持ちを持つと、それは必ず犬にも伝わる。犬はしたたかなものだから、すぐさまつけあがる。「あっ、これは何をやっても許されるな」と思って飼い主をなめてかかる。飼い主がなめられたら終わり。これは飼い主にとっても、犬にとっても実に不孝なことである。たとえ犬を間違って蹴ってしまったとしても、「ごめん」と謝るのではなく、しらんぷりする。「そんなところにいたおまえ(犬)が悪い」という態度を平然ととる。そして、二度とあやまって蹴らないようにする。犬に謝ってはダメ。
 犬が悪さをしたとき、我慢する飼い主がとても多い。しかし、それは間違い。我慢するのは、人間ではなく犬の役割。犬には我慢するという役割がある。犬は小さいときに我慢することを覚えさせないといけない。耳掃除や爪切り、そして体を拭いたり、ブラシをかけたり、そのときにはおとなしくしていること。そこで犬が嫌がるそぶりを見せても、途中でやめてはいけない。犬は自分を成長させてくれる人を尊敬して好きになる。賞罰をはっきりつけて、怒るときには怒る、可愛がるときには徹底して可愛がる人のほうになつく傾向がある。
 犬を叱るのは非常に難しい。叱るときにやってはいけないのが、中途半端に叩くこと。
 何回も叩くのも良くない。やるなら一発だけ手がつけられないくらい逆上しているふりをして叩くのが一番効果的だった。
犬をショーウィンドーに入れて展示すると、常に人の目にさらされるので、犬は大変なストレスをかかえてしまう。
犬を抱いたとき、動きが素早くて食欲旺盛で、抱いたとき、しっかりした固い感じがする犬ならいい。ふにゃっとしてたら、生命がないということである。犬は母親を見てから買うこと。犬の性質は母親に負うところが多く、もし母親を見せられないような犬であれば買ってはいけない。
犬は犬以上でも、犬以下でもない。欠点のない犬はいない。
犬が生涯で一番の不安は、お産のとき、やはり誰かにそばにいてほしいと思うことがあるのだろう。
 著者は、自分の店をペット・ショップとは呼びません。ペットショップと犬屋とは異なる。著者の青山ケネルではショーウィンドーのない本屋として有名である。
 犬について、本質的なところを知りました。タイトルはともかくとして、内容はすごくいい本でした。
(2010年9月刊。1400円+税)
 日曜日、年に二度の一大難行苦行がおわりました。フランス語検定試験(準一級)を受けたのです。もう10年以上も受け続けていますので、これまでの過去問を2回繰り返して復習し、「傾向と対策」もみっちり勉強しました。緊張の3時間が終わり、大学の構内を歩くときにはすでに薄暗くなっていて、落ち葉を踏みしめながら帰路につきました。大甘の自己採点によると76点(120点満点)ですから、口頭試問に進めると思います。
 毎朝のNHKラジオ講座は「カルメン」です。朝から魔性の女性に心ひかれる男性の気分にすっかり浸っています。

ミミズの話

カテゴリー:生物

 著者 エイミィ・スチュワート、 飛鳥新社 出版
 
 日曜大工ならぬ、日曜ガーデナーの私にとって、日曜日の午後からの庭いじりは無上の喜びです。買った当時は石ころだらけだった庭も、今ではふかふか黒々とした土で覆われています。EMボカシを利用した生ごみ処理の産物をたくさん混ぜこんでいますので、ミミズも大発生します。ですから、モグラもいますし、それを狙ってでしょうか、ヘビも庭に棲みついています。モグラと顔を合わせることは滅多にありませんが、ヘビのほうは年に何回か出会ってしまい、お互いすぐにこそこそと逃げ隠れします。今までのところ、最近のクマのような被害に、は遭っていませんが、蛇にだけ噛まれたくはありませんよ・・・・。
 ミミズを手にしたときぬるぬるしたものを感じる。これは、ミミズがストレスを受けたときに出す粘液である。うへーっ、ミミズもストレスを感じるのですか・・・・。
1エーカーの土地に、ダーウィンは5万匹以上のミミズがいるとしたが、今日では100万匹と推計されている。ナイル川流域のミミズは、1エーカーあたり1000トンにもなる糞を堆積し、エジプトの農地を驚くほど肥沃な土地にするのに貢献している。土壌の表層10センチは、毎年、ミミズの消化管を通過する。
シマミミズの寿命は2~3年。シマミミズが1年間に産む卵包の数は10数個から数百個とされている。通常は、1個の卵包から2、3匹の幼ミミズが生まれる。
 地下で起きていることの大部分の鍵を握っているのはミミズである。ミミズがちっぽけでか弱い生きものだなんて、とんでもない。実は、ミミズの領分である地下の世界では、ミミズは最大級の生きもの。言ってみれば、ゾウ、クジラ、巨大なのである。
 ミミズは土壌圏の微小動物によって引き起こされる寄生虫性の細菌の病気にかかることはほとんどない。これって、考えてみたら不思議なことですよね。
 ミミズが恐れるのは、鳥、モグラ、マウス、ラットといった動物である。
ミミズは皮膚で呼吸し、眠らない。ミミズにも原始的な脳がある。
ミミズは生殖器近くにある短くて頑丈な剛毛を使い、交接相手をしっかりと捕らえあう。さらに、ねばねばの粘液を多量に分泌することによって、お互いの身体を固定しやすくする。ミミズの交接の完了には数時間かかるが、この間、ミミズは周囲の環境にまったく無頓着になる。ミミズの性的欲望は光の恐怖をしばらく忘れさせるほどに強い。うむむ、なんとなんと、これには恐れ入り屋の鬼子母神ですよ。
 ミミズは体節を30回も40回も切断されても、なお再生することができる。頭部、中央部、尾部をそれぞれ別のミミズから取ってきて、その順に縫合すると、1匹のミミズになる。
 ふえーっ、こ、これって、まるでロボットではありませんか・・・・。驚きましたね。
ミミズのからだの全長にわたって、各体節に潜在的な生殖細胞が存在しているおかげで、生殖器官を完全に切除しても、また再生させることが可能なのである。
ミミズにも好き嫌いがある。オレンジやタマネギの皮はミミズは絶対に口をつけない。
 森にミミズが入ってくると、ハタネズミやトガリネズミがいなくなって、マウスが増えてくる。ミミズのせいで、地表性の鳥や動物が森から追い出されてしまう。
高窒素の化学肥料はミミズにとって、きわめて有害である。だから、ゴルフ場に使用すると、芝生は青々とするし、大ミミズは死んでくれて、一石二鳥である・・・・。
 土壌の撹乱ほどミミズが嫌うことはない。不耕起栽培はミミズを元気に活動させる。
ミミズは、土壌中の物質を何でも取り込んでしまう驚くべき能力を備えている。高濃度のDDTを体内組織に取り込んでもなお生きていられる。ところが、そんなミミズの特性によって、ミミズを食べた小鳥が被害にあった。ミミズは住環境に、なかなかうるさい。
ミミズという身近な生き物を多角的な視点から捉えた面白い本です。
 
(2010年月刊。1700円+税)
今月はフランス語検定試験(仏検)を受けます(準1級)ので、目下、過去問を見直しているところです。語学は日々やっていないとすぐに忘却の彼方へ散っていきます。毎朝、仏作文、聞きとり(ディクテ)そして音読をしています。ボケ防止には最高です。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.