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カテゴリー: 朝鮮・韓国

私は私のままで生きることにした

カテゴリー:朝鮮・韓国

(霧山昴)
著者 キム・スヒョン 、 出版 ワニブックス
心にしみる言葉のオンパレードです。韓国で100万部、日本40万部が売れたというのも、なるほどとうなずけます。
私の知人(弁護士)に、ときどきネット上で自分の悪口が書かれていないか確認するようにしているという人がいます。一喜一憂するのだそうです。私は一度もしたことはありません。もちろん、ほめ言葉なら、シャワーのように浴び続けたいのですが、悪口ばかりだと落ち込んでしまいそうで、それが怖いのです。
この本は、根拠のない悪口だったら犬が吠えているだけだと思えばいいとしています。
それでも犬が吠え続けたら、黙って聞いていないで、しっかり責任を追及しようと呼びかけています。弁護士である私は、責任追求するのも、相手の人によりけりだと思います。かえって、反応があったとばかり、相手を喜ばせてしまうだけのこともあるからです。
お互いに傷つけあうような社会では、誰も幸せになんかなれない。
人を侮辱するのが一番の楽しみだという人は、「負け犬」そのもの。
韓国の社会は、日本と同じように、自分の感情を尊重するよりも、他人の考えや感情に注意を払うような教育を受けてきた。
社会的地位、経済的安定そして周囲の人々から認められること、こればかりを追い求めてきて、自分を見つめることを知らずに生きてきたため、内面が空虚なままだった。なので、幸せという実感がもてない自分がいる。これって悲しいことですよね…。
韓国社会には反共主義が深く根づいているが、それは決められた答え以外を口にするのは思想的に不純であるとみなすような社会をつくりあげてきた。韓国社会は、正解とされた少数派の傲慢と、誤答とされた少数派の劣等感が凝縮された、病みきった社会だ。
韓国には、「6.25心性」というものがあるとのこと。朝鮮戦争という非人間的な惨事を経験した韓国人が身につけた、極端な生存競争、物質万能主義、手段を選ばない個人主義をさす。
人生を豊かにするには、自分の好みを探さないといけない。そのためには、自分の感覚に正直になること。
自分の好みを見つけ、それを深く掘り下げるために、いろいろなものに触れる努力も大切。でも、好みというのは開発するものではなく、感じるもの。
「政治から目を背けることの最大の代償は、もっとも俗悪な人間たちに支配されることだ」
これはプラトンの言葉だそうです。まるで、いまの日本のアベ・スガ政治と投票率50%の状況を言いあてている言葉ではありませんか…。
「機械のように毎日を送ってきた人は、80歳まで生きたとしても短命だ」
毎日、似たようなパターンの生活をするのは、人生の無数の可能性と多様性を圧縮し、自分の人生を失うこと。だから、週末には海を見に行こう。仕事の帰り道に違う道を歩いてみたり、新しい人に会ったり、勇気を出して、これまで経験したことのないことをやってみよう。
自分に対する固定観念を脱ぎ捨てて、自分にも予測できない自分になってみよう。
ふむふむ、なるほど、なるほど…。うんうんと強くうなずきながら、読みすすめ、一気に280頁ほどの、絵本のような本を読み終えました。
(2020年10月刊。1300円+税)

韓国の若者

カテゴリー:朝鮮・韓国

(霧山昴)
著者 安 宿緑 、 出版 中公新書ラクレ
日本の若者も大変な状況だと思いますが、韓国の若者はどうやらもっと大変そうです。
韓国は、高学歴貧困者の数が世界トップレベルにある。一流大学卒業でなければ、希望の職に就くのは、まず無理。
韓国では日本と違って、新卒採用者にも即戦力を求める。そのため、インターン経験の有無が重要となる。これって、フランスでも同じようです。日本だったら、入社して早々に社内で缶詰め研修を受けたりするわけですが…。
韓国では、どんな会社でも、学歴のほかに、実務とは関係ない資格を要求する。たとえが、英語のTOEIC700点とか、コンピューターのライセンス、また韓国史検定とか…。
文在寅政権が最低賃金を上げたため、アルバイトが激しい競争にさらされている。最低賃金を上げたのはいいことだと思うのですが、そのため、競争率が激化して、アルバイトにすらありつけない若者があふれるようになった。これも、たしかに困りますね…。
韓国では、財閥はもちろん、高い地位にいる人が貴族のように横暴な振るまいをすることが多い。熾列な競争を潜り抜けてきたから、そのあげくに支配層の一員にすべりこんだら、その自意識が肥大化し、ときに暴走してしまう。
ナッツ・リターン・ナッツ姫のとんでもない横暴さは、なんと氷山の一角だというのです。
大企業40代定年説という見方もあるそうです。実際、大企業を退職する平均年齢は49.1歳だといいますからね…。
韓国の大学進学率は日本よりも高い。国内の7割の若者が大学に進学している。
階層が親の経済力によって固定されやすいのが韓国社会の特徴だ。
韓国の婚姻件数は、1996年の43万5千件をピークとし、2019年に史上最低の24万件となった。出生率も0.94人。
過保護に育てられ、生活能力が身につかなかった若者が少なくない。
現在の韓国社会では、階層がほぼ固定化し、経済的に同じレベルでしか結婚しにくい状況にある。
韓国の20代の男性は、女性のほうが自分たちよりも優遇されていると感じている。
彼らは、徴兵に対して被害者意識をもち、軍隊は時間の浪費で、損失と考えている。
これは真理ではないでしょうか。徴兵制度のない日本に生まれて、私は本当に良かったと思います。
韓国の軍隊のなかでは、女性兵に対する性的暴行よりも、男性同士の性行為のほうが厳罰化している。うひゃあ、本当ですか…、信じられません。
韓国には「地雑大」というコトバがあるそうです。日本の「駅弁大学」と同じニュアンスのようです。「地方の雑多な大学」のことを指摘します。
韓国の若者に新興宗教に走る人が少なくない。韓国内には、自らをイエスの生まれ変わりと主張する人が40人近くいる。そして、その信者が200万人もいることになっている。死んだ文鮮明の統一協会のような宗教団体が韓国内にはびこっているようです。
いやはや大変なんですね。日本に働きにくる韓国人を応援したいと本気で思いました。
(2020年9月刊。820円+税)

植民地支配下の朝鮮農民

カテゴリー:朝鮮・韓国

(霧山昴)
著者 樋口 雄一 、 出版 社会評論社
日本が戦前、朝鮮半島を植民地として支配していたときの実情を詳しく調査した本です。
日本の植民地下の朝鮮の人口の8割は農民であり、2500万人の2割、500万人もの人々が日本だけでなく、中国東北部(満州)や中国、そして南洋へ移動した。それは16歳から50歳までの稼働労働人口だった。その主たる要因は食の窮迫にあった。
朝鮮総督府のレポート(1941年版)にも、食糧の不足から、人々は食を山野に求めて草根木皮を漁り、かろうじて一家の糊口をしのいでいるとしていた。
当時の朝鮮の乳幼児の死亡率は30%ほどで、2歳か3歳まで生きていて初めて出生届をした。なので、平均寿命を統計的に明らかにすることができなかった。
本書が分析の対象としている江原道は、平均寿命が43歳と低かった。
江原道は高地が多く、冷害の被害を受けやすかった。自作率の高いことが特徴。
江原道は、畑作地帯で、大豆・小豆とも良質の品種がとれた。農家の半数は牛を飼養していて、養蚕も盛んだった。
朝鮮社会の主食は87%が混食で、米や麦も粟などと一緒に炊かれていた。魚も肉もほとんど食べられず、副食はキムチと味噌が大半だった。
トウモロコシとジャガイモだけでは人々の成長は遅く、皮膚病にかかりやすかった。
江原道でも蜂起があり、日本軍と戦った。蜂起には5千人以上が参加し、銃器も3千丁ほど所持していた。しかし、日本軍は砲兵隊や機関銃をもち、最新式の軍隊だった。
蜂起軍は、「暴徒」というレベルをこえ、指揮と戦闘体制がととのっている部隊もあった。日本の支配に反対するという明確な目標をもつ、民衆の自覚的な運動だった。
日本軍は、正規軍と憲兵隊そして警察が一体となって殺戮を行い、蜂起軍を鎮圧した。
朝鮮総督府はケシ栽培とアヘン生産を統制し、推進した。そして、戦前の朝鮮には少なからぬ、麻薬中毒者がいた。そして、日本は今度は、麻薬を朝鮮や中国に輸出した。
朝鮮総督府は軍部をバックとしてケシの生産を割りあてていた。朝鮮における麻薬生産は総督府の指導のもとで、大々的に行われていた。
江原道庁には、日本の敗戦間近なころから不穏な動きがあった。住居などを朝鮮人が日本人から買い取るという申し込みもあっていた。朝鮮人は知識人を中心として、ラジオで世界情勢を知り、日本の敗戦が間近に迫っていることが共通認識となっていた。
日本敗戦時、日本内地に200万人の朝鮮人が居住していたが、満州にも200万人、中国各地に計100万人の朝鮮人が暮らしていた。2500万人の朝鮮人の2割が国外に暮らしていた。
朝鮮半島の中央部にある貧しい江原道の戦前の実態が紹介されている労作です。
(2020年3月刊。2600円+税)

元徴用工和解への道

カテゴリー:朝鮮・韓国

(霧山昴)
著者 内田 雅敏 、 出版 ちくま新書
2018年10月30日、韓国大法院(日本の最高裁判所にあたる)は、戦時中、日本製鉄で強制労働させられた韓国人元徴用工が損害賠償を求めた裁判で、会社に賠償を命じる判決を言い渡した。その後、三菱重工についても、同じような判決がなされた。
徴用工は、戦前に日本の植民地下にあった朝鮮半島から多くの人々が日本に連れてこられ、鉱山、炭鉱そして工場で過酷な労働に従事させられた人々のこと。初めは募集、官斡旋(あっせん)、そして国民徴用令による徴用となったが、形式の違いはあっても実態として強制労働だった。
私の父も三池染料の徴用係として朝鮮半島から徴用工を連れてきたと生前に語り、驚きました。
日本社会では、この大法院判決を安倍内閣を先頭として「ちゃぶ台返し」として非難する人々がいる。それは、1965年6月の日韓基本条約・請求権協定で決着ずみだという。しかしながら、実は日韓請求権協定で放棄されたのは、国家の外交保護権であって、個人の請求権まで放棄されたわけではない。
ところが、日本のマスコミの多くは、そこを区別せず、避難の大合唱に加わっています。
たしかに、1961年12月に韓国政府が8項目12億2千万ドルを日本政府に要求したなかには、徴用工についての賠償として3億6400万ドルがふくまれていた。これに対して日本政府は、元徴用工に対する賠償を否定しながら、12億ドルの要求を3億ドルに値切って政治決着させた。なので、韓国政府としては、請求権協定のあとは日本政府に元徴用工についての賠償は求めていない。
なるほど、そういうことだったんですね…。
そして、日本の国会では、個人の請求権が消滅していないことは繰り返し、政府答弁で名言した。
「これは、日韓両国が国家として持っている外交保護権を相互に放棄したということ。したがって、個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではない」(1991年8月27日、柳井俊二・外務省条約局長)
河野太郎外務大臣も、最近の国会で、個人請求権が消滅していないこと自体は認めた(2018年11月14日)。
ところで、同じように強制連行された中国人元徴用工について日本の裁判所は時効だ、除斥期間を過ぎているとして請求棄却して大きく批判された(1997年12月10日、東京地裁判決)。この判決を原告側が控訴したところ、東京高裁(新村正人裁判長)は和解を勧告し、2000年11月29日、和解が成立した。そして、その後も、2009年10月23日、西松建設広島安野の和解、2016年6月1日の三菱マテリアル和解と続いた。ただし、鹿島建設が和解において法的責任を認めたわけではないとしたことから、日中間で、いくらかゴタゴタが起きた。
責任といっても法的責任と道義的責任がある、また三菱マテリアル和解のときには「歴史的責任」と表現された。そして、原告側が被告の主張を「了解した」というのも、承認・了承ではないということなのだが、その差(違い)は微妙なところだ。
この本によると、朝鮮人元徴用工との裁判で新日鉄や日本鋼管、そして不二越が和解に応じて、解決金200万円、410万円、3000万円を支払ったことも紹介されています。
判決だけでなく、和解による解決金支払いという決着もありうるわけです、
そのとき、最高裁判所に「付言」があったことの意義も著者はきちんと評価しています。
最後に、裁判官の苦悩を少し紹介します。
2006年3月10日の長野地裁・T裁判長(この人だけ、なぜか実名ではありません)
「和解が成立できなかったことを残念に思い、お詫びします。自分は団塊の世代で全共闘世代に属するが、率直に言って私たちの上の世代は随分ひどいことをしたという感想を持ちます。裁判官をしていると、訴状を見ただけで、この事案が救済したいと思う事案があります。この事件も、そういう事件です。一人の人間としては、この事件は救済しなければならない事件だと思います。心情的には勝たせたいと思っています。しかし、どうしても結論として勝たせることができない場合があります。このことには個人的葛藤があり、釈然としないときがあるのです。最高裁の判決がある場合には、従わざるをえません。判決を覆すには、きちんとした理論が立てられないとやむをえません。この事案だけに特別の理論をつくることは、法的安定性の見地から出来ません…」
2007年3月26日、宮崎地裁・徳岡由美子裁判長
「当裁判所の認定した本件で強制連行・強制労働事実にかんがみると、道義的責任あるいは人道的責任という観点から、この歴史的事実を真摯に受けとめ、犠牲になった中国人労働者についての問題を解するよう努力していくべきもの…」
2005年3月7日、福岡高裁宮崎支部・横山秀憲裁判長
「被告弁償によって解決すべきであると判断した。当裁判所も和解に向けた努力をしてきたが、現在に至るも解決できず、判決することになった。今後とも、関係者の和解に向けた努力を祈念する」
2009年11月20日、仙台高裁・小野定夫裁判長
「強制労働により、きわめて大きな精神的・肉体的苦痛を被ったことが明らかになった。その被害者らに対して任意の被害救済が図られることが望ましく、これに向けた関係者の真摯な努力が強く期待される」
大変、時宜にかなった、すばらしい内容の新書です。広く読まれることを心から祈念します。あわせて、著者の今後ひき続きの健筆を期待します。
(2020年7月刊。880円+税)

あやうく一生懸命生きるところだった

カテゴリー:朝鮮・韓国

(霧山昴)
著者 ハ・ワン 、 出版 ダイヤモンド社
韓国で25万部も売れてベスト・セラーになった本です。
イラストレーターになって、しゃかりきにがんばったこともある著者が、ある日、ふと、いったい自分は今、ここで何をしているんだろう…と振り返ってみたのです。すると…。
必死に努力したからといって、必ずしも見返りがあるとは限らない。
必死にやらなかったからといって、見返りがないわけでもない。
人生とは、実に皮肉なものだ。
2000年代の初め、テレビで有名女優がカード会社のCMで、こう叫んだ。
「みなさーん、お金持ちになってくださーい」
私はテレビを見ることはありませんが、日本のテレビでこんなCMが流れるとは、とても思えません…。この「お金持ちになってください」という言葉は、韓国では、またたく間に国民的流行語になった。それ以降、韓国では、「お金持ちになろうフィーバー」が吹き荒れた。そして、韓国は、お金が最高という、物質万能主義社会になった…。そういうものなんでしょうね。
ほかの選択肢はないと妄信(もうしん)してしまうのは、いかに愚かなことか…。
世の中、そして人生は、決して一筋縄ではいかない。世の中のすべてが自分ひとりで解決できるレベルの問題ではないからだ。
理想どおりにならなくても人生は失敗じゃない。人生に失敗なんてものはない。
自分が自分の人生を愛さずして、誰が愛してくれるだろうか。自分の人生だって、なかなか悪くないと認めてからは、不思議とささいなことにも幸せを感じられるようになった。
幸いにも、万人ウケしそうなものをやっても結果は変わらない。
結果なんか分からないのだから、自分の好きなことをやったほうがいい。
「一生懸命がんばります」と言うとき、嫌いなことを我慢してやり遂げるという意味が含まれている。つまり、楽しくないのだ。
だから、一生懸命に生きるのは、つらい。それは我慢の連続だから。同じ人生、どうせなら「一生懸命」より、楽しく、のほうがいい。
天才は努力する者に勝てず、努力する者は楽しむ者に勝てない。
つまるところ、人生は一回こっきり、あまり肩肘張らず、ゆったり気分で、1日を過ごしたい。たしかに、そんな気にさせてくれる本でした。
(2020年3月刊。1450円+税)

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