法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 生物

ハダカデバネズミ

カテゴリー:生物

著者 吉田 重人・岡ノ谷一夫、 発行 岩波科学ライブラリー
 世の中には、まさしく珍妙としか言いようのない生き物がいるものです。女王とか兵隊というのは、アリとハチで知っていますからよく分かりますよね。ところが肉ぶとん係というのがいるっていうんです。いったい何のことかと不思議に思いますよね。
 ハダカデバネズミとは、文字通り体毛がなく、前歯が出っ張っていて、そしてネズミである。彼らは、東アフリカのケニアあたりの大草原の地下にトンネルを掘って集団で暮らしている。ネズミなのに、ハチやアリと同じように女王がいて、働きデバや兵隊デバがいる。女王はトンネルを定期的に巡回し、さぼっている個体を見つけると、どやしてまわる。どやされた個体は、服従のポーズをとり、反省の意を示す。
 ハダカデバネズミは、17種類もの鳴き声を持ち、状況に応じてこれらを使い分けている。 女王は王様に交尾を要求する鳴き声をもっている。これを聞いた王様は、女王にマウントして交尾しなければならない。ところが、王さまは交尾すればするほど、やせ衰えていく。
 なぜ体毛がないのか?地下トンネル内の、1年中30度前後に安定した環境のなかで暮らし、しかも、ノミやダニの温床となりうる毛皮を自ら捨てたのだ。
 哺乳類であるけれど、自分で体温調節が出来ない。いや、する必要がない。
 いま飼っている女王の推定年齢は37歳。その身体サイズから予測される寿命の10倍以上は長生きだ。
 デバたちは、80~300匹の群れで暮らす。繁殖に関わるのはメス一匹と、1~3匹のオスのみ。そして、役割分担のある社会で生活する。
 デバの女王は、生れながらの女王ではない。厳しい戦いを勝ち抜き、ようやく女王の座を得る。女王は、常に巣穴をパトロールして、ライバルたちを威嚇してまわる。そやって自分以外の繁殖能力を抑制している。
 女王の在任期間は20年以上に及ぶ。女王は群れの中で一番体が大きく、強くて、偉い。狭いトンネルですれ違うとき、他のデバは女王のために道を譲らないといけない。
 女王への反逆を決意した第二位メスは、最初に女王を襲うのではなく、まずは王様を歯にかける。
 兵隊デバは、トンネルにヘビが侵入してきたとき、闘うというより、まっさきにヘビに食べられてしまうのが仕事。
 ハダカデバネズミの役割は、成長にともなって変化する。生まれつき固定されたものではない。働きデバの一部は、女王に子が生まれると、床に寝そべって、ひたすら子どもたちのふとん係に徹する。もぞもぞ動きながら、子どもたちを保温する役目を果たす。肉ぶとん階級である。ただし、一生この仕事をしているのではない。
ハダカデバネズミの巣穴の全長は、最大3キロメートルにも及ぶ。食べるのは植物の根。ただし、飼育するときは、リンゴが一番の好物。うむむ、なんだか変ですね、これって……。
 大変飼育の難しいハダカデバネズミだということですが、上野動物園のほか、埼玉県こども動物自然公園そして千葉大学サイエンスプロムナードで見れるそうです。私も、この珍妙な生き物を実物で見たいと思いました。やっぱり学者って、すごいですよ。感心・感嘆・感謝です。
(2008年1月刊。1500円+税)

昆虫、4億年の旅

カテゴリー:生物

著者:今森 光彦、 発行:新潮社
 うひゃあ、すごい、すごーい。昆虫って、こんなにきれいだったのか、えーっ、こんな不気味な色と形をしていたの・・・。身近な昆虫たちを間近で見ると、まったく驚きと発見にみちみちています。くっきり鮮明なカラー写真が200点もあって3600円とは、なんと安いこと。写真を撮る苦労を考えたら、本当に申し訳ない気持ちになります。
 虫にとりつかれた子どもたちのことを、昆虫少年という。昆虫少年という言葉があるのは、おそらく世界中探しても日本だけではないだろうか。かけ事ではない、カブトムシを喧嘩させて遊ぶ純粋な子どもたち。こんな国は、世界広しと言え、いちども見たことがない。「ファーブル昆虫記」のファンの数も日本が世界一だというのも十分納得できる。日本の子どもたちは、美意識と科学心にあふれる好奇な目で、昆虫たちを見ている
 頁をめくって一番始めに登場するのが南米(ブラジル)に棲むヨツコブツノゼミの顔です。頭の上のほう(オプションには胸部とあります)に、たしかに4つのコブがついているのです。その奇妙さといったら、思わず噴き出してしまいそうです。そして、このヨツコブツノゼミから、「おまえ、今、なんか笑ったか?」と重々しい声で問いを投げかけられたら、あわてて口に手をあてて、「いえ、別に・・・」と返事して、ごまかすことでしょう。世にも珍妙なるセミです。ぜひ、実物を写真でご覧ください。
 インドネシアに、ホタルのとまる木があるというのは聞いていました。幾万とも知れないホタルが高さ20メートルの木に集まり、集団発光するのです。いやあ、一度ぜひ見てみたいですね。こればっかりは、写真では実感できません。我が家から歩いて5分のところにも初夏(梅雨前)になるとホタルが飛びかう小川があります。最近、そのすぐ近くで道路工事をしていますので、今年もホタルがちゃんと見れるのか、今から心配しています。
 著者は、プロの写真家になる夢を捨てず、大学を卒業してコマーシャルスタジオに2年間勤め、ファッションや料理など、あらゆるコマーシャル撮影の技術を習得した。そして、著者は29歳のときから、毎年3ヶ月間、のべ2年4ヶ月の歳月をエジプトでのスカラベ撮影に費やした。2年目から昆虫学者(佐藤宏明)がアシスタントとして同行し、著者が写真をとり、助手は生態に関する論文を執筆した。いやあ、すごい執念です。大したものです。
 取材ノートが公開されていますが、手書きの絵もまた実に精妙です。細かいところまでよく観察していることが実感できます。
 虫の卵というのが、こんなに個性的なものであって、虫によって色も形もまるで異なるものだということも知りました。まるでケーキ屋さんの店頭にたくさんの新作ケーキが並べられている感じです。いかにも美味しそうな色をして輝いています。これって、きっとケーキ職人の新作づくりの参考になるんじゃないかと思います。
 昆虫ではありませんが、オーストリアにいるメリディオナリスシロアリのつくった塚が大平原に立ち並んでいる写真は不気味です。西洋の墓地、今でいうと、イラクで戦死したアメリカ兵の墓地を連想させます。
 よくぞ、これだけの写真を撮って公開していただきました。感謝感激です。ありがとうございました。これからも身の危険には十分用心して、頑張っていい写真を撮って公表してくださいね。
 久しぶりに湯布院の温泉につかってきました。初日は小雨模様のなか、夕方、金鱗湖あたりを歩いたのですが、観光客の中にハングルや中国語を話している人の多さに驚きました。
 2日目は雨も上がって、青空の見えるなかを歩きました。小さな美術館がいくつもあるのは湯布院の良さですね。依然として変に俗化していないので、とてもいい雰囲気です。お昼を金鱗湖に面したレストランで、湖の先の山々を見ながら、美味しくいただきました。由布岳の頂上は、白く霧氷で覆われていて、浩然の気を大いに養うことができました。
(2008年7月刊。3600円+税)

魔法のどうぶつえん

カテゴリー:生物

著者:岩合 光昭、 発行:阪急コミュニケーションズ
 高名な動物写真家による旭山動物園のどうぶつたちの傑作写真集です。どうぶつが実に生き生きしていて、目の前で挨拶してくれているかのようです。私も一度だけ噂に名高い旭山動物園を見ておこうと思い、北海道に出張したとき、札幌からJRに乗って出かけました。札幌駅でJRの切符とのセット券を売っていました。
旭川駅からはバスに乗ります。市内から20分以上も離れた高い丘に動物園はあります。行った日はよく晴れていましたが、観光バスから続々とお客さんが降りてきました。
どうぶつの生態を間近でよく観察できる仕掛けがあちこちにあり、さすがに工夫が行き届いていると感心したことでした。
 ホッキョクグマの巨体が水中を軽やかに泳ぐ姿には圧倒されました。最近、新しくオオカミの森が出来たそうですが、私が行った時にはありませんでした。オオカミのいかにも野性的な目つきに、目が合うとたじたじとなりそうです。また、オランウータンの空中散歩も残念ながら見ることはできませんでした。これも運不運があるようです。
それでも、アザラシが円筒形の水槽を上から下から通過していくのは幸いにも見ることができました。アザラシの方でも見物している人間を意識しているとのことです。
 もちろんペンギンたちにもお目にかかりました。でも、冬ではありませんでしたので、あの有名なペンギンのお散歩というのは、見ることができずに残念でした。
 今や日本一有名な動物園です。今度は映画にもなりましたよね。また行ってみたい動物園です。この写真集は、行く前に見ておいたら良いと思いますよ。
(2008年12月刊。1500円+税)

骨から見る生物の進化

カテゴリー:生物

著者:ジャン・バティスト・ド・パナフィユー、 発行:河出書房新社
 フランス国立自然史博物館にある骨格標本を見事な写真で紹介した大判の写真集です。生物の身体のあまりに精巧な出来栄えをしっかり堪能することが出来ます。いやあ、これの全部を神様がつくったのだとしたら、全知全能という以上のものです。なにしろ、時代とともに少しずつ形を変え、性能を変えていくというわけなのですからね。なんで、神様がそんな面倒なことをしたのでしょうか・・・。
 ダーウィンの進化論を、現代アメリカでは、今も学校できちんと教えない州があるそうです。信じられませんよね。
 種が変化するという考えそのものが、動物と人間はすべて神が創造したとする創世記の記述に反するからだ。アメリカのキリスト教原理主義者たちは、宇宙の年齢を6000年とし、すべての動物と人間は創造されたときのままの姿であり、化石はノアの洪水でおぼれた動物の名残であるとする。うへーっ、たまりませんね。ありえませんよ、そんなことって……。
 魚とは、ひれと内骨格をもち、水中で生きる動物である。陸生の魚はいない。魚の種類は2万5000種以上いる。
 シーラカンスは、本物の脊柱ではなく、軟骨のチューブである脊索をもつ。このチューブの中は液体で満たされていて、かなりの柔軟性がある。シーラカンスの泳ぐときの動きは、魚より四肢動物の歩き方に近い。生態学的に見て、シーラカンスとサメはまぎれもなく魚であるが、動物学的に見ると魚類ではない。
 生物の世界は、昔からずっと今のように多様だったわけではない。8億年ほど前に登場してきたときは、ほとんど違いがなかった。ところが、5億4000万年前ころに、突然、種類が増加した。
鳥では、スズメのグループ(スズメ目)が5300種もいて、世界の鳥類全体の半数以上を占める。スズメ類は、ひとつの祖先から多数の種が生まれる「進化的放散」の実例を示している。
人の骨格を見て男女の性を決めるのに役立つのは、頭骨と骨盤である。頭骨については、男の下顎骨(かがくこつ)はより頑丈で、より突き出ていて、角張ったあごになる。骨盤については、出産のため女の骨盤腔は男より広い。
  7500万年前、鳥は恐竜と共存していた。現代の鳥の祖先は、強力な武器を備えた顎を持つ、肉食の小型恐竜だった。初期の鳥は歯をもっていた。しかし、歯は密度が高くて重いため、飛行するには邪魔だった。歯をなくすことによって、体重をかなり節約できた。
 哺乳類が現れたのは2億2000万年前。このころ、まだ恐竜がいた。恐竜がいなくなるまで1億5000万年以上も待たなければならなかった。哺乳類は、体の小さい地味な動物であり、夜行性であって、昼は地下のトンネルに潜み、夜になると植物の種や昆虫を探しに外へ出た。
 鳥とコウモリと人間は、実際に空の世界を征服した唯一の脊椎動物である。
ヘビは全世界のあらゆる大陸の、あらゆる環境に2500種もいて、その形態は進化の成功の例なのである。ヘビの祖先は、小さい肢を持つ地中生の爬虫類であった。人間がヘビを見て感じるのは恐怖心だけではない。四肢を完全に失ってしまうことは想像するのも難しいことだ。
 アリやシロアリを食べるアリクイやアルマジロなどは、尽きることのない食糧資源をターゲットに出来る。というのも、地球上には1億の1000万倍ものアリがいる。一つのアリのコロニーに2000万匹のアリがいるのだ。
 こんにち、5000種の脊椎動物が絶滅の危機にさらされている。両生類の3分の1、カメ類の半数、哺乳類の4分の1、鳥類の8分の1。うひゃあ、これは大変なことです。
人間が自分だけが地球上の絶対至高の存在とうそぶいているとき、足下の土台が揺らいでいるわけです。人間が自分だけで生きのびることが出来ると考えてはいけません。すべての生物は相互に連関し、関係し、依存しあっているのですから・・・。
 名実ともに、ずっしり重たい大判の写真集です。一見の価値があります。
我が家の近くの電柱にカササギの巣が作られています。せっせと小枝を口にくわえて運んでいます。少し離れた電柱に2個の巣が同時に建設中なのです。うまいこと組み合わせて巣が出来上がっていくのを見るのは楽しいものです。でも、九電が邪魔だといっていずれ取り払ってしまうと思います。
(2008年2月刊。8800円+税)

働きアリの2割はサボっている

カテゴリー:生物

著者:稲垣 栄洋、 発行:家の光協会
 春になると、我が家の庭にも丸っこい可愛らしいマルハナバチがやってきます。ところが、大きな体をちっぽけな羽で飛びながら支えられるはずがない、という航空力学の難問とされていた。しかし、そのマルハナバチの飛翔能力は空気の粘り気をも計算に入れた高度で複雑な飛行原理によるものであって、その解明がいま進められている。
 コウモリは日本では昔から良いイメージの生き物だった。コウモリは発した超音波が反射して戻ってくるエコーをキャッチして物の位置を判断している。
 ガの体が毛でおおわれているのは、コウモリの音波を吸収してエコーを出さないようにするため。ガの体のフワフワに、そんな意味があったのですね。
 カタツムリはブロック塀を食べる。殻の材料になるカルシウムをブロック塀から摂取している。カタツムリは海の中に住んでいた巻貝の仲間が地上生活に適応して進化した貝。海の中の貝は海水に含まれるカルシウムを摂取できるが、陸上にすむカタツムリは石灰岩などから摂取するしかない。カタツムリは水中にすむ貝と違って肺呼吸をし、生まれたときに殻を背負って、大人と同じ形をしている。
 ナメクジは、さらに乾燥から身を守る殻をなくした地上生活の最新進化モデルだ。
 ウンカはセミの仲間。イネの汁を吸う。ウンカははるか中国大陸からジェット気流に乗って飛んでくる。
 秋の野山に目立つのは、大型のジョロウグモの巣。黄色と黒色のカラフルなジョロウグモは、秋の女王とも呼ばれる美しいクモだ。その規模は、おなか側から見ると怒った人の顔のように見える。ハハーン、そうなんですか、今度、よーく見てみましょう。といっても、寒くなったら姿を消してしまいました。いずれまた姿を現すでしょう。
 ジョロウグモの巣をよく見ると、ごく小さなクモが数匹、居候している。実は、この小さなクモはジョロウグモのオス。巣の真ん中でよく目立つクモは、すべてジョロウグモのメス。成体になったオスは、メスの巣にやってきて、メスのクモが成体になるのを待つ。メスが成体になるとすぐに交尾をする。
 えっ、まさか、交尾をしたあと、オスはメスに食べられてしまうのではないでしょうね……?
 身近な生き物たちにまつわる知らない話が満載の面白い本です。
(2008年11月刊。1300円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.