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カテゴリー: 生物

森の鹿と暮らした男

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ジョフロワ・ドローム 、 出版 エクスナレッジ
 フランスの若い男性が、ルマンディー地方の森の中に入って、そこで生活して、鹿と仲良くなって7年間も暮らしていたという驚くべき話です。信じられません。
夜の森は退屈とは無縁だ。夜行性の動物はたくさんいて、サイズもさまざま。昼夜を問わず活動する動物もいる。たとえばリスは、日中は庭をちょろちょろしているが、夜は森を縦横無尽に駆けまわっている。
 森で過ごすようになって、人生はより濃密になり、喜びと発見に満ち、おだやかだった。
両親が私を縛りつけようとすればするほど親子の絆(きずな)はほころびていき、ついに切れた。私は森で暮らすことにした。
森の冒険は4月に始まった。できるだけ森で採れるものを食べ、完全には難しいとしても、菜食主義に近い食生活をしようと決めた。同じ森にすむ動物を狩って食べるなんてことは考えられなかった。
ある晴れた朝、道端で葉っぱを食べていると、1頭のノロジカが私の目の前を横切り、数歩先でとまった。この出来事がきっかけで、ノロジカと暮らし、彼らの生き方を学ぶことにした。正しいサバイバル法はノロジカのダゲを観察することで分かった。
ノロジカは昼夜を問わず、短いサイクルで休む。1回に1、2時間ほどの休憩を何度もとる。こまめに眠れば、夜にまとまった睡眠をとる必要がないことが分かった。
そして、森では、昼よりも夜のほうが生産性が高い。完全なる自給自足は一朝一夕で達成できるものではない。私の貯蔵法は、採取した植物を日中はメッシュ生地の袋に入れて日当たりのよい枝につるし、夜は湿気ないようにジップロックに入れるというもの。
イラクサ、ミント、オレガノ、オドリコソウ、セイヨウナツユキソウ、セイヨウノコギリソウ、シシウド・・・。食べられる植物と毒のある植物を正確に見分け、それぞれの栄養価を把握する、これには長い時間がかかった。量にも注意が必要。スイバはとてもおいしくて食べやすいが、大量に摂取すると、ひどい消化不良を起こす。小さな花をつけるアカバナの根は万能薬。
食料の蓄えがあり、大きなケガをせず、適当な体力があれば、1年ほどで栄養面の自活・自立は成し遂げられる。
シカと生活し、移動を共にするうえで、いちばん難しいのは、雑念を払うこと。
いたずら好きで、遊び心のあるノロジカたちに、私はすっかり魅了された。
森に善悪はない。しかし森は、常に私たちに自問することを強いてくる。
シカは習慣の生き物だ。だから、シカに会いたいと思ったときは、いつも現れる付近に腰をおろして待つのが賢い。
森で生活するとき、洗濯はしない。人間社会のにおいを森に持ち込みたくないからだ。
ノロジカは美食家だ。栄養価が高く質の良い食べ物を選んで食べている。
神経質そうに見えて、ノロジカはおだやかで、生きることを楽しむ生き物だ。
冬のもっとも寒い時期は発汗が命取りになるので、なるべく汗をかかないようにする。低体温症にならないように、体を濡らさない。体温を保つこと、十分に食べること。冬場のまとまった睡眠は死に直結する。
気温が最も高くなる午前中の終わりに少しだけ眠った。
ノロジカは人の感情を理解する。それだけではなく、その人の善悪、つまり動物の命を尊重する人と、危害を加えようとする人を見分けることができる。
著者は19歳のときに森に入って生活を始めました。そして、26歳のとき、パートナーに出会って写真展を開いたのです。39歳になった今も、森の近くの町に住んでいます。すごい本です。思わず力が入り、うんうん唸りながら読み進めました。
(2024年4月刊。1800円+税)

植物観察の事典

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 大場 秀章 、 出版 ヤマケイ文庫
 私の数少ない趣味、というか生き甲斐の一つがガーデニング(庭づくり。つまり、花と野菜の栽培)です。東京そして神奈川に10年間住んでいました。憧れて上京したのですが、自然の四季折々を実感することができないのが本当に寂しく思いました。それで、東京直下型大地震の話が出たとき、これは何としても田舎に帰ろうと思ったのです。今は、広い庭(東京だと建売住宅が少なくとも4軒以上は十分に建つ広さがあります)に、四季折々の花を楽しんでいます。
 3月末から4月にかけては、なんといってもチューリップです。毎年、少なくとも300本は自宅の周囲に球根を植えて、愛(め)でて楽しんでいます。その前後は水仙ですね。チューリップが終わるころにジャーマンアイリス、そして黄ショウブ、それからクレマチスが次々に咲いてくれます。今はアマリリスの大輪の花が魅惑的です。私個人のブログで写真を公開しています。一度のぞいてみて下さい。
 そして、ジャガイモを梅雨に入る前に掘り上げます。タマネギをつくっていたときもありますが、あまりにたくさんとれて、今はつくっていません。ジャガイモより難しいのはサツマイモです。今年も苗を植えましたが、なかなかうまくいきません。小粒で、大きくならないのです。恐らく、土地が肥えすぎているのだと思います。長年にわたって生ゴミを庭に植えこんでいますので、庭の土はふかふか、黒々としています。
 こうやって日曜日の午後を過します。私の最大の楽しみの一つになっています。
 キャベツを植えたこともあります。これは大変でした。毎日毎朝、青虫を割リバシでつまんで取り除くのですが、いつだって取りきれません。これは、農家が農薬を使いたくなるのも当然だと思いました。
 ネギも植えました。これは失敗がありません。薬味として、刻んで、美味しくいただきます。
 ドングリは、たくさんの、実のなる年と、それほどでもない年がある。それは、何年かに一度、たくさんの果実をつくると、急に動物が増えることはないので、ドングリを食べきれず、多くのドングリが生き残る。そうやって子孫を確保している。うむむ、そういうことですか…。
 トリカブトの毒も、少量なら薬になる。人間にとって、アルカロイドは毒であると同時に薬でもある。ソテツの実やヒガンバナの球根は猛毒だけど、人間はすりつぶして水にさらし、リコリンというアルカロイドを抜いて、飢饉(ききん)のときに食べていた。やはり、生きるための知恵ですよね。
ひところ黄金色に輝くセイタカアワダチソウの群落があちこちに見ましたが、今は、それほどでもありません。繁殖力は旺盛なのですが、時間が経過すると、個体の寿命の到来とあわせて自家中毒によって、自らもその場所から追い出されてしまうのです。
 知らない植物の話が盛り沢山の本でした。
(2024年3月刊。1100円)

生きものたちの眠りの国へ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 森 由民 、 出版 緑書房
 依頼人と話しているとき、不眠症の人が意外に多いことに驚かされます。
ベッドに入るのは10時ころ、眠るのは午前3時で、朝の7時には目が覚める。なので、毎日の睡眠時間は4時間。これは30代の男性の話です。いやあ、大変ですよね・・・。ぐっすり眠れないと疲れがどんどんたまっていき、病気になってしまいます。
 「眠りは、優しい母と美しい姉が一体になったものだから、なかなか僕の寝室には恥ずかしくて来てもらえないのだ」(中井英夫「眠り」)
 睡眠は非常に効果的に脳の機能を回復させる。
私は徹夜したことは高校生時代に1回、そして大学生のときに1回だけあります。弁護士になってから徹夜したことは1回もありませんし、30代のころ午前2時まで起きて書面作成したことが1回ありましたが、回らなくなった頭ではどうしようもありませんでした。高校生のときは、実験的に徹夜してみたのですが、まるで効率が悪いことをして1回でやめました。大学生のときは、サークルの夏合宿のときに彼女と話し込んで夜が明けたというわけですが、これまた次の日は散々でした。
 ともかく夜の12時を過ぎたら頭が回転しなくなります。身体全体が明らかに機能不全になっていることが分かります。なので、最近は夜11時までに寝るよう心がけています(それでも、ときどきは12時近くになってしまいます。でも12時過ぎまで起きていることは絶対にありません)。
レム睡眠とノンレム睡眠と、はっきりしているのは、ほ乳類と鳥類だけ。ちなみに、鳥類については、「ここまでが恐竜で、ここからが鳥」という客観的な区分はできないので、恐竜そのものの延長線で考えられている。レム睡眠のあいだに、記憶の重みづけが行われると考えられている。
水族館のイルカは、泳ぎながらの「遊泳睡眠」、プールに浮いて眠る「浮上睡眠」、沈んで眠る「着床睡眠」の3つがある。
オランウータンは、ベッドに入ると、体の上に枝葉をかけぶとんのようにかぶる。雨が降ると、枝葉を傘のように使う。
オランウータンは、毎日夕方の5時から6時くらいに数分間でベッドをつくる。ゴリラは、夜でも地上で眠ることが多い。
犬は平均して30~40分を1単位とする睡眠をとっている。1回のレム睡眠は10分以内。動物園のゾウは、ひと晩に4~6.5時間しか眠らない。
カイメン類の祖先は6億年以上前からすでに存在していた。もっとも原始的な多細胞動物の姿を受け継いでいるようです。このカイメンには、全身をつなぎ合わせてコントロールする神経は存在しない。それどころか、ばらばらの細胞にされても、また細胞が寄り集まって再生する。
睡眠が大切なことを改めて認識させられる本でした。
(2023年12月刊。2200円+税)

奄美でハブを40年研究してきました

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 服部 正策 、 出版 新潮社
 ハブ捕り名人がいるそうですし、1匹4000円(今は3000円)でハブを地方自治体が買い取ってくれるそうですから、今やハブは絶滅危惧種の一つだと勝手に思い込んでいました。
 ところが、なんと奄美にハブは7万匹、徳之島にも4万匹はいるそうです。奄美大島の人口6万人弱よりも多いのです。なあんだ、絶滅を心配する必要なんてないのですね。
 ちなみに、奄美のマングース退治は成功し、ほぼ絶滅状態になったそうです。
それでも、今でもハブに咬まれる人が年に30~50人はいるとのこと。かつては年に300人以上だったそうですから、減ってはいます。
 そして、ハブに咬まれて死ぬ人は、明治時代は2割ほどだったが、今では10年ぶりに1人亡くなったという程度。
 ハブに咬まれたら、ともかく患部を吸い出したらいいそうです。そして、ハブ毒は飲み込んでも、それで死ぬことはないとのこと。
 ハブは神経質で臆病な生き物なので、人間を恐れている。ハブがいきなり襲ってくることはまずない。
 といっても、家の中に侵入してきて、就寝中にハブに咬まれる人がいるそうです。ともかく、油断しないこと、油断した人が、どんなにベテランであってもハブに咬まれるそうです。楽天的で大雑把な人ほどハブに咬まれる。
 ハブの毒は、ヤマカガシやマムシより弱い。ええーっ、そ、そうなんですか…。これも、イメージと違いますね。
 わが家の庭にも昔からヘビが棲みついていますが、マムシではなく、ヤマカガシではないかと心配しているのです。黒っぽい身体に毒々しい黄色なのです…。
 ハブに咬まれたら、体を温めて、すぐに病行に行くこと。咬まれたところを切開し、毒を洗い出し(吸い出し)、血清を注射すれば、まず生命は助かる。
 ハブは7月に産卵し、8月から9月にかけて孵化(ふか)する。
子ハブも大きいハブも木の上にいることが多い。ハブの寿命は最長30年ほど。
 ハブは寝たふりをして人間をやり過ごすことが基本だが、産卵後だけはピリピリしていて攻撃的。
ハブは気まぐれで、人に飼われてもなつかない。ハブは飛ばない(飛べない)し、いきなり飛びかかってくることもない。
 著者は、今では島根の山あいの田舎で農業をしているそうです。お元気にお過ごしください。面白い本でした。
(2024年3月刊。1600円+税)

考える粘菌

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 中垣 俊之 、 出版 ヤマケイ文庫
 タンパク質分子は、ブラウン運動によって常に激しく小刻みに揺れ動いていて、細胞の端(はし)から端まで数十秒ほどかけて移動する。これは、小ホールの中に満たされたおびただしい数のグリーンピースがすべて振動しながら、数十秒で端から端まで移動する様子を思い浮かべる、そんなイメージ。いやあ、そんなイメージはちょっと出来ませんよね…。
 単細胞には脳がない。だからどうやって情報処理をしているのか…。一般に、生物の情報処理は自律分散的。
 この本のテーマは粘菌。粘菌は数百種類もいる。アメーバには性がある。そして接合する。ところが、性は2つ以上ある。うぬぬ、性が2つ以上あるとは、一体、どういうこと…??
 粘菌にオートミールを餌(えさ)として与えたとき、絶食させたあとと満腹してからでは、食いつき方がまるで違う。なので、単細胞だって人間と同じ生き物だということが分かる。
 そして、粘菌にも歴然とした好みがある。最も好むのは、有機栽培の、オーガニックのもの。タバコの煙も好まない。
 粘菌は紫外線を浴びると危ないので、すぐに逃げ出す。
 生きものの賢さの根源的な性質を調べるためには、粘菌という生物は、またとない、すぐれたモデル生物。
粘菌を迷路実験すると、粘菌には迷路の最短経路を求める能力のあることが判明する。
 人間の脳のなかにも司令官のようなものは存在しない。誰かが全体を見張っていて、それぞれの管に指令を出しているわけではない。
 粘菌は、決して人のようには考えていないにもかかわらず、結果だけ見れば、あたかも考えたかのように見える。考えていないのに、粘菌は考えている、と言える。うむむ、なんだか分かったようで、分からない表現です。
 いやはや、生物の世界も不思議に満ちていますね…。
(2024年1月刊。880円)

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