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カテゴリー: 宇宙

連星からみた宇宙

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 鳴沢 真也 、 出版 講談社ブルーバックス新書
事件のことや事務所運営で悩みをかかえているときには、宇宙の話に没入するのが一番です。そこには、何十年とかいう単位はありません。はじめから何万光年の世界です。もちろん個々の私たちがそんなに長く生きられるはずもありません。すべては脳内の、いわば妄想に等しい世界です。
さてさて、連星って何…。宇宙に存在する星々の、およそ半数は連星。連星は、ありふれた存在。星の質量が分かるのは連星のおかげ。連星になっていると、2つの星の質量を知る方法がある。また、ブラックホールの存在も連星によって確認できた。
連星とは、重心のまわりを公転しあう星。連星とは、あくまで2つの恒星が回りあっているもの。
シリウスのような1等星は、全天に21ある。このうち6つが連星。春の1等星である、おとめ座の「スピカ」、夏の夜空の、さそり座の「アンタレス」が連星。北極星は、三重連星。冬の代表的な星座であるオリオン座の1等星「リゲル」は4重連星。現時点で判明している最多の多重連星は7重連星。さそり座とカシオペア座にある。
星は、人間よりも、双子で生まれる確率が圧倒的に高い。連星は分裂してできたわけではない。生まれたときから連星だった。
太陽にしても、かつて兄弟の星がいたかも…。太陽から110光年先にある7等星は、年齢、質量、半径、表面温度、そして科学組成が太陽とほぼ同じ。だったら、地球に似た惑星があって、生命体がいたりして…。
太陽系は銀河の中心を2億年かけて1周する公転をしていて、太陽はすでに20回以上も公転している。
全天の肉眼で見える星の11%が二重星か、3つ以上の星が近寄っている。
太陽の寿命は100億年。現在、46億歳なので、一生の半分を終えたところ…。なんと、なんと、人間の100年の寿命とかいうのは、これに比べると、あっというま…でもありませんよね。
連星は、謎のX線源をつくり、通常ならけっして姿を見せないブラックホールの姿を暴き出す役割を果たした。連星がなかったら、人間は存在していない可能性がある。たとえば、硫黄、カルシウム、鉄などは、超新星爆発のときに合成される。
著者は断言する。もしも宇宙に連星がなかったら…、宇宙はかなりつまらない。
なーるほど、そうかも、いや、そうだろうと私も思いました。
(2020年12月刊。税込1100円)

かぐや姫は、どうやって月に帰ったの?

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 寺田 健太郎・いぬいまやこ 、 出版 大阪大学出版会
「かぐや姫は、満月の夜におじいさんとおばあさんに見送られて月に帰っていきました…」
実際、満月のとき地球から月に吹く風に乗れば、30分で月に着くというのです。ええっ、本当でしょうか…。
地球と月とは、38万キロも離れている。これは、地球を30個ならべた距離。飛行機で休まずに飛ぶと、20日間、車で走り続けると6ヵ月、歩いたら10年かかる。
太陽風(ふう)は、大阪から東京まで1秒で着くくらいの速さ。これに対して台風だと、木の葉が運動場の端から端まで1秒で飛んでいく速さ。
地球上の表面では、空気でいちばん多い粒は、窒素。宇宙に近づくと、バラバラの酸素が多くなる。
満月のときは、太陽と地球と月が一直線に並ぶ。そして、満月のときには、太陽風に吹き飛ばされた地球の酸素が月に届いている。この地球からの酸素の風は、1秒間に200キロ進むほどの速さ。30分で月にたどり着く。
月は、地球の4分の1もある大きな衛星、こんな大きな衛星が地球のまわりをまわっているから、地球の軸はふらふらしないで、毎年、安定して春夏秋冬という四季を過すことができる。
大阪大学の寺田博士が、月に地球の酸素が届いていることを発見したのをご本人が分かりやすいマンガ(絵はいぬいまやこ)で紹介している楽しい本です。学者の本も、ここまでくると、本物です。子どもたちに、なんとか難しいことをやさしく伝えたいという気持ちが伝わってきます。子どもと一緒に読んでみてください。
(2020年10月刊。税込1870円)

日本に現れたオーロラの謎

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者  片岡 龍峰 、 出版  化学同人
 かつて、京都でもオーロラを見れたというのですから驚きます。鎌倉時代の和歌の達人・藤原定家の日記『明月記』にオーロラが登場するのです。1204年(建仁4年)2月21日のことです。
 オーロラは、宇宙空間が人間の目にも見えるようになる現象のこと。磁気緯度で65度くらいがオーロラを見やすい。南極の昭和基地でも観察される。
 オーロラは、地上からの高さで100キロ(緑色)から400キロメートル(赤色)上空のあたりで発光している。国際宇宙ステージョンがオーロラに突入することもある。太陽風が大気にぶつかって出来るのがオーロラだというのは間違い。太陽風は、地磁気にさえぎられて大気にはぶつからない。
 オーロラを光らせるために必要な要素は、太陽風、地磁気、大気の三つ。太陽風は、太陽から吹き出している風のことだが、地上で吹く風とは違って気温100万度といった高温のため、気体ではなく、プラズマ状態。
 赤や緑のオーロラが光っているのは地球だけ。酸素原子が刺激を受けて出している。木星や土星は水素の塊なので、ピンク色のオーロラが出る。宇宙空間は真空とはいうものの、完全な真空ではなく、地球の空気の名残りの酸素原子がわずかに散らばっている。
 地球の周りには、常に太陽風や爆風(コロナ質量放出)によるプラズマの風が吹きすさんでいて、宇宙空間が何もない真空の真っ黒なものというイメージでは今はない。
7世紀は、地磁気の北極が日本のほうに傾いていて、日本各地は現在よりも磁気緯度が高くなっていたので、オーロラが観測しやすい状況にあった。
 江戸時代に入って、1770年(明和7年)9月17日にも日本中でオーロラを見たという目撃談が書かれている。本居宣長(当は41歳)、もオーロラの目撃者の一人だった。このとき、人々の多くは恐れおののいた。火の雨がふるので屋根に水をかける人もいた。ただし、何ごとにも動じない僧侶だっていた。
 そして、1958年(昭和33年)、昭和基地にカラフト犬のタロ・ジロが置き去りにされて翌年、生存しているのを発見されたタロとジロの話のころにも星形のオーロラが北極道で見られたそうです。暗黒の宇宙空間のなかに漂う地球という存在が愛(いと)おしくなってきました。
 それにしても、日本人の日記好きは文化の発展につながり、その将来を切り拓いているのですよね…。
(2020年10月刊。1500円+税)

地球科学入門

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 平 朝彦、JAMSTEC 、 出版 講談社
今から50年前ころは、ウェゲナーの大陸移動説はインチキ科学とバカにされていました。やがて、プレートテクトニクスという、地球内部が動いているので大陸も移動するという学説が登場し、みるみるうちに有力になっていきました。これが門外漢の私の認識です。
ところが、今では、地球はずっとずっと揺れ動いていて、ちっとも固定していないというのが定説です。
地球史において大陸は、離合集散を繰り返し、最新の地球学的研究からは5億年から8億年周期で超大陸が形成されると考えられている。
地球の歴史って、30億年でしたか…。もう何回も大きく変わっているということなんですよね。
アフリカにある大地溝帯で人類は誕生したようです。いったいなぜなのでしょうか…。ルーシーが有名ですよね。
日本列島で地震が絶えないのは、南海トラフ、駿河トラフそして相模トラフなどは太平洋側にあるからです。なので、いつ強烈な大地震が起きるか分かりません。不思議なことに深海にも生物がたくさん生存しているのですよね。いったい水圧はどうやってはねのけているのでしょうか。
深海では光合成はできないため、化学合成に頼っている。いったい、どうやって…。
雲仙大山が噴火し、火砕流が発生して死者43人という大惨事を起こしたのは1991年6月3日のこと。もう30年にもなるのですね。そして、この雲仙火山は、江戸時代の1792年にも噴火して、眉山が山体崩壊して対岸の熊本にまで被害をもたらした。「島原大変、肥後迷惑」として知られている。
阿蘇火山では9万年前に巨大噴火があり、火砕流は九州北部から山口県にまで達した。このときの火山灰は北海道にまで広がっている。
大観峰に立つと、その巨大噴火のスケールの大きさをしのぶことができます。
カラー図解なので、まったくの素人にもよく分かる入門書です。
(2020年11月刊。2500円+税)

はなぶさ2、最強ミッションの真実

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 津田 雄一 、 出版 NHK出版新書
はやぶさ2は無事に日本に戻ってきました。目下、リュウグウで採取してきた岩石の分析中だと思います。この本では、はやぶさ2がリュウグウに無事たどり着き岩石を採取し、地球への帰還の旅を始めるところまでが語られています。
なにしろすごい話の連続です。たとえ話でいうと、東京スカイツリーのてっぺんから、富士山の頂上にいるミジンコを見分けることができるほどの分解能をもつデルタドア。
はやぶさ2から送られてくる電波を地球上の日本とアメリカとオーストラリアにある複数のアンテナで同時に受信し、その位相差を計測することで探査機の太陽系内での位置を正確に測る。数億キロメートルの彼方を飛行する探査機の位置をキロメートル単位で正確に測ることができる。
はやぶさ2は、イオンエンジンで宇宙を高速で飛んでいる。その時速5400キロというのは、新幹線の20倍、飛行機の6倍の速さ。これほどの加速量をはやぶさ2の重さ609キログラムのうちのわずか30キログラムの燃料でまかなう。
イオンエンジンは、キセノンを燃料とする極端に燃費のいい宇宙用の推進機関。キセノンをマイクロ波のエネルギーで電離させ、その電荷を帯びた粒子(プラズマ)に高電圧をかける。プラス電荷の粒子がマイナスの電極に引きつけられることを利用し、キセノンのプラズマ粒子を加速して宇宙空間へ射出する、その反動で機体を推進させる。発生できる力は1グラム重。地球上で1円玉ひとつを持ち上げられる力。そして、その1グラム重を1年間ずっと発生し続けるのに必要なキセノンはわずか10キログラム。これで、はやぶさ2を時速2000キロメートルまで加速することができる。イオンエンジンは、力は弱いが超絶持久力のある推進機関だ。
はやぶさ2の根幹技術は、4つ。一つは、このイオンエンジン。二つは光学誘導航法、三つはサンプル採取技術、四つは高速大気圏突入技術。
はやぶさ2のチームづくりでは共通体験を重視し、いかに失敗を経験させるかを重視した。すごい発想です。模擬訓練のときには、神様チームと運用チームとに分かれ、神様チームはとんでもない無理難題を運用チームに押しつけるのでした。その一つには、重要人物が嫌なタイミングで腹痛になって管制室から消えてしまう。そんなとき運用を続行してよいのか…。「こんなトラブル起こるわけない」というトラブルまで、ありとあらゆるトラブルを想定して、その対策をみんなで練っていったというのです。すごいです。
計算だけを頼りに、30億キロメートルもの距離を目隠して飛び続けていて、ある日ぱっと目を開いたら、その視野の真ん中にちゃんとリュウグウがうつっていた。嘘のような本当に起きた話です。
はやぶさ2がリュウグウに着陸できるのは直径6メートルのエリア。なので許される着陸誤差は3メートルしかない。そして、実際に着陸したときの誤差は、なんとわずか1メートル(60センチ)しかなかったのでした。いやはや、これが3億キロメートル彼方の未踏天体への初着陸なのです。
はやぶさ2の管制室の休憩スペース「スナック姫」には安いスナック菓子とアルコールなしの飲料のみだったとのこと。やっぱりアルコールはダメなんですよね。外ではいいわけでしょうが…。
はやぶさ2に関わったチームのメンバーが、次から次へ難局に直面しながら、まったく悲壮感がなく、いかにも壮大な実験を楽しんでいるという様子が手にとるように伝わってくる、ハラハラドキドキの面白い本でした。日本の科学者もやりますね…。
一読を強くおすすめします。
(2020年11月刊。900円+税)

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