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カテゴリー: 人間

がん患者

カテゴリー:人間

著者   鳥越 俊太郎 、 出版   講談社
 まずは表紙の写真に目が惹きつけられます。大腸がん発覚から5年、手術を4回も受け、ステージ4のがん患者とオビにありますが、上半身裸の著者の肉体は健康そのもの。顔色も良すぎるほどで、ボディビルの選手権大会にこれから出るのかと思わせるほどです。
 しかし、本を読むと、やっぱりがん患者としての苦難の日々が書きしるされています。そこには嘘もハッタリもありません。かなり率直な心情が吐露されていて、思わず没入していきます。
著者には持病の痛風があった。それでも、1年365日ビールは欠かさなかった。そのビールがおいしくなくなった。これが異変の第一だった。
 私は3年前からビールを飲んでいません。ダイエットの第一歩としてビールを止めました。夏でも、冷えたミネラルウォーターを美味しく飲んでいます。まず、日本酒をやめ、次に白ワインをやめ、そしてビールをやめたのでした。逆にいうと、焼酎(主としてお湯割り)や赤ワインを外で飲み、自宅では専ら果実酒です。少し甘いのがいいのです。書面を書きながら、少しずついただいています。
 さすがに著者はマスコミ界で生きてきた人です。がん告知の瞬間からテレビカメラの前に立つのでした。これはなかなか真似できることではありませんね。
 大腸がんと分かったとき、カメラで自分自身も腸の内部を見ることができる。そのサーモンピンク色の美しさに著者は驚いています。
 私も人間ドッグには定期的に入っていますので、写真で自分の腸の内部を見ていますが、本当にきれいなものです。これは、たとえ「腹黒い」人間でも変わらずピンク色なのである。それは、そうでしょう。同じ人間なのですから・・・。
著者の大腸がんは馬蹄形に肉が盛り上がり、中央部のへこんだ部分は黒く濁った色をしている。盛り上がった、ちょうど火山の外輪山の部分からは、赤い血が幾筋が見える。これぞまさしく、まごうことなきがん部分である。
 入院中の著者の写真があります。さすがに精気のない、疲れて、さえない表情をしています。本の表紙の顔写真とはえらい違いです。それにしても可愛らしい美人の若い看護師さんにあたったようで、うらやましい限りです。
 著者の武器は二つ。好奇心と集中力。根っからの好奇心人間。努力ということばが大嫌いの生来怠け者である。そして性格は能天気。好奇心は人間の強力な武器だが、これだけでは世間は渡れない。もう一つの武器が集中力という特技だ。
私自身はコツコツ努力型で、これまでの人生を乗り切ってきました。好奇心と集中力は似ていますが・・・。
 著者は無事に大腸がんを摘出したかと思うと、次は肺、そして肝臓へもがんは転移していたのでした。著者は抗がん剤を飲みつつ副作用に苦しむことはなかったようです。そして、漢方薬によって免疫力を高める治療も同時に受けています。
 そして、今では仕事量は前の3倍。さらには週に3回事務に通って筋力トレーニングに専念しているそうです。
生活の質を確保しながらのがん患者として前向きに生きている様子の伝わってくる,
爽やかな読後感の残るいい本でした。
(2011年8月刊。1600円+税)
 日曜日に庭に出てナツメの実を取りました。張りに刺されるような気をつかいながらでしたが、小さなザル一杯分が集まりました。1年後のナツメ酒が楽しみです。
 珍しくツクツクボーシが鳴いていました。いよいよ夏も終わりでーす。ピンクの芙蓉の花に黒アゲハがとまってせわしげに蜜を吸っています。もうすぐ酔芙蓉の花も咲いてくれることでしょう。朝のうちは白い花、午後からは酔ったように赤い(ピンクの)花を咲かせてくれる花です。

未来ちゃん

カテゴリー:人間

著者  川島 小鳥  、 出版  ナナロク社 
 何、なに、この写真集って何なの・・・・。
 3歳か4歳か、そこらによくいるこまっしゃくれたフツーの女の子のスナップ写真のオンパレードです。
 ところが、この女の子、実に伸びのびとしています。いかにも屈託のない表情です。見るものの心をぐぐっと惹きつけてしまいます。
 鼻水たらしてないている顔なんて、今どきこんな強情そうな女の子がいるのかと驚かされます。単に可愛いというのではありません。もちろん憎たらしいわけでもありません。実に、生きているという、豊かな感性が写真の外まであふれ出しているのです。すごいショットをうつし撮っていると思いました。カメラを構えた人をまったく意識している気配がありません。
 表紙の写真は、ケーキでしょうか、フォークで何かを食べている様子がとらえられています。かみつくようにして食べています。おいらは生きているんだぞと叫んでいる気のする写真です。
お花畑を駆けまわる様子、道路で走っているさま、そして真白の雪世界で寝ころがっている状況。どれもこれも生命の躍動感にあふれています。
 それでも、やっぱり惹きつけられるのは泣いている写真です。しくしくと、そしてワンワンと大泣きしている女の子の顔は、小さい女の子だって世の中に主張したいことがたくさんあるんだ。それを感じさせる感動的スナップです。すごい写真集があるものだと驚嘆してしまいました。
(2011年7月刊。2000円+税)

再発

カテゴリー:人間

著者    田中 秀一  、 出版   東京書籍
 医師ではなく、ジャーナリスト(読売新聞の医療情報部長という肩書きがついています)による本なので、専門的ではありますが、がん治療の最新の状況がよく整理されていて、分かりやすい本です。
1年間に新しくがんと診断される日本人は68万人(2005年)。がんで死亡する人は34万人(2009年)。生涯で日本人の2人に1人ががんになり、3人に一人ががんで亡くなっている。かつてに比べると、がんの治療率は高まっている。それでも、患者の半数は生還できない。その理由は、がんが「再発」と「転移」を起こすことにある。
 再発したがんは、最初の治療の後に新しくできたがんではなく、最初の治療の時に既に存在しているがんである。再発や転移が見つかったときに手術で完治させるのは難しく、原則として手術はおこなわれない。
放射線治療も、がんの種類によっては、手術と同等の効果がある。しかし、放射能治療も、手術と同じく局所的な治療法であり、がんが全身に広がっていると完治させることは出来ない。現代医療といえども、きわめて微少ながんを検知するすべをまだ持ち合わせていない。
 遠隔転移の治療が難しいのは、転移が見つかった時点ですでに、がんが血流に乗って見つかった場所以外の部位や全身にも広がっている可能性が高いからだ。
 がんを抗がん剤で完治させることは容易ではない。
 がん細胞は、ゆっくりと分裂をくり返して大きくなっていく。そして、がん細胞ができたからといって、すぐに転移する能力を持つわけではない。がん細胞にとっても、転移は命がけである。このハードルをこえて転移したがん細胞は、生存能力の高い、悪性度の高い細胞といえる。がんは、正常細胞がもっている仕組みを使って転移、増殖しているために、薬でたたこうとすれば、正常細胞や正常組織を維持する機構も傷つけることになり、治療が困難なのである。
 がんは、きわめて複雑な病気なのである。がんは人間の身体の一部が変化してできたものであり、人体がもともともっているメカニズムを組み合わせながら発生、増殖している。これは、すべて正常細胞にも備わっている仕組みだから、これらの仕組みのどの部分を抗がん剤で攻撃しても、正常細胞に影響が出てくる。ここに、がん治療の難しさがある。
 がんになっても、心身ともに健康な生活を送ることができることが大切である。バランスのとれた食事と適度の運動が理にかなっている。
 がんは、抗がん剤で一時的に縮小しても、しばらくすると再び増大することが多く、必ずしも治癒や延命にはつながらない。分子標的薬やラジオ波治療は有効なことがある。
 抗がん剤に過剰な期待をもつべきではない。
 腫瘍マーカーの数値の変化に一喜一憂すべきではない。抗がん剤によるメリットがない場合には、薬の副作用だけを受けることになるので、治療は中止すべきだ。副作用が表れる確率は100%である。
 緩和ケアには、患者を元気にし、延命をもたらす効果力がある。
抗がん剤にばかり頼るなという指摘は、なるほどと思いました。
(2011年2月刊。1000円+税)

大切な人のためにできること

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著者    清宮 礼子  、 出版   文芸社
 父親が突然、末期の肺がんと宣告されたとき、本人とそして家族がどう対応したのか、娘による心打つ記録集になっています。
 父親は、私とほとんど同じ世代です。大病したこともないし、なんだか調子が悪いと思いながら放っておいて、あるとき思い切って病院に行ったら、医師から即入院を命じられたのでした。どんなにかショックだったことでしょう・・・。
コホンコホンと変な咳をして、最近ひどく疲れるんだよなー、若いころに空気で鍛えたことで気力と体力には自信を持っていた・・・。
 がんは、早期発見したら打つ手はあるし、10年も20年も立派に生存できるが、末期のがんだと診断されたときの治療法は何にもない。
抗がん剤による治療の大変さも描かれています。
 61歳の若さで、まだまだこれからというとき、もしがんが告知されたら、無念さのなかで想像もでないほどとてつもなく酷なたたかいを強いられる。自分のために、家族のために、残された期のなかで、すべきことに命をかけて勇敢に立ち向かってくれる覚悟と精神力のある人だった。
 がん治療の選択は情報が命である。もっとも重要なのは、信頼できる主治医に担当になってもらえるかどうかである。ただし、これは、めぐりあわせが大きい。
 現在のがん治療は早期発見だと比較的完治しやすい。ステージが上がるにつれ、治療による奏効率は低くなり、これをすれば治るという正解がない。がんと共存しながら、少しでも長く、少しでも豊かに生きていく、という目的に向かった選択肢しか現実には残されない場合も多い。
 がん治療の選択は、患者と家族の生き方の選択である。がん患者のとって一番の大敵は、悲しい気持ち、不安な気持ちなど、マイナスの気持ちから発生する精神的ストレスである。だから、娘である著者は太陽のような笑顔で父親に接していた。
 なかなか出来ることではありませんね・・・。映画『おくりびと』のプロモーター(宣伝担当者)である著者による痛ましいけれど、心あたたまる本です。がんになったときの予習と思って読みました。
(2011年6月刊。1200円+税)

どうすれば「人」を創れるか

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著者  石黒 浩    、 出版   新潮社
 自分にそっくりのロボットがいて、それを操作できるとしたら・・・・。これって、便利なようで、実は怖い話のような気がします。
 アンドロイドとは、人間酷似型ロボットのこと。アンドロイドがいると、何が見えてくるのか、そのアンドロイドは自分に何を教えてくれるのかを、この本は考えています。
 ロボット大国日本と威張っていたように思いますが、福島原発事故では、残念ながら日本のロボットは活躍できませんでした。これも「絶対安全」の神話のもとではロボットの必要性がなかったということなのでしょうか。何億円もかけていたようですが・・・・。
ロボットには不気味の谷というものがある。見かけは人間そっくりなのに、動きがぎこちないと、非常に不気味なアンドロイドになる。まるでゾンビのような不気味さが出る。見かけが人間らしいものであればあるほど、動きも人間らしくないと、人は非常に不気味な感じをもつ。
 ロボットらしい見かけから、人間の生々しい声が聞こえてきたら、見かけと声のバランスが崩れ、奇妙に思ってしまう。だから、ロボットのしゃべる声は、あらかじめ録音された合成音にしている。
アンドロイドを遠隔操作が出来るようにした。長く遠隔操作していると、だんだんそのロボットの体が自分の体のように思えてくるようになる。
 私たちは、他人が見ることのない左右逆転した鏡の中の自分の顔を自分だと重い、他人が見ている写真の顔を本当の自分とは少し違う自分と思ってみている。つまり、私たちは常に自分に対して、少し誤解しながらに日々を過ごしている。左右を入れ替えた画像は一方が男っぽい顔となり、もう一方が女っぽい顔になる。なーるほど、いつも鏡に映った顔を自分の顔とばかり思ってみていましたが、それは他人の見ているものと微妙に異なるのですね・・・・。
 時間さえかければ、人間はたいていのものに人間らしさを感じるようになる。人とは、それほどまでに適応性が高い。
電車の中でケータイで話しているのを聞くと迷惑に感じるが、客同士の会話は、それほどではない。そうでしょうか・・・・。そこで、遠隔操作のアンドロイドと話しているとどうなるか。ケータイと同じ仕組みになのに、人はやがて迷惑と感じなくなる・・・・。
 アンドロイドをつくっていくのは人間とは一体いかなる存在なのかを考えさせるものでもあることがよく分かる本でした。でも、自分そっくりロボットがいて、いつまでも若々しかったら、ちょっとどうでしょうか・・・・。やっぱり、お互い困りますよね。面白い本でした。
(2011年4月刊。1400円+税)

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