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カテゴリー: 生物

動物のひみつ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 アシュリー・ウォード 、 出版 ダイヤモンド社
 人間は万物の霊長なんかでは決してない。そりゃあ、そうですよね。いつまでたっても人間が人間を殺す、しかも大量に殺す戦争が果てしなく続いていますし、むしろ拡大しています。そのうえ、地球の温暖化がすすんでいて、南極・北極の氷がどんどん溶けていって、ホッキョクグマの生息域を狭くしているのですから…。
 700頁もの分厚い本なので、昼寝の枕にするのにも、ちょっと高すぎかな…と、ついためらってしまいます。ところが、滅法面白くて、ついつい頁をめくる手が止まりません。といっても読み終えるのに、4日間もかかってしまいました。毎日曜日午後の楽しみにていたのです。そんな前口上はほどほどにして、ちょっとばかり内容を紹介します。
 同じネグラを共有するコウモリは、食事ができなかった者がいると、満腹になったコウモリが自分の飲んだ血の一部を吐き戻して、空腹のコウモリに与える。
 オキアミは1匹は人間の小指ほどの大きさしかないが、とてつもなく大量に生存していて、その全部をあわせた重量は、全世界の人間の全体重より重い。そして、このオキアミを、魚もイカも、ペンギンもアホウドリも、アザラシも巨大なクジラも、みな重要な食料としている。
 クジラの糞は、濃い雲のようなもの。鉄・リン・窒素などの栄養分が多く含まれ、植物プランクトンは、この栄養分を利用する。オキアミは、この植物プランクトンを食べている。
 ゴキブリは学習する。ゴキブリの種の数は5000にもなる。ゴキブリの集団には明確な階層がなく、リータンもいない。
アリとシロアリは、何百万年と戦い続けている。
 グンタイアリの女王は、わずか4日か5日のうちに、なんと30万個もの卵を産む。コロニーが50万匹を超えるころ、3年周期で、コロニーが二つに分裂する。
 地球には、100兆匹ものアリがいる。南極を除く、すべての陸地にアリはいる。
 魚は、身体に占める筋肉の割合がもっとも多い動物である。全体重の80%が筋肉。
ムクドリは大集団になって空を飛んでいるが、どの個も自分のそばの7羽ほどの個体の動きに反応しているだけ。それによって仲間同士が衝突しないように予防する。
 鳥たちにとって、上昇気流は、踏石、あるいは燃料補給基地のようになっている。
ニワトリの間には序列がある。ニワトリの序列は、一度決まったら、数ヶ月いや年数も続くことが多い。
 ニワトリを大集団で飼うこと自体が、ニワトリの自然な習性に反すること。
 ネズミは賢く、さまざまな環境に適応できる。ネズミの嗅覚は非常に鋭い。ネズミは用心深い動物でもあり、巧みに毒餌(エサ)を避ける。
 ネズミは、仲間が飢えていると、気前よく食べ物を分け与える。あれれ、これってコウモリもやっていましたよね。
 母親に大切に育てられた子どもたちは、穏やかな、精神のバランスの取れた大人になる。これは、50年も弁護士をしている私の実感でもあります。逆に言うと、親から見捨てられていると感じた子どもは大きくなってから、親と大人社会に復讐しようとする傾向にあります。
 ハダカデバネズミは、30年以上も生きるのが珍しくない、というように長生きする。
ハダカデバネズミは、ガンにならないし、皮膚には痛覚がない。ハダカデバネズミは糞をよく食べる。ワーカーが女王の糞を食べると、女性ホルモンによって、多くのエストロゲンが入ったとき、子ネズミたちにとっての良き代理母となる。なーるほど、ですね。
 全世界に10億頭以上もいるウシ(牛)の血流は、肥沃(ひよく)な三日月地帯にいた80頭のオーロックスにまでさかのぼれる。
 牛は個体の違いを見極めることが出来る。牛は、群れの仲間の顔を少なくとも50頭、識別できる。写真であっても見事に個体を識別できる。これは人間についても同じ。自分への態度の悪かった人間、美味しい食べ物をくれるなど良くしてくれた人も、きちんと覚えていて、区分できる。
 象の嗅覚は、とてつもなく鋭い。数十キロメートル先に水たまりがあると察知できる。象は10キロメートル離れた仲間の発する可聴可音を察知できる。象には驚異的な記憶力がある。
 シンガポールというのはライオンの街という意味。シンはライオンのこと。雄ライオンの全盛期は、わずか2年か3年。ライオンの雄も狩りをする。ただ、雌とは方法が違う。
 ハイエナの社会ではメスのほうがオスより攻撃的で、全体として優勢。最下位のメスですら、最高位のオスよりも地位が上。ハイエナが笑い声をあげるのは、恐怖を感じていたり、緊張しているという合図。
 ハイエナは標的とした動物集団をよく観察し、「こいつは弱い」と判断した標的をしぼる。
 クジラの子どもは、母クジラの乳を吸うのではなく、食べる。カッテージチーズのようになっているから。
 バンドウイルカには、高度で複雑な言語があり、絶えず近況を伝えあっている。
 著者はシドニー大学の動物行動学の教授。対象とする動物の幅広さ、そして、その認識の深さには驚嘆するばかりです。
(2024年4月刊。2200円)

裏山の奇人

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 小松 貴 、 出版 幻冬舎新書
 新書版としては新刊なのですが、実は10年前に東海大学出版会から同じタイトルで出版されていて、その復刊本(新書)なのです。カラー印刷なので、見てるだけでも楽しい新書になっています。
10年前は九大につとめていた著者は、関東に移り、また、結婚して、2人の息子がいるとのこと。奥様のコトバがすばらしいです。
 「コマツは組織に飼われたら絶対ダメ。自由におやり、私が養ってあげる」
 そのコトバのおかげで、著者は相変わらず、裏山で自由に生き物(昆虫)たちとの悦楽の時間を過ごしているようです。すごいですね。幼いころから昆虫好きだったとのこと。私もアリの行列に見とれ、その行き先をたどった記憶はありますが、石をひっくり返し、巣穴をのぞいたことはありません。そして、著者はなんと、アリに寄生する虫を発見したらしいのです。好蟻性昆虫と呼びます。このアリヅカコオロギの研究で20数年後に、飯を食うなど想像もしていなかったとのこと。そりゃあ、そうでしょう…。
 昆虫観察を成功させるコツは地元の人を決して敵にまわさないこと。いかに地元の人たちに赦(ゆる)されるかが肝心。要するに、変な奴と警戒されないようにすることなんですね。
 わが家の庭にはモグラが棲みついています。先日もチューリップの球根を植えたところが大きく盛り上がっていて、球根が地上に放り出されていました。トンネル内にあった泥を地上に押し出した後です。モグラはミミズを食べて生きていますので、決して球根なんか食べませんが、球根を邪魔者扱いにして地上に放り出すので困ります。
 このモグラの小型をヒミズと呼び、著者はずっと観察しました。
 ヒミズは、ある面ではとても賢いけれど、別の面ではとてもバカな生き物らしい。
 著者は森の中で、野ネズミを観察しようと夜に待ち伏せした。たった1人、暗い夜の森にじっと座って待つ。足を動かすと地面を振動が伝わるので、足は動かせない。鼻水が流れてもすすると、その音で警戒されるので垂れ流しのまま…。いやあ、寒い中、大変な作業ですね。おかげで動かず、音を出さないと、人慣れしていない野生動物でも至近で観察できることを学んだそうです。
いま、西日本新聞に連載中の昆虫博士・九山宗利先生に手ほどきしてもらい、今は尊敬しているとのことですが、初対象の印象は次のとおり。
 その見た目の胡散(うさん)臭さ、まがまがしさ…。いやはや、なんということでしょう。でも、恐ろしく博識で頭が切れるというホメコトバが続くのです。
 好蟻性昆虫の研究なんかして何の役に立つのか、そんなもの研究する価値があるのか…。よくある疑問です。でもでも、すぐに役に立たなくても、ひょっとして何かの役に立つかもしれないし…。学問って、すぐ目の前の役に立つ者ばかりではありませんよね。
 好蟻性生物は、いずれもアリに寄り添い、利用するために特殊な進化を遂げた、選りすぐりの精鋭ぞろい。アルゼンチンアリのようなアリの放浪種には、1コロニー内に女王が何十匹もいるので、たった1匹でも女王を駆除しそうになったら、すぐに増えてしまう。
天敵というのは、害虫の密度を抑えるのには役立つけれど、滅ぼすことはできない。
ツノゼミは、アリに守られた状態でよく見つかる。ツノガミが排泄する甘露をなめるため、アリがたかるのだ。
 奇人・変人がいるからこそ世の中の進化はあるのです。常識人ばかりでは困るのですよね。そのことがよく分かる本でもありました。
(2024年7月刊。1400円+税)

ザトウムシ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 鶴崎 展巨 、 出版 築地書館
 クモみたいだけど、クモではない、脚長の生き物。このザトウムシを高校生のころから50年ものながいあいだ研究しているという著者による本です。すごいですね、まったく見上げた執念ですよね。
ザトウムシは座頭虫。歩くとき、最長の第2脚を前方に伸ばして周囲を探るような姿勢をとる。その姿が、前方を杖で探りながら歩く姿に似ていることから、江戸時代にザトウムシと呼ばれるようになった。
 ザトウムシは、山地の森の中で、人知れず、ひっそりと生きている。
 ところが、手塚治虫のマンガ「きりひと讃歌」に出てくるし、野田サトルの「ゴールデンカムイ」にもザトウムシが非常に正確に描かれている。手塚治虫は昆虫好きでも有名でした。
 クモとザトウムシの違いは、2つ。クモは腹部と頭胸部とのあいだが細くくびれているが、ザトウムシはずんどう。そして、眼はザトウムシは2個なのに、クモは8個か6個の単眼をもっている。
ザトウムシの細い脚は、古生代の化石として登場するときも今と同じく細く長い。
ザトウムシは、1年に1世代。
ザトウムシは、小型の昆虫やクモ、陸見、ミミズを食べる。食性幅が広いので、クモと違って食べ物には困らない。
 クモは消化した液体しか取り込まないので、不消化物が少なく、ほとんど糞が出ない。ザトウムシの糞は、白いペレットとして肛門から排泄する。
 ザトウムシを飼育するときの餌(エサ)は、カロリーメイト、食パン、魚肉ソーセージ、チーズなど、どれもよく食べる。そして、水をよく飲む。
 オスとメスは向きあって交尾する。オスはメスに餌を提供して長い交尾時間を確保している。この餌を婚姻贈呈という。メスは平均で7個体のオスと交尾している。
 ザトウムシには、メスしか見つからず、産雌単為生殖種と考えられるものが多い。日本産のザトウムシの1割にあたる8種がそうである。
 ザトウムシでは、子を保護するのをオス(父親)もする。
 ザトウムシは、世界には6300種いて、日本には80種いる。
ザトウムシは、人を咬んだり刺したりすることはないので無害だけど、人の生活に目立つ益もない。ただし、森林害虫を捕食している。
蛇足ながら、著者の長男は、TBSテレビのクイズ番組で初代の「東大王」だったそうです。マニアックなところが似たのでしょうね、きっと…。
(2024年8月刊。2400円+税)

農はいのちをつなぐ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 宇根 豊 、 出版 岩波ジュニア新書
 庭に植えたカボチャは花こそたくさん咲いたのに、ひとつも実がなりませんでした。なぜ、でしょうか…。残念です。来年はもう少し研究して植えつけ、育てるつもりです。
サツマイモのほうは、地上には勢いよく葉が繁っていますが、肝心の地中部分はどうでしょうか…。今月末から11月にかけて掘り起こすつもりです。実は、これまで何回もチャレンジしましたが、毎回、うまくいきませんでした。野菜育ての本を立ち読みすると、ツルの先端が少しばかり上向きになっているのが良いのだそうです。そこまでの目配りはしていませんでした。果たして、どうなることやら…。
 もう一つ、アスパラガスを昨年、植え替えました。今のところ、あまり調子良くはありません。来年の春に、太い芽を次々に出してくれたら、うれしいのですが…。
 「百姓」という言葉は、「日本書紀」に登場しており、決して差別語ではない。明治以降の歴史教育が差別を助長した。今では「百姓」という言葉のイメージは、明るさを取り戻している。そうなんですよね。また、士農工商も、以前と違って、格差を意味していないそうです。
稲株のまわりにはオタマジャクシが35匹いる。オタマジャクシは、10アール(1千平方メートル)あたり20万匹が生息する。しかし、カエルになって翌年また会えるのは1千匹。残りの19万9000匹は、いったい、どうなったのか…。きっと、その多くは食べられたのだろう。
赤トンボは、毎年、東南アジアから飛んでくる。海の上を20日も飛ぶことになる。
花粉はミツバチの幼虫の餌食になる。
 稲穂は刈り入れる直前、交雑したがっている。
江戸時代の百姓は80%、明治時代には64%、大正時代には57%、1960年には37%だった。ところが、1990年に14%、2020年には、わずか3.8%。
ごはん1杯は、米粒3000~4000粒、つまり稲3株となっている。
野の花が咲き乱れるには、適度な草刈りが必要。
食べるということは、「いのち」を奪いながら、「いのち」を引きつぐこと。すごい行為だ。
 農業の営みを私たちはもっと大切にしなければいけませんよね。自給率から3割のまま、大軍拡して、ミサイルをどんどんアメリカから買い入れても、日本人が生きのびることができるはずもありません。
(2023年11月刊。990円)

植物の謎

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 日本植物生理学会 、 出版 講談社ブルーバックス新書
 ショ糖の甘みを100とすると、ブドウ糖は70、果糖は80~150。果糖の甘みに幅があるのは、甘みが温度の影響を受けるから。果糖には2種類(αとβ)があり、β型の果糖は温度が低くなると、α型より3倍も甘く感じられる。ところが、これに対して、ショ糖やブドウ糖の甘さには、温度で変わる性質がない。
 マンゴーには果糖が糖の34%を占めているため、低温にすると甘みが増す。パイナップルとバナナには果糖の比率が低いので、低温にしても甘みは増やさない。
 イチゴの甘みは、含まれるショ糖の濃度に依存する。イチゴを栽培するとき、温度が高いと、甘みを主体とする美味しさの成分をじっくり蓄積できないまま、大きさだけどんどん成長してしまう。温度が低いと、美味しさの成分が十分に蓄積されるので、甘みの強いイチゴになる。
 ダイコンは、すりおろされて初めてイソチオシアネートを発生し、強い辛(から)みを感じる。そして、ダイコンの尻をすりおろしたときのほうが辛みを強く感じる。それは、維管束の密度が高いから。
 リンゴやジャガイモを切ってそのままにしておくと、酸化反応が起きて、タンパク質やアミノ酸などと結合し、赤や茶色に変わる。リンゴの切り口を塩水につけると、塩化物イオンがポリフェノール酸化酵素のはたらきを阻害するため。
 生き物のからだの形は、必ずしも必然性からそうなっているとは限らず、とくに良くも悪くもないので、とりあえずそんな形をしているという事例が多々あると一般に考えられている。
葉緑体の機能が低下して葉の老化がはじまると、植物は葉を落とすため、葉柄の付け根に「離層」という細胞層をつくる。
 植物は「積極的に」老化している。スイカは細胞の数は増えないまま、細胞の一つひとつが大きくなっている。
 バナナは「木」ではなく、多年生の「草(草木。そうほん)」。そして、一生に一度だけ果実をつける。果実ができると地上部は枯れるが、地下部は生きている。
 ニホンタンポポは、自家不和合性なので、雌しべの柱頭は、別の個体の花粉を受粉することが必要。
 「経験によって行動(反応)が永続的に変化する」というのを学習の定義だとすると、植物には学習する能力があると言える。
 オジギゾウにも人間と同じように体内時計があり、およそ24時間周期のリズムをもっている。植物の謎をたくさん解明することができました。
(2024年3月20日刊。1100円)

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