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カテゴリー: 生物

ニュースなカラス観察奮闘記

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 樋口 広芳 、 出版 文一総合出版
私と同世代、団塊世代の鳥類学者がニュースに登場してくるカラスをじっくり観察したレポート集です。とても面白くて、車中で読みはじめて、いつのまにか終点に到着していました。もうちょっとでしたので、喫茶店に入ってついに読了。
カラスの観察や研究を続けて50年近くになるとのこと。私も同じく弁護士生活が50年近くになり、人間観察を続けています。
ハシボソガラスは「ガアー、ガアー」とにごった声で鳴き、地上では両足を交互に出して歩く。ハシブトガラスは、「カアー、カアー」と澄んだ声で鳴く。地上では両足をそろえてホッピングすることが多い。ハシブトのほうがハシボソよりやや大きく、くちばしが太い。ハシボソは農村地帯、ハシブトは森林や大都市にすむ。
横浜の公園の水飲み場で、カラスが栓を回して水を飲んでいた。よく観察すると、一対のカラスのうちのメスだけが栓を回し、オスのほうはできない。しかも、水を飲むときには栓を少し回し、水浴びするときには大きく回している。目的に応じて栓の回し方と出す水の量を変えている。うむむ、なんとなんと、すごーい。
カラスはオスもメスも同じように黒いけれど、メスのほうが少し小さく、また、卵を暖める抱卵はメスしかない。それで、メスが栓を回していることを確認できた。なーるほど、ですね。
カラスのつがいの2羽は、いつも互いに見える範囲にいて、しばしば一緒になる。
公園にポテトチップスが落ちていると、水飲み場にもっていって、水に浸してやわらかくなったのを食べる。ちなみに、カラスは栓を回して水を飲んだり、水浴びするけれど、終わって栓を元に戻すことはしない。公園なので、気がついた人間が栓を閉める。
路上にクルミを置いて車にひかせてクルミを割ってもらって食べるカラスがいる。これには車にひかれない工夫も必要になる。勇気というか度胸が必要。かしこさと度胸をあわせもった個体だけが車の利用を可能とする。
線路の置き石事件の犯人はカラスだった。なぜ、そんなことをするのか…。カラスは手にした食料を隠しておく(貯食)習性がある。線路の砂利はもらったパンを隠しておくのに都合がよい。目の前の小石が邪魔なので、ひょっとつまんで線路に置くということ。
石齢とか和ろうそくをカラスが持ち去るのは、石齢や和ろうそくにカラスの大好物の油脂分が含まれているから。和ろうそくに火がついていても気にせず、炎の下でとろける熱い蝋(ろう)をなめとる。ハシブトガラスのくちばしは肉切り包丁のようなもので、スパッと和ろうそくを切りとってしまう。
カラスは独特の生き方をしている。型にはまらない、きわめて柔軟性に富んだ生き方だ。カラスは何でも屋、ジェネラリストとしての道を生きている。
人への攻撃は、カラスの繁殖時期である5月と6月に起きる。これは主として都市にすむハシブトガラスによるもの。
カラスの知能は高い。特定の人の顔を覚えてしまう。カラスの大脳全体の神経細胞は2億3000万。これに対してハトは1800万ほどしかない。カラスの大脳は、すばらしくよく発達している。
わが家の周囲のゴミを狙ってやってくるカラスは、ボソかブトか、今度こそたしかめてみましょう。
(2021年11月刊。税込1760円)

菌類が世界を救う

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 マーリン・シェルドレイク 、 出版 河出書房新社
菌類はどこにでもいるが、なかなか気づかない。菌類の90%以上の種類は未確認だ。知れば知るほど、菌類は、さらに分からなくなる。
植物は菌類の助けを借りて5億年前に陸に上がった。植物が独自の根を進化させるまでの数千万年間、菌類は植物の根の役目を果たした。今日では、植物の90%以上が菌根菌に依存している。
キノコは胞子を拡散する多様な手段の一つにすぎない。菌類の大多数は、キノコに頼らず胞子を放出する。
菌根は1年で50メガトン、これは50万頭のシロナガスクジラに匹敵する、におよぶ胞子をつくる。
世界には220万種から380万種の菌類がいる。現状は、菌類全体のわずか6%しか発見されていない。
人間の脳は数百万種の色彩を区別し、耳は50万種の音を聞き分ける。ところが、鼻は数兆種の匂いをかぎ分ける。ええっ、ホ、ホントでしょうか…。人間の鼻は、1立方センチあたり3万4千個の分子という低濃度の化合物でも嗅ぎ分けられる。この濃度は、2万個のオリンピック用水泳プールの中の1滴の水に匹敵する。
トリュフは栽培できない。マツタケと同じく、トリュフは収穫してから2日から3日以内に新鮮なまま客の皿にのせなくてはならない。トリュフの香りは、生きて代謝している活性プロセスでしかつくれない。トリュフの香りは、胞子の成熟とともに強力になり、細胞が死ぬと失われる。トリュフは乾燥させて後日食べることはできない。
菌類は、高速データの伝達に電気信号を使える。
菌糸体は脳のような現象だ。植物は大気中から得た炭素の30%を菌類パートナーに与える。菌根菌は、植物が必要とする窒素の80%、リンについては100%を与えることができる。
菌糸体は土壌をまとめる粘り気のある生きた継ぎ目だ。菌類を除去すると、土壌は洗い流されてしまう。
人類にとってもっとも親しみ深い菌類は酵母だ。酵母は、人間の皮膚の上、肺の中、消化器官系に棲息し、あらゆる穴の内面にいる。人類は、はるか昔から酒づくりに発酵を利用してきたと思われる。酵母は、糖がアルコールに変わるプロセスにかかわる。
キノコ、カビ、酵母は本当に人間の生活に欠かせないものだということがよく分かる本でした。
(2022年1月刊。税込3190円)

深層サメ学

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 佐藤 圭一 ・ 冨田 武照 、 出版 産業編集センター
世界にいるサメは553種。1990年代には300種と言われていたので、200種以上も増えた。
サメは、二つの大きなグループに分けられる。その一が、ネズミザメ上目で、もう一つがツノザメ上目。ジンベイザメやホホジロザメは、ネズミザメ上目に入る。
ところが、どちらのサメも深海性の種が多数派を占めている。というか、サメの半数以上の種が深海を主なすみかとしている。
深海は、環境変化が小さいので、エサは少ないが、安定してすみ続けられるところ。
フカヒレは、サメのヒレから皮などを取り除き、内部の軟骨を乾燥させたもの。サメの骨格は軟骨からできている。この軟骨とは、骨とは似て非なるもので、その成分も作られる過程もまったく異なる。
サメが、骨をまだ進化させていない原始的な魚なのか、それとも骨をつくることをやめてしまった異端児なのか、まだ決着がついていない。
メガマウスザメは、全長7メートル以上になる巨大。しかし、プランクトンを主食とするため、歯がとても小さい。
ほとんどのサメが、オスよりメスのほうが大型化する。
オンデンザメは、長寿であり、成熟年齢は150歳ころ。うひゃあ、こ、これは驚きます。ジンベエザメは人間より長寿で、100年以上生きるだろう。
サメのペニスは2本ある。
サメの歯は、何度でも生え変わる。1ヶ月で歯を使い捨てしている。そして、歯を捨てないで、体内にとっておくサメもいるようだ。
泳ぐとき身体を60度ほど傾けていて、それを5~10分で左右の傾きを入れかえている。これが楽に泳ぐコツのようだ。
サメのなかには、みずから発行物質を保持して、光るタイプのサメもいる。
サメの表面には、非常に小さなウロコがびっしりと覆っている。そして、ウロコの表面に数本の溝が並んでいて、遊泳時の水の抵抗を減らしている。
ジンベエザメは、目にまぶたをもたず、ウロコが目を守っている。
サメは、繁殖終期が2年で、妊娠期間は1年ほど。赤ちゃんが胎内で共喰いしている説は疑わしい。赤ちゃんを3ヶ月間もかけて出産している。胎仔(たいし)が一度に生まれるとは限らない。
知られざるサメの不思議な生態が明らかにされています。著者の2人は、沖縄の美ら海水族館で働いている研究者です。もう久しく沖縄に行っていませんが、またぜひこの水族館に行って、巨大サメを拝ませていただきたいものです。
(2021年5月刊。税込1980円)
 朝、雨戸を開けるとチューリップの花が目の前に並んでいます。春到来を実感します。 
 団地の桜も見事に満開で、例年より少し早い気がします。
 ツバメが下の休耕田におりてエサを探しています。ロシアの侵略戦争のため、モノ不足が心配されはじめました。日本の食糧自給率の低さが本当に心配です。一刻も早く戦争を止めさせたいものです。
 庭に出てチューリップの写真をとっていると、ウグイスの、まだ下手な鳴き声が聞こえてきました。そして、目の前にジョウビタキがやってきて、別れの挨拶をしてくれました。
 春はツバメがやってきて、ジョウビタキが帰っていく季節です。ずいぶん日が長くなりました。これで花粉症の心配さえなければ申し分ないのですが…。世の中は、とかくままならないものです。

はぐれイワシの打ち明け話

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ビル・フランソワ 、 出版 光文社
不思議な本です。いえ、読んでいると不思議な気分にさせる本です。海中にいる魚たちがみんな話しているというのです。
海は音で満たされていて、人間が生きている空気中よりもずっとにぎやかだ。水は空気より密度が高いため振動しやすく、音がよく伝わる。水中では、音は光より遠くまで伝わり、弱まることなく何キロメートルも先まで届く。
クジラは2千キロメートルをこえる距離からデートに誘ったりしている。どんな海でも、クジラの声は海のなかの音のかなりの部分を占めている。冷水と温水の境界である水温躍層の境界でクジラの声は水平方向に何千キロメートルもまっすぐに伝わる。
本のタイトルにもなった有名な52ヘルツの声を出す孤独なクジラがいる。
人間がシャチやイルカと協力して狩りをしているという話もまた有名です。
人間に協力するイルカたちの集団は固有の文化的特徴を有している。このイルカたちは、自分たちの集団に属することを好み、他の集団には混ざらない。
人間に協力するイルカたちは固有のアクセントや鳴き声があって、それが人間と「話す」ことのない同種のイルカとの相違点になっている。
イワシのようにぎっしり詰められるという。たしかにイワシの群れの密度は、1立方メートルあたり15匹。ラッシュアワーに地下鉄の密度の4倍に相当する(これは日本の地下鉄ではなく、アメリカかフランス)。イワシたちは適切な距離と互いを尊重した速度を保つことができる。
イワシの群れでは、何百万匹いても、議論の必要はなく、自然に決断がなされる。そこにはリーダーも全体を支配する集団も、命令も存在しない。ひとまとまりになったイワシの群れは、一致団結して泳いでいる。
スウェーデン海軍は海中に不振な音を探知し、それはロシアの原潜によるものだと疑った。しかし、ロシア海軍は頑張に否認した。学者に調査してもらった結果、それはニシンの群れによる音だった。ニシンは内臓のガス(つまり、おなら)を一定のリズムで排出していて、それによって複雑な情報をやりとりしているのだ。
ザトウクジラは、子育てに長い時間をかけ、頻繁に会話している。ザトウクジラは、集団内で長年にわたって歌を伝承する。
絶えず泳ぎ続けているマグロは、毎日、自分の体重と同じ量のエサを食べなければいけない。マグロは魚のなかで唯一の恒温動物だ。
著者はまだ20代のフランスの物理学者です。流体力学を研究しているとのことですが、スピーチ大会で優勝するほど優れた話し手というわけですから、話の流れが実に見事で、驚くばかりの展開です。海中のにぎやかな会話を翻訳機にかけてぜひ聞いてみたいものです。
(2021年11月刊。税込2090円)
 日曜日、庭の一隅にフジバカマを植えました。インターネットで取り寄せたのです。これでアサギマダラ(チョウチョ)を呼び寄せるつもりです。さて、うまくいくでしょうか。
 庭のチューリップが一斉に咲きはじめました。赤・黄・白と、本当に華やかで、春到来を実感させてくれます。
 春の味覚、アスパラガスも地上に顔を出してくれるようになりました。これから楽しみです。
 日曜日は、午前・午後とロシアのウクライナ侵略戦争反対を街頭で訴える活動に参加しました。黙ってなんかおれません。映像を見るたびに心が痛みます。とりわけ子どもたちの心に大きなショックを与えていることが心配でなりません。
 道の両側に白いコブシの花がずらり、やっぱり平和が一番です。

身近な鳥のすごい事典

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 細川 博昭 、 出版 イースト新書Q
私にとってもっとも身近な鳥はスズメのはずでした。でも、今ではそうとは言えません。わが家には、2ヶ所、スズメの巣があり、その一つはトイレの窓のすぐ上にありました。トイレに入ると、スズメたちが巣を出入りし、また、子育てのときには、仔スズメの可愛らしい声を聞くことができました。今はまったく見かけません。それは、すぐ下の田圃が稲作をやめてからのことです。
スズメは森や林には住まない。また人間が住まなくなった空き家にはスズメも住まない。スズメは人間を恐れるのに…、です。
今や全国的にスズメは減っていて、20年前の2割しかいないとみられている。
「万葉集」にはスズメを詠んだ歌は一つもない。でも「枕草子」や「源氏物語」にはスズメの子を育てて楽しんでいる話が出ている。
わが家の庭によく来るのはヒヨドリです。けたたましく鳴き、自己主張の強い鳥です。平安時代の貴族たちは、ヒヨドリを飼っていて、持ち寄って優劣を競っていたとのこと。鳥に名前までつけていたというから驚きです。ヒヨドリは意外に賢く、好奇心も強い。そして、自分を大事にしてくれる人間を好きになることもある。
うちの庭のスモークツリーの木の上のほうにヒヨドリが巣をつくって子育てを始めたことがありました。あるとき、2羽のヒヨドリが常と違ってけたたましく鳴いて、それこそ騒動しはじめたので、どうしたのだろうとよく見ると、ヘビが木をするすると登っているのです。木の上の巣といっても大人の背よりはるかに高く3メートルほどもあります。よくぞ地上をはうヘビが見つけたものです。なんとか巣のなかのヒヨドリの仔を救ってやりたくて、ヘビを叩き落したのですが、仔のほうまで落ちてしまいました。そこで、鳥籠を買ってきて育てようとしたのですが、結局うまくいかず、哀れにもヘビのエサになってしまいました。鳥籠からいつのまにか逃げ出していたのです。それ以来、ヒヨドリが庭の木に巣をつくることはありません。
秋になると、モズが甲高い鳴き声で飛びまわります。モズは百舌鳥と書いて、たくさんの鳥の鳴き声を上手にまねるらしいのですが、私は聞いた覚えがありません。
モズのオスは、多くの多種のさえずりを正確に真似できるものはメスにもてるというのです。
ツバメがわが家に巣をつくったことは残念ながらありません。前年の巣に戻って、同じ場所で子育てするツバメが多いのは、コストが安くなるから。ゼロから始めると1週間以上かかる巣づくりが補修ですめば2日もかからない。
ツバメは群れをつくることなく、単独で東南アジアの島々やオーストラリア北部から4千キロも飛んでやって来る。体重わずか20グラムもない鳥が、こんなに飛べるなんて、世界の七不思議の一つでしょう…。しかも、眠りながらも海の上を飛行するなんて、すごいことですよね。
ゴミ出しはカラスとの知恵くらべです。わが家は生ゴミはコンポストに入れて肥料にしますので、外にゴミとして出すことはありません。ところが、生ゴミをそのままゴミ袋に入れて路上に放置すると、たちまちカラスの餌食(えじき)になってしまいます。
昔からカラスが嫌われていたのではなく、むしろ、長い時代の日本人はカラスに対して悪くは思っていなかった。「万葉集」のころカラスの声は「愛しい人がやってきた」と告げていると解されていた。
ハシボソガラスは、ガーガーと濁った声で鳴く。これに対して、カーカーと澄んだ声で鳴くハシブトガラスは、森のカラスで、両足をそろえてピョンピョンとホッピングする。
いやあ、鳥をよく研究している人がいるのですね。おかげで、よく分かります。
(2018年1月刊。税込968円)

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