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カテゴリー: 生物

深海ロボット、南極へ行く

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 後藤 慎平 、 出版 太郎次郎社
 マリアナ海溝。水深8000メートルをこえる超深海。投光器の灯りは、ほんの数メートル先までしか届かない。真っ暗な深海が果てしなく続いている。そこに動いているのは深海ロボット。マリアナ海溝最深部では1平方センチにかかる圧力は1トンをこえる。これは人差し指の先に軽自動車2台が乗っかっているのとほぼ同じ状況。水中なので、四方八方から、この圧力がかかる。
 水中探査機をROVと呼ぶ。著者は南極用ROVを開発した。しかも、短期間のうちに、あまりお金をかけずに…。水中用のロボットケーブルは、細径で軽量、そして引っぱりにも強い特性が求められる。そんなのあるの…。神奈川県にロボットケーブルメーカー「岡野電線」がつくっている。これでケーブは解決。次は圧力に強いもの…。カシオの腕時計Gショックが圧力に強い。やはり、あるんですね。
 南極の観測隊は、総勢100人ほど。それに自衛隊員を含めると、300人以上になる。夏隊と越冬隊がいる。越冬隊は南極に14ヶ月を過ごす。
 ROVはリモコン戦車と原理が共通している。
 水中探査機(ROV)は、水に入れると、そのまま自重で沈んでしまうので、「中性浮力」と呼ばれる浮きも沈みもしない状態が求められる。そのため浮力材が取りつけられている。
 水中探査機(ROV)には、かなり強力な投光器が搭載されている。この投光器にあてることで充電できるように工夫した。
この本を読んで、南極に行く人は日本の冬山で極寒状況における訓練に参加するのですね。いやあ、これは大変なことです。
 南極に個人的に持っていくものとして、チョコレートとココアがおすすめだそうです。そしてヨーグルトにのどアメも。もちろん南極に便利なコンビニがあるわけないですからね…。
 南極のトイレは、丸い一斗缶のようなバケツ。このペール缶に用を足す。大も小も、老若男女みな同じ。用を足したら、上から菌の増殖を抑えるシートや凝固剤を入れ、また次の人がそこに用を足す。
風呂には50日間入れないが、意外に変な臭いはしない。ウェットシートで体を拭くていど。
食器は洗わない。汚れはあるていど拭きとると、霧吹きで水をかけて、さらに拭きとる。少々ガンコな汚れは、アルコールで拭きとる。これで完了。拭いたペーパーは可燃ごみとして基地で焼却する。
 南極の直射日光には気をつける。上空にオゾンホールがあり、大量の紫外線が降りそそぐので、日焼け止めを塗っていないと、火傷(ヤケド)のように皮膚がただれてしまう。
 昭和基地の近くには50以上もの湖が点在している。そしてROVを投入し、無事に観察を成功させる。湖底にはコケボウズがいる。
 著者は生態学者ではなく、あくまでROVを扱う工学屋。ロボット工学者が南極へ何しに行くのかと訊かれたそうです。そりゃあ、南極にだって、仕事ありますよね、工学者にも…。面白い本でした。
(2024年4月刊。1900円+税)

世界を支配するアリの生存戦略

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 砂村 栄力 、 出版 文春新書
 外来アリのすごさは、普通のアリにはない社会性を進化させることによって得られた底なしの繁殖力にある。外来アリは、スーパーコロニーという無数の巣が相互に連携しあう巨大なコロニーをつくり、超効率的な社会活動を行う。
 ヒアリはアメリカでも撲滅されず、被害や対策のため年間50~60億ドルという巨額のコストが生じている。日本でも18都道府県で111もの確認事例が出ている。
 世界の侵略的外来種ワースト100の中にアリ類が5種も含まれている。アルゼンチンアリ、ヒアリ、コカミアリ、アシナガキアリ、ツヤオオズアリ。
 アリは本体的に毒針をもっている。毒針を退化させたアリは、ギ酸という毒を腹部末端からスプレーのように噴射する能力を獲得している。
 シロアリはアリの仲間ではなく、ゴキブリの一グループ。シロアリは、真社会性を獲得したゴキブリ。
世界でもっとも分布を拡大していて、温帯域の経済国を席捲しているのは、アルゼンチンアリ。アルゼンチンアリに対して影響力の強い天敵は今日まで特定されていない。
 アルゼンチンアリの巣には、複数の女王がいる。女王は1日に数十個ほどの卵を産む。
 日本には、4種類のスーパーコロニーが存在する。大陸をこえ、世界を席捲するスーパーコロニーをメガコロニーと呼ぶ。スーパーコロニー内では年に1度、巣内の女王の90%が働きアリに殺される。女王処刑は冬に行われ、寒空の下、働きアリが巣の外へ女王を引きずり出し、首に咬みついて殺す。働きアリは、血縁度の低い女王を選んで殺しているらしい。これによって、スーパーコロニー内の血縁度が調整されている。いやあ知りませんでした。女王が処刑されるなんて…。
 アメリカでは、ゴキブリよりもアリのほうがもっとも問題となる家屋害虫。それで、害虫対策用品の名前にもアリのほうが先に来ている。
 侵略的外来アリは、アブラムシの甘露のように糖分に富んだ液体状の餌を非常に好む性質がある。それを、アリの駆除対策に活用されている。
 アリはすごい生物だけれど、外来種の繁殖を許すわけにはいかないということもよく分かる新書です。
(2024年8月刊。1050円+税)

すごいコアラ!

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 平川動物公園 、 出版 新潮社
 鹿児島市にある動物園には現在18頭のコアラがいて、みんな名前がついています。同じような顔と形をしていて、いったいどうやって見分けるのかなと不思議な気になりますが、一頭一頭、食べる好みも違うそうです。
 そういえば、東北の金華山の野生の鹿もずっと観察している人は見ただけで区別できるし、母と子まで見分けられるそうです。コアラだって、じっとじっと見比べていたら、きっと違いが分かるようになるのでしょうね。
 ちなみに、名前は、たとえばツムギ、ユメ、インディコ、スターです。タイヨウ、アラタ、ノゾム。アーチャーもいます。あまり規則性がないように思えますが、本当は何か命名ルールがあるのでしょうか…。
 コアラはオーストラリアの東側に棲み、固有種。毛が灰色の北方系と茶色の南方系がいて、日本にいるコアラのほとんどは北方系コアラ。
コアラは、とても繊細な生き物で、ストレスをためやすいので、飼育員や獣医師のほかは触れないようにしている。
コアラはユーカリを主食としていて、平川動物公園では13種類のユーカリを栽培している。
コアラがどのユーカリを好んで食べるのかは、日によって変わり、飼育員も予測が難しい。コアラは、その大きな鼻で、ユーカリの葉のおいしい。まずい、新しい・古いをかぎわけている。時間をかけて慎重にかぎわける。
ユーカリには毒素がある。コアラが食べても平気なのは、腸内細菌を活用しているため。コアラの盲腸は、体長70センチに対して、2メートルもある。
毒素があり、硬くて繊維も多いユーカリの葉を消化分解するには、たくさんの時間とエネルギーを必要とするので、1日20時間も眠ったり、休んだりしている。
野生のコアラは縄張り意識が強い。そのため、2歳ころから、テリトリーコールという野太い声で鳴く。
コアラを飼育員が抱っこするときは、右腕か左腕か、コアラによって必ず分かれる。どちらの腕でもいいというコアラはまずいない。
なんだか不思議ですね。どうしてなんでしょう。人間の右利き、左利きみたいなものなんですかね…。
ユーカリは大変傷みやすい。コアラには、1日に5~6品種のユーカリを与える。
ユーカリはカビが生えやすい。
コアラは、ユーカリを多いと1日に1キロほど食べる。18頭全部だと、年に34トンを食べる。そのため、ユーカリを動物園の内外40ヶ所のユーカリ圃場で、合計2万本ほど栽培している。
コアラはオスが3歳、メスが2歳で性成熟する。メスの1回の発情期間は10日。オスがメスに対してアプローチするのが大前提。
コアラの赤ちゃんは、体長1~2センチ、体重0.5~1グラムほど。コアラの赤ちゃんが母コアラの袋から出た「出袋日」がある。
赤ちゃんのエサは母コアラのうんち(パップ)。このうんちには、ユーカリの葉っぱを消化するのに欠かせない腸内細菌が含まれている。コアラのうんちは、ほのかにユーカリの香りがして、臭くはない。
コアラの子育て期間は、1年間。1年たつと、子離れ、親離れ。
平川動物園では、この40年間に105頭のコアラを飼育してきました。たいしたものですね。
オーストラリアでは大火災で一度に5万頭のコアラが死んでしまったり、野生のコアラの生息地は減る一方。
たくさんのカラー写真とともに詳しい解説のついた楽しいコアラ観察本です。
(2024年10月刊。1540円)

私はヤギになりたい

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 内澤 旬子 、 出版 山と渓谷社
 著者には3匹の豚を飼って育て、そして仲間と一緒に食べたという過程を迫った本があります。豚はとても賢い動物だということが、その本を読んでよく分かりました。そして今回はヤギです。瀬戸内海の小豆島に住む著者は5頭のヤギと1頭のイノシシを飼っています。
 もちろん、みんな名前がついています。その中心にいるのはメスヤギのカヨ。残り4頭の母親でもあります。
ヤギは孤独に耐えるとみられていますが、実は仲間がほしくて、ひとり(1頭)では寂しがります。ヤギ舎内では単独行動するけれど、基本は団体行動。
ヤギの食べる草にもヤギによって好き嫌いがあり、違っている。つまり、ヤギにも個性がある。ヤギたちの大好物はクズ。マメ科。露草(ツユクサ)は、まるで食べない。ニレの木の葉もアカメガシワやエノキと同じくヤギの大好物。ヤギは地面に落ちた葉っぱは食べたがらない。なので、なるべく枝付きの葉を差し出して食べさせる。ヤギは草よりも実は木の葉を好む。果樹のせん定時に出る枝葉は、どれもヤギの大好物だ。
 ヤギの乳しぼりを手でやるのは大変。乳搾り器を使うとおとなしく乳しぼりが出来てヨーグルトそしてチーズが出来た。ヤギミルクは脂肪の粒子が小さくて消化が容易なので、母乳の代わりになる。
 メスのヤギは21日ごとに発情期が来る。春と秋には、特別強く発情する。
 ヤギたちはみんな人間にされたことを忘れずに憶えている。
 ヤギは、同腹の兄弟の絆はとても強い。兄弟の1頭が事故で亡くなったあと、残る1頭は半年以上もうつ状態で自閉してしまった。
 ヤギたちは、赤ちゃんヤギをとても可愛いがる。
 ヤギのクールな瞳も毎日よく見ていると、実はさまざまに変化する。顔の表情の変化や耳の動きなど、こまやかな感情、そして要求などが読みとれる。
 ヤギは著者の日本語も聞きとり、理解している。
 ヤギはヤブ(藪)が好きではない。見通しの良い平なところにいるのを好む。天敵から早く逃げるため。
 ヤギの糞便と歩き方は毎日チェックする。歩き方がおかしいときは、腰麻痺を疑う。毎日のエサの心配と体調チェックが8割を占める。
ヤギは意思がはっきりしていて、好奇心が強い。おとなしいヤギもいるけれど、人間に対して強く出るヤギもいる。ヤギはかなり気性が荒い。
 そうか、前に『カヨと私』という本も読んだことを思い出しました。その続編になるのですね。ヤギの多頭飼いは大変ですが、面白くもあるようです。
(2024年9月刊。1980円)

あした出会える昆虫

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 森上 信夫 、 出版 山と渓谷社
 庭に来る昆虫が少なくなった気がします。なにより残念なのは、フジバカマの群生をつくって、アサギマダラ(蝶)を迎えようとしているのに、今年も来てくれなかったことです。それでも、いつかきっと来てくれるはず、来年こそはと思ってフジバカマをせっせと育て、増やしています。
 ときどきクロアゲハやアゲハチョウがやってきてくれます。キアゲハやアオスジアゲハも見かけたことはありますが、ジャコウアゲハは見たことがありません。クロアゲハは地面で吸水するのは、すべてオスだそうです。不思議ですね。メスはどこで水を飲んでいるのでしょうか…。
 アオスジアゲハはクスノキと花壇があれば、都市のなかでも育つそうです。同じく、ツマグロヒョウモンも花壇を利用して増えているそうです。
モンシロチョウは、日本の春の公式アンバサダーとされています。幼虫はキャベツの害虫です。昔、私も庭でキャベツを育てたことがあります。春になると、毎朝、割りバシをもってキャベツの葉、裏側まで青虫を探してつまみ出していましたが、ついにかないませんでした。毎朝とっても、必ず翌朝は青虫がいて、どんどんキャベツがかじられてしまうのです。いやあ、キャベツは農薬をふんだんに使うことがよく分かりました。
テントウムシは、わが家の庭にはなぜかあまり見かけません。日本には190種のテントウムシがいるそうです。肉食、草食、菌食など、いろんなものを食べています。ナミテントウは、アブラムシを食べます。驚いたのはその色彩の多様性です。赤地に黒い斑紋、黒地に赤い斑紋という基本ルールの中で、あらゆるパターンがあるのです。同一種だとは思えないほど色とりどりです。
 子どものころ、オニヤンマやギンヤンマを捕まえるのは夢でしたね。ほとんど捕まらないのです。ギンヤンマは、腰のあたりに白い部分があり、そこがほんのり光って銀色に見える。
 オニヤンマは日本最大のトンボで、体長10センチをこえるものがいる。育ち切るまでに3~4年かかる。トンボって、長生きするんですね。
わが家の庭には、モグラ、ヘビ、ダンゴムシそしてアリがいます。小さいアリが台所にまで侵入してきたことが何度もあります。
 大きくて黒いクロオオアリも見かけます。それより少し小さくてグレーなのはクロヤマアリ。サムライアリは見かけません。
空を見上げると、とんでもないところにクモの巣がかかっています。5メートルほども離れた木を結んでクモが巣をつくっているのには驚かされます。コガネグモ、ジョロウグモがいます。でも、クモは昆虫ではないそうです。昆虫は6本脚。クモは8本脚。この違いは大きいようです。
今年の夏はあまりの暑さに、セミがあまり鳴きませんでした。我が家にいるのはアブラゼミがほとんどで、お盆過ぎたら、パッタリ鳴かなくなりました。ニイニイゼミ、そしてヒグラシやツクツクボウシにも鳴いてほしいのですが、クマゼミもふくめて来てくれません。
今年は、アメリカ・シカゴで11年ゼミと17年ゼミが同時発生して、街中セミだらけになったようですね。テレビの『ダーウィンが来た』で紹介していました。
写真がたくさんあって、楽しい小型の昆虫図鑑になっています。
(2024年8月刊。1760円+税)

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