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カテゴリー: 生物

極北の生命

カテゴリー:生物

 著者 前川 貴行 、小学館 出版 
 
 ギャハー、な、なんというド迫力でしょう。表紙を飾るハクトウワシの正面アップの顔と、その目つきの鋭さに、たじたじとなってしまいました。まさに迫力負けです。
強烈な風格を身にまとったハクトウワシは、アメリカの先住民にとっては神の使いであった。アメリカのシンボルであるハクトウワシは1960年代には絶滅の危機に瀕していた。家畜を襲う害獣として長年にわたって乱獲がされてきたのと農薬汚染によるものだった。今では保護がすすんで、絶滅危惧種の指定から解除されている。
 主な生息場所である海や川ぞいで、海面近くを泳ぐ魚や遡上ではねたサーモンなどを捕まえる。サーモンなどの大きな魚は、川で捕まえて、その場で食べる。サバくらいの大きさだと、易々とつかんで飛べるため、仲間に横どりされずに安心して食べることのできる樹上に運ぶことが多い。魚以外によく捕食するのが生息場所の重複するカモメ類。大きさが自分とあまり変わらない成鳥であっても、かぎ爪で「鷲づかみ」にして、ばくばくと食べてしまう。カモメのヒナもよく捕まえ、子育て中のハクトウワシは、カモメのヒナを生きたまま単に持ち帰り、自分のヒナに与える。
 ハクトウワシが子育てする巣は、まさに断崖絶壁の上にあります。そこを写真に撮ったのですから、すごいものです。いったい、どうやって写真を撮ったのでしょうか・・・・。
 いずれにせよ、大変な根気が求められることは確実です。シャッターチャンスは一度だけ。そう思いながら、何時間も、何日も、じっと辛抱強くチャンスを待ち構えたのでしょうね・・・・。心より敬意を表します。
 それにしてもハクトウワシって、なるほど、神々しく、気高い、孤高の顔つきをしています。こんな威厳を日本の首相も全身であらわしてほしいものだと思いました。恐らく、ないものねだり、なのでしょうね。 
 
(2010年6月刊。3400円+税)
 夏休みをとってフランスに行きました。パリでは日本人より韓国人、中国人の若者をたくさん見かけました。20代の日本人は、この10年間に海外旅行する人が半減したそうです。どうしてでしょうか……。やはり現地に行ってみると、いろんなことが見えます。もったいないことです。今回は、ブルゴーニュ地方を回って来ました。少しずつ報告していきたいとおもいます。

生き物たちの情報戦略

カテゴリー:生物

 著者 針山 孝彦、 化学同人 出版 
 
 南極、マイナス35度のなかで生きる昆虫、スプリングテールは、冬期に車のラジエータに入れるような不凍液を身体に蓄えるしくみをもっている。その不凍液はグリセロールというもので、そのおかげで凝固点が降下し、凍ることがない。
 南極に基地に入ると、初めにサバイバル・トレーニングをする。実際に自らクレバスに落っこちる。40メートルのロープをつけて、氷の割れ目のクレバスに落下する。周囲は青一色の世界となる。クレバスの奥は真っ黒の世界。このクレバスから、ロープをたどって脱出するのではなく、氷の壁に挑戦して自力で脱出する訓練が課される。右手にピッケル、左手にアイスピックを持って、足にはクランポンの金属が靴先に飛び出している。こんな、氷に張りつける道具を準備していても、いくら両手をふり回し、足をバタバタさせても、柔らかい氷の結晶がついた壁は脆い。大汗をかいて努力したものの、ついに力が尽いて、そして張りあげてもらった・・・・。うへーっ、こ、これは怖いですよね・・・・。
南極の寒地では、白夜があるため、日中とほとんど変わらない明るさがある。そのため睡眠障害が起きやすい。この問題を解決するため、基地のなかでは、全員が規則正しい生活を心がける。朝食も夕食もバイキング形式で食べ放題だが、朝は午前7時、夕方は6時に、それぞれ1時間のあいだに全員が一堂に会して食事する。夕食のあとはアルコール。基地のバーが開店して、1杯100円で世界中の高価なお酒が飲める。南極では酒税がかからないので、とても安い。飲みすぎを防ぐためにお金をとるだけ。やっぱり、飲みすぎず、また気分転換を図るって大事なことですよね。
 コンピューター・シュミレーションによって、一世代に一つの突然変異が起こったとすれば、数十万回の世代交代によって、平らな皮膚のような構造からレンズをもったカメラ眼まで形態変化することが証明された。つまり、眼の形成までに1億年かかったとしても、エディアカラ紀の運動性をもった個体群が眼の形成を開始していたら、カンブリア紀に突然、眼ができても不思議ではない。ふえーっ、そんなんですかね・・・・。
 光線に色はない。これはニュートンの言葉。色とは、三種の錐体細胞が下界にある光のスペクトルによって別々に興奮させられ、その興奮の比率が脳に伝わる信号の状態のことをいう。光線が錐体に含まれる光受容細胞に吸収され、細胞が興奮して情報を脳に伝達し、三種の興奮も組み合わせが色という情報に変換される。生物が情報を作っているのである。 
 日常生活においては、すべての物に色がついているわけですけれども、実は、色なるものは、その物に付着しているというわけではないということが、どうにもぴんときませんね。
いずれにせよ、南極からアフリカまで、世界中のいたるところに生活して、生き物とは何かを探求してやまない学者の努力には脱帽せざるをえません。
 
(2007年9月刊。1800円+税)
 梅雨が明けると炎暑の夏が到来しました。車の温度計で38度が表示されているのを見て、計器が暑さで狂ったのかと思ったほどです。しばらく走っても35度でした。熱中症のため、お年寄りが何人も亡くなられています。私も庭仕事をするときには、いつも以上に休み休みし、また水分補給に心がけています。
 夜、寝る前にはベランダニ出て天体望遠鏡で就き世界を見るのが楽しみです。夜風に吹かれて身体を覚ましてくれるのもちょうどいいし、異次元の世界をのぞくうれしさがあります。

先生、カエルが脱皮して、その皮を食べています

カテゴリー:生物

 著者 小林 朋道、 築地書館 出版 
 絶好調、先生シリーズの第4弾です。ますます生き物たち観察と文章力にみがきがかかっていて、一気に読ませます。まずは、タイトルになった話です。これって、本当の話なんですね。
 ヒキガエルは、脱皮した自分の皮を自分で食べていた。著者は、これを目撃したのでした。
 ヒキガエルは、分厚い皮膚をシャツを裏返しに脱ぐように脱皮しながら、その古くなって脱皮した皮を食べた。そして、皮を脱いであらわれた新しい皮膚には、パンパンに張りつめたイボと、それからしたたり落ちる毒液が見えたのだった・・・・。脱皮に長時間かかるため、そのあいだに身を守るため毒液の詰まったイボを備えていたというわけなのです。
 ヘビに出会ったヒキガエルは、体(とくに腹部)を、ぷくっとふくらまし、四股を伸ばし、相撲の立会い前のような姿勢を見せる。ところが、そのヘビは、単にヘビそっくりのオモチャであってはならない。あくまで、先がかぎづめのように曲がったタテ棒の格好をしていなければ、ヒキガエルは対ヘビ防衛姿勢はとらない。この「かぎづめのように曲がったタテ棒」とは、ヘビがかま首を持ち上げて捕食しようとする姿勢を示すものと考えられる。なーるほど、ですね・・・・。
 動けない植物は、草食動物がある程度の葉や枝や実を食べたら体調に異常をきたすような物質を体内(の細胞内)で生産している。だから、ミズナラのドングリばかり食べているネズミは死んでしまう。そこで、草食動物は、野生では、同じ種類の植物を食べ続けるのではなく、種類を変えながら採食している。
 うへーっ、そういうことなんですか・・・・。食べる方も、食べられるほうも、相互に自らの身体の防衛を工夫しているのですね。
 生命・生き物たちの神秘を身近に感じさせてくれる良書シリーズです。コバヤシ先生、引き続き、がんばってください。続刊を楽しみにしています。
 
(2010年4月刊。1600円+税)
 いよいよセミが鳴き出しましたね。10日に天神で、11日に自宅でまだ頼りなさげな鳴き声ではありましたが……。梅雨は明けませんが、本格的な夏到来ですね。
 庭のキュウリが何日かおきに見事に太くなってくれます。ミソと一緒に食べると美味しくいただけますが、ミソの代わりに五木村の山うに豆腐をのっけて食べています。ちょっと甘味がありますが、モロキュウの食感で、初夏を食べている幸せ感が味わえます。
 私のハゼマケは皮膚科で貰った軟膏をつけたらひどくなることもなくあっという間に直ってしまいました。ちょこさん、ご心配ありがとうございました。

ゾウと巡る季節

カテゴリー:生物

 著者 大西 信吾 、彩流社 出版 
 
  すごい、すごい。感嘆しながら、そして心をときめかせながらめくっていった写真集です。ミャンマー(ビルマ)の森深くでゾウと人間が共働している姿がよく撮られています。
 なかでも深く心が動かされ、まさに感動したのは、仔ゾウを人間づけしていく経過を紹介する写真です。いやはや、ゾウと人間というのは、一朝一夕でなしうるものではないのですね。あまりの素晴らしさに、見終わって、ついつい嘆息をついてしまいました。
ミャンマーの森の奥深くにゾウと人間が入り込んで、伐採した大木を運び出す仕事に徒事します。ゾウは仔ゾウのときから飼い慣らされているとはいえ、仕事が終わったら、また、仕事の合い間にも森の中で自由に暮らす。
 これがすごいですよね。ゾウは、ずっとオリの中に拘束されているのではありません。森の中で自由に過ごせるのです。それでも、また人間と一緒になって木材運搬の仕事に従事するというのです。それは、不思議としか言いようがありません。
森の中に入ると、人間は作業キャンプ(飯場)を付近の竹でこしらえる。そして、大木を切り出していく。そして、森の中にいるゾウを探し出し、川でゾウの身体を丁寧に洗ってやり、大木の運搬の仕事につかせる。
ここでは、トラックやトラクターは使えない。アマゾンのようにブルドーザーで一本道をこしらえたら別だろうけど、あくまで自然との共生が第一だ。そして、ゾウの健康状態をチェックする地域獣医官が巡回してくる。
うひゃあ、すごいですね。ゾウの健康を管理する専門の獣医がいるのです・・・・。
伐採した丸太を山あり谷ありをこえてトラックで運び出せるところまで持っていくのは、やはりゾウしか出来ないんだろうなという写真がたっぷりあります。ゾウは文句も言わずに、がんばります。母ゾウ54歳、仔ゾウ1歳。父親は行方知らずの野生ゾウ。こんなキャプションがついています。
 人間で54歳の母親が出産するなんて、あるのでしょうか・・・。
 仔ゾウは、母親ゾウのそばを離れない習性から作業班と共に行動する。かといって、決して人間になついているわけではない。放っておくと確実に野生むき出しの獣になる。4歳のころ、高さ1メートル50センチになったころに使役ゾウとしての訓練を開始する。それは訓練専門キャンプで行う。
子ゾウの自由を奪う。生まれて初めて自由を奪われた子ゾウは、とことん抵抗する。ゾウ使いは、おとなしくするように鉄拳制圧するが、目、口、関節などは避ける。
 そして、常に誰かが子ゾウの身体のあちこちに触り、背中に乗り、人の感覚に慣らせていく。昼も夜も朝も・・・・。
子ゾウの体調については、獣医官が常に管理している。子ゾウの身体には、拘束している木で擦り傷を負わないように、豚の油を絶えず塗っておく。
人の間隔に慣れてきたら、子ゾウの拘束を少しゆるめ、根気強くスキンシップを続け、少しずつ動作を学習させていく。
盲導犬と同じように、人や仲間のゾウと歩調をあわせて歩けることが、使役ゾウの学ぶべき最初の基本動作である。最初に覚えさせる指示語は、座れと立て。座れの大合唱とともにロープで子ゾウの脚を引っぱって力ずくで伏せさせ、立ての号令とともにロープをゆるめて立たせる。これを何度も繰り返す。
人間の感覚に慣れ、抵抗の度合いが弱まってきたなら、長い鎖で杭につなぐ。行動半径は限られているが、自分で歩く自由は得られる。一週間でこの段階まで来たら上出来だ。地道な訓練を2年ほど続けたあと、やっと荷かごを背中に乗せられるようになる。それでも、ゾウはなかなかまっすぐには歩かない。15歳までは荷物運搬専門に働き、16歳から丸太を動かす訓練を始め、搬出現場デビューは18歳のとき。ゾウ使いは、ずっと同じ人間であることが望ましい。
50歳をこえたら、徐々に仕事量を減らし、引退する。軽い仕事をする程度で、ゾウ使いとは一生続き、70歳ころにゾウは生涯を終える。
ゾウと人間の森の中でのゆっくりと時間が流れていく情景が紹介されている感激の写真集です。ぜひ、手にとってご覧ください。
(2010年3月刊。3800円+税)
 サッカーで日本が勝っています。うれしいことです。でも、今は大切な参議院選挙が進行中です。消費税を10%にすることの是非が問われています。ギリシャのようにならないためと言われてもピンときません。
 消費税10%は、法人税率の引き下げと抱き合わせです。強い日本を作るためだそうです。
 日本の大企業の経営者が、何十人も年1億円以上の給料をもらっていることが報道されました。月収1000万円ということです。私の周りの人の多くは、その100分の1、月収10万円前後の人ばかりです。それでも仕事がある人はまだましなのです。こんな高給を払えるほどもうかっている大企業の法人税を引き下げ、私たち庶民のフトコロを直撃する消費税を10%に引き上げたら、所得格差はますます進行してしまいます。
 ところがマスコミは、消費税が日本の国民にどんな影響をもたらすのか、法人税の引き下げが本当に必要なことか十分に報道しているとは思えません。消費税の引き上げを是として国民をリードしている気がします。
 サッカー報道が過熱していくなかで、いつのまにか消費税10%が既定の事実となることを、私は真面目に心配しています。

究極の田んぼ

カテゴリー:生物

著者、岩澤 信夫、日本経済新聞出版社
 田んぼを耕さず、肥料も農薬もつかわないで、立派なお米がとれるというのです。まさに、奇跡としか言いようがありません。
 冷害にも強いのです。農薬をつかいませんから、鳥たちの楽園にもなります。かといって、例のアイガモ農法には批判的です。
 イネを狩り取ったあとのイネ株はそのまま残し、そのイネ株とイネ株の間に今年の新しい苗を植える。苗は稚苗ではなく、成苗にしてから移植する。
 冬には田んぼに水を張っておく。これによって田んぼのなかの光合成を促し、植物プランクトンやそれを餌にする動物プランクトンの発生を助け、イネの生長に必要な栄養分が供給されることを狙う。その結果として、無肥料栽培になる。また、雑草の発生も抑えられるので、無農薬栽培となる。このようにイネ本来のもつ力を生かす自然農法である。
 イネは耕さない硬い土の中に根を伸ばそう、張ろうとする。そのときの強いストレスのため、エチレンという成長ホルモンを分泌する。このホルモンがイネを丈夫にして立派に育ててくれるばかりでなく、病気、虫害、冷害にも強くしてくれる。
 冬に田んぼに水を張っていると、イトミミズが10アールあたり1500万匹もいる田んぼになる。イトミミズの排泄物がトロトロ層になって、5センチメートルの層をつくる。
不耕起の田んぼでは、昨年のイネの株は残っているが、田植え後は水の中で分解を始める。
 不耕起の田んぼは殺卵しないことになるので、6月末にはトンボが孵化してトンボの楽園になる。
耕さない田んぼのコメは、3年継続して栽培すると、間違いなく美味しくなる。イネの根が根穴を残し、田んぼの土は根穴だらけになり、それがコメの味をよくする。
 なるほどなるほど、よく考えられた科学的な農法だと感心してしまいました。
(2010年4月刊。1500円+税)

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