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カテゴリー: 生物

ツバメのひみつ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 長谷川 克 、 出版 緑書房
ツバメは地球規模で減少している。日本でも、10年前に比べて10分の1になっている気がする。
いやあ、本当にそうですね。ただ、私のところでは、今日も巣立ったばかりの子ツバメが飛行の練習中のようでした。というのも、畑の上を少し飛んでは、地上におりてくるからです。
昔、ツバメが多いときには、ツバメ釣りをしていたとのこと。ええっ、何のため…。もちろん、食べるためです。ツバメって、肉があまりついていない気がしますし、カラスと同じで、あまり美味しくはなさそうですが…。東南アジアの国(どこでしょう…)では、毎年10万羽のツバメが食べれているとのこと。ええっ、ウッソーと叫びたくなります。
ツバメは、赤ちゃんのとき、巣のなかで殺しあいのケンカをすることはない。兄弟間で本気で突くこともない。
ツバメの親は、子ツバメが巣立ったあとも、子の世話をしばらくは続ける。巣立ち後の子育ては大事で、巣立ち後、長くエサをやっていると、巣立ちビナの生存率が高まる。
日本のツバメは東南アジアからはるばる飛行してやってくる。ツバメは、昼間に、数羽で「渡り」をする。春の渡りは、一気に渡る。そのスピードは、7日で3000キロメートル。
ツバメのメスは、オスが「ジージー」と鳴くと、ヒナの声と混同して、間違って近づく。
ツバメのメスは、夫以外のオスと浮気して、子をなしている。また、自分の夫が魅力に欠けるときほど、浮気をして子をつくる。
ヨーロッパのツバメでは婚外子は3割もいるのに、日本では、わずかに3%のみ。
ツバメは日本に帰ってくるのは50%。前年に連れ添った相手との婚姻再開は、なかなかむずかしく、65%は離婚している。
ツバメについて、さらにいろんなことを知ることができました。それにしても、ツバメが空を飛んでいるのをじっと眺めていると、気が休まりますよね…。
(2020年8月刊。税込1980円)

生命を守るしくみ・オートファジー

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 吉森 保 、 出版 講談社ブルーバックス新書
ヒトの人体の細胞は、以前は60兆個と言われていたが、今では37兆個とされている。組織によって細胞の大きさは異なっている。
病気になるということは、細胞が病気になるということ。
細胞1個の中に、生物を1個体つくるのにひつような遺伝情報がすべて入っている。
タンパク質は、すべて細胞の中でつくられる。細胞の中のタンパク質をオートファジーで分解してアミノ酸にする。そのアミノ酸を材料にタンパク質をつくる。1日あたり細胞の中にあるタンパク質の1~2%を分解し、できたアミノ酸を材料として新しいタンパク質をつくっている。細胞の中にあるものを分解して同じものをつくることで、何日かで細胞の中身がすべて入れ替わり、新しい状態が保たれる。このような、一見すると意味のなさそうに思える細胞の中身の入れ替えは、実は細胞を新しく健康な状態に保つために必須のこと。オートファジーが起きず、中身の入れ替えができないと、細胞の機能に不具合が出て病気になってしまう。すなわち、オートファジーの3つの主要な機能は、栄養源を確保すること、代謝回転、有害物の隔離除去。
カロリー制限は、ヒトを軽い飢餓状態に陥らせる。飢餓状態になると、細胞はオートファジーによって、自己の成分を分解して栄養源を確保する。つまり、カロリー制限時には、オートファジーが活性化している。なーるほど、そうなんですね。
寿命を決定するには、脳も関わっている。細胞には寿命がある。古い赤血球は4ヶ月、胃や腸の表面の上皮細胞は1日、血液中の赤血球は4ヶ月、骨の細胞は10年、バラバラだ。ところが、ほとんど入れ替わらず、生まれてからずっと使い続けている細胞もある。脳や心臓の細胞だ。
オートファジーは細胞の生存に欠かせない守護神のような存在であり、さまざまな疾患から守ってくれている。
こんなに大切なオートファジー研究をリードしているのは日本だというのです。やっぱり、今すぐには役に立つかどうか分からないような研究であっても、決して無視することなく自由にのびのび研究できるような環境って大切ですよね。いつもいつも目先の利益を追うだけでは大きな世の中の流れについていけなくなるのです。
よく分からないなりに、大切な研究だということだけは、しっかり認識できました。
(2022年1月刊。税込1100円)

変形菌

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 増井 真那 、 出版 集英社
手にとって、じっくり眺める価値のある写真集です。撮ったのは弱冠20歳の世界的変形菌研究者。なにしろ5歳のときに変形菌に出会い、それ以来15年、変形菌を研究し続けて、今や第一人者になったというのです。「三つ子の魂…」と言いますが、5歳からの15年間で、これだけ究めることができたのですから、人間の能力の素晴らしさも実感させられます。
前に、このコーナーでも紹介した『世界は変形菌でいっぱいだ』(朝日出版社)に続く2冊目。現在、20歳の著者は慶應義塾大学先端生命科学研究室に所属して研究を続けているとのこと。ぜひ、続けてください。応援しています。
変形菌は、その変わった見かけや生態のため、過去には動物の仲間とされたり、植物の仲間とされていた。20世紀後半まで、「菌類」とみられていた。今日では、いずれとも異なるグループ(アメーボゾア)に属していると考えられている。
変形菌の変形体は、巨大な単細胞生物。大きさ数ミリから1メートルをこえていても、たったひとつの細胞から成る。
2個以上の個体がくっついて、1個体になって生きていくこともできる。ただし、その融合相手は誰でもいいわけではなく、同種といえとも、変形体どうしがくっつくのは、本当に稀なこと。2個体の「自分」どうしなら、再びくっついてしまう。ただし、それには数時間もかかることがあった。この非接触による判断がなされたとき、変形体は自ら透明な粘液を発信していた。
変形体は、落ち葉たまり、腐った倒木や切株で暮らしていることが多い。
乾燥や低温にあうと、変形体は「菌核」と言われ、休眠状態に移行する。
高温・低温に耐え、飲まず食わずのまま何年間も無事に生きている。
あまりにも変わった生命体ですが、よく撮れた写真を眺めていると、この世の不思議を実感させられます。
(2021年12月刊。税込2200円)

動物行動学者、モモンガに怒られる

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 小林 朋道 、 出版 山と渓谷社
鳥取環境大学につとめ、先生シリーズ(築地書館)で有名な動物行動学者による、読んでためになる、面白い本です。
たとえば、ヒキガエルは脱皮する。その皮には重要な栄養分が含まれているので、ヒキガエルは自分の脱皮した皮を食べて栄養分を吸収する。また、脱皮には時間がかかるので、襲われたときに備えて、背中のイボから毒物質を分泌している。
ヤマカガシ(ヘビ)にちょっと咬まれたぐらいでは人間の体内に毒が侵入することはない。ヘビの奥のほうで深く咬まれたときに初めて毒が牙から体内に入ってくる。そして、この毒はヤマカガシが生産したものではなく、ヒキガエルが生産した毒をヤマカガシが利用している。
ヒキガエルは、ゴムでヤマカガシに似せてつくった「ヘビ」を見せても態度に変化はない。ところが、横棒と、その上に、傘の取っ手のような構造(逆丁字モデル)を示すと、「四つん這い」威嚇のポーズをする。この逆丁字モデルは、ヘビが獲物を捕食しようとするとき、鎌首をもたげたときの視覚的特徴と合致している。
タヌキの好物はアンパン。鶏肉よりアンパンが好き。その次に好きなものはミミズ。
タヌキは学習能力の高い哺乳類。人間の反応を理解して自分たちの行動を決め、うまく人里に溶け込んでいる。
たしかに、私の家は山里に近く、隣の空地の奥には雑木林があるので、そこから、ある朝、一匹のタヌキが悠然と出てきて、団地内を巡回したことがあり、本当にびっくりしました。
タヌキは、オスとメスが一生涯変えることのないつがいをつくる。メスが出産すると、オスは乳こそ出ないが、子どもの身体を舐めてやったり、腹の下に子どもを抱えこむように座って温めたり、こまごまと世話をする。
ヒトの女性は、物の配置を記憶する能力や言語を操作する能力が男性より優れている。
男性は女性に比べて早く動く物体を目で追ったり、遠くの細かいものを見分けることが得意である。女性は男性に比べて色の違いを見分ける能力が優れている。つまり、ヒトは男性と女性を含む集団として、植物を採集することと同時に動物を捕獲して食べることに適応している。
うむむ、やっぱり男女で役割分担はあるのですよね…。
(2022年5月刊。税込1925円)

火の山にすむゴリラ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 前川 貴行 、 出版 新日本出版社
ゴリラの顔って、本当に知性にあふれています。じっと何かを考えている様子なのです。
アフリカの赤道直下、標高4500メートルもある山にすむマウンテンゴリラの身近にいて、写真をとったのです。すごい写真です。
あるとき、赤ん坊を抱えた母ゴリラがすぐ目の前にあらわれたので、シャッターを切ったら、その母ゴリラに腕をつかまれたのでした。
「こんなに近くから写真なんか撮るんじゃないよ」
(すいません)。カメラをおろして、じっと固まっていると、母ゴリラは、(うん、分かってくれたなら、いいよ。もう、こんな近くから撮るなんて、無茶するなよ)と、腕を離してくれた。そこで、ゆっくり後ろに下がって、少し離れたところから再びカメラを向けてシャッターを切った。今度は、母ゴリラは怒ることもなく、黙って写真を撮らせてくれた。
ええっ、う、うそでしょう…。そんな怖い体験をしたんですね。ゴリラって、意外にも、心優しい生きものなんですよね…。「ターザン」映画でゴリラが凶暴な悪役を演じていますが、あれは人間の妄想でした。
そのマウンテンゴリラは、今や1000頭ほどで、絶滅する心配がある。熱帯雨林が人間の開発で切り開かれ、ゴリラのすめる森が少なくなった。戦争などのためゴリラを食べる人が増えた。病気がはやり、ゲリラが暇(ひま)つぶしにゴリラを射殺する。原因はいろいろです。
でも、ゴリラがすまない森は、まわりまわって人間だって都会で生活できなくなることにつながっています。たとえば、Co2の排出量が増える一方だったりして…。
群れをひきいるシルバーバック(オス)は、実は子煩悩(ぼんのう)で、仲間の面倒みもよい。ゴリラは、大人も子どももとても遊び好きで、争いは好まない。家族の絆(きずな)も固い。
ゴリラの赤ちゃんは2キロ弱で産まれてから人間の赤ちゃんより小さい。1歳までは母ゴリラが肌身離さず世話をし、母乳で育てる。1歳すぎると母ゴリラは赤ちゃんをときどきシルバーバックに預ける。預けられたシルバーバックは、積極的に赤ちゃんの面倒をみる。3歳すぎると、子どもゴリラは乳離れし、寝るときもシルバーバックのそばにいる。
子どもゴリラは、木やつるにのぼって遊ぶのが大好き。仲間と荒あらしく遊ぶこともある。
シルバーバックの周りにはいつだって子どもたちがいる。シルバーバックのほうも、子どもを嫌がらず、おだやかに優しく見守っている。
大判のすばらしい写真集です。ゴリラの表情が実に生き生きしていて、ついつい吸い込まれそうになりました。ゴリラと人間の共存は口でいうほど簡単ではありませんが、とても大切、いえ不可欠なのです。
(2022年5月刊。税込1870円)

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