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カテゴリー: 人間

お父さん、だいじょうぶ?日記

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 加瀬 健太郎 、 出版 リトルモア
 お父さんはカメラマン。しかも、どうやら新聞社のような会社勤めではないらしい。昼間から家にいて、幼い子どもたちの写真を撮っている。そんな子どもたちが主人公の写真集みたいな本です。子どもは男の子ばかり3人。でも、この本には末っ子はまだ登場しない。男の子2人はイタズラ好きな、やんちゃで力があり余っています。
 私にも、孫2人が男の子なので、似た感じです。たまに同居して一緒に生活すると、それはもう朝起きたときから大変です。嵐が吹きまくります。それでも昼寝してくれるときは、午後、少しばかり静かになります。まさしく台風の眼のなかに入った感じです。でも、やがて目が覚めると、たちまち嵐の参上です。
 忙しくない写真家なので、よく家にいる。すると嫁さんに嫌がられる。気を使うからって…。
 そうなんですよね。だから私は外に出かけて列車に乗って喫茶店に入り、本を読みます。周囲に少しの雑音があったほうが読書に集中できます。ところが、元気のいいおばちゃんたち何人かが話し始めると、たまりません。さすがに集中できなくなるので、そそくさと立ち去ります。何事にもモノには限度というものがあります。
子どもたちの寝相が悪いのは万国共通なのでしょうか。私の子どもたちのときもそうでしたし、孫たちも同じです。いつのまにか、とんでもないところで寝ています。寝ている大人を乗りこえたりもします。
 私も、初めての子(長男)のときは、冬、布団からはみ出し何もかけずに畳の上に寝ていたり、お腹まる出しになっているのを見て、慌てて布団をかけてやりました。だけど、体温の高い子どもたちは平気なのです。それくらいで風邪をひくこともありません。それが分かったので、二番目の子どもからは寝相の悪いのを見ても、まったく心配しなくなりました。何事も経験がモノをいいます…。
庭に1メートルを超えるヘビが死んでいるのを発見したという。子どもが手に持ってぶら下げている。
 我が家の庭にも昔からヘビが棲みついています。死んだヘビをみたのも1回ありますし、ヘビの抜け殻も見ました。今のところに住むようになってまもなく、ヘビを見つけたとき、怖かったので、棒を持ってきて叩き殺してしまったこともありました。でも、あとで反省して、それからは見つけても殺さないつもりでやっています。ところが、夏、家人がヒマワリの下で雑草とりをしていて、ひょっと上を見ると、ヘビがヒマワリにぶら下がって昼寝していたそうです。ですから、茂みに入るときは物音を立てるようにしています。
 ヘビがいるのは、モグラがいるからです。ミミズもいたるところに穴を掘っています。自然と共存するって、案外、難しいものなんです。
 子どもたちは穴を掘るのが大好きです。庭に深い穴を掘って水を入れ、ちょっとしたプールをつくりあげたりもします。
子どもたちはすぐに大きくなります。まさしく、あっという間に大きくなってしまいます。もうすぐ、孫たちが遊んでくれなくなるのかと思うと、寂しいです。今のうちせいぜい楽しませてもらうつもりです。
(2021年5月刊。1760円)

いのち輝け、二度とない人生だから

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 蓼沼 紘明 、 出版 東京図書出版
 著者は満州開拓団の子として生まれ、父が兵隊にとられたため、日本敗戦より前に母と一緒に内地に帰ってきて命が助かったのでした。敗戦時まで満州にいたら、無事に日本へ戻れたとは限りません。
 そして、父親は兵隊にとられて乗り込んだ船が沈められるなか、海上を2時間も泳いで奇跡的に陸地にはい上がって助かったのです。すごい生命運です。
 満州では著者が赤ちゃんのとき、夜中にネズミに頭をかじられ、朝起きたら布団が真っ赤に染まっていたというのです。よくぞ助かったものです。
弟を戦争で亡くした母親はテレビに昭和天皇が登場すると、いつも怒りを爆発させた。
 日本を戦争に導いた責任が天皇にあるのは間違いありません。なのに、昭和天皇はアメリカ(マッカーサー)に守られ、自ら退位することもなく、むしろ戦争を止めた、平和主義者であるかのような顔をして、日本中を駆け巡り、手を大きく振って歓呼の声を浴びていたのです。許せません。
 伊丹万作(伊丹十三の父)は、「だまされた者の責任」を厳しく問いかけたとのこと。なるほど、よくよく考えもせず、批判力も思考力も信念も失って、家畜のように盲従していった国民にも責任の一端はあるでしょう。
 同じことが、先日の兵庫県知事選挙でも起きました。パワハラ知事を正義の味方かのように信じ込んで、それを助けようと投票所に駆け込んだ県民がなんと多かったことでしょう。ヒトラーばりに、嘘も百回繰り返すと「真実」になるというのを証明してみせたのです。おお、怖い世の中です。
 著者は東大に入って駒場寮では聖書研究会に入ります。私は「教行信証」など仏教系の本は読んだことがありますが、キリスト教系は昔から縁がありません。カトリックとプロテスタントの、血で血を争う戦争を繰り返してきたキリスト教は生理的に受けつけません。
 大学生のとき肺結核となり、療養所に入ります。そして退院してくると、学友から無理なアルバイトをしないですむように毎月カンパしてくれたというのです。これはとてもいい話ですね。たしかに、昔はそんな雰囲気がありました。
 東大闘争が始まると、全共闘の暴力に抗して著者はノンセクト・ラジカルとして民青と共同戦線をはってたたかったとのこと。そのころは、多くの学生がヘルメットをかぶり、ゲバ棒を持ちました。私も何回もそんな場面にいました。暴力には身を守る暴力が必要だと考えたのです。まったく、非暴力・無抵抗でいいとは思えませんでした。今も昔も、暴力は嫌なんですけど…。
 それから、著者は東京都庁に入り、裁判所に入り、司法試験も受験します。合格できず、伊藤塾の手伝いをするようになりました。ご承知のとおり、平和と人権を守る憲法の伝導師として大活躍している伊藤真弁護士の下で支えてきたのです。
 著者の思いのたけがぎっしり詰め込まれた460頁もの大作です。
 福岡で元裁判官の西理(おさむ)弁護士より贈呈を受けました。ありがとうございます。著者の今後引き続きの活躍を祈念します。
(2024年6月刊。1980円)

きょう、ゴリラをうえたよ

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 水野 太貴(文) 、 吉本ユータヌキ(絵) 、 出版 KADOKAWA
 いやあ面白い、子どもって、ホント、天才です。
 私が一番気に入ったのは次のコトバ。お葬式で、お坊さんがお経をあげているのを見て…。
 「あのおハゲ、なんでわけわからないことを言ってるの?」
 「お坊さん」というコトバを知らない。でも、失礼のないように「お」をつけた。思わず笑ってしまいますよね、悪気のないことがアリアリですから…。
この質問に対して、「魂が天国に行けるようにしてるんだよ」と笑えると、「魂には足が何本ついてるの?」と子どもはさらに尋ねたとのこと。いやあ、鋭い質問ですよね。
 さて、この本のタイトル。何を植えたかというと…。パンジーです。なんでパンジーがゴリラになったのか。パンジーがチンパンジーになり、それを思い出せなかったので、サルに近いゴリラになったというわけ。連想ゲームもここまで来ると、たいしたものです。
 子どものころ、トウモロコシを「とうもころし」というのはよくある間違い。私の子どもは「ヘリコプター」を「へーくりっぱ」と言っていました。まあ、なんとか分かりますよね。
 「ひいばあちゃん、しんぱくないー!」
寒いの否定は寒くない。眠いの否定は眠くない。だったら、心配の否定は「しんぱくない」。「心拍ない」ではありません。
 「みず、いりたいです」
これは、水がほしいということ。「水がいる」と言ったので、ちゃんとお願いしなさいと言われて、「いる」に「~したい」がくっついて、「いりたい」になりました。なるほど、そうきたか…。
 「セミが鳴いているね」「セミさん痛いの?」
 鳴いているを泣いてると受けとめたのですね。
 「パパ、いらなかったよ!」
 これは家の中でかくれんぼをしていたとき、なかなかお父さんが見つからないので言ったコトバ。「いる」の否定なら、「いらない」。
 「また、よごれたラーメン、食べにこようね」
 このラーメンは、ドロドロしたこってり系のスープです。それを「汚れた」と表現しただけで、なんの悪気もありません。
子どもの言いまちがいには、コトバの本質が詰まっている。記憶のメカニズムのような認知能力も映し出している。
 思わず吹き出しながら一気に読んでしまいました。おかげで、ほっこりした気分に浸ったひとときになりました。おすすめの本です。
 
(2024年10月刊。1650円)

体内時計の科学

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 ラッセル・フォスター 、 出版 青土社
 私たちの身体は、しかるべき時間と場所において、適量の最適な資源を確保する必要がある。体内時計は、このニーズを予期することができる。体内時計は、単に時間を知らせるだけでなく、時間の予測や、少なくとも環境内の規則的な出来事の予測を可能にする。
 睡眠中に記憶のほとんどが確立され、問題が解決され、情動が処理される。さらに、日中の活動で蓄積された有害物質が除去され、代謝経路が再構築されてエネルギー貯蔵庫のバランスがとられる。逆に、十分な睡眠がとられなければ、脳の機能、情動、身体の健康はすべて、すぐに混乱をきたす。
 異常な睡眠は、心臓疾患、2型糖尿病、感染症、がんを引き起こしやすくする。
 睡眠は、目覚めているときの生活能力を規定し、睡眠不足や睡眠における概日リズムの混乱は、健康全般に甚大な悪影響を及ぼす。
 平均的な人間の脳には、86億本のニューロンがある。そのうちの5万本のみが、24時間周期の概日リズムを調整する「マスター生物時計」として、連携しあいながら機能している。
 この「マスター時計」は、視交叉上核(SCN)」と呼ばれる脳の部位に存在する。SCNには5万本のニューロンが含まれており、注目すべきことに、それらのおのおのが独自の時計を備えている。SCNは哺乳類における「マスター時計」ではあるが、唯一の時計ではない。おそらくあらゆる身体器官や身体組織の内部に時計が存在している。
 人間はノンレム睡眠中も、レム睡眠中のどちらにも夢を見る。しかし、レム睡眠中の夢は鮮明で、長く続き、複雑怪奇である。目が覚めても、しばらくは最後の夢を覚えていることがある。
 人間は、全人生の36%を睡眠に費やしている。睡眠とは、個体がうまく適応できていない環境内で活動することを避ける、身体的な不活動の時期を指す。この時期に、活動期に最適な結果が得られるようにする一連の基本的な生物学的活動が実行される。
 人間を含むほとんどの動植物において自己の概日リズムを昼夜のサイクルにあわせる、つまり「引き込む」ときのもっとも重要なシグナルは、光、とりわけ日の出時と日没時の光である。
 時差ボケは、睡眠と概日リズムの混乱をSCRDという。SCRDは、コルチゾールが関与する、さまざまな健康リスクを高める。
 不適切な睡眠はSCRDの重要な特徴である。交替勤務の年数、交替の頻度、1週間あたりの夜間勤務時間が増えれば増えるほど、がん発症のリスクは高まる。夜勤とがんの相関関係は非常に強い。
 年長者はコルチゾールのレベルが高く、そのためSCRDの影響を受けやすい。そして、それがストレスの増大、認知能力の低下、さらには記憶を司(つかさど)る脳領域の縮小につながっていく。
 天才として高名なアインシュタインは、夜の睡眠時間は10時間、そして日中は規則正しい生活を送っていました。天才の脳を動かすのには、夜の10時間の睡眠が必要だったというんですが、とてもマネできません。私は、7時間の睡眠と、ちょっとした「昼寝」を大切にしています。睡眠はとても大切にしています。ともかく睡眠不足では頭がまわらなくなるからです。
でも、アインシュタインのように10時間を確保しようとは考えていません。もちろん、天才ではありませんし…。
(2024年8月刊。2800円+税)

私たちは電気でできている

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 サリー・エイディ 、 出版 青土社
 人間が体内で電気を起こして(発電している)と聞いたとき、そんなバカな…と思ったことでした。でも、どうやら本当のようです。誰が、いったい、何のために体内で発電しているというのでしょうか…。
骨、皮膚、神経、筋肉など、人間の身体のすべての細胞は、さながら小さな電池のように電圧をもっている。この生態電気があるからこそ、脳は体全体に信号を送ることができる。
電気は、心と身体の病気を治療するため、いろいろな方法で利用されている。
 たとえば、パーキンソン病を治療するため脳深部刺激療法は、乾燥スパゲッティほどのサイズと形をした2本の電極を脳の深部に滑りこませて、病気の破壊的症状を鎮める。
 電気薬学は、米粒大の電気インプラントを体内の神経周辺に固定することにより、糖尿病やぜん息の回復につながる可能性がある。ラットやブタの実験では実証されている。
 人間の身体には発電所がある。体内の40兆個の細胞ひとつ一つが、それ自身の小さな電圧をもつ、小さな電池だ。
細胞が休んでいるとき、細胞の内側は、外側の細胞外液よりも平均して70ミリボルトほどマイナスに帯電している。
 生体電気は脳だけでなく、体内のあらゆる細胞に役立てられている。カエルを実験に使ったのは、カエルの神経は場所が特定しやすく、筋肉の収縮が見やすいから。カエルを解体してからも、最大44時間は、収縮が持続する。
 カエルが実験に大量に使用されるようになって、ヨーロッパではカエルが不足するようになった。
神経系は細胞から出来ているが、このことはなかなか気づかれなかった。ニューロンは、標準的な細胞のようには見えないから。
 イオンはプラスまたはマイナスの電荷をもつ原子。「細胞外液」に溶けているイオンは、海水の成分と非常によく似ていて、主にナトリウムとカリウム、このほかカルシウム、マグネシウム、塩化物が少しずつ含まれている。これらの物質の濃度が、電気信号の通過を許可するかどうかの主要な決定要因となる。
 ひとつの穴があいていると、カリウムイオンとナトリウムイオンが1ミリ秒につき、1万個から10万個の範囲でひとつの細胞に出たり入ったりする。
 ナトリウムチャンネルとは何なのか、突きとめると、つまりはタンパク質だった。
 イオンチャンネルは、ひとつのグループとしては30億歳くらい。植物も菌類も動物も、私たち人間の体内に既にあるものは…?
 膜を隔てたイオンを分離し、移動させることは、すべての生き物にとっての基本である。
 ペースメーカーを使用している人は、50万人に近い。ペースメーカーのもっとも一般的な用途は、遅い心拍数の速度を上げる。
 脳も電気を発している。このことは実験で確認された。
イオンチャンネル薬は、がん治療を前進させるもっとも妥当な方法である。
 生体電気的特性を使って、がん細胞を健康な細胞と区別できることが分かった。
 人間の生体の電気の働きについて、いろいろ役に立つことを教えてくれる本です。不思議だらけの本でもあります。
(2024年7月刊。2800円+税)

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