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カテゴリー: 人間

認知症と長寿社会

カテゴリー:人間

著者 信濃毎日新聞取材班、  出版  講談社現代新書
 
 世界で類のない速さで、日本の高齢化は進んでいる。65歳以上の高齢者は2872万人、人口の22.8%。この10年間で750万人、6.1ポイントも増えた。私たち団塊世代もやがて、その仲間に入ります。そのなかで静かに増えているのが認知症。200万人の患者がいる。いずれ、日本人の3人に1人は高齢者で、その9人に1人が認知症だという。
最近、政変というか革命の起きたエジプトでは25歳以下の人が全人口の過半数を占めるということです。恐らく、人々は長生きできないということなのでしょうね。なぜ、なのでしょうか・・・・?
 養護老人ホームが「特養化」している。2000年に介護保険制度が導入されて、様相が一変した。特養への入所が、行政の介入する「措置」から、施設と個人の「契約」が基本となったので、入所希望が急増した。特養は満杯になって、移れなくなった。
 厚生省(当時)は1999年、省令で、介護施設での身体拘束は「緊急やむを得ぬ場合」を除いて、原則禁止とした。ところが精神保健福祉法は、精神病床での必要な場合の拘束や隔離を認めている。法的にも拘束の認められた精神病床は、今、症状の激しい認知症患者の受け皿になりつつある。
 アメリカでは、65歳以上の12%、85歳以上の半数が認知症で、このうち80%がアルツハイマー病とされている。アメリカのアルツハイマー病患者は53万人で、死亡原因の
7位。2000年から2006年までに死者は46%も増加した。
 認知症ほど、さみしい病気はない。人買うも顔つきも変わってしまう。
認知症を社会全体で考えようという地方紙の77回にわたった連載ルポルタージュです。とても考えられた力作でした。癌より認知症の方が怖いのかもしれませんね・・・・。
(2010年11月刊。760円+税)

睡眠の科学

カテゴリー:人間

著者  桜井 武 、    出版  講談社ブルーバックス新書
 
 動物は命がけで眠っている。それほど睡眠って、生き物にとって必要なものなんですね。
 惰眠をむさぼるという言葉があるが、睡眠は決して無駄なものではなく、動物が生存するために必須の機能であり、とくに脳という高度な情報処理機能を維持するためには絶対に必要なものなのである。身体とりわけ脳のメンテナンスのために睡眠は必須の機能である。睡眠中は、心身が覚醒状態とはまったく異なる生理的状態にあり、それが健康を維持するために非常に重要なのである。
ヒトは眠ると、まずノンレム睡眠に入る。ところが1時間から1時間半すると、脳は活動を高める。これがレム睡眠である。このとき、脳は覚醒時と同じか、それ以上に強く活動している。このレム睡眠のときの脳の強い活動の反映として夢を見る。レム睡眠時の夢は奇妙な内容で、感情をともなうようなストーリーであることが多い。これに対して、ノンレム睡眠のときに見る夢は、多くがシンプルな内容である。
 睡眠は記憶を強化する。シェイクスピアは、睡眠こそ、この世の饗宴における最高の慈養であると言った(『マクベス』)。たしかに、睡眠は甘い蜜の味がしますよね。
 睡眠不足は肥満になる。また心血管疾患や代謝異常のリスクを増加させる。
ノンレム睡眠は、一般的に脳の休息の時間だと考えられている。レム睡眠を「浅い睡眠」というのは間違いである。レム睡眠時には、不可解なことに、交感神経系と副交感神経系が両方とも活性化している。レム睡眠時には脳幹から脊髄にむけて運動ニューロンを麻酔させる信号が送られているため、全身の骨格筋は眼筋や耳小骨の筋肉、呼吸筋などを除いて麻酔している。そのため、レム睡眠時には脳の命令が筋肉に伴わないので、夢のなかの行動が実際の行動に反映されることはない。ただ、眼球だけは、不規則にさまざまな方向に動いている。
 睡眠は脳が積極的に生み出す状態であり、外部からの刺激がなくなって起きる受動的な状態なのではない。
睡眠と覚醒はシーソーの関係にある。覚醒は、シーソーが覚醒側に傾いている状態である。大脳皮質の活動という点からみると、覚醒とは、脳の各部がさまざまな情報を処理するために活発に、かつ、ばらばらに動いている状態と言える。
 健康なヒトでは、オレキシン系が適切なときに覚醒システムに助け舟を出し、シーソーの覚醒側を下に押し下げることにより、覚醒相を安定化することが可能になっている。
 オレキシンの機能はいろいろあるが、そのもっとも中心的な機能は覚醒を促し維持すること。そして交感神経を活性化して、ストレスホルモンの分泌を促す。モチベーションを高めて、全身の機能を向上させる。意識を清明にし、意力を引き出す。
 ヒトが眠りにつく前、一時的に手足の温度が上がるが、これは手や足の血管を拡張させて、体温を外に放散させることによって深部体温を下げている。こうして脳の温度を少し下げることによって睡眠が始まる。あまり体温を上げず、しかし暖かくして眠ることが大切だ。眠気を払いたいときは、逆に考えて、手足を冷やすといい。
時差ボケを解消するのには、光だけでなく、食事によってもリセットが可能だ。これは、いいことを知りました。今度、ためしてみることにします。
睡眠に関する科学の最先端の状況が私のような一般人にもわかりやすく解説されていて、一気に読み通しました。
(2011年11月刊。900円+税)

世界130カ国、自転車旅行

カテゴリー:人間

著者 中西 大輔、    文春新書 出版 
 
 自転車で、地球を2周りしたという日本人青年の壮挙を本人が再現した本です。今どきの日本の若者もやるじゃないですか。たいしたものです。パチパチパチ・・・・。
 日本を出発したのは1998年7月。アラスカを起点として、アメリカ大陸をずっと南下します。太平洋にそって南下して、ペルーではフジモリ大統領(当時)の姉に会見してもらえました。それからヨーロッパに渡り、アフリカに行き、オーストラリアへ飛ぶのです。地球2週目は、イースター島を経て、南アメリカに行き、ブラジルでサッカーのペレに会ったあと、アメリカでもカーター元大統領に会ったりしたあと、ヨーロッパへ飛びます。ポーランドではワレサ元大統領と会い、アフリカそしてインドさらには中国経由で2009年10月、ようやく日本に帰国します。すごいですね。まず、コトバはどうしていたのでしょうか。そして、危ない目にはあわなかったのでしょうか。さらには、軍資金は・・・・?次々に疑問が湧いてきますよね。
競輪選手の太ももは60~80センチもあって、瞬発力がある。しかし、自転車の長距離レースの選手などは、足の細い人が多い。そうなんですか・・・・。
 パンク修理など自転車の基本を学んでいないと海外遠征は難しい。うむむ、なるほど、そうでしょうね。
熊本で営業マンをしていて、3年あまりで1000万円をためたというのですよ。ところが、11年3ヶ月の旅にかかった費用は、なんと700万円。1年あたり60万円ほどでしかありません。ええーっ、嘘でしょ。と言いたいですよね。
アフリカでは警察署に泊めてもらったそうです。消防署や軍隊にも。
南アフリカをうろうろしているあいだに、スペイン語は自然にマスターした。旅行者にとっての武器は「銃」ではなく「言葉」である。なーるほど、話してこそ、分かりあえるのですよね。そして、各地で新聞やテレビの取材を受け、パスポートの役割を果たしたといいます。ふむふむ、きっとそうでしょうね。
 つかった自転車は日本でつくってもらった特製品です。車体は18キロの重さ。6つのカバンに詰め込んだ荷物は40~50キロにもなる。初めて見た人からはオートバイかと見間違われるほどの重量級だ。つかったタイヤは82本、パンクは300回。ふだんは1時間で平均20キロ、一日平均100キロすすむ。
 一人で何もせずに長い時間を過ごす退屈さや孤独に強いのが著者の強み。危い目にもあった。目を合わせない人間はたいがい怪しい。相手の言動を注意深く見る。話をすれば、相性がいいかどうか、だいたい分かる。相性がいい相手から「家に泊めてやる」と言われたとき、「この人なら、盗られたら盗られたでしょうがない」という気持ちで泊めてもらった。それで、盗られたことは一度もなかった。しかし、ブラジルでATM詐欺にひっかかったこともある。でも、人間って、本当にいいものだと思う。そう書いてあります。読んで心の温まる本でした。
(2010年11月刊。880円+税)

犬になれなかった裁判官~司法官僚統制に抗して36年~

カテゴリー:人間

安倍晴彦、 NHK出版、 2001年5月25日
最近テレビで山崎豊子さんの「沈まぬ太陽」の映画版を見た。そういえば同じような話がわが司法界にもあったな、と思って、本書を読んでみた。
著者は、家裁勤務が長く、家裁の仕事に熱心であり、登山を趣味とし、山野の草花を愛する裁判官である。その姿は、毛利甚八さんの「家栽の人」の桑田義雄判事と重なり合う。著者は、「当事者のいうことをよく聞く」と「裁判は隣人の助言である」と基本理念とし、実に誠実に家裁の職務に取り組んだ。その時の苦労話とも笑い話ともつかぬエピソードが綴られている。著者は、「裁判官がする仕事の中では、もっとも人間的な仕事、環境であることがわかり、すっかり気に入ってしまったのである」とも言いきる。その熱意には敬服するばかりである。
しかし、ご存じのとおり、著者にはもう一つの顔がある。それは青法協裁判官部会に所属し、それを貫き通した裁判官としての顔である。もう古い話なのかもしれないが、かつての司法反動の時期、著者は家裁の支部から支部への支部めぐりの不遇な人事を強いられた。このような人事を詠んだ川柳として「渋々と支部から支部へ支部めぐり、四分の虫にも五分の魂」というものが知られている。著者を取り囲む上司、同僚の言葉が生々しい。
「君の場合、今後も、任地についても待遇についても、貴意に添えない。退官して弁護士として活躍したらどうか」
「あなたの処遇を、全国の裁判官が息を潜めて注目しているのです」
「君は合議不適だから、どの高裁の裁判長も君を受け入れるのを拒否するから無駄だ」
最近は、現職の裁判官がマスメディアでよく意見を表明する。「判決に全てを書き尽くし、決して言い訳をしない」という伝統的な裁判官の気風に変化があるようにも見えるし、組織の風通しがよくなったようにも見える。しかし、本当にそうなのか?裁判所の外にいる私にはわからないが、いや古い話ではなく、いつの時代にもなくならない普遍の話なのかもしれない、とかつて大きな組織に所属した私は、その組織に関する最近の出来事に接して思うのである。法と証拠に基づいて正義を実現するという、われわれ法律家の仕事は、その依って立つ社会の在り方との緊張関係の外にあって、超然と成り立つものではないな、と強く感じるこのごろである。

田舎の日曜日

カテゴリー:人間

著者  佐々木 幹郎、   みすず書房 出版 
 
 浅間山の麓に山小屋を作って週末ごとに生活している著者が、ツリーハウスをこしらえるという話です。森の中の自然あふれる生活が情趣豊かに描かれています。時間(とき)がゆったりと流れていく感じがよく伝わってきて、読んでると、なんとなく心の安まる思いのする本です。
 どんな人が書いた本なのか巻末を見てみると、なんと私と同世代の詩人でした。もっと年長の高齢者だとばかり思って読んでいたのです。東京芸大の音楽研究科で教えているというのですから、私なんかとは違って芸術的センスが大いにあるようで、うらやましい限りです。道理で文章にもゆったりした詩的なリズムが感じられます。
ツリーハウスというから、どんなものかと思うと、要するに、子どものころ木の上につくった秘密基地をもっともらしくしたようなものです。そこで生活できるというわけでもありません。そうなると、こういうものは、結果よりも、つくっていく過程自体が楽しみなのですよね。この本も、つくり上げていく過程がたくさん紹介されていて、そこがまた興味をそそられるのです。
 歌手の小室等が来てギターをひいて歌ってくれるのですが、ほかには、それといった大事件が起きるわけではありません。いえ、宮崎の新燃岳ではありませんが、浅間山が噴火することはありました。そして、可愛らしいムササビが登場します。
 山小屋生活も、たまにならいいのかもしれないと思わせる本でした。でも、一年中そこで生活するとなると、本当は大変なんなんじゃないでしょうか・・・・。いえ、別にケチをつけているわけではありません。こんな環境で週末のんびり骨休みできるなんて、うらやましいと言っているだけです。
(2010年11月刊。2700円+税)
 火曜日、日比谷公園に行ってきました。3月の陽気でしたが、園内にはほとんど花が咲いていません。梅もハナモモもまだつぼみ状態です。
 わが家の庭の梅も今年は咲くのが遅れています。両隣の梅は咲いているのに、うちはツボミばかりです。紅梅のほうはいくらか花を咲かせています。
 夕方6時くらいまでは明るく、庭仕事に精を出しことができるようになりました。それでも、春は花粉症の季節でもあります。ときどき反応して、目から涙、鼻水が出て、くしゃみを連発することがあります。ひどくならなければいいのですが・・・。

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