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カテゴリー: 生物

クモの世界

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 浅間 茂 、 出版 中公新書
わが家には、本当にたくさんのクモがすみついています。たまに手のひらほどの大型のクモが室内を徘徊することがあり、そのときは室内ホーキで外に追い出します。芥川龍之介の「クモの糸」を読んでから、クモを殺すことは絶対にしません。
クモって、どんな生きものなのか、よくよく分かる新書です。
日本には1700種のクモがいて、半分は網を張り、残り半分は徘徊性。我が家のクモも、半々です。クモは世界中に5万種いて、南極大陸以外のすべての大陸に分布している。
クモは8本の脚をもつ。昆虫は6本脚。そして、クモは頭と胸が一つになっている。
クモの多くは、人間にとって毒液の毒性はほとんどない。
クモは糸を出すのが特徴。一生涯を通じて糸を出す。歩き回っているときも必ず糸を引いている。
クモは、地中性のクモから造網性のクモ、そして徘徊性のクモへ進化した。
地中性のクモは一般に長生きで、成体になるのに3年以上かかり、飼育下では9年以上という記録もある。
ジョロウグモは、オスは7回、メスは8回脱皮して、成体になる。オスが早く成体になって、脱皮中のメスと交尾する。
日本のカバキコマチグモは母グモが子グモに自分の体を与える。
うひゃあ、自分の体を子グモに食べさせる母グモがいるんですね…。
クモは、一般的に、メスよりオスが小さい。「ノミの夫婦」という言葉があるが、それよりはるかにオスは小さい。
徘徊性のクモは、視力がそれなりに優れている。造網性のクモの視力は、あまり良くない。
オオジョロウグモのメスは5センチほどもあり、網にかかった鳥やコウモリを捕食する。
クモは紫外線を利用する。クモは擬態する。刺激を与えると、一瞬で体色を変えるクモがいる。クモは変温動物。
クモが壁にへばりつけるのは、原子・分子間で生じる引力、ファンデルワース力による。
クモの糸には、粘着性のある糸とない糸がある。クモの糸の先に粘球がついている。
口から粘球を吐きかけて獲物を捕らえるクモがいる。
クモは、獲物にかみつき、牙の孔から毒液を出して注入し、麻痺させて動けなくする。そのあと消化液を注入して溶かし、半ば消化されたものを吸う。
一般にクモは肉食性で、何でも食べる。クモを専門に食べるクモもいる。
クモだけを専門に狙う狩りバチがいる。
このように、クモは生態系の中で、中間捕食者として、捕食者であり被食者でもあるという役割を果たしている。
コサラグモのオスは、魅惑的な分泌液をメスにプレゼントして、その間に交尾する。
アシナガグモのオスは、食べられないようにしてからメスと交尾する。
クモの糸は軽く、同じ太さでは鋼鉄以上の強さをもち、かつ、しなやか。今のところ、まだ、自然界のクモ糸を越えた人工クモ糸は合成されていない。前に、このコーナーで、クモの糸をより集めて、強い糸をつくったという実験結果を報告したことがあります。
クモの不思議な生態がぎっしり詰まった、カラー写真いっぱいの楽しい新書です。
(2022年4月刊。税込1100円)

ダマして生きのびる虫の擬態

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 海野 和男 、 出版 草思社
小さな大自然の驚異をたっぷり味わうことのできる写真集です。木の葉そっくりのコノハムシ。どうして、こんな色と形、模様ができたのか…。
昆虫が意思をもって擬態を発展させてきたとしか思えない。でも、昆虫自身は自分の姿を客観的に見ているはずがない。それなのに、どうして、こんな芸当ができるのか…。本当に不思議、フシギです。
昆虫の擬態と隠蔽の姿のオンパレード。何かの姿に「化けて」誰かをだましている。
団塊世代の著者は50年以上かけて、昆虫の擬態を観察し、撮影してきました。なので、写真もバッチリ、解説文もバッチリ。
木の葉に似せるにしても、色も形も異なっている。すると、昆虫のほうも、それにあわせていろんな葉の色や形にあわせている。
コノハムシのメスは木の葉にうまく擬態しているため、飛ぶことができない。すると、オスがメスのところにまで飛んでいかないといけない。なので、もちろんオスは飛べる。
著者が日本一すごい擬態の巧者としているのはムラサキシャチホコ。長野県や東北地方にフツーにいるガの仲間。必ず葉の上面にとまる。すると、光が上からあたって、丸まった枯れ葉のように見える。ところが、これは、実際には、翅が丸まっているのではなくて、たんに前翅と胸の模様の陰影によって立体的に見えているにすぎない。
ホシミスジは、おとりをつくって身を隠す。
マレーシアには、枯れ葉そっくりの彼はカマキリがいる。まさしく枯れ葉そのものです。そして、メスの葉が葉に似ている。それは卵をうむメスは重要なので、オスより上手になったのだろうと著者は推測しています。いやあ、ホントでしょうか…。
色や模様で捕食者を脅かす昆虫がいます。翅を開いたマレーシアのセンストビナフシは、まさしく扇子を開いた格好をしています。
バラの茎にいる昆虫は、バラのイバラまで形も色も似せます。
ハチでないのに、ハチに似せた生き物がこんなにもたくさんいるというのも驚きです。縞(しま)模様はハチの印なのです。
突然、目玉が出てくるヤママユガも、不気味そのものです。よくぞ、こんな色と形を思いつき、それを体現したものです。これも何か、誰かの意志のたまものなのでしょうか…。大自然はまさしく不思議だらけです。だから生きているって面白いのですよね。
(2022年6月刊。税込2640円)

魚食え!コノヤロー!!!

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 森田 釣竿 、 出版 時事通信社
個人経営の小さな魚屋が3年間で1万軒も減っているとのこと。たしかに、私の住む町でも、町の小さな魚屋がどんどん姿を消してしまいました。もうからないのと、仕事が大変なので、後継者がいないことによるのでしょう。
この本の著者も、母親は魚屋を子どもに継がせたくなかったとのこと。なので、美容師の資格をとったのでした。著者はミュージシャンでもありますが、それは魚を売るために音楽をやっているのです。
私は魚をさばいたことがありません。といっても、ウナギをさばいたことはあるのです。娘がバザー会場でウナギを釣りあげて自宅に持ち帰ってきたのです。ウナギを飼って育てたいというので、そんなことはできない。今からウナギをさばくから見ていなさいと言って、まな板に包丁を突き刺して始めました。子どものころ、叔父さんがウナギをさばいているのを、間近で何度もよく見ていましたから。その記憶だけで、さばきはじめました。小学校低学年の娘は泣きながら、じっと見ていました。そして、なんとか食べられるようにしたのです。大変でした。すると、娘も、「美味しいね、これ」と言って笑顔になって食べてくれました。
この本には、初心者が魚をさばくなら、いきなりデカい魚に挑戦したらいいと書いてあります。それは、なんと、あのカツオです。高知城近くの青空市で食べたカツオのタタキの美味しさを思い出しました。
この本によると、カツオは家庭用の包丁でも無理なくさばける魚で、さばきたての美味しさが分かりやすい魚だといいます。本当でしょうか…。
カツオのさばき方がカラー写真つきで親切に図解されています。うむむ、これならできそうかも…と思ってしまいます。
二枚におろし、三枚におろし、刺身をつくり、皮付きタタキをつくる。カツオのフライも美味しそうですよ。そして、なめろう丼にタタキというのは、思わずヨダレが出そうなほどです。
刺身はタレでガラッと味わいが変わるというので、たくさんのタレが紹介されています。いやあ、これはたまりませんね。いろいろ挑戦してみなければいけません。
そして、魚をさばいていると手にケガするとこもあるけれど、あまり気にするなという温かいアドバイスもあります。そうなんですよね。プロだって、たまにはケガすると言うのですからね…。
最後に、浦安巻きというのが紹介されています。海苔にご飯を乗っけて、そこに削りたてのカツオ節としょう油を乗せて太巻きとして巻くものです。チーズを入れるのもよし、とあります。
私は、チーズと梅干しを入れた太巻きを小学校から中学校まで、子どもたちの朝の朝食として提供していました。海苔巻きなので、子どもたちは家庭内をウロウロしながらでも食べられるのです。学校行く前の慌しい時間の朝食として最適でした。
魚屋さんの威勢のいい呼び込み声を聞いている気がしてくる本でした。
(2021年4月刊。税込1760円)

ツバメのひみつ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 長谷川 克 、 出版 緑書房
ツバメは地球規模で減少している。日本でも、10年前に比べて10分の1になっている気がする。
いやあ、本当にそうですね。ただ、私のところでは、今日も巣立ったばかりの子ツバメが飛行の練習中のようでした。というのも、畑の上を少し飛んでは、地上におりてくるからです。
昔、ツバメが多いときには、ツバメ釣りをしていたとのこと。ええっ、何のため…。もちろん、食べるためです。ツバメって、肉があまりついていない気がしますし、カラスと同じで、あまり美味しくはなさそうですが…。東南アジアの国(どこでしょう…)では、毎年10万羽のツバメが食べれているとのこと。ええっ、ウッソーと叫びたくなります。
ツバメは、赤ちゃんのとき、巣のなかで殺しあいのケンカをすることはない。兄弟間で本気で突くこともない。
ツバメの親は、子ツバメが巣立ったあとも、子の世話をしばらくは続ける。巣立ち後の子育ては大事で、巣立ち後、長くエサをやっていると、巣立ちビナの生存率が高まる。
日本のツバメは東南アジアからはるばる飛行してやってくる。ツバメは、昼間に、数羽で「渡り」をする。春の渡りは、一気に渡る。そのスピードは、7日で3000キロメートル。
ツバメのメスは、オスが「ジージー」と鳴くと、ヒナの声と混同して、間違って近づく。
ツバメのメスは、夫以外のオスと浮気して、子をなしている。また、自分の夫が魅力に欠けるときほど、浮気をして子をつくる。
ヨーロッパのツバメでは婚外子は3割もいるのに、日本では、わずかに3%のみ。
ツバメは日本に帰ってくるのは50%。前年に連れ添った相手との婚姻再開は、なかなかむずかしく、65%は離婚している。
ツバメについて、さらにいろんなことを知ることができました。それにしても、ツバメが空を飛んでいるのをじっと眺めていると、気が休まりますよね…。
(2020年8月刊。税込1980円)

生命を守るしくみ・オートファジー

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 吉森 保 、 出版 講談社ブルーバックス新書
ヒトの人体の細胞は、以前は60兆個と言われていたが、今では37兆個とされている。組織によって細胞の大きさは異なっている。
病気になるということは、細胞が病気になるということ。
細胞1個の中に、生物を1個体つくるのにひつような遺伝情報がすべて入っている。
タンパク質は、すべて細胞の中でつくられる。細胞の中のタンパク質をオートファジーで分解してアミノ酸にする。そのアミノ酸を材料にタンパク質をつくる。1日あたり細胞の中にあるタンパク質の1~2%を分解し、できたアミノ酸を材料として新しいタンパク質をつくっている。細胞の中にあるものを分解して同じものをつくることで、何日かで細胞の中身がすべて入れ替わり、新しい状態が保たれる。このような、一見すると意味のなさそうに思える細胞の中身の入れ替えは、実は細胞を新しく健康な状態に保つために必須のこと。オートファジーが起きず、中身の入れ替えができないと、細胞の機能に不具合が出て病気になってしまう。すなわち、オートファジーの3つの主要な機能は、栄養源を確保すること、代謝回転、有害物の隔離除去。
カロリー制限は、ヒトを軽い飢餓状態に陥らせる。飢餓状態になると、細胞はオートファジーによって、自己の成分を分解して栄養源を確保する。つまり、カロリー制限時には、オートファジーが活性化している。なーるほど、そうなんですね。
寿命を決定するには、脳も関わっている。細胞には寿命がある。古い赤血球は4ヶ月、胃や腸の表面の上皮細胞は1日、血液中の赤血球は4ヶ月、骨の細胞は10年、バラバラだ。ところが、ほとんど入れ替わらず、生まれてからずっと使い続けている細胞もある。脳や心臓の細胞だ。
オートファジーは細胞の生存に欠かせない守護神のような存在であり、さまざまな疾患から守ってくれている。
こんなに大切なオートファジー研究をリードしているのは日本だというのです。やっぱり、今すぐには役に立つかどうか分からないような研究であっても、決して無視することなく自由にのびのび研究できるような環境って大切ですよね。いつもいつも目先の利益を追うだけでは大きな世の中の流れについていけなくなるのです。
よく分からないなりに、大切な研究だということだけは、しっかり認識できました。
(2022年1月刊。税込1100円)

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