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カテゴリー: 生物

捕食者なき世界

カテゴリー:生物

著者 ウィリアム・ソウルゼンバーグ、    出版 文芸春秋
 シャチはいるかの仲間で飛びぬけて巨大で破壊力がある。体長9メートル、牙を持つクジラだ。6トンの巨体を時速50キロで進む。ときにはホッキョクグマも食べる。体長15センチのニシンから18メートルあるシロナガスクジラまで海で泳ぐものは何でも襲う。平均して、1日に自分の体重の5%の量を食べる。あるシャチの胃には14頭のアザラシと13頭のネズミイルカの残骸が入っていた。
 捕食者を締め出すと、高くつく。森林野生動物も犠牲になる。オオカミを追い出すと、鳥や植物など多くのものを失うことになる。なぜなら、オオカミが自然を管理しているから。
 肉食動物がいなくなり、ハンターが締め出され、草食動物にとって唯一の危険因子が自動車だけになった森は、どこも深刻なダメージを受けた。 上位の捕獲者が消えた環境では、それより小さな下位の捕食者の国が勢力を伸ばし、10倍にも数を増やして好き勝手をするようになる。
サハラ以南のアフリカではヒヒが大量に増殖し、目にあまる略奪を繰り広げている。ライオンやヒョウがいなくなった広い地球を、化け物じみたヒヒの集団が占領しはじめた。いつでもどこへでも行けるようになったヒヒたちは、アフリカの作物泥棒兼殺し屋となり、人間の女や子どもを襲って食料を奪い、家を壊して侵入し、膨大な数の家畜や野生動物を殺している。うへーっ、これって怖いですね。
オオカミが多いほどヘラジカは少なくなり、年輪の幅は広くなる。オオカミの個体数が多い年には、森林が育つ。オオカミは森林の力になる。そうなんですね。
鳥獣保護区域に設定され、シカの狩猟は禁じられ、シカを捕食する動物はことごとく殺された。25年間で、6000頭もの肉食動物が殺された。800頭のピューマと、オオカミ30頭もふくまれていた。その結果、シカは4000頭が10万頭にふくれあがった。そうなるとシカは全部を食い尽くし、飢えて死ぬか、病気で死ぬしかない。シカを増やすために捕食動物を皆殺しにすることは、いかに愚かかということである。大型の捕食者が消えるということは、生物世界が不毛になるということを意味する。
うふーっ、人間ってこんなにも考えの足りない、身勝手な存在だったんですね。森には、トラがいて、ライオンがいて、またオオカミがいてこそ安定した生態系が保全されるということを改めて認識させられました。シカやきつねがいるだけでは、かえって森も滅びてしまうことになるなんて、私の考えつかないことでした。だって、熊のいる森の中なんて恐ろしくて入っていけませんからからね。でも、これこそが人間の身勝手さなのですね。森は人間のためにだけにあるわけではないということをすっかり忘れていました。私のボンクラ頭をガツーンと殴られた気がする本でした。
(2010年9月刊。1900円+税)

動物たちの地球大移動

カテゴリー:生物

著者 ベン・ホアー 、  悠書館  出版 
 
この本を読むと、地球って広いようで意外に狭いものなんだなと思わせます。だって、キョクアジサシという小鳥は、毎年4万キロメートルもの往復旅行をするっていうんですよ。1年のうちに、北極と南極の夏を両方とも経験する固体がいるというのです。そ、そんな馬鹿な。うひゃあ、し、信じられません・・・・。同じような小鳥が他にもたくさんいるのです。
スグロアメリカムシクイは高度5000メートルを飛んで、カナダなどから越冬地の南アメリカへ片道4000~8000キロメートルを渡る。高いところを飛ぶのは、順風をえるため。そして、胸筋が酷使されてオーバーヒートしないように冷気で冷やすため。この旅に備えて、旅行前にせっせと食べるから普段は11グラムの体重が20グラムまで増える。この余分な脂肪は、旅のあいだに燃焼し尽くされる。うへーっ、そうなんですね。
 ご存知のツバメも、もちろん渡り鳥ですが、すでに紀元前4世紀にアリストテレスが渡り鳥だと確認したのだそうです。どうやって確認したのでしょうか。中世ヨーロッパでは、ツバメは泥のなかで冬眠していると思われていたというのです。ツバメは北欧からアフリカ南部まで10週間かけている。平均すると一日150キロメートルだが、実はツバメはしばらく休んでは発作的に進むことを繰り返す。ただし、春になって北へ向かうときには子育てが待っているので、約2倍の速さで北進し、同じコースを5~6週間で着く。これもすごいですよね。
 小鳥よりももっと小さい蝶も大移動します。たとえば、今や有名なオオカバマダラです。
オオカバマダラは、最大4750キロメートルも飛行する。無風状態では1000キロメートルを休まずに自力移動できる。数千万頭から成る蝶の群れが飛んでいく様子はオレンジ色の流れとなる。一日に130キロメートルすすむ。
 学者は、このような大移動を調べるため、たとえば体重1,5グラムのギンヤンマ(トンボ)になんと300ミリグラムの電子追跡装置をトンボの胸部下面に取り付けるというのです。すごい技術ですよね。
 海中にいるもヨシキリザメもすごいですよ。きわめて鋭敏な嗅覚があるので、泳ぎながら継続的に水を調べ、水に溶けた科学的物質のにおいの濃淡から行き先を判断している。このサメは、イカを捕らえるために、よく潜水し、350メートルも潜る。水を鉛直方向に泳ぐことから、電磁気を感知する能力を使って、磁方位を知るのに役立てている。
 陸上を移動する動物たちの写真もあります。広大なアフリカのサバンナ(太平洋)を一列になってすすんでいくウィルドビーストがいます。圧倒される大群です。
カリブー、ウィルドビースト、ハクガンのような平原の動物たちは、突然、子どもをどっと増やし、獲物の数で捕食動物を圧倒する。捕食動物が消費できる獲物の数には限度があるので、結果的に子どもの多くが生き残れる。
少々高価な本ですが、手にとって眺めていると、日頃の悩みがいかにちっぽけなものかを気が付かせてくれる写真集と考えたら、決して高くはありませんよ。せめて、図書館で手にとって眺めてみてくださいね
(2010年1月刊。8000円+税)

オスは生きているムダなのか

カテゴリー:生物

 著者 池田 清彦、 角川選書 出版 
 
 なんとも刺激的なタイトルです。オスである私としては、生きているムダだなんて言われると釈然としません・・・・。
 メスだけが繁殖する脊椎動物がいる。オスは繁殖のために必ず存在しなければならないわけではない。ほかの生物を見ても、メスしかいない生物はたくさん存在する。メスしかいない生物はいても、オスしかいない生物はいない。これは子どもを産む性をメスと定義するから、当然のことではある。
 北海道の奥尻島の溜池にいるフナは、ほとんどがクローンである。その99%はメス。ところが、0.4%のメスだけが、0.4%のオスの精子をつかって有性生殖をしている。なぜ、ごくわずかのフナが有性生殖しているのか。それは種のセキュリティを担保するため。クローンのフナは、何か環境が変わったときには絶滅する危険がある。
生物のすむ環境はDNAの損傷がたまるような環境だ。紫外線、放射線、薬物など、遺伝子を損傷させる物質にさらされて生きている。DNAの損傷をどう修復するかは重要だ。性の基本的な機能は、DNAが減数分裂してリシャッフルされるときに若返ることにある。性があることによって遺伝子が修復され、また多様性が担保される。
 日本の山野のあちこちに見かけるヒガンバナは、中国から輸入されて1000年あまりしかたっていないクローンだ。単為生殖をしているから、あと数万年(!)もしたら、滅びてしまうだろう。竹も基本的にクローンで生きている。100年前後の寿命が尽きるころになると、一斉に花をつけて死ぬ。日本にある竹林の一部をアメリカに植えても、同じ時期に花をつけて死ぬ。
高等動物の寿命は、神経細胞の寿命と一致している。神経をつくる幹細胞が分裂して神経細胞になると、その後はもう分裂しない。分裂しなければ、リニューアルできない。ただひたすら老化していく一方だ。それが人間の場合は120年くらいだと分かっている。
 1986年当時、100歳以上の人は日本に2000人いた。ところが、いまはなんと4万人いる。ただし、男性は数千人でしかない。うむむ、女性は強し・・・・、です。
 一般に生物の世界では、オスは種付け以外には役に立たない。すべてのオスは消耗品みたいなものだ。ああ、無情です。ひどいものです。オスを消耗品と決めつけるなんて・・・・。
 ネオテニー(幼形成熟)が進むと寿命が延びる。体が幼いまま成熟するから、時間がどんどん引き延ばされる。体が早く大人になると、それだけ早く寿命が尽きる。幼い時間をなるべく長くすると、寿命が延びるのだ。
今から28億年前、地球に磁場が出来た。磁場ができると、宇宙線をブロックすることができる。宇宙線はDNAを破壊するから、それまでは生物が海の表面に浮いてくるとDNAが壊れて、たいてい死んでしまった。ところが、地球に磁場ができたので、海の表面や地表に生物がたくさん出てくることができるようになった。うへーっ、そういうことだったんですか・・・・。
 非分裂細胞はガンにならない。心臓はめったにガンにならないし、神経細胞もガンにはならない。再生、つまり分裂を何回も繰り返すと、ガンになりやすくなる。
 人間の場合、生まれたばかりの子どもは男が多い。その後、男は成長するまでに死亡する割合が女より高く、繁殖期を迎えるころに、男女比は1対1となる。
「男は現象、女は実体」(多田富雄)「女は実体、男は情報」(池田清彦)
人間がチンパンジーに比べて頭が良くなったのは、ゆっくり成長して、子どもの形質をもったまま大きくなったことが原因の一つだ。それは人間の寿命が延びたこととも関係している。人の言語は、男と女の騙しあいの結果、発達したという説がある。私も、この説にかなり傾きます。
とても面白く最後まで一気に読みとおしました
 
(2010年9月刊。1400円+税)

土の科学

カテゴリー:生物

 著者 久馬 一剛、 PHPサイエンス・ワールド新書 出版 
 
 世界の土が紹介されています。動物や鳥が土をなめたり、食べたりするのはテレビで見て知ってはいましたが、人間も土を食べるところがあるのですね。私にとって、日曜日の午後からの庭づくりは土に触れあう貴重な機会です。昔の子どものころの泥んこ遊びを思い出して気分転換に絶大なる効果があります。不耕起農法というものがあり、とても良いということですが、私はせっせと庭を耕し、EM菌を混ぜた生ゴミ処理の産物を庭に投入し、またコンポストで落ち葉や枯れ草を肥料にしたものを混ぜ込んでいます。おかげで庭の土は黒々、ふかふかしています。そのためミミズは繁盛し、モグラが縦横に地下に道を掘り、ヘビが庭を徘徊しています。ヘビとの共存は困難な課題です。
 日本の水田面積は、昭和40年ころには300万ヘクタールをこえ、国土の総面積の9%を占めていた。ところが、今では、イネの作付面積は200万ヘクタールにまで減少している。日本の米消費量は減少し、100年前に1人1年間に130キログラムになっている。
 稲作技術は進歩して、単位面積当たりのイネ収量は2倍をこえた。
 イネを畑で連作すると、やはり障害が起きる。しかし、水田は、水を張る湛水時と水を落として畑の状態にするというように交替でつかうため、連作障害の原因となる病原性生物がはびこるのを妨げている。そのため水田の稲作に連作障害は起きない。
 うへーっ、そういうことだったんですね。今、わが家のすぐ下の田んぼは作り手が老齢のために耕作が放棄されてしまい、水を入れて水田になることはなくなって残念です。夏の蛙の大合唱が開かれなくなりました。うるさくて閉口してはいたのですけど、蛙がいなくなってしまうと寂しいものです・・・・。
 畑も畠も、いずれも日本でつくられた国家であり、中国の漢字にはなかった。
 アフリカのタンザニアでは、妊婦が土を食べている。日本でも昔、同じように妊婦が土を食べていた。タンザニアの市場で売られている土は白色と茶色の二つあるようです。写真が紹介されています。 
 たまには、土を知ってみるのもいいかと思って読んでみました。面白かったですよ。
(2010年7月刊。800円+税)

クラゲさん

カテゴリー:生物

 著者 片柳 沙織・コーピス、 ピエ・ブックス 出版 
 
 ふんわり海中を漂うクラゲたちの見事なまでに華麗な姿を捉えた写真集です。
 「くらげに悩みありません」と書かれていますが、この写真集を手に取って眺めていると、その夢幻の世界に吸い込まれていく、今かかえている悩みなど忘れ去ってしまうこと必定です。
 クラゲは魚でも植物でもなく、イソギンチャクやサンゴの親戚でもある動物である。
クラゲには脳も臓も、特別な呼吸器官もない。そして、前後左右の区別もなく、骨もない。しかし、かさの縁などに平衡胞(へいこうほう)という平衡感覚を司る器官があり、これでクラゲ自身が自分の傾きを感知し、修正する。
 クラゲに脳はなくても、嫌いなエサは食べない。いちど取り込んでも吐き出してしまう。だから、味覚も嗅覚もある。
クラゲの寿命は1年のものもあれば、1ヶ月、1週間いや数時間しか生きていないのもいる。ところが、弱って水底に沈み、バラバラに溶けたあと、そこからもう一度ポリプがつくられ、クラゲを再生するベニクラゲがいる。これは若返るクラゲ、不老不死のクラゲと言える。
クラゲは、10億年前から存在しており、その形は現在とほとんど変わらない。
 世界に3000種のクラゲがいて、日本では300種が確認されている。大きさは1ミリにみたないものから、2メートル、重さ150キログラムというものまでいる。
クラゲのふわふわとした動きには、体全体に栄養を行きわたらせる働きがある。体の比重が海水より少し大きいので、じっとしていると沈んでしまう。流れに乗ることで、エサをとらえたり、栄養を身体中に送ることができる。
 ノーベル賞の研究材料となったオワンクラゲの写真ももちろんあります。
 カラフルで、さまざまな形のクラゲをじっと眺めていると、たしかに彼らには悩みなんてないんだろうなと思えてきます。それにしても、なんという奇妙奇天烈な形でしょうか。このデッサンには脱帽です。 
(2010年8月刊。1800円+税)

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