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カテゴリー: 宇宙

深すぎてヤバい宇宙の図鑑

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 本間 希樹(文) 、ポピコ(絵) 、 出版 講談社
 地上世界の俗事に毎日ドップリ浸って、そこで生活の糧(かて)を得ている身として、たまにはスケールがまったく異なる宇宙空間に思いを至すと、脳の中が洗い清められる気がします。
 しょせん人間の身体は宇宙の星くずから成るものであり、死んだら、元のように宇宙に帰っていくだけ。そう思ったら、地上にお墓を建てるなんて、まるで無意味なものでしかないと思えてくるのです。いかがでしょうか…。
 人間の体を形づくっている元素は星の”燃えかす”であり、人間の体は「星くず」から出来ている。なぜ、そんなことが言えるのか…。
 宇宙がビッグバンによって誕生して3分後、それまでなかった元素、水素とヘリウムができた。その後、数億年たって、多くの星が生まれ、星の中心では核融合が始まった。そのなかで水素やヘリウムがより重い元素、炭素や窒素などに変換した。そして、星が一生を終えるとき、大爆発して鉄などのとても重い元素を宇宙にまき散らした。
 宇宙では星の一生とともに時間をかけて重元素が増えていった。星は元素を生産する工場だった。
 地球に空気があるのは、地球が空気をつなぎ止めておくのに十分な重力を持っているから。月は重力が地球の6分の1しかないため、大気は存在しない。
 昔の地球の大気は二酸化炭素がほとんどだった。そして、地球にある酸素をもたらしたのは植物。植物の光合成のおかげで酸素が地上に増えていった。
 地球上の水がどこから来たのかは、今もって解明されていない謎のまま。今のところ有力視されているのは、地球誕生後に大きな小惑星や慧星が地球に衝突して水が宇宙から降ってきたというもの。いやはや、水が地球上になぜあるのか、だなんて考えたこともありませんでした。
 太陽エネルギーの燃料は水素原子。今から50億年後に燃え尽きてしまう。
 50年後ではありませんので、ご安心ください。億年という単位なのです。もちろん、今の私たちは木っ葉みじんとなって、星くずの姿で宇宙空間のどこかに漂っていることでしょう…。
 私たちの太陽をふくめて、すべての星には寿命があり、いつかは燃えつきて死んでしまうのです。でも、星の死は、新しい星を生む材料になるのですから、何も悲観したり、絶望することはありません。そうなんです。こう考えたらいいのです。
 銀河系の星は「天の川」にたとえられているが、「天の川」の星は本当に流れている。つまり、星々は、それぞれ特定の方向に「天の川」にそって流れるように動いている。
 月はゆっくりと地球から遠ざかっている。毎年4センチほど遠ざかっているのだ。なので、今から10億年たつと、皆既日食は起きなくなってしまう。
 50億年後、地球はふくれあがった太陽に呑み込まれてしまう。それまでに地球上の人類は地球を脱出しておかないと、人類は生きのびられないのです。まあ、そんなこと今の私たちが考えたり、心配しても意味のないことですけどね。
 今の技術だと、隣の星まで行くのに4万年かかってしまいます。4万年なんて、気の遠くなる年月です。
 ボイジャー号は打ち上げから45年たった今も時速6万キロの速さで太陽圏を脱出している。すごいことですが、それでも、隣の星までたどり着くのには、あと7万年以上かかるというのです。ショックを受けました。
 どうですか、たまにはこんなスケールで物事を考えてみたら…。いいこと、必要なことです。でも宇宙学者って、すごい人たちですよね。
(2023年9月刊。1400円+税)

暗い夜空のパラドックスから宇宙を見る

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 谷口 義明 、 出版 岩波科学ライブラリー
 宇宙は無限に広く、星の数も無限にあって、星は宇宙に一様に分布していたとしたら、私たちは上空を見たら必ず、どの方向にも星、つまり太陽を見て、空を埋めている、つまり、昼も夜もなく、明るい空が広がっているはず。
 しかし、現実の夜空は暗い。なぜなのか…。これが「オルバースのパラドックス」と呼ばれているもの。私は、このパラドックスを知る前は、単純に夜空は暗いもの、星は暗い夜空でまたたくもので、満天の星というのは高い山でしか見ることのできないものであって、星が夜空を埋めていないはずがない、なんて考えもしませんでした。
 そこで、この「パラドックス」を否定するため、先人たちは、いろいろと考えました。
 ある人は、宇宙空間に存在する物質が光を吸収するので、夜空は暗いと考えた(間違い)。
 夜空が暗いのは、遠くの星の光が地球にまで届かないからと考えた(これも間違い)。
 星にも寿命があるから、夜空は暗くても問題ない(星に寿命があるというのは正しい)。
 この宇宙は悠々の過去から存在したのではなく、138億年前に誕生した。では、いったい、その前は何があったのか…。
 宇宙の現在の大きさは470億光年。とても大きな数字だが、肝心なことは、無限大ではなく、有限だということ。
 著者は、夜空が暗いのは、宇宙にある星の数が少ないからだとしています。ええっ、星の数って、無限にあるんじゃなかったの…??
 肉眼で見えるのは、6等星まで。宇宙に銀河がたくさんあるといっても、数億光年内という銀河でも、10等星以上くらいのもの。
 もっと遠いと25~30等星。なので、星がたくさんあっても、話にならない。夜空を明るくするほど星はない。
 全天にある1等星は、わずか21個。1等星を集めて太陽の光度を実現するには、なんと1000億個の太陽が必要となる。
 銀河系には2000億個の星しかない。だから、銀河系の星々をすべて動員しても、夜空を埋め尽くすことはできない。正解は…。夜空が暗いのは、この宇宙には夜空を明るくするほどの星が存在しないから。この宇宙では、星をつくる物質に限りがあるため、夜空を星で埋め尽くすほど星をたくさん生み出すことはできないのだ…。
 ふだんの私たちが当たり前のことと考えていることでも、「本当にそうなの?」と訊かれると、うまく回答できないことがあります。
 暗い夜空の星がなぜ見えるのか…。面白い着眼点です。いかがでしたか??
(2023年10月刊。1540円)

賢治と「星」を見る

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者  渡部 潤一 、 出版  NHK出版
 福島県に生まれ、東大東京天文台で働く高名な天文学者(教授)が、宮沢賢治を語った本です。宮沢賢治が天文学を深く研究していたことを初めて知りました。天文学者の眼から見た宮沢賢治という面白い視点で貫かれている本です。
 宮沢賢治の本に登場する数々の星たちや星座に関する記述は、天文学者の目から見ても、かなり正確。賢治の宇宙に関する知識は当時としては、半端なものではなかった。
宮沢賢治は、石集め、植物採集そして化石掘に熱中した。
賢治が中学2年生のとき(1910年)、ハレー彗星が地球に接近してパニックを引き起こした。彗星の尾に含まれる有毒ガスによって地球の生物が全滅するというデマが流布したのです。自転車のチューブがバカ売れしたという話もあります。それで、息継ぎをしてしのぐという馬鹿げた対応策に走った人々がいたのです。
 賢治は、東京で「星座早見」を手に入れている。
 宮沢賢治の物語の基本パターンは、現実から入り、夢のような体験を得て、ふたたび現実に戻るというもの。
細い月のとき、欠けて暗くなっている部分がほのかに輝いて見えることがある。これは、地球にあたって反射した太陽光が月の暗い部分を照らし出しているもの。「地球照」(アースシャイン)と呼ばれる。賢治は、この言葉を自分の詩に取り入れている。
賢治は「鋼青(こうじょう)」という表現を空について使っている。青みを帯びた鋼色(はがねいろ)という意味。夜明け前の夜空が次第に青みを帯びた昼の色に変化していくときの表現。
「銀のきな粉」でお空がまぶされるというのは、満天の星がまたたいている夜空の様子。
夜明け前には、空気が冷えて露が出てくることがある。そんな夜明け前の露に、月も星も隠されてしまう。
「月は、もう青白い露に隠されてしまって、ぼおっと円(まる)く見えるだけ」
シリウスの輝きについて、賢治は、「青や紫や黄や、うつくしくせわしく、またたきながら…」と表現している。たしかに、明るい星が低空で激しくまたたくとき、しばしば色が瞬間的に見えることがある。七色の輝きが消えたり、見えたりして美しい。
世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない。この宮沢賢治の指摘は、今日、ますます輝いているように思われます。
目先の利益だけを追求して原発(原子力発電所)を再開・新設そして、その使用済の核燃料処理場を受け入れようとするなんて、とんでもない間違いです。自分の国を守るには核兵器を持たなければいけないというのは、核戦争を肯定することです。でも、そんな事態で、人類が生き残れるはずもありません。「核の冬」がたちまち到来し、凍結し、餓死してしまうことでしょう。
この本を読んで初めて賢治が石灰工場に技師として勤めた意味が理解できました。要するに、農地の改良、肥料づくりをしようとしたのですね。農民の生活を向上させるためのものです。
オーストラリアの砂漠地帯では、夜、人口光の影響をまったく受けないので、月の光さえなければ、天の川の明るさで、自分の影ができるほどだというのに驚きました。
そして、タイタニック号の沈没(1912年4月)というのを、賢治は同時代の人間として受け止めているのです。
宮沢賢治は1933(昭和8)年9月21日、39歳で亡くなりました。結核、そして急性肺炎によるもののようです。
賢治を通して宇宙のことを知った気分になった本です。
(2023年9月刊。1650円+税)

夜空の星はなぜ見える

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 田中 一 、 出版 北海道大学図書刊行会
 夜空は暗い。満月の夜が明るいといっても本を読むのは辛いし、星だって見える。
 でも、よーく考え直してみたら、夜の空が暗いって、実はあたり前なんかじゃない。だって、星って、無数にあるはず。だったら、満天は無数の星で埋め尽くされて、暗いはずがない。
 でも、反対に、星って地球からは遠い遠いところにあるものそうすると、そんな遠いところの星が発した光が地球まで届くのに何万年もかかったとき、その光が人間の目に一点の光として感じるって、そんなことが本当にできるの…。
 というわけで、夜空の星を私たちが見ることのできるのは、実は奇跡的な出来事のはず。でも、夜になると、星はフツーに空にあって、またたいて見える。いったい、どういうことなの…。
 この本を初めて私が読んだのは、今からなんと49年も前の4月のこと。つまり私が弁護士としてスタートを切った4月、まだ弁護士バッジも受けとっていないときのことでした。
 この本から受けた衝撃は大きく、そのため本棚の片隅に置かれながらも、決して捨てることはありませんでした。いま「終活」と称して、本棚の整理をすすめているのですが、手に取ったとき、もう一度よく読んでみようと思って、人間ドッグの泊まりで読む本の一冊として選んだのです(いつも一泊ドッグで6冊よみます)。
太陽からの光は、大気で反射し、また大気に吸収されて、地上に達するのは、その半分、つまり1平方センチメートルあたり1分間に1カロリー。太陽から放射された光は、500秒で地球に到着する。
 網膜上に集められた光は、網膜を構成する細胞によって吸収される。夜空の星のなかで一番明るく輝いているのは、真冬の南天にある大犬座のシリウス。このシリウスが見えるためには、「理論」上、0.96光年以内に存在しなければならない。しかし、シリウスは実は8.64光年の距離にある。この最も明るいシリウスを見ることができないのだから、夜空のすべての恒星を人類が眼で見ることはできない。
 こんな「理論」的結論は、もちろん明らかに間違っている。そりゃあ、そうですよね。星は夜空でバッチリ輝いていますからね。
 星野村にある天文台の大型の天体望遠鏡をのぞくと、昼でも星が見えます。これには驚きました。最近久しく行っていませんが、ホテルが併設されていますので、泊まりがけで行って、夜空をのぞいてみたいです。
 人間の網膜は、「理論」よりはるかに遠い光の到着を敏感に感じている。1千光年先の星を人間は見ることができる。なぜか…。
 著者は、そこで、次に光とは何かに挑みます。ここになると、かなり難しくなってきます。要するに、光とは粒子であって波でもあるということ。両立しそうにないのに、両立しているという量子力学の世界です。
 網膜に届く光量子が5個から8個になると、光の到着を網膜は感じる。光の粒子性を仮定すると、夜空に輝く星は、千光年に及ぶ遠方のものまでこの眼でたしかに見ることができる。
 そして、光という単一の物質が、波動であって、かつ粒子だというのはとうてい受け入れがたいところだが、光が粒子性と波動性を同時にもちうるなら、夜空の星を人間の眼が感得できることになる。
 光量子数が多いときには、きわめて良い精度で、全エネルギーが定まっていながら、それと同じように、光の位相がほぼ一定の値をとることが許される。通常の光が波動性を顕著に示すゆえんである。
ここはちょっと理解が難しいですね…。それはともかく、次は、なぜ夜の空は全天満天の星で覆われていないのか、なぜ暗いのか…、です。
 結局、これは宇宙が膨張しているからだと私は思います。すべてが光速で膨張していったとしたら、満天が星で覆い尽くされるはずがありません。
 というわけで、私の宇宙に関する謎は深まるばかりなのでした。いかがでしたか…。
(1973年9月刊。840円)

宇宙検閲官仮説

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 真貝 寿明 、 出版 講談社ブルーバックス新書
 宇宙のなりたちに関心のある私ですから、さっぱり理解できないながらも、どこか分かりあえるところがないかと手探りですすみながら、ともかく読みすすめてみました。
 アインシュタインの一般相対性理論は、「質量があると時空が歪(ゆが)み、歪んだ時空が重力の源である」と説明するもの。こんなこと言われても、まるで理解できませんよね…。
 ブラックホールが宇宙に存在するのは確実です。このブラックホールは、一般相対性理論が予言した天体。一般相対性理論の根幹をなすアインシュタイン方程式の解は、ブラックホールの内側に特異点が存在することを示している。特異点は、時空の対称性などの仮定によらず、一般的に存在することが、特異点定理によって数学的に証明されている。
 宇宙検閲官仮説とは、この特異点が発生しても、ブラックホールの中に閉じ込められているから心配しなくてもよいだろうとする仮説。すなわち、ブラックホールなしに「裸の特異点」が出現すると、それは自然界の検閲に引っかかって隠されるはずということ。いやはや、これまた私の理解をこえてしまいます。
 裸の特異点とは…。巨大な星が重力崩壊して、電子の反発力で支えられず(白色矮星となれず)、中性子の反発力で支えられず(中性子星となれず)、さらにつぶれ続けるならば、支えるものがなく、一点に無限大の質量が蓄積する時空特異点が出現する時空になってしまう。でも、時空特異点が生じても、それがブラックホール地平面の内側のことなら、外側の世界には影響が出ない。
 ブラックホールは発生できるが、消滅できない。
 ブラックホールは合体できるが、分裂できない。
皆既日食のとき、太陽の近くに見られる星の位置が通常とは異なるという観測データによって、太陽の質量によって空間が歪み、その歪んだ空間を光が進むため、皆既日食以外のときとは光の進む方向がずれてしまう。
 遠くの銀河にある変光星ほど、赤っぽく見えている。これは、宇宙全体が膨張していることの証拠。つまり、ドップラー効果によるもの。
 分からないながらも、宇宙について考えると、自分の死後、宇宙はどうなるんだろうか…というのが、実にちっぽけな、とるに足らない心配だと、いつのまにか雲散霧消してしまうのです。
(2023年2月刊。1100円+税)

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