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カテゴリー: 生物

病原体の世界

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 旦部 幸啓 ・ 北川 善紀 、 出版 講談社ブルーバックス新書
 ウィルスは、生物の特徴の一つにあげられる「細胞構造」をもたない。ウィルスは他の生物とはまったく異なる独自の感染・増殖様式をもっている。宿主となる生物の細胞に侵入し、その機能をジャックして「ウィルス生産工場」に変えてしまう。ウィルスは一度に大量の子孫をつくり出す。
 ヒトの体には、いろいろなタイプの病原体や状況に対応できるよう複数の異なる仕組みが備わっていて、それらを組み合わせることで、防壁の一つを突破されても、別の防壁で食い止めるという「多段構え」になっている。
 日本では1899年から1926年までの間にペスト患者が2905人発生し、うち2420人が死んだ。その後は、北里柴三郎らの尽力によって国内発生はない。
 インフルエンザについて、平安時代の歴史書『日本三大実録』(862年)にあるのが最初。インフルエンザウイルスに感染すると、1~3日の潜伏期のあと、38度以上の発熱や全身倦怠感、頭痛、筋肉痛などの症状が現れる。その致死率は、世界平均で0.1%以下、日本では0.001%以下。ただし、患者が多数にのぼれば、決して軽視できない。
 最近、梅毒にひそかに流行しているようです。潜伏期があるので、まさか自分が梅毒だと思わないというケースが少なくない。それに、梅毒は百面相と呼ばれるほど、症状が多様。
 エイズは、これまで3200万人が死亡したと推定されている。結核、マラリアと並ぶ、世界三大感染症の一つ。しかし、今ではエイズの薬は、完全に治せなくても、進行を止めて一生発症させないようにすることができる。
 大腸菌の大部分は、非病原性の無害な腸内細菌。
 コロナウィルスは、2022年6月までの感染者が世界に5億4千万人をこえた(うち死亡者は633万人)。100年前のスペイン風邪に匹敵する。
 ワクチンを5回接種したのにコロナ陽性になった人が身近にいます。また、PCR検査が陰性だったので帰省してきた子どもからコロナをもらった家族もいます。まことにコロナ禍は厄介な存在です。いったい、いつになったら終わるのでしょうか…。
 それにしても岸田政権の「5類移行」はひどいものです。要するに、公費負担はやめる、あとは自己責任だというのです。軍事予算のほうは5年間で43兆円も使うというのに、国民の健康と生命を守るのは国の仕事ではないというのです。本当に許せない自民・公明政権です。黙って、投票所に行かなかったら、自公政権から殺されてしまいます。怒りの声を投票所に足を運んで一票であらわしましょう。
(2022年8月刊。税込1100円)

日本の高山植物

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 工藤 岳 、 出版 光文社新書
 高山植物の背丈が低いのは、高山環境が厳しいから。そりゃあ、そうですよね。
 高山植物に特有な葉の形状は冬の寒さに耐えるだけでなく、夏の強風や強い日射への防御とも関係している。なーるほど、です。アントシアニンをコーティングすることで、葉内細胞を紫外線の影響からガードしている。常線性の高山植物では若葉が緑色をしていないものも多い。赤い色の正体はアントシアニンという色素で、紫外線を吸収する作用がある。
十分に耐寒性を獲得した冬モードの植物では、マイナス196度の超低温にさらされても細胞が壊れずに生存している。
 高山環境で乾燥ストレスは日常的。
葉の表層に花がきれいなのは、花粉を運んでくれる動物を引き寄せるため。その証拠に風媒花には花弁がない。
 高山帯には、1年生植物がほとんどいない。
 多くの高山植物の受粉を支えているのは、ハエ類とハチ類。ハエ類は高山生態系でとても重要なポリネーター。高山植物を訪れる昆虫の6割はハエ類で、3~4割がハチ類。
 ハナアブはハナアブ科とハラハエ目の昆虫。マルハナバチは、ミツバチ科の昆虫。
 ニュージーランドの高山植物が地味で目立たないのは、ハナバチがいないことと関係している。優れた色覚能力をもったハナバチがいないから、カラフルな色の花が進化する必然性がなかった。その代わり、目立たない花たちは、テルペン系化学成分に由来する、かなり強い匂いを出す。それはハエをおびき寄せるため。
 蜜量が花によって違うのは、ポリネーターに長居させないため。
 ウコンウツキという低木の高山植物は、開花期間中に花の色が変わる。オレンジ色はポリネーターに蜜のありかを教えるが、赤色に変わると、ハチには見えなくなる。
 厳しい環境に生きる高山植物は、他家受粉を成功させるためのさまざまな方法を編み出してきた。
 北海道の大雪山では高山植物の生育期間は7月中旬から9月半ばまでの2ヶ月足らず。この間に、芽吹いて、成長し、花を咲かせて、実を結ばなくてはならない。残り10ヵ月間は、雪の下で冬眠している。
 マルハナバチは、ミツバチのようにコロニー(巣)をつくり、そこでは女王バチと働きバチが分業している。卵を産む女王、コロニー内で子育てをする働きバチ。蜜と花粉を集めてくる外勤の働きバチ。夏の短い高山帯では、コロニーが存在するのは、わずか2ヶ月足らずのみ。それ以外の季節は、女王バチだけが孤独に暮らしている。
 日本の高山植物相はベーリンジア起源のものが多い。極地植物は、オホーツク海の両脇の2つのルートをたどって北海道にたどり着いた。日本にいる高山植物は、山域によって移住してきた時期が異なるグループで構成されている。
 高山植物の研究というのは、夏も冬も高山に一人でのぼって、そこにテントを張って観察するということですよね。ヒグマの心配はないのでしょうか。一人でいることの孤独感にどうやって耐えられるのでしょうか…。学者になるって、本当に大変なことですよね。でも、そのおかげで、こうやって美しい高山植物の生態を居ながらに知ることができるわけです。感謝しかありません。
(2022年9月刊。税込1320円)

オスとは何で、メスとは何か?

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 諸橋 憲郎 、 出版 NHK出版新書
 性スペクトラムという目新しいコトバが登場します。いったい、何を言いたいのでしょうか…。
 生物のオスとメスとは、単純に二分化しているのではないというのです。生物はオスからメスへと連続する特性を有している。つまり、性スペクトラムとは、オスからメスへと連続する表現型として「性」をとらえるべきではないかという新しい考え方を意味したコトバです。
 ええっ、いったい何のことでしょうか…。
 エリマキシギ(小鳥)には、オスなのにメスのような格好したものがいる。40%ものオスがメス擬態型だ。
 トンボでは、メスに擬態するオスも、オスに擬態するメスもいる。
 魚類では性転換がよく見られる。オスだった個体がメスに転換したり、逆にメスだった個体がオスに転換したりする。
 オスとメスとでは、オスのほうがはるかに大きいゴリラもいれば、チョウチンアンコウではメスが大きく、オスは圧倒的に小さいうえに、やがてメスの身体に吸収されて、精巣だけがメスの身体に残る。
 シャチやクジラは、メスを中心に群れを形成する。群れを率いるのは、最年長のメス。
 すべての生物に共通する性差は、オスは精子をつくり、メスは卵子をつくること。
  ハダカデバネズミは、身体の大きい女王ネズミだけが発達した卵巣をもち、繁殖することが可能で、そのほかのメスは卵巣が発達しておらず、子どもは産めない。そして、女王ネズミが産んだ仔ネズミを一生懸命に育てる。女王ネズミは、自分の糞を働きネズミたちに食べさせる。自分の女性ホルモンを糞に混ぜて食べさせることによって、働きネズミを操っている。
 役に立たない爺ちゃんシャチは、婆ちゃんシャチより、20年から30年も短命で終わる。
 人間(ヒト)の身体を構築している臓器や器官は性を有している。肝臓も骨格筋も、脳も…、ほぼすべての臓器や器官はオスとメスとで異なっている。つまり、細胞が性をもっている。脳を構成する神経細胞が性をもっている。
 性は固定されたものではなく、柔軟に変化するという性質をもっている。
 ヒトの性を制御しているものの本体は、遺伝的制御である。
 いやあ、驚きました。目からウロコの本でした。
(2022年10月刊。税込1045円)

カヨと私

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 内澤 旬子 、 出版 本の雑誌社
 私にとっては衝撃的な本でした。小豆島でヤギを自宅そばで飼って暮らすというだけの本なのですが、ヤギをいうのが、こんなにプライドの高い、扱いにくい動物だなんて、まったく私の想像を超絶しました。
 著者の本『飼い喰い、三匹の豚とわたし』にも、大変な衝撃を受けましたが、それと同じほどの驚きです。前の本は3匹の豚を小さいころから自分の手で育て、ついにはその豚たちを食べてしまうという話でした。学校で子どもたちが仔豚を飼い、それが大きくなったとき、どうするのか、その豚を食べるのかどうか、教室で議論したという実話もありましたよね…。小さいころから手塩にかけて育てた豚を殺して食べるというのは、やはり抵抗がありますよね、きっと。毎日のように豚肉を食べているのは、生きた豚を見たことがないから平気なんです。
 著者はヤギの「カヨ」と友だちになりたかったのです。でも、「カヨ」は簡単には友だちになってくれません。
私もヤギになって、一緒に美味しい草を食べて、頭突きしあって、日向ぼっこして暮らしたいんだもん。
カヨの全身は真っ白。つんと澄まして首を立て、左右の前脚を一本線上に揃えて歩く姿は優雅で、ランウェイを歩くファッションモデルのよう。
ヤギがこんなに優美な形をした生き物だなんて、思ったこともなかった。
カヨは、どこから見ても、誰が見ても、美しいのだ。ずうっと眺めていたい。草を食べる姿も、歩く姿も。美しい動物は、ヒトの心を蕩かす。
ヤギは草ならなんでも食べてくれるものだと思っていたのは、大間違いだった。カヨは草を選り好みする。カヨは、気に入らない草だと、ふいとふてくされたように横を向き、メエエエッと叫ぶ。カヨが抱き好きなアカメガシワをあげると、首を振り振り、むさぼるように食べる。
カヨは草に唇が触れるかどうかまで近づき、ごくわずかな草の回りに漂う空気をそっと吸い込み、食べるかどうかを判断している。
カヨは、体型だけでなく、性格も人間じみている。見透かすような表情を浮かべることもある。いつころからか、カヨは横から近づきながら、頭を下げてスリスリとこすりつけ、甘えるようになった。
ところが、カヨは気に入らないと、すぐに頭突きをする。
カヨは、散歩に連れていくと喜ぶし、ドライブは、もっとご機嫌になる。
メスのカヨは、1年を通じて、21日おきに発情期が来る。
ヤギのメスは、あまり臭いがしない。しかし、ヤギのオスは体臭がとても強いので、家の軒下で飼うのは難しいほど。
カヨをオスのヤギたちに引きあわせた。すると、明らかに好き嫌いがある。カヨも選ぶし、オスたちのほうも、そっぽを向いたり…。
そんなカヨが妊娠し、出産したのです。その子育てがまた可愛らしいし、実に大変なのです。そして、仔ヤギの肉は美味しいから食べてしまおうというのではないのです。
ヤギとお友だちになるって、こんなに大変なことなんだ…、その実感を少しだけ味わうことができました。面白かったです。
(2022年7月刊。税込2200円)

ウォンバットのうんちは、なぜ、四角いのか?

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 高野 光太郎 、 出版 晶文社
 オーストリアに生息する可愛らしいウォンバットは知っていました。でも、そのうんちが四角いだなんて、知りませんでした。写真でみると、なるほど四角いのです。切り餅(もち)みたいです。そして、その四角い形には意味があります。
 立方体のフンは、自分の存在をアピールするためのマーキング効果をもつもの。同じ場所に長時間フンを留まらせるのに、サイコロ型のフンは最高に役立つ。丸いと、風が吹いたり、雨が降ったら、どこかへコロコロと転がっていって、なくなってしまう。
 でも、どうやって四角い形のフンをつくるのか…。それは、腸壁の硬さが場所によって違うことによる。腸壁の硬くて厚いところと、薄くて柔らかいところを交互に通過していく。すると、便には角と面が形成されていくのだ。うひぇーっ、こ、これには驚きました。そんなことが可能になるなんて…。
 ウォンバットの腸は6~9メートルもある長さで、最長14日間もかけてゆっくり消化される。排泄されるフンは基本的に非常に乾いている。
 オーストラリアにすむコアラも、ウォンバットの近縁種で、共通の祖先をもつ。
 ウォンバットは、単独行動をする生き物。野生下での寿命は長くて15年。動物園では33歳まで生きた例がある(大阪の五月山動物園)。
ウォンバットは、コアラやカンガルーと同じ有袋類。つまり、お腹の袋の中で子育てをする。
 著者は日本の大学には進学せず、オーストラリアのタスマニア大学に進学して、そのままウォンバットの研究をしています。高校を卒業して、一人でオーストラリアの大学に入って生活するなんて、とても勇気はありますよね。そして、今もオーストラリアでウォンバットの研究に従事しています。すごい、すごーい。今後も研究の成果をぜひ日本で発表してください。
 とても面白い本でした。
(2022年10月刊。税込1760円)
日曜日、フランス語の口頭試問を受けました(準1級)。3分前に問題文を渡されます。ウクライナでの戦争は日本にどんな影響を及ぼしているか、ストライキに賛成か反対か。この2問のうち1問を選んで、3分間スピーチをするのです。私は戦争の影響をフランス語で話すのは難しそうなので、ストライキのほうを選びました。
 ストライキは憲法で定められた権利だ。40年前に大きなストライキがあって以来なくなり、組合指導者がストライキをしようとしていないのは残念だ。などを、とつとつと話しました。分かってもらえたようですが、どうでしょうか。若い人がストライキをしようとしないのはなぜかと質問されましたが、私には分からないと答えるしかありませんでした。難しいことを話す能力はありませんので…。ともかく10分足らずの試験は終わりました。
この1ヶ月ほど、必死でフランス語漬けの頭にしていましたので、本当に解放感でいっぱいです。最高のボケ防止になっていると思います。

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