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カテゴリー: 生物

ダニが刺したら穴2つは本当か?

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 島野 智之 、 出版 風濤社
ダニについて書かれた本です。本のオビには世にも美しいダニの電子顕微鏡写真を多数掲載とあり、実際、その見事にグロテスクかつ美しいダニの姿がとらえられています。
私は自然豊かな田園地帯に住んでいますので、夜になると窓にヤモリが張りついていますし、すぐ近くをタヌキが夜だけでなく、昼間、堂々(悠々)と闊歩している姿を見ることができます。そして楽しみの庭仕事をすると、腰が痛くなるばかりでなく、腕やら脚を何かにかまれて発赤し、痒(かゆ)みを覚えてしまいます。大自然の近くで生活すると、そんな苦労がつきまとうことになります。それはさておき、ダニの話に戻ります。
ダニは世界に5万種、日本には2000種いる。血を吸うマダニのようなダニは日本には20種類ほどしかいない。多くのダニは人間には被害を与えることなく、人間とは関係のない自然の中で暮らしている。人間の血を吸うダニ種は、世界中にいるダニの1~2%でしかない。
たとえば、アナタカラダニは花粉食であって、人間の血は吸わない。そもそも、その口器は人間をかめるような構造になっていない。また、このカベアナタカラダニにはオスがおらず、メスがメスを産む単為生殖。
ダニは、熱帯はもちろん、南極大陸から北極圏まで、地球上のあらゆる場所に生殖している。高山から海岸そして7000メートルの深海底にまで生活している。
ハモリダニは、60度の熱にも耐えられる。
身体の大きさを抜きにして、ササラダニは、かの凶暴で名高いティラノサウルスの6倍から10倍ほどアゴの力がくわえているとのこと。
島には、たくさんのダニがまとわりついている。ダニは風で吹きとばされる。
マダニは、光、酪酸、体温という3つの感覚がまだ残っている、
毎日毎日、ダニたちを研究対象にしている学者って、本当に大変ですよね。本のタイトルの疑問の答えは、本当ではないということのようです。
(2021年6月刊。税込1980円)

家は生態系

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ロブ・ダン 、 出版 白揚社
人間のすむ家から、20万種の生物が見つかっている。いやはや、すごい数です。その4分の3は、ホコリ、人体、水、食品、および腸内で見つかった細菌。4分の1は真菌。残りは節足動物、植物、その他。
人間が家の中を歩きまわると、どんな人でも1日に5000万個の皮膚断片(鱗屑、りんせつ)が身体からはがれ落ちている。そして、空中を漂う鱗屑一つひとつに数千個の細菌がすんでいて、それを食べている。
どんな人の手も、実は手だけでなく、鼻、へそ、肺、腸および体表面のすべてが、微生物叢(そう)で覆われている。
手を洗って除去されるのは、手にくっついたばかりでまだ定着していない微生物だけ。
チャバネゴキブリは、屋内の人間が暮らしている場所に限って、頑強で多産。そして、人間が好むような食物を好む。人間と同じく、一匹で孤立して暮らすのは苦手だ。
病原体の媒介という点では、イエバエはチャバネゴキブリをはるかに上回っている。下痢を起こす病原体を運んだりして、年間50万人をこえる死亡に関与している。
この本は、ゴキブリ駆除剤がきかなくなった理由を突きとめるべく、ゴキブリの口器にある味覚感覚毛の一本一本に電極を接続して感覚ニューロンの応答を調べるという実験を3年以上にわたって2000匹のゴキブリについて繰り返した日本人研究者も紹介しています。勝又(和田)綾子という女性です。すごい、ですね…。こんな地道な実験をする学者のおかげで毎日の安全・快適な生活が保持されているのですよね。感謝、感謝です。
(2021年6月刊。税込2970円)

隣のボノボ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 坂巻 哲也 、 出版 京都大学学術出版会
ボノボは、アフリカ中央部のコンゴ民主共和国の森林にすむ。体長80センチほどで、体重は35キロ以下。コンゴ盆地に生息し、ゴリラやチンパンジーとはすみ分けている。
肌は黒い。ボノボの声は鳥のように甲高く、ピャーピャーと叫びあう。
地面を歩くときは、手の平を地につけず、指の背を地面につけるナックルウォークをする。
樹上では、手と足の両方で枝を握る。ヒトにはまねができない。
ボノボはメスを中心として1年を通して集まりがよい。強さを示すデイスプレイを若いオスがよくするが、そんなオスにもメスはまったく動じない。あまりにうるさいオスがいると、子持ちのメスたちが束になってオスを追い払ってしまう。母親は大人になった息子のサポートを欠かさない。
ボノボのすむ森には、村人たちもふつうに生活している。両者は平和的に共存している。
著者は2007年からコンゴでボノボの調査を始めた。その前は、タンザニアでチンパンジーの調査をしていた(1997年から)。
ボノボの調査のためには、そばにいることに慣れてもらう必要がある。その存在を無視してくれるほど、気にしなってもらうこと。いやあ、そのためには、時間がかかることでしょうね…。
著者はボノボの調査のため、朝3時に起き、4時ころ朝食をとって、弁当をつくって暗いうちに出かける。ボノボの寝ているところに朝6時前には着く。いやはや、まだ森の中は暗いんでしょう…。大変ですね。
ボノボは、顔に毛が生えていないので、表情の動きがわかりやすい。それでもヒトほどには、表情をコミュニケーションには使わない。
ボノボの脳みそはヒトの3分の1の大きさ。
ボノボを個体識別する。性と成長段階を確認し、メスなら幼子を確認する。そして、身体的特徴を見つける。
年配のメスがおいしいそうな果実をかかえ、その周りでコドモがおねだりする。オトナがおねだりすることもある。じっとのぞき込むようにして、すぐ近くに立つのは、物をねだるときのしぐさ。気づいていなかのように目をあわせないのは、簡単に分けてやりたくないときのしぐさ。
ボノボのメスどうしは、日に何回か「ホカホカ」をする。これから採食をはじめようとする前。メスどうしが正面から抱きあい、お互いの性皮をこすりあわせる。気持ちよさそうにしている。
ボノボのメスは、生まれた集団で一生を過ごし、メスは思春期を迎えて、お年ごろになると、生まれた集団を出て、よその集団へ移る。子育てすると、その後は集団を移ることなく、年齢を重ねていく。出産間隔は4年から5年ほど。
ボノボにとって、交尾には繁殖のためとは限らない役割がある。
ボノボの集団の出会いは平和的なもので、この出会いがないとメスは移籍しない。メスは、その後、数年にわたって所属集団が安定せず、いくつかの集団を渡り歩く。
ボノボは好奇心が旺盛で、人間を観察しにやって来る。
メスたちは、出自集団を異にするにもかかわらず、よく一緒にして、毛づくろいをして、見るからに仲がよい。
オスは、オトナになっても母親との結びつきが強く、多くの個体が分散するときも、母親と一緒にいることがほとんどだ。
ボノボには子殺しはない。これはチンパンジーとは異なる。
ボノボは、現在、2万頭以下でしかなく、近い将来、絶滅するとみられている。密猟と生息地の減少、そして病気の感染だ。
いやあ、森の中での観察って、本当に大変でしょうね。その苦労をしのびつつ、ボノボの生態、その平和的な生き方に学びたいものだと思いながら読了しました。とても、興味深い本です。
(2021年8月刊。税込2420円)

昆虫学者の目のツケドコロ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 井出 竜也 、 出版 ベレ出版
昆虫学者って、昆虫との一期一会(いちごいちえ)の出会いを大切にしている人のこと。
ふーん、そうなんですね…。
空をヒラヒラと舞うように飛ぶチョウは幼虫のころはイモムシ。それが5回も脱皮して、さなぎとなったあと、空に飛び出すのですから、本当に不思議です。
完全変態のチョウは、イモムシ時代と生活スタイルがまるで違っている。口の形まで変化している。イモムシの口は鋭い歯のある一対のあごがついている。葉っぱを上手にかじりとるため。このイモムシは、どんな植物の上にでもいるというのではない。ナミアゲハのメスは、生まれてくる子ども(イモムシ)が困らないように、卵を産みつけるミカンの木を探し出している。
では、どうやって探すのか。眼なのか、鼻なのか…。ナミアゲハは色を見分けられる。しかし、決め手は舌。味が決め手だ。
植物を食べる昆虫の多くは、単色性や狭食性。植物なら何でも、どんなものでも…というのではない。そして、食べる植物の部位まで限定されている。
100万種いる昆虫の半数以上は、植物を食べている。なので、昆虫を知るためには、まず植物を知る必要がある。
ナナホシテントウやナミテントウは肉食性。カイガラムシなどの害虫を食べるので、畑づくりの頼れる味方だ。うどん粉病をひきおこすカビを食べるキイロテントウもいる。
アリは世界に1万種以上、日本には280種以上が生息している。アリはハチの仲間で、シロアリはゴキブリに近い。アリは基本的に肉食性。アリ植物というのは、自分の体内にアリが居住できる空間を用意し、アリを住まわせている。
ハチは15万種ほどもいて、その半数以上は寄生バチ。多くの寄生者にとって、寄生相手を見つけだす重要な手がかりとなるのは香りだ。
ノミは、れっきとした昆虫。ノミの足は6本、ダニは足が8本(ただし、幼虫は6本)。世界には1800種のノミがいる。シラミも昆虫だ。
日本のホタルでも、西日本と東日本では光る間隔が違っているし、遺伝子レベルでも違いが分かる。同じゲンジボタルであっても、性質が異なるし、外来昆虫を持ち込んだのと同じ。いろいろ混ぜこぜしてはいけないということなんですね。
昆虫の写真がたくさんあって、昔の昆虫少年にとって、とても楽しい本でした。
(2020年5月刊。税込2090円)

イルカと心は通じるか

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 村山 司 、 出版 新潮新書
著者は動物が苦手。船に弱い。船に乗ると、必ず船酔いする。飛行機だって怖い。それなのに、著者はイルカの研究者。なぜ…。高校1年生のとき、テレビでたまたま「イルカの日」(1973年)という映画をみてしまったことから…。
イルカの脳は大きくて重い。イルカの能はヒト並みの重さがある。ヒトの脳は1400グラム。バンドウイルカは1500グラム。イルカの脳の表面にあるシワは、ヒト並みくらい、たくさんある。イルカの神経細胞の数は、100~200億個。これは、ヒトのそれが140億個なのより多い。
イルカたちは、狩りをするとき互いに協力したり、別の場所で練習してから本番の狩りにのぞんだり、オトリを使ったり、待ち伏せのような行動もする。また、イルカ同士が同盟を結んだり、母イルカに代わって乳母役をするイルカもいる。
紀元前5000年前の壁画にクジラが描かれている(ノルウェー)。そして、紀元前3000年ころの壁画にイルカが描かれている(同じくノルウェー)。
古代ギリシャの哲学者アリストテレスはイルカが哺乳類であること、温血動物であることを知っていた。いったい、どうやって知ったのでしょうか…。
クジラもイルカも俗称で定義も違い、明確ではない。いずれも、祖先は陸上で四足歩行をしていた肉食動物だった。そして、祖先は偶蹄類のカバに近いことが判明している。
サメは魚類で、尾ビレが縦になっている。イルカの胸ビレの中には5本の指の骨がある。後肢は退化してしまったが、その名残の骨は、今でもイルカの体内には存在している。そして、尾ビレは水平についている。この尾ビレは、皮膚が肥厚したもので、陸に棲んでいたころの尾が変化したもの。
イルカが水棲生活して得た強力な能力は聴覚。イルカは、エコーロケーションという能力をもっている。水中は陸上より速く、遠くまで音が届く。
イルカは遊びが好き。イルカだって、練習しているとき、分かればうれしいに違いない。イルカは笑わない。顔には神経が少ない。
イルカが、エサをくれたりケアしてくれるトレーナーを、シルエットだけでなく、歩き方、足音のパターン、そして声などを総合して認識している。
イルカは勉強したら賢くなるし、イルカは、ほめられたら伸びる。7ヶ月たっても、ほとんど間違えることなく、覚えている。
シロイルカのナックは、聞こえた音をマネすることができる。ナックは、こちらがナックに向かって音を発したり、語りかけたときだけマネして返してくる。つまり文脈を理解して模倣している。オウムや九官鳥のように、誰もいないところでスナックがコトバを発することはない。そこに違いがある。
シロイルカのナックは、1988年にカナダからやって来た。少し気が強いところもあるが、根がまじめで、曲がったことが嫌いな性格。
いやあ、根がまじめだとか、曲がったことが嫌いだなんて、どうして分かるのでしょうか…、不思議です。イルカの生態をさらに少し知ることができました。
(2021年9月刊。税込858円)

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