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カテゴリー: 生物

マナティとぼく

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 馬場 裕 、 出版 青菁社
 ちょっとトボけていて、可愛らしい顔のマナティって、どこに棲んでいるのかと思うと、アメリカのフロリダ州でした。クリスタルリバーという海岸です。ここは、川があり、一年中、温かい。外海で暮らすマナティたちは冬になると、温かいところで過ごそうとやって来る。
 マナティは好奇心が強くて、遊ぶのが大好き。ふだんは集団で暮らしていないのだけど、冬のクリスタルリバーでは仲間がたくさんいて、みんなでふざけあう。まるで人間の子どもみたいです。
 ボートの下の水中にロープがあると、マナティたちが寄ってきて、食べ物でないのが分かっているのに、ふざけてカミカミする。
 マナティにとって、人間は対等な存在。人間にこびることなく、なつくわけでもない。遊びたいときに遊び、いやになったら、どこかへ行ってしまう。
 マナティは人間と同じく肺で呼吸している。くしゃみをするし、いびきもかく。
 いやあ、マナティのいびきって、どんな音がするんでしょうか…。水中で寝ているときのいびきなんて想像できません。
 マナティは草食動物なので、水草(マナティグラス)が好物。マナティはよくオナラをする。でも臭くはない。
 マナティは水中で眠るときは目をつむる。最長25分ほど息つぎなしで眠っている。
マナティは2年に1度、1頭だけ子を産む。子どもは2年間、母親と一緒に過ごす。
 マナティは寒さに弱く、17~19度で活動できなくなり、15度以下だと死んでしまう。
マナティの寿命は60年以上だけど、死因の1割はボートによる事故死。アメリカ・フロリダ州にマナティは5730頭いた(2019年)。
実は、残念なことに著者は若くして亡くなっています。奥様による写真集のようです。
 ほのぼのとした写真集なので、眺めているだけで、心が癒されます。
(2023年5月刊。2400円+税)

カワセミの暮らし

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 笠原 里恵 、 出版 緑書房
 わが家から歩いて5分ほどの小川にカワセミを見かけたときには、感激しました。この小川の上流は「ホタルの星」になっていて、6月前後にたくさんのホタルがフワフワと飛びかい、童心に帰らせてくれます。
カワセミは、その青色の美しさが人の目を強く惹きつけます。
カワセミの羽毛の内部には網目状の泡のような部分がある。これは「スポンジ層」と呼ばれる構造体。ランダムな網目状の構造。これが周期的なパターン構造。
 カワセミの形をしているのは、新幹線の500系新幹線。
カワセミの巣は、川の水辺近くの露出した土の崖に奥行のある横穴を掘って巣をつくる。カワセミの巣は崖の途中にあいた穴から、地上に向かって上向きに傾斜している。
巣を堀りすすめるのは、オスの役割。産卵は1日1個ずつで、1回に6~7個の卵を産む。夜間の抱卵は、メスが担当する。アオダイショウなどのヘビが天敵。アオサギも、幼いカワセミを準っている。
 巣の中のヒナたちは、食物を親から受けとると、うしろ(奥)にひっこみ、ほかのヒナが受けとれるように交代する。
日本にはカワセミの仲間は8種。スズメよりひとまわりほど大きい。
宝石のように輝くカワセミの暮らしの一端をのぞいてみました。
(2023年4月刊。2200円)

植物はなぜ薬を作るのか

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 斉藤 和季 、 出版 文春新書
 薬学の世界に40年以上も関わってきた著者が人間にとって植物成分がどんな意義をもっているのかを分かりやすく解説してくれている新書です。
チンパンジーは体調不良のとき、ふだんは口にしない苦味(にがみ)の強いキク科の植物の髄液(茎からしみ出た液)を飲む。すると、1日たてば体調が回復する。この髄液は寄生虫の駆除に役立つ。いったいどうして、野生のチンパンジーがそんなことができるのでしょうか…。
 「日本薬局方」に記載されている生薬(しょうやく)は300種。市場では、その倍以上の生薬が使われているとみられている。周知の生薬は、甘草(カンゾウ)、桂皮(ケイヒ)、大黄(ダイオウ)、麻黄(マオウ)、人参(ニンジン)。
 大黄は便秘薬として、悪いものを食べてしまい、すぐに排泄したほうがよいときに用いる。ケシがモルヒネをつくるのは、捕食者となる動物から自分を守るための防御物質だから。モルヒネには、血圧低下や呼吸抑制のような強い毒性作用がある。そして、このモルヒネは、実は哺乳動物の脳内でも植物体内と同じような経路でつくられている。なんとなんと、驚きますよね、脳内でモルヒネを自家生産しているなんて…。
解熱鎮痛薬のアスピリンはヤナギの枝の成分からつくられる。日本の爪楊枝(つまようじ)はヤナギの枝を使うのも、そのため。いやあ、ちっとも知りませんでした…。
 ニコチンは猛毒。かの青酸カリよりも毒性は強い。人がタバコを吸っても死なないのは、タバコに含まれているニコチンのすべてが一度に体内に吸収されるわけではないから。
 ニコチンには薬物依存性がある。ニコチン摂取は、血圧上昇、悪心、めまい、嘔吐などがありうる。ニコチンはタバコの根でつくられ、葉に運ばれて蓄えられる。次の捕食者からの攻撃に対する防御力を高める。
 カフェインにも毒性がある。一度に10グラム以上摂取すると危険。コーヒー豆が地面に落ちて芽生えをするとき、大量のカフェインの土中に放出する。すると、この放出されたカフェインによって、他の競合植物の芽生えを阻害する。
 甘草に含まれるグリチルリチンにはさまざまな治療効果が世界中で認められている。
 ところが、この甘草の主要産地は中国なので、中国が輸出制限をしたときには今後の安定供給が不安視される。
 植物は動けないことで生物多様性の生存戦略を守っている。なにしろ上陸植物は5億年ものあいだ生きてきたから…。植物は強い毒性をもつ成分には自らは打撃を受けない。(自己耐性)たとえば、自らがつくり出した毒性成分は、液胞に入る。
太古からの植物と人間の奥深い関係を少しはイメージもって学ぶことができました。動かないからといって植物をバカにしてはいけないということです。植物だって、それなりに生き抜くためにやれることを必死でやっているのですね…。
(2021年7月刊。880円+税)

アフリカではゾウが小さい

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 岩合 光昭 、 出版 毎日新聞出版
 私とほぼ同じ団塊世代の著者は、最近ではネコ写真のほうが有名な気がします。
 でも、本業はあくまでネコに限定されない動物写真家です。末尾にカメラを抱えた著者の写真がありますが、そのカメラは、なんとバズーカ砲なみのデカさです。
カメラは、今ではミラーレス。機動性の良さと、驚くほどシャープに撮れるのに感動したとのこと。私もシャープさには憧れがありますので、今度はミラーレスのカメラを持つことにしようと思います。
 著者はアフリカには何度も取材に出かけていて、今回の写真も、ボツワナ、ナミビア、タンザニア、マダガスカルの各地の動物たちの生き生きとした姿が実にシャープにとらえられています。
 アフリカでは取材するにもルールがあります。宿泊ロッジを夜明け前に勝手に出ることは許されていません。そして、日没前に戻らないと閉め出されてしまう。ええっ、閉め出されたときは、いったい、どうするんでしょうか。まさかテント張って野営するのでしょうか…。
 朝、出かけるときは、順番に並ばなければいけません。そして、走ることのできる道は厳しく制限されていて、道を外れることは許されない。
 著者の乗った自動車のすぐそばでライオンのメスが昼寝を始めた。著者は車のドアを開けてカメラを向けて同じ高さで撮ろうとする。距離はわずか1メートルしか離れていない。それに気がついた運転手が大声で「戻れ」と叫ぶので、あわててドアを閉める。いやはや、野生のライオンの1メートルしか離れていないところでカメラを構えるだなんて、勇気があり過ぎます。
 著者はアフリカの大草原で双眼鏡なしでクロサイを肉眼で見つけたとのこと。緑したたるアフリカの大草原にずっといるときっと視力が良くなるのでしょうね。
ほとんどのゾウは、その牙が右と左で長さが違う、どうやら右利き牙と左利き牙があるらしい。
 アフリカで撮影をしていると、身体の感覚が研ぎ澄まされていく。目が良くなる。勘も相まって10キロ先まで見える。遠くの茂みに隠れている動物を見つけ出せる。
 風が運んでくるさまざまな情報や気配にも敏感になる。五感だけでなく、意識にも変化が表れる。待つという概念が消えていく、何時間もじっとカメラをかまえていなくてはいけなくても一切苦にならなくなる。
たしかに、これだけシャープで生きのいい動物たちの素顔を切り取っていけば疲れも吹っ飛んでしまうと思いました。手にとってじっくり味わいたい素晴らしい、感動と躍動感あふれる動物写真集です。
(2023年2月刊。2500円+税)

ここにいます

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 伊藤 隆 、 出版 鳥影社
 小鳥たちの見事な写真集です。信州・諏訪地域、霧ヶ峰高原、八ヶ岳山麗そして諏訪湖周辺で野鳥を撮っています。すごい執念です。霧ヶ峰高原は、著者宅から車で20分ほど。野鳥撮影のため、年に40~50回は足を運ぶとのこと。まさしく、ホームグラウンドですね。
 それでも野鳥撮影を始めて、まだ15年とのこと。本職は公認心理士で、スクールカウンセラーや心理カウンセラーの仕事に従事しています。
 脚立のついた超大型のカメラを抱えた著者の写真もあります。早朝や休日を利用しての野鳥撮影です。それこそ好きでなければ絶対にやれないことですよね。
 カメラは一眼レフからミラーレスへと大きな転換点を迎えているとのこと。私もフィルムカメラのときはペンタックスを海外旅行先にまで持参し、フィルムを30個以上もスーツケースに入れていました。帰路は現象していないフィルムがX線検査で露出させられないか心配して、特別の袋に入れて日本へ持ち帰っていました。
 派手な冠羽と大きなくちばしが印象的なヤマセミは実に生き生きしています。
白一色の冬景色の中に浮かび上がるピンク色のオオマシコは派手というより躍動感にあふれています。
 もっと原色の赤に近い身体の色をしているのが、文字どおりアカショウビン。3時間も待ってとらえた貴重な写真が紹介されています。
 鮮やかなブルーの尾羽が特徴的なカワセミは、私の自宅近くの小川に見かけることもあります。
 わが家の庭に来てくれるのはメジロ、そしてジョウビタキです。秋から冬にかけて、私が庭仕事をしていると、ジョウビタキがほんの1メートル先の小枝に止まって、私を見つめ、「何してんの?」と声をかけてくれます。独特の鳴き声で存在を知らせてくれるのです。人間のやってることにすごく関心があるようなんです。その愛らしい仕草に心が惹かれます。
 こんな立派な野鳥の写真集(130頁)なのに、1800円という安さです。思わず頭が下がりました。
(2023年3月刊。1800円+税)

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