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カテゴリー: 生物

摩訶不思議な生きものたち

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 岡部 聡 、 出版 文芸春秋
私は日曜日の夜、録画した「ダーウィンが来た」をみるのを楽しみにしています。生物界の神秘の映像を茶の間で気楽にみれるなんて、実にすばらしいことです。でも、みながら、こんな映像を撮っているカメラマンたちスタッフの苦労にときどき思いを至します。
著者は、そんな生物ドキュメント映像を撮るために40ヶ国に出かけ、100種以上の動物に出会いました。そのなかで、何度も怖い目、死んで不思議がないような体験をしています。野生のトラがすぐ目の前にきていたなんて、怖すぎます。
モーリタニアでは野生のハンドウイルカが人間のボラ漁を手伝うのです。イルカだって利益があります。イルカは、人間が投げた網に驚いて逃げるボラを捕まえようと、人間のほうにボラを追い込んでいた。
タテガミオオカミは、ロベイラという苦味のある果実を食べる。これは、タテガミオオカミの腎臓に線虫が寄生していて、放っておくと腎機能が低下して長生きできなくなる。苦いロベイラを食べることで、線虫を駆除している。つまりロベイラの薬効をタテガミオオカミは知って利用しているわけだ。
体長12メートル、重さ15トンにもなるジンベエザメは、クジラに次ぐ巨大生物。ジンベエザメには目立った歯はなく、食べ物は小さなプランクトン。大きな口を開け、海水ごと飲み込み、えらで漉(こ)しとって食べる。巨体を支えるのに必要な量の食べ物を得るため、1日にプール2個分もの膨大な海水をろ過している。
ジンベエザメの寿命は70年。地球上に棲むジンベエザメは、すべて一つの家族のようなもの。これは、世界各地のジンベエザメの遺伝子を比較して判明した事実だ。
オオアリクイには歯が一本もなく、舌が異様に長く、体温が哺乳類のなかで最低。オオアリクイはアリを主食とするが、決して食べ尽くすことはしない。こうやって決してなくなることのない安定した食料資源になっている。
オオアリクイは、舌全体の長さを35%も変化させることができる。口の先から舌を30センチ以上も外に出して、アリを舐(な)ととって食べる。舌を出し入れする速さは1分間に150回。1秒あたり2.5回。オオアリクイの舌から粘液が出て、アリをすくいとる。では、どうして、その粘液は口の周囲をベトベトにしないのか…。
オオアリクイの舌の粘液は、シロアリをくっつける瞬間には粘り気があるのに、口に戻ったときには粘着性がなくなる。
サルの親は子どもサルに食べ物を与えることはしない。積極的に与えるのは人間だけ。チンパンジーやオランウータンでも、そばにいる子どもが自分の食べているのを横から取ることを許すだけで、与えることまではしない。
フサオマキザルは、ヤシの実を石にぶつけてエサをとる。これには2年から4年以上もかかることがある。
面白い本でした。さすが「ダーウィンが来た」のディレクターだった人による本です。
(2021年4月刊。税込1760円)

カラスをだます

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 塚原 直樹 、 出版 NHK出版新書
カラスの鳴き声を研究している第一人者による本です。カラスの群れを音声だけで別の地点へ誘導するのに成功したそうです。さすがです。といっても、カラス同士の音声の会話を解読したとまでは言えないとのこと。残念です…。
カラスのねぐらと巣は違う。ねぐらは、文字どおり寝るところ。巣は、卵を産んで育てる繁殖の場。子育てのあいだ、カラスはねぐらには帰らない。この間、ねぐらは、独身カラスと卵を産まないペアだけになる。
カラスはマヨラー。マヨネーズが大好き。脂(あぶら)が好きなのだ。
カラスは鼻がきかない。カラスにとって紫外線が決定的に重要。舌もきいていない。カラスは超音波も聞こえない。
カラスは遊ぶ。電線でさかさまにぶらさがって遊んでいる。
カラスの体は黒いとも言えない。カラスの羽は構造色。青や紫の艶もある。見る角度によって玉名のように艶が変化する。
カラスは外見だけではオスかメスか分かりにくい。しかし、カラス同士では互いの性は分かっている。
カラスの一生がどれくらいなのか、実は判明していない。カラスは、2歳以上になると、年齢不詳になる。2歳までは口のなかをのぞくと0歳、1歳、2歳以上というのが分かる。それ以上になると無理。野生だとおそらく10年くらいだろう…ということ。
カラスが人間を襲うのは、子育て中、子どもを守るため。まず、予告する。警戒の鳴き声は、「アッアッアッ」と、短く強い繰り返し。警戒の度合いが増すと、「アッ」の1回が短くなって、回数が増える。警告は、威嚇だ。「ガーガー」という長めの濁った低い声。「それ以上、近づくな」というメッセージ。攻撃は、人間の後頭部への蹴り。死角から飛来する。カラスは人間が怖いのだ。カラスは、うしろから人間の死角で、後頭部に蹴りを入れようとするので、バンザイのポーズ、両手をまっすぐ上にあげると、カラスは襲ってこなくなる。
カラス肉を食べさせてくれるフランス料理店が長野にあるそうです。カラスの肉は、高タンパク、低脂肪、低コレステロールのうえ、鉄分とタウリンが豊富。これほど栄養価の高い肉はない。それでも…、私は、なんだか食べたくはありません。ところが、日本でも昔はカラスを食べていたそうです。韓国ではカラスは滋養強壮の漢方薬の原料にしているとのこと。ふうん、薬ですか…。
カラスは悪賢い鳥だという定評がありますが、この本によると、カラスにも当然ながら個性があって、みんながみんな悪賢いわけでもないそうです。経験と警戒心のないカラスだっている。
ともかく集団で攻撃されないように早めに対処することを著者は勧めています。
その対処法は、一つの方法は効果がなくなったら、そのまま放置せずに引っ込めて、代わりの新手をやってみること。それを繰り返すことだそうです。あきらめてはいけないのです。そして、この本は、今のところ、永久的に効果のあるカラス撃退法は見つかっていないということです。それでも一定期間は有効なカラス対処法は試みられていて、それなりに効果をあげているというのです。
カラスをワナで捕まえるのは難しいし、山中ならともかく都会で銃砲をぶっ放して退治することはできません。アメリカでは、その点、カラス対策の点で日本よりすすんでいるようです。
カラス対策には今のところ絶対という策はない。手を替え品を替え、次から次へ、多種多様に、刺激を提示すること。カラスが慣れてしまって効果のなくなったグッズは、さっさと撤去してしまうこと。カラスは、ともかく人間の視線を気にしている。
カラスのペアは、1年に3~5個の卵を産む。そして、無事に巣立つのは2.5羽ほど。
ヒトがカラスを養っているのも同然。農作物の「残渣」と、残飯と生ゴミ。
カーと澄んだ声で鳴くのはハシブトカラス。ガーと濁った音を聴けるのはハシボソガラス。
ゴミ袋を黒く塗ったくらいでは、紫外線を認識できるカラスをだませない。
カラス除けに超音波は使えない。
カラスは、とてもきれい好き。
カラスの生態、鳴き声、カラス除けの方法の発明…。いろんなことが書かれている、カラスをめぐる楽しい新書です。
(2021年2月刊。税込935円)
 6月に受験したフランス語検定試験(1級)の結果を知らせるハガキが届きました。どうせ不合格なのですが、恐る恐るのぞいてみると、なんと47点。ショックでした。自己採点では55点だったのです。この差8点は、仏作文の不出来と、文章読解についての大甘な自己採点によるものでしょう。それでもめげずに毎朝、NHKのラジオ講座を聞き、CDで書きとりをしています。そして最近は、毎週1本の仏作文に挑戦中です。これをフランス人の先生に採点してもらいます。今度のテーマは、超富豪の宇宙旅行です。がんばります。

ハナバチがつくった美味しい食卓

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ソーア・ハンソン 、 出版 白揚社
ハナバチって、ハチとかミツバチとは違うのかなと疑問に思いました。訳者あとがきによると、そもそも日本語の「ハチ」にあたるコトバが英語にはないのだそうです。英語のbeeは、花の蜜や花粉を食べる「ハナバチ」だけを指すコトバ。beeは蜂(ハチ)ではない。また、肉食性のハチはwasp(カリバチ)と呼ぶ。日本語のハチは、英語にしたらbees and waspsになる。
ええっ、そ、そうなんですか…。こんなに人間に身近な存在なのに、よく分かっていないなんて、不思議です。
ハナバチの行動は、今でもほとんど分かっていない。
紀元前3000年ころまでに、古代エジプト人は養蜂術を確立していた。ミツバチを長い陶製の筒で飼育して、作物の栽培や野生の植物の開花期に合わせてナイル川を上り下りしていた。今でも、ほとんどすべての作物や野生の植物はハナバチに全面的に頼っている。
ハナバチは白亜紀中期にいたアナバチ科の祖先から進化した菜食主義者である。
ハナバチの身体構造には、まったく無駄がなく、見事なまでに合理的だ。
ハナバチの触角は飛行中の姿勢に影響を支えたり、地球の磁場に反応したり、花が放つかすかな静電気を感知したりする。左右の触角はほとんどわずかしか離れていないが、その程度の間隔でも、左右官の微小な密度の差、つまり匂いの方角を示す小さな感覚勾配を察知するのに十分だ。ハナバチは、1キロ先にある花から漂ってくる香りを追跡できる能力をもっている。
ハナバチは紫外線も見えるので、花弁には、ヒトには見えないけれど、ハナバチを惹きつける言葉(絵)がはっきり書かれていることを見分ける。
ほとんどのハナバチは、めったに刺さない。オスバチは針をもっていないので刺せない。刺すのはメスだけ。
北アメリカの養蜂家は、その所有している巣の30%以上を毎年失うという状況が今に続いている。その明確な原因は今日に至るも確定していない。ただ、2006年に急増し、今は減少はしている。
ネオニコチノイド系殺虫剤がハナバチに良くないことは明らか。
ネオニクスは、野生のマルハナバチや単独性のハナバチにも悪影響を及ぼしているのは確かな証拠がいる。
この本の最後に登場してくる次のフレーズは衝撃的です。
「人間なんかいなくても世界は回る。でも、ハナバチがいないと世界は回らない」
自称「万物の霊長」も片なしですね…。私の知らなかった話が次々に登場してきます。
(2021年3月刊。税込2970円)

虫は人の鏡、擬態の解剖学

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 養老 孟司 、海野 和男 、 出版 毎日新聞出版
虫屋の著者と虫写真の専門家による画期的な本です。なぜ、虫が面白いか…。なにより形と色。そして、その多様性だ。虫は面白い。見ているだけで退屈しない。いろいろ見ていると、しだいに区別がつくようになる。
擬態にはじめて気がついたのは、ダーウィンと同世代のイギリス人のベイツ。アマゾンで昆虫を採集していて気がついた。
派手で有毒な虫が食われにくいので繁栄する。すると、派手であっても毒のない虫までもが食われにくくなる。これも一種の擬態。
虫の世界では、年中、「トラが出る」。ふだん、すなおに生きているときには、べつにトラ模様ではない。しかし、たとえば羽を開くと、なんのことわりもなしに、だしぬけにトラ模様が出現する。ふだんはなにげない顔つきをしていて、なにかの拍子に「ワッ」と他人を脅かす。同じように、突然、目玉を出す虫がいる。それがいいのだ。
人間には、クモ嫌いとヘビ嫌いがいる。私は、ヘビ嫌いです。庭に長いヒモ状のものが落ちているだけでもダメです。ところが、モグラのいるわが家の庭には、ずっとずっと歴代ヘビが棲みついています。何年も前のこと、ヒマワリ畑になっている一角で、ヘビがぶら下がって昼寝をしているのを、雑草を抜いていた家人が上を見上げて気がついて腰を抜かしたということもありました。ヘビの抜け殻を、ときどき庭のあちこちで見かけますので、ヘビが生息しているのは間違いありません。
運動のための必要最小限の装置をエネルギーももっている。運動と栄養という二つの条件を、二つの細胞がどちらかに分担することが有利。なので、一方は運動に専門化し、他方は栄養に専門化した。それが精子と卵子だ。
虫によっては、親が子どもの世話をする。コオイムシは、雄の背中に雌が卵をうみつける。
ハサミムシは、親は卵を保護し、かえった幼虫を見張り、ついには子どもに食われてしまう。親の鑑(かがみ)だ。オーストラリアのゴキブリのうちには、子どもを養育するものがいる。種によっては腹に腺があって、その分泌液を子どもがなめる。哺乳しているのと同じ。
虫、ムシ、むし、決して無視できない生きものたちの生きざまを知ることができます。
(2021年2月刊。税込2420円)

こねこのタケシ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 阿見 みどり、わたなべ あきお 、 出版 銀の鈴社
南極に日本の子猫が渡って生活していた実話が絵本になっています。
1958年(昭和33年)の正月を南極で迎えた第一次越冬隊11人とともに子猫のタケシがいたのでした。
そして、もちろん、あの犬ぞり用のカラフト犬15頭もいました。放置され、翌年、奇跡的にも生きているのが判明したタロ・ジロをふくめた15頭です。
昭和基地で零下30度の寒さにも慣れたタケシの写真があります。カラフト犬とも仲良くなり、一緒に食事もしていました。
そのほか、越冬隊はカナリヤも連れていっていたようです。
そして、第二次越冬隊に引き継ぐはずだったのに、悪天候のため「宗谷」が接近できず、第一次越冬隊はカラフト犬たちを鎖につないで放置したまま「宋谷」に撤収して日本に帰国したのでした。
タケシは幸い隊員に連れて帰ってもらいました。日本に戻って1週間ほどして姿を消してしまったそうです。そんな子猫のタケシの南極での生活が絵本になっています。
タケシは昭和基地に閉じ込められた越冬隊員の心をなごませるペットの役目を立派に果たしたのでした。
それにしてもタロ・ジロもすごいですよね。自力で南極の冬を過ごしたのですから…。
(2019年8月刊。税込1650円)

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